2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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オズとも子氏(以下、オズ):はじめまして、オズとも子と申します。私、よくこの髪型が印象的と言われるんです。街中を歩いていて「すみません。その髪型どうやったらできるんですか」と聞かれたこともけっこうあるんですが、実はこれ、パーマではなくてくせ毛です。なので、ちょっと気合いの入った人だと思われがちですけれども、自分の中から出てきているウェーブです。なかなか珍しい髪型をしております。
簡単に自己紹介をさせていただきますと、私はアメリカの大学院でカウンセリングを学びました。卒業してから日本に帰ってきて、就職支援の会社に4年ぐらい勤めて、キャリアカウンセラーをしていました。その後独立し、だいたい20年以上にわたって1万人以上の方に会ってきたという感じです。そういうとアメリカ育ちのように思われますけれども、普通に日本生まれの日本育ちです。
今日この後「EI(感情的知性・心の知能)」についてお話しさせていただきます。今子どもたちや大人たちにもっと「EI」を学んでもらって、日本を笑顔にしていこうという、プライベートなグループを持っています。今日はたくさんそこから(この対談を聞きに)入ってきてくださっていると思うんですけれども、そうでない方も自由に入っていただいています。
今日は「EI×ビジネス」というタイトルになっているんですが、そもそも「EI」とはなんだろうということで説明します。「EI」とは、英語でいうとエモーショナルインテリジェンス(感情的知性、心の知能)の略です。
どういうものかと言うと「自分の気持ちとどう付き合うか」という、自分の内面と向き合う力という意味で非常に大きな部分を占めています。あとは「自分が自分をどう思うか」を育てる部分でもあります。
オズ:これはビジネスに関係なさそうだなと思う人がいると思うんですけれども、実はすごく関係があるんですよね。IQ(知能指数)は、仕事や人生全般における成功とはあまり関係ないということがだんだんわかってきています。
例えばトラヴィス・ブラッドベリー博士やジーン・グリーブス博士によれば、仕事で高い成果を上げている人の90パーセントはEQ(心の知能指数)が高いことがわかっているんですよね。つまり、仕事で高い成果を上げることとEQは、すごく連動しているんです。EQが伸びると仕事もうまくいく可能性が高くなり、必然的に報酬も高くなるということです。
なので、EQの低い人と高い人だと、数百万円ぐらい報酬に違いが出るということがわかってきています。これはどの業種とかどの職種、どの階層においても、世界のどの地域においても、同じことが言えるということです。
じゃあ、EIという自分の気持ちとか感情と向き合う力が、なぜ仕事に関係があるのかというと、やはり仕事は人と一緒にやるからですよね。どうしても人は人と関わりながら生きていきます。そうすると自分自身に対する態度が、自然に人に出ている部分があります。
なので、今回この「こころの知性対談シリーズ1」では、なぜ感情を上手に扱うチームが高い能力を発揮するのかをテーマに対談していきます。
オズ:例えば、「自分の内面と向き合う力」は、外と対等にやり取りしたり、いい関係を築いていくとか、自分らしく生きるというところにすごく関係があります。
よく私はこれを国に例えて説明しています。人間1人が1つの王国だと考えた場合に、自分の中にはいろんな気持ちがある。つまりいろんな気持ちの国民がある、という言い方をするんです。自分の王国の国民が、どういう状況でどういう意見なのかがわかっていないのに、いきなり外交にいく。
すると、向こうがいろんなことを言ってきた時に、どうしていいかがわからないから、なんとなく向こうが喜びそうなことをしようと思ってしまいます。
日本だったら、日本国内のことをわかっていなかったり、日本国民がどう思ってるかも知らなかったら、目の前の諸外国がいい反応をしたほうに、喜んでもらえるほうに、うっかりいってしまう、みたいなことです。
つまり「自分の内面と向き合う力」は、実は外とちゃんといい関係を築いていく、自分らしく生きることにすごくつながっているんですよね。
オズ:世界的には、日本の子どもたちの自己肯定感がOECD(経済協力開発機構)諸国の中では最下位という状態が続いて、低い低いと言われています。子どもが低いということは、そういう子どもを育てている大人たちも自己肯定感が高いわけないですよね。
自分の気持ちがどうなのかを聞かれると、日本人はすごく戸惑うんですよ。「あなたはどう感じているんですか?」と、ぐいっと来られたら「んー」って悩む。そんなこと小さい頃から問われたこともないし、学校でも聞かれないし、そうやって育って大人になる。
