2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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駒野宏人氏(以下、駒野):マインドフルネスって、「良いも悪いも、全部受容していく」ということですよね。
川野泰周氏(以下、川野):自分の感覚と向き合いながら瞑想していくんですね。呼吸瞑想をやっていて「呼吸が自然にできません」「呼吸を観察すると、すぐに不規則な呼吸になってしまいます」「何が自然かわかりません」と、みなさん悩まれるんです。でも、私は「その不自然な呼吸のままでいいんですよ」と申し上げるんです。
その時のあるがままの呼吸ですから、別に自然な呼吸である必要はないんです。あるいは「雑念が出ちゃって集中できません」というのも、悩みの1つなんですが、雑念があってもいいじゃないですか。
「心の中に雑念があることを肯定してあげて、その上でまた呼吸に戻ってくればいい」というふうにやっていると、自然と雑念すらも受容できるようになる。雑念って、自分の中からできている念慮ですから、言い換えればこれは自分自身を受容することと同じなんです。つまり呼吸瞑想をやっているだけで自己受容できるようになるということです。
海外では、こんな実験も行われました。呼吸瞑想だけ8週間やった人たちと、今日の講座の最後にやりたいと思っている、温かみに満ちた、思いやりの心を育む瞑想を8週間続けた人たち。この両者で、困っている人に席を譲る確率を行動実験で比較しました。すると意外にも、席を譲る割合は同じぐらい上がったんです。
駒野:だから、マインドフルネス瞑想が、慈悲の瞑想に変わり得るという意味ですよね。
川野:はい。どんな瞑想でも、きちんとやっていれば思いやりの気持ちが湧いてくるという示唆ですね。
駒野:僕もそう思います。
駒野:若杉先生はどうですか? コンパッションで慢心してしまうのは、本当の意味での慈悲心じゃないというか(笑)。
若杉忠弘氏(以下、若杉):本当にセルフ・コンパッションは鍵だと思いますね。テキサス大学のクリスティン・ネフが提唱していて、僕も彼女の論文を何度も読みました。もともと彼女も仏教から勉強しているのですが、その提案は非常にすばらしいんです。
川野:彼女は坐禅道場に通われたそうですよね。
若杉:ティク・ナット・ハン系の坐禅道場に通ったそうですね。その時、彼女は自己批判的で、「研究も思うとおりにいかない」「離婚もしちゃった」と、泥沼にはまっていたといいます。その時に先生から「自分に優しくしなさい」と言われて、それがもう天変地異だったそうなんですね。「自分に優しくしていいんだ!」と。
「こんな自分じゃダメだ」「あんな自分じゃダメだ」「こんな容姿じゃダメだ」と、叩き上げでここまで来た自分に、「優しくしていい」ということ。それは彼女にとってパラダイムシフトだったということです。
「じゃあ、それを研究しよう」ということで、今、川野先生がおっしゃたように、たくさんの研究がテキサス大学から出てきた経緯があるみたいです。
彼女の定義しているコモンヒューマニティ、共通の人間性というものがあるのですが、これがおもしろくて。そして、すごく大事なことだと思いました。自分が何か失敗した時は、まず「つらいな」「悲しいな」とマインドフルネスに受け止めるんですね。
若杉:次にこういう質問をします。「もし自分の友だちや同僚が、今の自分と同じ体験をしたらどう思いますか?」。「研究もうまくいかない」「離婚しちゃった」「人生のどん底にある」と。「この状態を他の人が同じように体験したらどう思いますか?」と聞きました。
「『ああ、あの人も大変なんだな』と思うだろう」という気持ちを誘導するんですね。これはつながりを生むので、すごく画期的だと思いました。
自己批判では孤立を生みます。でもセルフ・コンパッションのコモンヒューマニティを用いると、つながりを生む。僕らが人生において本質的に求めているものは、つながりですよね。
駒野:そうですね。
