2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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田所雅之氏:さらに少し本質的な話をすると、スタートアップ型事業の本質というのは、少し先の未来に対してプロダクトを提供していくことだと捉えています。僕はこれを「プロダクトフューチャーマーケットフィット」と言っているんですけど、例えばUberはわかりやすい例です。Uberという会社は2008年に立ち上がったんですけど、当時のスマホはしょぼかったんです。
ぜんぜんGPSもなくて。だけど、スマホはどんどん進化していることがわかっていました。UberのピッチデッキにMore accurate GPS(より正確なGPS)と書いていますけども、Uberは立ち上がった2008年に最適化しているわけではなくて、少し先の未来に対して最適化していたんです。
このようにマクロのインサイト、PEST分析とも言うんですけども、実際に条例はどうなっていって、今後需要に対して供給が少なくなるところはどこなんですか? という仮説も立てていく。実際にインタビューする前に、先ほどのガラパゴス社の例でも話したんですけども、いわゆるミクロの仮説だけではなくて、こんなマクロの仮説も立てていくのが大事ですね。
さらに現状の2022年で生きていくと、代替は存在するんですよ。代替が存在するところにはあえて攻めない。そうやっていくと自分たちが最初に攻めるべきユーザーセグメントがおぼろげに見えてくるんです。ここの仮説を立てるのが非常に大事だと思っていて、まさにミクロの仮説に加えてマクロの仮説です。
実際に僕が支援させていただいた例で、あまり見せたくないんですけどちょっとだけお見せします。先ほどのガラパゴス社も非常に素晴らしい会社なんですけど、(スライドを示して)このようにミクロの仮説を立てました。一方でいろいろインタビューをして、マクロの仮説も立てるために、最初のセグメンテーションをやっていったんです。
ただ、いろいろインタビューをしてインサイトを獲得する中で、自分たちが最初に攻められるセグメントがどんどん明らかになってきて、最終的にDtoCをやろうとしている、コンプレックス商材を扱っているメーカーに対してLP(ランディングページ)を売るというところまで絞り込めたんですよ。
これはまさにマクロとミクロの仮説を立てながら一次情報を集めて、その上で攻めるべき市場を見つけていった例だと思います。ちょっと戻りますと、インサイトはみなさんユーザーの行動だけと捉えがちなんですけど、学習するということは、ただ単にユーザーのジャーニーだけではなくて、市場全体がどう動くのかということも重要ということですね。
大事なことは、なんでこの市場を一番にやるのかを説明できるかどうかなんです。こうやって実際に仮説が立てられました。
みなさんインタビューに非常に興味があるということなので、ここからHowについて話したいなと思っています。僕は優秀な医者になるという話をしているんですけども、これはまさにインサイトを見つけることなんです。インサイトはまさに洞察ですけど、ユーザー自身も言語化できていない深い欲求なんですよ。
例えば患者さんが来て「先生、頭が痛いです」と言った時に、ここに対して表面的に頭痛薬を出すのは僕はだめだと思うんですよ。なんでそもそも頭が痛いのかという、もともとの原因とか真因を、インタビューや観察を通じて炙り出していくのが大事だと思っています。
そうやっていくと、実は頭が痛いもともとの原因はストレスや仕事のプレッシャーかもしれない。それに対して効くソリューションは、ベビーシッターかもしれないということなんです。
それを見つけるためのインタビューのポイントについて少しお話しして、そこから先ほど解説したジョブシャドウイング、ユーザーを観察するところですごくうまくいった事例がありますので、それを見ていただきたいなと思っています。
まずインタビューのポイントなんですけど、先ほど言ったように誰にインタビューするかをちゃんとクオリファイするということですね。これはビザスクでも僕はけっこうやるんですけども、いろいろメッセージを送った上で本当に適切な方なのかを聞くのが大事だ思います。
まずインタビュイーがアーリーアダプターであること。積極的にソリューションを探しているんだけども、それが現状ないので何らかの代替案を寄せ集めで作っていたり、それに対して予算獲得が可能である方が一番いいんですよ。なぜかというと、こういう方々はお金は払えるのに、既存の代替では満足していないということなんですよ。
