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こころの知性対談シリーズ#1【EI(心の知能)×ビジネス】なぜ感情を上手に扱うチームが、高い能力を発揮するのか?(全4記事)

世界的に特異な日本の「リーダーシップ文化」 幸福度の高い国との「チーム作り」に見る違い

「EIを高める物語の力で日本を笑顔に!」クラウドファンディングの一環として行われた、こころの教育グローバル研究所代表オズとも子氏と、スイスでの勤務経験を持つデジタルビジネスイノベーションセンター鹿嶋康由氏による対談の模様をお届けします。生産性・主体性・自律性を高める鍵となる「EI(感情的知性・心の知能)」。本記事では、幸福度の高い北欧と日本を比較してわかった、日本の組織の特殊性について語られました。

日本はEQスコアが低く、健康度も真ん中より下

鹿嶋康由氏(以下、鹿嶋):(幸福度については)こんな状況ですけど、日本(についての話)がもうちょっとあって。WHOは健康指標みたいなものがあって、一方でEQの検査をしました。心のインテリジェンスが……。

オズとも子(以下、オズ):そうですね。EQは、Emotional Intelligence QuotientというEIの値のことですね。

鹿嶋:それで言うと(スライドのEQとウェルビーイングのグラフを見ながら)、日本はどちらかというと不健康なのかな。ちょっとネガティブというか、あんまりハッピーではないような国民性を持っている。

もうちょっと明るくなって、(グラフの円の)色濃いほうが感情豊かであって、人生の満足度も(スライドのグラフ内の)円が大きいほど豊かであると、さっきの幸福度指数とこのへんは相関してる感じですけれど、今はちょっと……。

オズ:ちっちゃいですね。(日本の)丸が。

鹿嶋:ちっちゃいのと、幸福度もそんなにない。

オズ:これ縦軸と横軸は何を示しているんですか。

鹿嶋:EQスコアが縦で、健康指数が横です。

オズ:日本はEQスコアが低くて、健康度も真ん中より下。

鹿嶋:そうですね。特異なところにいるのが、56位に表れてる感じもしますよね。

オズ:なるほど。確かにみんなが密集しているところから、ちょっと離れてますもんね。

鹿嶋:なんだか日本が特異なところにいそうな気もします。

「幸せ」のパラメーターの変化

鹿嶋:なんだろうと思って、スイスに赴任する前後ぐらいから経年で見ていたんですけど、経年でどんどんパラメーターが変わってきてるんですよね。

お金持ちとか、地位が高いとか、名誉があるとか、物質的に経済成長が……という世界からだんだん、環境はどうなの? 教育はどうなの? 市民活動はどうなの? とか。幸福度はどう感じてるの? とか。環境に対して食料はどうなの? 自給率はどうなの? 政治は安定してるの? 法秩序で運営されてるの? 健康面はどうですか? 宗教倫理とかもしっかり浸透してますか? みたいにパラメーターが変化している。

その他、やっぱり汚職が多いの? とか、寛大そうな雰囲気のものなの? とかどんどんパラメーターが追加されている。地位財と呼んでいるんですけど、経済で回る社会から、どちらかというと、心の社会にだんだんシフトしていくように、健康指数も幸福指数も変わってきていることが見えてまいりました。

オズ:前は、お金や物を持っているかとか、高い地位にいるかとか、地位財で幸せになっていたのが、そこに今、目に見えない部分がいっぱい追加されてきているということですよね。

鹿嶋:はい。変わってきているんだなというのが、スイスに住んでいて少しずつわかってきました。

新たな悩みを生んでいる「どう生きるか」という問い

鹿嶋:なので、従業員がハッピーに働くのもけっこう難しくて。モチベーションとか生産性とかいろいろありますよね。業績とか、満足度とかやりがいとか、成功とかはすごく測りにくいし、多様化している社会に私たちは生きてるんだなという感じが見えてきます。

私たちは今まで給与とか高度経済成長、自分たちの親が「安定した、しっかりした会社に行きなさい」とか「公務員になりなさい」とか「大きな会社に入りなさい」とか言っていた時代ではなくて、「今はお前は何がやりたいんだ、どう生きるんだ」。ぜんぜんわけがわからない、難しい問いですよね。

