2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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窪田望氏:ここからは、生々しい地域活性化の話をしていきたいと思います。まずは「初期の苦しみ編」ですね。最終的には、地域活性化として成功事例となった「#スガモ消滅2026」ですが、最初からみなさんに理解していただけたかというと、そんなことはまったくなかったんですね。
「消滅とはなんだ! 失礼じゃないか」という反応が一番多くて。確かに「スガモ消滅」と思いっきり書いてあります。ポスターにもなっています。「どうもこんにちは」と言って、商店街のみなさんに挨拶をしに行きます。そして「今度、『スガモ消滅』という企画をやりに来ました!」と言えば「消滅とはなんだ! 失礼じゃないか!」という反応になりますよね。
「俺たちの街が消滅するってどういうことだ!」「いや、違うんです。隕石が降ってきまして」「隕石が降ってくるってどういうことだ! 隕石なんか降ってくるわけないだろう!」という反応になってしまいますよね。最初はなかなか協力してくださるところもなくて、四苦八苦しながらやっていました。
本当、おっしゃる通り、失礼なんですよ。自分の住んでいる街に対して、いきなり「消滅」と言われて、それも「2026って微妙に近未来だな」「すぐなくなるってことかい!」みたいな。「明日消滅する」なら冗談とわかるけど、「2026って生々しいし現実っぽいんだよ!」と。「そうだよね。消滅しちゃうのかもね」と言われる方もいて、「違うんです! 違うんです!」と僕らが言ったりしたんですけど。
こうした、街のみなさんの反応は、「巣鴨を愛している」「自分たちの街だと思っている」からこそだと思ったんですね。だから、いきなり外から来た僕らみたいな人に「『スガモ消滅』という企画やりたいんです」と言われると、心理的にすごく不安になってしまう。逆に言うと、街が愛されている証拠だと捉えました。
そこから、あることをやりました。「ひたすら挨拶する」ということです。僕はこういう地域活性化のマーケティングも、結局「現場に出向いて足で稼げ」と思っているんですね。「商店街の人はツンデレだ」と思うのが一番だと思っていて。現場は挨拶でできているんですよ。
「当たり前のことをちゃんとやる」ってめっちゃ大事ですよね。マーケティングの事例発表会などを見ると、うまくいっているプロジェクトほどきちんと挨拶をしています。ある意味、誰にとっても当たり前になり過ぎていて、わざわざこういうことを書いているケースも少ないのですが、僕は「地域の要は挨拶でできている」と思っています。
雨なんか降ったら大チャンスですね。雨の日に、敢えてポスターを持っていくんです。びしょびしょになりながら、ポスターだけは大事に守って「こういうことをやっているんです。ぜひ協力してください」と、本気でお願いする。こういうことが大事だと思います。
ポスター貼りはひたすら学生と一緒にやりました。ポスターを貼る本当の理由は、地域住民と挨拶をする回数を増やすためなんです。結局、こういうイベントって、主催者は当然盛り上がるんですよ。でも、それだけじゃダメなんですよね。せっかく来てくださるお客さまが喜んでくれる状態を作らないとダメです。そのためには「なんか地域が一丸となっている」ということが大事なんですね。
僕はもともと謎解きイベントが大好きで、いろんな街歩きのイベントに参加してきました。チェックポイントになっているお店に入って「ヒントを教えてください」と声をかけても、店員さんの反応が「ヒントって何のこと? 何のゲームをやっているの?」みたいなことも正直あるんですよ。そうすると、シュンとなっちゃうんですよね。
ゲームの世界、例えばRPGだったら村人に話しかけるとかよくありますよね。村人Aに話しかけるとレスポンスとして「魔王は最近、南の洞窟にいるそうだ」と返ってくる。そういうのがゆくゆく「あれがヒントだったのか!」となったりするわけです。
「お姫さまは最近ご機嫌ななめのようだ」みたいに言われて、「なんでご機嫌ななめなんだろうな?」と思うと、別の村人がその理由を教えてくれたりしますよね。だから、こういう体験型のゲームをやる時に、すごく大事なのが「街の人が応援してくれている感」なんです。
実際、今回和菓子店の岡埜栄泉さんは謎解きのチェックポイントとなっていて、ゲームの中でも「岡埜栄泉の主人に話をしに行く」という指令もあるんですね。ある謎を解くと、ある言葉が手に入って、その言葉を岡埜栄泉さんに聞きに行くと次の謎の答えが手に入るというイベントがあったんです。
その時に、その人たちが意気揚々と、楽しみながら話してくれることがめっちゃ大事で。そのために、僕らができることって、結局挨拶しかないんです。
「僕ら、これを本気でやろうと思っているので、ぜひ協力してください。こういうふうに言ってくれたらユーザーが絶対喜ぶと思うので、よろしくお願いします」と、1回言ってわかってくれると思うのは間違いです。何度も何度も行って、ようやく協力してくれるようになるんですね。未だに、こういう泥臭いことが地域活性化においては大事だと思っています。
一昨日、僕は福島に行きました。(※本イベントは1/27に開催されました)
一面の雪景色でした。(スライドの写真は)駅なんですが、本当に雪景色で、ほぼ電車が埋まっているのがわかりますか?