若杉:苦しみの中からつながりを紡ぎ出すこの手法。これ、奇跡的にすごいなと思いました(笑)。これは2500年前に開発されて、ようやく今、科学の知見で一般の人に伝達されようとしている。今は2022年なので、これは奇跡的な年じゃないかと思います。
駒野:コモンヒューマニティですね。自分自身が相手だったらどう見えるかということですよね。
若杉:自分のつらい経験を、相手が同じように体験したとしたらどう思うか。
駒野:すごくいいと思います。もう1つ、自分の感情に対してどう感じているかという「二次感情」に気づくことも重要と言えますよね。これは「ヴィパッサナー瞑想」です。二次感情に対しての受容的な気づきを深めていくと、ある感情を持った相手についても受け入れられるようになる。
そういう自分自身も受け入れられると、相手の感情も受け入れられるようになる。だから、相手ポジションに立てること、あるいは、もう1つは、そんな感情を持っている自分に気づくことができるということが重要と思います。
若杉:おっしゃるとおりです。俯瞰的な視点をもたらすための誘導方法でもありますよね。
若杉:つらい瞬間に「一回メタになってください」と言われても、たぶん難しいと思うんですよね。
川野:そうですよね。
若杉:その次善策として、「違う人が自分と同じ体験をしたらどう感じるか」という、もう少し現実に即した誘導をしているんだと思います。
駒野:なるほどね。
若杉:本質的には(メタ的な視点に立つことと)同じことだと思うんですよ。
駒野:私は同じだと思った。だから私たちコーチは、コーチングの中で「相手ポジションに立って、その人が感じることを味わう」というワークをやるんですが、今みたいなコモンヒューマニティーという方法もあるんですね。今のリーダーはそういうことをやる必要がありますね。
若杉:そう思いますよね。
駒野:そうすれば、みんなが本当に安心して、やる気が出てきて、「そのままでいいんだ」という気持ちになる。そして、すごく元気になる気がするんです。
若杉:セルフ・コンパッションに対して、1つの批判もあります。例えば、バリバリのビジネスリーダーに「自分に優しくなってください」と言ったら、その人はどんなことを心配するでしょうか。
「自分に甘くなったらパフォームできないんじゃないか?」「自分に優しくしたら、仕事の水準が下がるのではないか?」「現状に甘んじちゃうんじゃないか?」という心配がありますよね。サイエンティストのクリスティン・ネフらの研究のおもしろいところは、そうした心配を1つずつ「違いますよ」「ノーです」と、全部研究で潰しているんですよ。
要は、自分に甘んじることもないと。むしろモチベーションが湧いてくるんですね。仕事の基準を下げることもない。「ノー」「ノー」「ノー」ということを、全部データで積み重ねていって、「副作用はないですよ」ということをサイエンスとして語っているんです。あとは実践だけなんですよね。僕たちはもう、実践するだけのステージに入ってきたのかなと思いますね。
駒野:ある意味、パフォーマンスが下がるというのは、本当の慈悲の心で自分を見ていないんじゃないかな。どうなんでしょうね。それは自分を許していることと少し違うと思う。むしろ、慈悲の心って勇気づけるような感覚がありますよね。
若杉:そうですね。おっしゃるとおりだと思いますね。
駒野:「そのままでいいんだ」といっても、それと同時に「さらに良くするにはどうしたらいいんだろう?」という思いもあるじゃないですか。
若杉:「そのまんまでいいんだ」というのは、本当に自分のことを考えているわけではないですよね。例えば、不健康な人が運動しないでずっと家にいるとか。
駒野:(笑)。
若杉:本当に自分のことを考えたら、そういう考えは出てこないんです。自分を労っていれば「よし、運動しよう」「健康的なものを食べよう」となりますよね。
駒野:そうですよね。「ただ許している」ことと、「本当の慈悲の心」「慈しむ心」は違いますよね。
若杉:(許しているのは)単なる甘えですよね(笑)。
川野:(笑)。
駒野:それはなかなかおもしろいですね。
川野:確かネフ先生は本の中で、「セルフ・コンパッションが高まると利他的行動が増える」というデータを出されていたと思います。