実際にクオリファイする際には3つのポイントがあって、この3つの質問をするんです。「現状はどんな代替を利用していますか?」というHowの質問、次に「現状の代替案にどんな不満があるんですか?」というWhatの質問をします。さらに「もし魔法の杖があった時にお金をどれくらい払えますか?」というHow muchの質問をするんですよね。
これに対して「よくぞ、聞いてくれました。本当に困っていて、それに対してだったら10万円でも20万円でも払います」という感じだと、インタビュー対象になると思います。まさにアーリーアダプターですよね。これは、「アーリーアダプターのエバンジェリストユーザー」という言い方なんですけど、すべてのプロダクトには実はアーリーアダプターがいるんですよ。
Amazonもそうですよね。Amazonが1994年に立ち上がった時、出荷にだいたい8ドルかかったんです。でも、Amazonが当時扱っていたのは本だけで、けっこうマイナーな本でした。ベストセラーじゃなくマイナーな本なので、いちいち大型の図書館や本屋に探しに行くとなったらめちゃめちゃお金がかかる。そうすると出荷に8ドル、そして到着までに1週間かかるとしても、みなさん喜んでAmazonで買いますよね。
という感じで、インタビューする前にフィルターをかけ、現状に対して本当に困っていてお金を払える方なのかをちゃんと聞くことが大事だと思います。
次に、「インタビュー相手の弟子になる」という表現なんですけど、質問の中から質問を見つけていくということです。弟子なので、お師匠さんに対していちいち口を挟まないですよね。「弟子入りするように教えを請う」ということだと思っています。
大事なことは、やっぱり傾聴スキルです。基本的にインタビューだと、「何かしゃべらなきゃダメなのか」と思ってしまいがちなんですけど、基本的に黙る。「オープンクエスチョンをして、黙りましょう」というのが大事ですね。
さらに、深掘りすることが重要です。先ほどのガラパゴス社でもあったんですけど、「実際にプロセスはどうなっていますか?」というような、具体的な質問をしていくのがポイントだと思います。
タブーな質問としては、「これ、〇〇しないんですか?」というものです。グループインタビューでよくある質問なんですけど、ユーザーはこんなことを言語化しないんですよね。そう言われたら確かにそうなんだけれども、実際にそれってけっこうバイアスをかけてしまうので、この質問はしないかなと思います。
後ほどアンケートを答えた方には資料をお渡ししたいんですけれども、(スライドを示して)これは『起業の科学』でも書いています、Problemインタビューで行う質問リストです。
特に大事なポイントとしては、「現状のワークフローを教えていただけますか?」とか「再現いただけますか?」と質問すると、意外とユーザーは最適でないオペレーションとかタスクをとっている場合があるんです。また、「5W1Hで深掘りする」という表現もあるんですけど、「実際に最近いつやってどんな感じでしたか?」と聞いていくのがいいと思います。
そして「普段どんな代替を使っているんですか?」という点ですね。あとは確認する。みなさんもそうだと思うんですけど、「ちゃんとこの人は聞いてくれてるな」と思ったら、どんどん深掘りしたくなるんですよね。なのでリピートだったり、要約、パラフレーズしていくということです。
まさに、質問の中に質問を見つけていくということだと思っています。いい兆候としては、「インタビューされて初めて気づいたんですけど」というような言葉が念頭にあると、けっこう本音を言ってくれていると思います。
あとは、なかなかコロナ禍で難しいんですけど、先ほども言った「メラビアンの法則」です。人間の情報量は、実はロジックの部分は7パーセントなんですよ。声のトーンが55パーセントで、ボディランゲージが38パーセントと言われているんです。
だからテキストで起こされたものを見ても、その人がアーリーアダプターかどうかなんて、基本的にはわからないんですよ。大事なのは、新規事業をやっているみなさん自身が、一次情報としてインタビューを取りに行くことだと思います。
ここにつながるんですけど、カスタマーインタビューは、いわゆる新規事業の起案者とか、スタートアップのファウンダー自身が行いましょう。まさに現地・現物ですね。逆に言うと、スタートアップとか新規事業で一番の強みは、お客さんや潜在的カスタマーと話す人と、ものを作る人が一緒ということなんです。つまり、お客さんとの対話を中心に置きながら、自分たちのプロダクトを磨いていけるということですね。