地元の観光の専門家に「地域活性化における一番の課題は何ですか?」と聞きに行ったんです。そうしたら、「実は、それは10年間変わっていないんですよ」とおっしゃる。「10年間変わっていない? それは何ですか? ぜひ教えてください」と言うと「自分たち自身が、自分たちの街の魅力に気づいていないことだ」という答えが返ってきました。
自分たち自身が、自分たちの街の魅力に気づいていない。これが10年間続いていると。「なるほど」と思いました。その方は続けて「地元の人に『うちの街の魅力は何だろう?』と聞くと、みんな必ず『魅力なんて、うちには何もないよ』と言うんです」と話してくれました。
でも、自治体には観光を本気でやっている人たちがいる。その人たちは、地域の魅力を十分にわかっているんですね。「ここにはこんなおもしろい場所があるんです。ここはこんな歴史があって、それで…」と、話し出したら止まらないんですよ。「こうで、こうで、こうで」と、めちゃめちゃいっぱいあって。
そりゃそうですよ。歴史もある。文化もある。本当に魅力がたっぷりあるんです。でも、悲しいことに実際に街で聞いてみると、自分たち自身が自分たちの街の魅力にまったく気づいていない。これってめちゃめちゃ悲しいことですよね。僕は日本にはまだまだお宝がいっぱいあると思っています。だから逆に、そのお宝の存在に「本人たちが気づいていない」と言えると思うんですよ。
当然ですが、日本の中で東京とはごく一部で、47都道府県の1個でしかないわけですよ。だから日本の地域が変われば、日本はもっと強くなります。
では、そんなことは実現可能なんでしょうか? 世界の田舎の事例を見てみましょう。
「サウス・バイ・サウスウェスト(SXSW)」というイベントがあります。音楽、映画、インタラクティブフェスティバルなどが組み合わされた、とても大規模なイベントなんですね。どこで行われているのか。アメリカのテキサスですよ。カリフォルニアでも、ニューヨークでもありません。でも、6万5,000平方フィートの出展スペースに、たった3日間で3万5,000名が訪れるんですね。
いいですか? 「地域に人は来ない」と僕たちは決めつけていませんか? アメリカのテキサスってめちゃめちゃ行きづらいんですよ。僕たちはいつの間にか、「この地域には人が来ない」と決めつけているのかもしれません。
他の事例も見てみましょう。ヨーロッパには「ヨーロッパの田舎」なんていう嫌な呼び方をされていた地域があります。それはどこか。ポルトガルのリスボンです。「欧州の田舎」と呼ばれたポルトガルのリスボンで、「web summit」というイベントが開催されたんです。
ここには128カ国・地域から、4万2751人が参加するんですね。「欧州の田舎町」なんて、ひどいですよね。国自体が田舎だということですよね。でも、4万人が訪れるんです。参加者のうち、スピーカーは748名。投資家が872名。参加者全体の50.5%が女性。
世界を見渡してみれば、こんなすごい事例もあるんです。でも、「コロナだ」とか「こんな危機が」とか、僕らはついつい言い訳をしてしまうんです。
もう少し近いところで、アジアの事例もあります。香港には「香港エレベーターピッチコンテスト」というイベントがあるんですね。コロナ禍だけじゃなくて、香港では暴動が起きていて、死者が出ていました。
僕は暴動が起きている中、香港に行ったんです。もう街中警戒網でした。「今回はこのイベントに誰も来ないんじゃないか」と、みんなビクついていて。でも、蓋を開けてみると1,500人以上の投資家・起業家が参加したんですね。このピッチコンテストのために、約40カ国からやってくるんですよ。すごいですよね。