オズ:難しいよね。

鹿嶋:お父さんたちが言われても「俺は何がしたかったんだっけ」と困ってしまうような問いですね。さっきの幸せ変数やいろんな資料を見ていくと、そんな時代に変わってきている、だいぶ変遷していってるんだな、と思ってしまいました。

給与とか一般的な生活が満足された後に出てくるのは、もう少し難しい問題です。「お前はどう生きてどう死ぬんだ」のような大きな問いが来るので、答えられないよね。このへんが新たな悩みを生んでるのではないかと思いましたね。

オズ:これ私、就職活動生も同じ状況でいっぱいサポートをしてきたので、わかるんです。学校で言うことを聞いてればよかったのを、いきなり「あなたは何をしたいんですか」と言われて自己PRしないといけなくなって、「どうしたらいいんだ」となってしまう。

そういう中で、結局「どうやったら企業に受かりますか」「好かれますか」というほうにいってしまったりして、小さい頃からやってないのに、いきなりそんなこと提示されても難しいですよね。

根本にあるのは、食物が作る社会のあり方の違い

鹿嶋:そうですよね。なんでこうなってしまったんだろうという疑問を持ったまま、僕はスイスから帰ってきた。本質行動学を学びにEMSに入りからいろんなことを学んでも、なかなか答えが出なかったんですよね。

去年、さっきのシンガポール、スイス、デンマーク、スウェーデンみたいな幸せな国にお話を伺いにいって、なんでそんなに世界の競争力も高いし幸せ度も高いんですか、と聞いたんですよね。そしたらスウェーデンの大使が教えてくれたのが「かっしーさん、じゃがいもと米を知っているか」。「それ何ですか?」という話だったんですよね。

「そうですね。米は私たちアジア人の主食ですし、じゃがいもはヨーロッパの主食ですよね」みたいな話はしたんですけど。彼に言われたのが、「米はできたら村を挙げて一気にみんなで刈り取りしないとだめになってしまうし、みんなで保管庫に入れないとネズミに食べられてしまう。そういう意味では、村を挙げて全員野球で食物を採って格納する社会が、縄文時代から生まれてきたよね」みたいな話だったと思うんです。

「ヨーロッパは米ではなくじゃがいもで、家族単位、個人単位という作物の育つ単位が違うから。要は村を挙げてという話で育ったアジアは、逆に言うとヨーロッパから見ると不思議で。お祭りなんかも、なんでそんなに阿吽の呼吸でいろんなことができるの」みたいな話とか。

我々からすると、「なんでそんな個人単位にしっかり自立した自分たちが生まれるの」と思っている。この違いは、「あ、そっか。食物が作る社会のあり方とか組織のあり方が、もともと根本的に私たちとヨーロッパでは違っていたんだ」ということがだんだん見えてきました。

個人が自立している国の「チーム作り」

鹿嶋:赴任したスイスの人たちが、なぜ自律的に考えたり1人を楽しんだりするのが好きなのか、「あーそういうことだったのか」と納得できた。逆に言うと、私たちは日本に生まれてきて無自覚に育っているので、チームワークがすごいと言われても、当たり前です。

彼らにチームワークというと、ばらばらな人たちを集めるので、実は我々よりもものすごく大変なチーム作りをやっているのだと、だんだんわかってまいりました。

最近日経新聞にも出ていて驚いたのは、(「リーダーシップのスタイルの文化の違い」というグラフの、オランダ、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンが分布する部分を指しながら)さっきの幸せランキングが高い国がここで、私たちはここにいて(グラフの日本の部分を指しながら)、この違いは何なのか。

日本も幸せランキング上位の国々も、合意形成においては、みなさんよく話し合って、ものすごく議論しながら意思決定していくんです。ですが、ランキング上位の国々のように組織がフラットか、日本のように階層型、儒教ですから長老が一番上に設計されていて、それで育っていった私たちと違う……同じじゃがいもでもちょっと真ん中(グラフ中ではベルギーとドイツ)の人たちもいますけど。