あとは最後のポイントですが、インタビューだけではなくて、深掘りする際に「ジョブシャドウイング」といって、実際の活動を見せてもらうのも有効だと思います。このジョブシャドウイングについては、このすぐあとに事例のビデオを見ていただきます。
そして、最後は仮説検証ですね。「実際に一次情報を集めました」という時に大事なのが、きちんと整理して検証していくこと。残念ながら深掘りをすることはユーザーの仕事ではないので、ユーザーの声は彼らの素人分析に過ぎない場合があるんです。
その際にどのようにロジックが成り立っているか、ロジックを整理していく。これを「KJ法」ともいうんですけど、何の原因が悪さしているのかを言語化、整理していくことも大事です。
先ほど言ったんですけど「ジョブシャドウイング」は有効な手段だと思います。まさにジョブをやっているところに対して影になってついて行って、こんな問いかけをするんです。「作業している時に時間を取られていないか?」とか、「繰り返していないか?」とか「最適でない策をとってないか?」とか「フラストレーションがたまっていないか?」と。
あとは「作業者が覚えなければならない不必要な手順がないか?」ですね。習慣化しているので、実は最適でない策をとっている場合があるんですよ。なので、このあたりを問いかけていくのが大事だと思います。
では、ここから「ジョブシャドウイング」の事例を見てラップアップしていきます。まさに「ジョブシャドウイング」とかインタビューを通じて、深層の本音を見つけにいく。その事例を見ていただきたいと思います。
【ビデオ放送】
僕も知らなかったんですけど、掃除機という、70年~80年前に出たある意味コモディティに近いような家電で、当然ダイソンが一番強かったわけなんですけど、そのマーケットシェアを本当に3~4年のうちに奪ってしまった。どこにフォーカスしたのかを解説したいんですけど、まさにインサイトを見つけに行ったことかなと思います。
「シャークニンジャ」として社長のマークさんも言っていましたけど、どうしても会社とかプロジェクトというのは、いつの間にか自分たちの利益や、自分たちが使いたいリソースが開発の中心になってしまう。どうやるかというと、まさに一次情報ですよね。彼らは現場を再現したというところですね。
このように、自分たちの想定カスタマーはどうやって部屋を掃除するのか、をやった。それで2人の方がいらっしゃったんですけど、1人が確か広報で、もう1人がエンジニアでした。商品企画ではないんですよ。
ちょっとこれは余談かもしれないんですけど、スモールチームで、けっこう上流の川上の段階からエンジニアとか広報の方が関わっているのが印象的でした。まさにその共通言語として、お客さまのプロセスそのものを見ながら気づきをみんなで学習していった例です。
さらにこのイリアムさんというマーケティング部長の方が、お客さまがどのように手に取るのかを追求しました。ユーザーエクスペリエンスとか顧客体験というのは使っている時だけではなくて、使う前の購買だったり出会い方から始まる。そういうところを意識されていったのがよかったと思います。
ここからはちょっと僕の妄想なんですけど、おそらく彼ら、彼女らはこんな感じのペルソナを作っていたんじゃないかな。
ジェニファーさん、アメリカ・オハイオ州、こだわりがあって、「エンパシーマップ」でいっても子どもと犬がいて、きれい好きなんだけれどもけっこう部屋の掃除するのは疲れるわ、というような。
実際の「ジャーニーマップ」のようなものも僕の妄想で書いてみたんですけど、おそらくチームとしてこういうものをすごい書いてると思うんですよ。書いてるからこそ、実際の現場を再現する時に、仮説のズレがわかるのだと思います。
掃除機が届くところから、届いたけど箱がへこんでいるとか、使い方がわからんとか。リビングを掃除する時も柄が曲がらないので膝や腰が痛いなどと考えている。
それを我々が提供するシャークの掃除機が解決する。現場の再現によって商品との出会い方をきちんと演出しているだけではなくて、箱が開けやすくて、デザインもいい、直立でスイスイできるし、毛が絡まない。まさにユーザーの痒い所に手が届いていく。そういうのを再現しているんじゃないかと思います。おそらく、きちんとユーザーインタビューもしているのでしょうね。
少しまとめると、まさに仮説構築という、一次情報で仮説検証するものです。少しごちゃごちゃした図なんですけど、僕はこう考えています。