「エレベーターピッチ」という言葉は、なんとなく聞いたことがあると思います。伝説的な話なのですが、エレベーターの中で、たまたま起業家の隣に投資家がいたんですね。横にいるのが投資家であると気づいた起業家は、エレベーターが1階から10階に上がる1~3分ぐらいの短い時間に自分の事業の説明をしました。それはごく短い間に投資家の胸を打ち、実際に投資が行われたという話です。これを短く縮めてピッチといいます。
ピッチとは英語で「投げ入れる、投げ込む」という意味ですが、それが転じて「バッと投げ込むように自分の強みを話すこと」として使われています。通常「エレベーターピッチコンテスト」は、エレベーターと言いながらもパワポや会場が用意されて、そこに投資家が何名か座っていて、オーディエンスがいて、その前で話すんですよね。
ですが、おもしろいことに香港エレベーターピッチコンテストは、本物のエレベーターの中でやるんです。僕も実際に出たことがあるんですが、本物のエレベーターの中で1階から100階までブワーッと上がるんですよ。これ、耳がキーンとします。
「高低差あり過ぎて耳キーンなるわ!」っていうギャグがあるじゃないですか。僕びっくりしたんですけど、あれ本当に起きるんですよね。当時僕は、謎に毎回、エレベーターピッチで歌うということをしていて。すると、本当に気持ち悪くなっちゃって大変でした。今振り返ってみると、「なんでエレベーターの中で歌っていたんだろう?」と思ってしまいますが。
何が言いたいかというと、「おもしろいことをしていると人は集まる」ということです。「コロナだ」「暴動だ」などいろいろあるけど、僕たちが諦めなければ人は集まる。おもしろいことをやっていれば、反応してくれる人は絶対にいる。「諦めるな。道を切り開こう」ということです。地域活性化を考える時、みんな「いやいや、〇〇だと無理だ」って言うじゃないですか。
「この地域だと無理だ」「この年齢だと無理だ」「日本だと無理だ」「日本人には無理だ」。すぐに「無理だ、無理だ、止めよう」「前例がない」「できるわけがない」と言いますよね。
でも、これから僕たちが生きていく時代は「不透明な時代」です。誰も、正解を持っていない時代なんです。正解なんて、誰にもわからない。不正解かもしれない。でも、一歩を踏み出すしかないんです。
世界から「田舎だ」と言われても、世界を魅了するイベントができる。ありがたいことに、今ここにいる全員がそれを知ることができました。つまり、地域活性化をしようという時、僕たちにもそれができるんですよ。
今回、「巣鴨でやりました」と言うと、「東京だからできたんじゃないですか?」「巣鴨だからできたんじゃないですか?」と考える人もいるかもしれません。でも、逆に考えることもできる。
「どこで成功した」ということはもう関係ないんです。「俺たちはとにかくやるんだ。とにかく達成して、いろんな人を笑顔にするんだ」と考えることもできますよね。道を切り開く。そういうふうに思う人とは、ぜひ一緒にやりたいと思っています。
自治体、観光協会の関係者の方、もしくは企業スポンサーになってみたいなという方、大学関係者の方、また「お手伝いをしてみたいな」という方は、ぜひ個人的に連絡をください。
申し遅れましたが、私はCreator’s NEXTの窪田望と申します。ここ(スライドの画像)からFacebookのページに移動できますので、ぜひこの機会に友だち申請してください。一緒に何かおもしろいことをやれたらなと思います。
応援メッセージも、すごく力になりますので、ぜひ送っていただきたいと思います。今日は本当にありがとうございました。
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