川野:日本語では「利他行」とも言いますが、大乗仏教には、これが増えるということをそのまま表す「自利利他」という言葉があって、「自利利他円満」と言ったりもします。私はそれを仏教的な文脈だけでなく、診察室の中でも感じるんですね。
非常に自己批判的で、他者に対してもトゲトゲしかった患者さんたちが、休職中にマインドフルネスやセルフ・コンパッションのトレーニングをすることで、だんだんと自己肯定感、セルフ・コンパッションが育まれていって。その状態で現場に戻られるので、利他的な言動が増えていくんですよね。
そうすると、セルフ・コンパッション、さらにはコンパッションが波及していく。「誰かのために」「グループのために」「周りの大事な人のために」と、コンパッションが伝播していく現象が起きてくるんですね。
もっと言うと、世の中のために努力を惜しまなくなって、かえってパフォーマンスが上がるんです。実際に、会社からの評価も上がります。「ネフ先生が研究で示したことが、こんなに小さな私の診察室の中でも起きているんだな」と思って、すごくうれしい確認作業をしています。
若杉:おもしろいですね。
駒野:「共感力が上がると利他心が増える」という報告があります。最初から「利他心、利他心」と言っても無理があるんですよ。だから本当に利他心を育みたければ、セルフ・コンパッションと共感力が大切だと思っています。相手目線に入ってくると、自然に利他心が生まれるという心理学のテストもあるんですね。
共感力がないのに利他心なんて持てないですよね。だからまず、利多心の前に共感していく。そのためには、セルフ・コンパッションや慈悲の心を養う。確かに若杉さんが言われるとおり、慈悲の心は中核ですよね。
若杉:これからの中核ですね。
駒野:確かにいいですよね。
駒野:「利他心、慈悲の心って何?」というところから、社会的な問題も少し話しました。その後、慈悲の心はセルフ・コンパッションというか、マインドフルネス、あるがままに気づいて受け入れていくことが大切だと。
「許す」ということではなくて、「ありのままに受け入れていく」。川野先生もご存知だと思いますが、このマインドフルネスを担う脳部位は「帯状回」と呼ばれる部位の前の部分で、自分をモニターする部位なんですね。
川野:マインドフルネスで自分を受容することで、他者も受容できて利他的になるという側面があります。それからもう1つ、自分を受け入れる「気づき」があります。自分自身の心理を詳細に観察できるようになりますから、自分に対する観察力や感性が上がっていくんですね。そうすると、相手の感情が読み取れるようになって、共感性も向上するわけです。
駒野:そうなんですよね。
川野:駒野先生は、長年実践されている瞑想者ですから体感としておわかりだと思いますが、本当にそのとおりだと思いますよね。
駒野:このあたりで、質問にお答えしていきましょうかね。「駒野先生が慈悲、アンコンディショナルラブとおっしゃったのに反応して、東日本大震災をきっかけに日本でチャリティーコンサートをしてくれたシンディ・ローパーの『Unconditional Love』を思い出しました」と書いてくださった方がいますね。確かに、あの音楽はいいですよね。
駒野:他に何か質問はありませんか? あと数分したら慈悲の瞑想に入っていきますが、こういう専門の先生が集まることも、なかなかないと思いますので。
司会者:ご質問をいただきました。「『コンパッションのカルチャーを作った企業のほうが、財務成績も良い』という論文について教えていただけますでしょうか? 」
若杉:ミシガン大学のポジティブ組織学センターに、キム・キャメロンという研究者がいるんですね。彼の論文をいくつか見ていくとおもしろいかなと思います。キム・キャメロンはコンパッションだけでなく、「徳性」にも興味を持っている方なんですよ。
グラティチュードなど、どれもコンパッションに密接に関わっているものですが、それが「どのように企業パフォーマンスに影響を与えているか」ということを研究されています。Google Scholarで「キム・キャメロン」と検索していただくと、おもしろいと思います。
駒野:アメリカの方ですか?