先ほどの「まずは仮説を立てる」というのは、みなさんもGoogleとかいろいろな官庁が出している資料、書籍など、二次情報としてきちんと集めに行く。ただそこだけだと、なかなか手触り感がある本音をつかめないと思うんですよ。そこで、定量的な調査ですよね。アンケートをするのもいいですし、あとは定性的な調査です。実際にサービスを使っている方々に一次情報としてインタビューをやる。
さらに僕が「超一次情報」と言っているんですけど、もし余力やリソースがあれば、現場に行ってジョブを観察してみる。その中で、実際になんでそういう行動を取っているのかをきちんと要因分析していく。究極には、「ドッグフーディング」ともいうんですけど、実際に自ら使ってみたり、働いてみることによって深く理解ができるんじゃないかと思います。
このあたりを行き来することによって、仮説を構築して「ああ、そうか」となる。「自分たちはこのユーザーのプロセスのこのあたりがわからないので、この部分を実際に再現してもらったり、インタビューをしよう」というように、まずはセットアップし、そこから一次情報をヒアリングしていく。そして、その生情報は整理されていない場合があるので、きちんと仮説検証していく、というプロセスが非常に大事です。
このあと必ず質問が来るので、ちょっと先に答えておきますね。「何人に質問したらいいんですか?」という質問が来ると思うんですけど。これは「マジックナンバー5」と言われていて、似たようなセグメント、カテゴリーの5人くらいに聞いていくと、だいたい80パーセントをカバーできると言われています。
これは当然個人差とかいわゆる領域の差もあると思うんですけど、3人じゃ少ないのかなと思うので、僕は最低でも「5人インタビューしましょう」と言っています。そうすることによって、まさに言動プラス本音を見つけていけると思います。
あとは最後のポイントですね。やっぱりお客さんとかインタビュイーとの対話を中心にして、プロダクトを磨いていく。これがまさに学習にフォーカスするということです。
冒頭に紹介したStartup Genome(スタートアップ・ゲノム)という会社の調査では、失敗する新規事業はやたら人数が多いんですよ。すると何が起きるかというと、お客さんと話す人と、ものを作る人が別なんですよね。
先ほどの「シャークニンジャ」の例では、プロダクトのエンジニアとPRの担当者が同じお客さんを見ながら実際に会話しているんですよね。おそらく彼らも小さいチームだと思うんです。1つのプロダクトに対して、いわゆる横串を通しながらやっている。「クロスファンクショナル」とも言うんですけど。
実際にこれは統計数字に表れていて、成功する新規事業とか、成功するスタートアップというのは、人数が7名程度なんです。これを「ピザ2枚ルール」とも言うんですけど、「ピザが2枚あったらお腹いっぱいになる人数」と設定している。つまり、チームが小さいほうが学習の総量が増えるということなんですよ。これをきちんとやり切るのが大事だと思います。
まとめになりますが、「なぜ、そもそもインタビューを作るのか?」というと、自分たちが知った気にならないということだと思うんです。まず、仮説、ペルソナだったりとかジャーニーを立てることによって、「無知の無知」の段階から「無知の知」になっていく。
「ああ、そうか。自分たちはユーザーがどのセグメントかって、確かにわからないな」と。じゃあいったん仮説を立てた上で、「このあたりを実際に質問しよう」「このプロセスを切り出そう」となってきて、わからない部分が明確になるんですよね。つまり「無知の知」になっていく。
そこから「知の知」の状態は何かというと、どんな施策をどのタイミングでどうやったらいいかが、言語化、明確化できている状態です。例えばシャークがダイソンを抜いてシェア40パーセントまで来ましたけど、なんで抜けたかというと、言語化、明確化できていたからなんですよ。
ユーザー体験、最初のドア、マーケティングでプロダクトと出会うところから、実際にそのプロダクトが届いてオープンボックスする。実際に使うところ、あとはそれに対してフォローするところも含めて、こうしてくれたらお客さまやユーザーに対して、本当に欲しいドリルの穴が見つかるというところを発見するのかなと思っています。
ですので、ぜひみなさんもプロセスとして、作りたいものを作るという事業の発想にいかず、まずチーム内で「誰の何をどのように」とありましたけど、「誰の何を」についてきちんと仮説を立てた上で、このプロセスを回していただければと思います。ということで、5分過ぎてしまいましたけど、僕の話は以上になります。
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