「ここが違うんだ」みたいな。リーダーシップスタイルでいうとトップダウンの割合がもうちょっと高い、例えばアメリカとかイギリスではなくて、もうちょっとフラットでみんなで合意形成していく社会が幸せ度が高かったり。この平等主義の割合が高いエリアに分布しているのが幸せランキングの点数が7点台の人たちですよね。

オズ:なるほど。

鹿嶋:だから階層型ではないんだよね。

個と個がわかりあうために発達した「心理学」

オズ:(グラフ中で)平等主義で、かつ合意形成型のところが、さっきのランキングで点数が高かったゾーンですよね。

鹿嶋:そう、高い。

オズ:日本は(それらの国とは)またすごくポンと離れたところにいます。合意形成型だけど階層主義というかね。

鹿嶋:階層型組織ですね。

オズ:そうですよね。確かにまたここでもなかなかユニークなポジション。

鹿嶋:そうです。だからこれが村と家族の違い、個とチームの違いなのか、みたいな発見がある。彼らは個人がばらばらなので、実はチームを作る力がめちゃくちゃ強いんですよね。

要するにチームを作るのが大変だから。言葉にして再現性があるトレーニングを作っていくとかね。そんなようなことができたり、心に対しても、チームを作るということでいうと、例えば心理学とかも彼らはどんどん発展させるわけですよ。

どうして個と個をつなげてもチームにならないのかは「え、そんなの当たり前じゃん」という私たち日本人よりは、彼らのほうがずっと「どうして、どうして」という感じでどんどん進んだので。そこに大きな違いがありそうだなと感じてはいました。

オズ:言語にしないといけなかったからこそ、言語にする。しかもそれを知らない人たちとどうやってわかりあうのか、というところから心理学がある。そういう意味で欧米で心理学がすごく発展したんですね。

鹿嶋:そうなんじゃないかなぁと今、思っています。

オズ:まぁでも絶対そうですね。間違いなく。

鹿嶋:日経ビジネスにも載っているので、よろしかったらまた記事を見ていただければと思います。

自由に生きられるようになった社会で手付かずの「心の問題」

鹿嶋:なので、幸せは永遠のテーマで、さらにそれを追求し続けている。だから、資本主義よりももっと大きい流れがあると思っています。

キリスト教や仏教、イスラム教も、紀元前4世紀あたりで一気にドーンと生まれていますけど、よくよく見ていくと似たような哲学、たとえばギリシャ哲学が出てきていたり、そういう古代の考え方と、そこから今みたいに作物が作る社会になり、その上で大航海時代とか民主主義、植民地支配とかが起こっていく。

最後、そうですね。第一次世界大戦、第二次世界大戦で、植民地というか社会がフラットになる。資本主義の中で高度経済成長があって、さらに地球が壊れるところまでいってしまっているのが、私たちの今なので。どんどん欲望が膨らんでいって、より自由に生きられるようになったんだけど、心の問題はまったく手付かず。そんな感じなのかなと、向こう(スイス)にいってわかってきました。

ちょっと話が長くなってるので、このへんでいったんブレイクにしたいと思います。

オズ:そうですね。

鹿嶋:どんな話をしていただきたいかというと……。

今の感想でもいいんですけど、最近みなさんが自分の感情と向き合ったのは、いつ頃だったのでしょうか。全部で8分くらい、1人1分半ぐらい。

オズ:例えばかっしーだったらいつですか。

鹿嶋:僕は、明日からの研修のために、前泊入りでホテルに予約取っていたはずだと思って今日チラッと確認したら、なんとBooking.comが勝手にキャンセルしてくれていまして。焦って焦って別のホテルを探して、ようやくホテルにたどり着いた時の自分の感情は、すごい憤りと、自動システムを見ていなかった自分が悪いという気持ちと、なんとかホテルに入れたという安堵の、複雑な気持ちが入り混じっております。

オズ:入り混じって。はい。じゃあみなさんもそんな感じで、最近自分がおぉっと感じたというか、感情と向き合ったのはいつか。あとは時間があれば、今まで聞いたところの感想などをシェアしていただければと思います。4人1グループで、8分くらいで話してきてください。

鹿嶋:いってらっしゃい。

(ブレイクアウトルーム)

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