会社に入って組織に合わせて、周りに嫌な思いをさせないように、迷惑をかけないように生きていくようになってしまっている人が多いんです。
私はいろんな人の相談にのってきましたが、「あなたはどう感じているんですか」と言ったら、「周りが自分の言動でどう感じていると思うか」をすごく話すんです。例えば会社の人がこう思っているんじゃないかとか、自分の家族がこう感じてしまうから、というようなことです。
なので、周りのことは見ているけど、自分の内側を見ることができていない。そうやって自分を大切にできていないという意味では、大人たちがその社会を作っているのではないかなと思っています。
オズ:さらに、会社とか、組織が特にそうなのではないかなと思うんですよね。そこで今回実は鹿嶋さん。私はカッシーと呼んでいるので、今日はカッシーと呼ばせていただきますけれども。
カッシーにそういう話をしたら「そういうところが日本の生産性を下げているんだよ」と グローバルな視点からおもしろい話をしてくれまして、目からばらばら鱗が落ちました。これは絶対みんなに聞いてもらったほうがいい話だなと思ったので、今回お呼びしました。
カッシーはまず誰もが知っているようなすごく日本的な組織の大企業にいたこともあればスイスで働いていたこともあります。そして今、大企業の悩める人たちを変容させて、会社を変えるリーダーにしていくNPO・デジタルビジネスイノベーションセンターにいらっしゃいます。
というわけで、さっそくカッシーにお渡ししますので、自己紹介からお願いいたします。
鹿嶋康由氏(以下、鹿嶋):とも子さん、ありがとうございます。今日お呼びいただきましてうれしいです。私の自己紹介をさせていただきたいと思います。カッシーと呼んでください。今ご紹介いただきました、デジタルビジネスイノベーションセンターのディレクターをしています。
もう一つの顔は、マネジメント3.0ということで。先ほどお話があった、日本の企業の中で何が遅れているかというと、俊敏に動く意思決定が顕著です。このへんをなんとかしようということです。前の会社(JT)で海外赴任していた時に学んできた、世界の85ヶ国1万人ぐらいの方が学んでいるManagement3.0のプログラムがあります。これを、ドイツ人が先に日本で展開していたので、そこに合流して、ドイツ人と2人で教えていたりします。
鹿嶋:私自身はJTに三十数年勤めてスイスにも最終的には赴任していました。赴任の目的はスイスに統合するという大きな目標を持ちながら出張ベースでずっとやっていたんですけど、にっちもさっちもいかなかったので、「行ってこい」ということで赴任させていただきました。
2020年に定年退職をした上で、その後に、無事に後輩たちがスイスに移管してくれていましたので、無事に卒業しているというかたちになっています。
とも子さんと出会ったのは、本質行動学を学ぶためにEMS(エッセンシャル・マネジメント・スクール)に一緒に勉強したご縁です。こんなかっしーです。今日はよろしくお願いします。
といった堅苦しい自己紹介はあんまり好きではありませんよね。このマネジメント3.0のパーソナルマップを書いて、質問をしていただく自己紹介の方法があります。とも子さん、何かここ(スライドに映されたブレインストーミングのような図)で、聞きたい言葉とかありますでしょうか。
オズ:そうですね。ゆるゆる整体とかチベット仏教とか、ゆるゆるしそうな部分もなんだか気になりますね。
鹿嶋:ありがとうございます。ゆるゆる整体は、この間EMSの6期でホウジョウ先生の講座に直接行かせていただきました。(その時に)「体を緩めると心も緩んでくる。ハッピーになるよ」みたいな話がありました。
今日の話の中でもちょっと出てきますけど、チベット仏教は実はモチベーションの哲学である、と今習っております。そんなことをやっています。
オズ:おもしろそう。
鹿嶋:さっきいろいろ自己紹介を語っていましたけれど、あれを語ることなく、こうやって自己紹介を先に書いて、みんなで質問攻めをする、「質問紹介」みたいなことをやっています。そうすると、情報量はすごく早いんだけど一気に自分の関心、興味があるところとその人とが結びつくので、そういう感じでご縁を作っていくような自己紹介でした。
鹿嶋:なんでこういう話をしているかというと、どうしても今戦争があったり地球が壊れそうだったり不確実な未来で、このままどうなってしまうんだろうと思う時に、(スイスに赴任していた間に)スイス人が幸せに暮らしていたりするの見て、やっぱりちょっと考えさせられることが多かったんですよね。
一方で生涯寿命が長くなってしまったから、定年退職した後もけっこう長いんです。特に私たちのバブル世代のお父さんたちは、家に帰ってくると居場所がなくて、粗大ゴミのように扱われるが多い。このあたりも考えながら、これからは「一生働く」ことを念頭にライフデザインをしていくことも必要だよねと、スイスに行って家内と一緒に考えたりしておりました。
赴任してたスイスの話をちょっとご紹介させていただきますと、スイスは日本でいう稚内。北海道の一番てっぺんと緯度が一緒です。ただ地中海が暖かいおかげで、そこまで寒くないんです。でも冬はけっこう寒い。1年に1回ぐらいは雪が降る。そんなところです。
スイスは4ヶ国語が公用語です。ドイツ語、イタリア語、フランス語、ロマンシュ語。そんなところにおりました。
スイスに住んでみるといろいろ見えてくることがあります。資源がなくて、山が多くて、九州と同じぐらいの大きさです。人口は日本の10分の1です。その東京都よりも少ない人口だからこそ、資源がないからこそ、彼らがあみだしたのは移民を受け入れて国をオープンにして40年先、50年先の経済を長期的に考えています。
なので、聞いたことがあるかもしれませんが、ダボス会議とか国連を入れたり、永世中立国ということで自分たちを守っている。世界の人たちとつながりながら、ビジネスを発展させるためにどんどんイノベーションを起こして、自国で何かするというよりは、自分たちも世界の中の一員としてやっていく。
鹿嶋:一番感じたのは、人生は短いということを、彼らはきちっと定義をしているということです。定年した後は年金でしっかり暮らせる国になっている。
特にわかったのは、ワインを作る国なので、大切な時間、熟成された時間で高価に資産が増えていく、みたいな生き方を彼ら自身がやっている。別荘を持ったり、週末は豊かな自然と共に暮らしたり、ワインを飲みながらゆったりした時間を楽しむ生活をされています。
大企業であくせくと「24時間働けますか」で働いてきた私がこの風景を見た時に、ガツンとやられまして。生き方をちょっと見直すことになりました。
じゃあ日本人の幸せ、世界の人の幸せって何なんだろう。たまたま国連が近くにあったものですから、聞きに行ったり見聞きしてわかってきたことがあります。1971年に、国連の中にブータンが入った時に、幸福度を比較するようなプログラムがあった。要するに幸福量を国民の目標にしながら国を運営している提言があってから、40年くらいたった2012年に幸福レポートを国連が書きはじめました。
幸せをどう測ることができるのかみたいなことってたぶん人類の共通点ですが、今日の心の教育ともかなり密接になっています。世界は幸福を追求しはじめて、科学しはじめているのがだんだんわかってきました。
なぜかというと、不幸がいっぱいあるから、幸福を定義して幸福に向かっていく。なのでSDGsが生まれたのです。幸福が高い国はどこなんだろうと見ていくと、北欧だったりするんですね。(スライドに映された幸福度ランキングを見ながら)
でも北欧の人たちは、寒いから支援がないんですよね。要するにさっきのスイスのジュネーブは、まだイタリアの(上の)このへんですから。なんでこのへんの緯度の人たちからずっと幸福度が高いのかというと、彼らは幸福になるように社会システムをデザインしているんですよね。
椅子を作るように、家具を作るように。北欧の家具は有名ですけど、同じように国民の幸せがデザインされている国なんだなぁと、じわじわとわかってまいりました。
オズ:56位の日本が、ちょっと低すぎませんか? 56位ってこれはもう最下位位にちかい……。
鹿嶋:僕もこれを見た時はちょっとショックだったんですけど。実はさっきの幸福度が高いのは北欧と北米とかイギリス圏ですよね。オーストラリアとか、北欧、欧米といわれている国々が、7点台とか6点台の後半とか。
オズ:幸せが高いほうが、この点数が高いんですね。
鹿嶋:そんな感じです。私たち日本は5.9で、台湾はどちらかというとアメリカっぽくなってるんで6.6です。
オズ:確かにね。
鹿嶋:そうですね。共産国というかチャイナとかロシアとかは5.5とかです。日本とちょっと近いぐらいですかね。そのほか発展途上国、インドもまだまだだし、中東もそうでもないんですけど、アフリカなんかだと4……。食べていける、国民の平均所得が食べるのに困らなく一生暮らしていけるあたりになってくるとだんだんよくなるのかなという。
経済的には国民全体が1人前になった、みたいな感じですけど。もうちょっとその先にある、そこを越えてまた豊かな社会を作っていくレイヤーに上がってくると、7点とかそういう(幸福度の高い)世界に合っているので。東南アジアとか私たちが住んでいるアジアの、このレイヤーからもう1段上にいくと、違う生き方とか心のあり方みたいなものが変わってくるのかもしれないね。
とも子さんはアメリカで学んでこられたから、たぶんそういうレイヤーの人たちの考え方に少し触れたんじゃないかなぁとも、ちょっと感じる。
オズ:そうですね。
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