若杉:アメリカの方です。最近日本でも本が出てますね。『POSITIVE LEADERSHIP(邦題:困難な組織を動かす人はどこが違うのか?)』というものです。コンパッションだけにフォーカスしたものではありませんが、関連する概念も含めて、かなりわかりやすく、いろんなことが書いてあります。
駒野:アメリカでは、けっこうコンパッションの研究がされてるんですね。
若杉:アメリカはすごいですね。
駒野:そのわりに国としては、コンパッションあるように思えないんですけどね(笑)。
若杉:ないからこそ、研究が進むんだと思いますよ。
駒野:ああ、なるほどね。
若杉:これが仏陀のお導きではないでしょうか? ないところに必要なものが研究されている。
駒野:すばらしい解釈ですね(笑)。
若杉:阿弥陀仏ですね。うちは真宗大谷派なので。
川野:なるほど(笑)。
司会者:またご質問をいただきました。「クリスティン・ネフ先生の論文でこれは読んでおいたほうが良い、というお薦めがあれば教えてください」。
若杉:ネフ先生の2003年に出ている論文ですが、一番の発端になっているものです。タイトルが、ちょっと待ってくださいね……。
司会者:今チャットに上げてくださっていますね。「Self-Compassion: An Alternative Conceptualization of a Healthy Attitude Toward Oneself」……。
若杉:それです。それから、ネフさんの本も日本語訳で出ていますね。新訳版が出ていて、タイトルもそのまま『セルフ・コンパッション』というものです。この本に、いろんなことが書いてあります。また、ネフさんの赤裸々な体験も読むことができて、すごく心を打ちます。
川野:そうなんですよね。
駒野:そうなんですか。私も読んでみよう。
若杉:物語としてもおもしろい。それから実はすごくスピリチュアルな方で、スピリチュアル体験も入っているんですね。でも、それだけに終わらず、全部サイエンスで主張がバックアップされています。
川野:そうなんですよね。最終的にはサイエンスベースなんですが、それでもスピリチュアリティを否定しないところが素晴らしいな感じました。
若杉:否定しない。
駒野:なんていう本なんですか。
若杉:『セルフ・コンパッション』です。
川野:(著者は)クリスティン・ネフさんですね。
駒野:ちょっと私も勉強してみよう。
司会者:(視聴者からの質問で)「虐待やトラウマ経験があると、コンパッションの恐れが出てくると聞いていますが、トラウマサバイバーも乗り越えられますか?」。
駒野:これは、川野先生にお答えいただきたいと思います。
川野:実際に今、トラウマの治療においてのセルフ・コンパッションの効能も盛んに研究されています。ただやはり、トラウマがあってPTSDの状態であると、自己受容ができない状況になっているんですね。なぜかというと、気づきと受容の両方が侵害されているからです。
どういうことかというと、傷ついたトラウマ体験を記憶の中で自分の中に埋没させて、トラウマを自覚したり・思い出さないようにするのがPTSDの症状です。記憶障害が起こってくる。正確には記憶障害というより、「解離」という現象・症状なんです。ですから自分の気づきの能力全体が低下してしまうんです。
それからトラウマ体験は多くの場合、「自分のここが原因でこういう体験をした」といった、因果関係で語ることができません。つまり「自分は全くの無力で、そういう被害にあわざるを得なかった」という要素がとても強いのです。
ですから、自分で自分の状態をコントロールできないという感覚、これを「自己効力感の欠如」というのですが、そうした無力感に心を占拠され、自分で自分の存在が受容できなくなってしまう。自分が信じられなくなってしまうんですね。
ですから、マインドフルネス2つの要素である「気づき」と「受容」、その両方の要素が侵害されている状態なので、いきなり「慈悲の瞑想」みたいなことをやると、「バックドラフト」という副反応が起こりやすくなります。
川野:これはネフ先生も説かれていることですが、日頃自分に優しさを向ける習慣がない人が慈悲の瞑想などをやっていくと、急に拒絶反応が起きて、悲しくなったり怒りが満ちてきたりと、さまざまな不快な反応が心に生じることがあるんですね。
ですからその前段階として、丁寧に安全地帯を心の中に作っておくことが大切です。「カームイメージ」とか「グラウンディング」のような、心を安全な場所にいったん避難させたり、安心感を育んでくれたりする安全な瞑想法を十分に練習してから、いざそういったコンパッショネイトな治療に入っていくことが推奨されます。
このあたりをより詳細に学ばれたいということでしたら、大谷彰先生の『マインドフルネス実践講義』という本が出ていますので、お読みいただけるといいと思います。
駒野:この先生の本、僕も読みましたが、よく理解されている先生だなと思いました。
司会者:ありがとうございます。まさに質問者さまから「自分に慈悲が向けづらいと聞いています」と書いていただきましたので、今の川野先生のお話の中に含まれていたのかなと思います。
川野:ありがとうございます。
駒野:「自分に慈悲の心が向けづらい」という自分に気づいて、それを許せるようになったらもう完璧なんですよ。
川野:その通りだと思います。
駒野:「自分はダメだな」「慈悲の心がないな」と思っている自分も許してあげる。そうすると、緊張が解けて、あるがままな自分を受け入れられるようになってくるんですよね。それを「ダメだ」と抵抗している限り、そこにこだわりがずっと生じて、なかなかあるがままでいられなくなっちゃう。でも、トラウマの程度によると思いますね。
川野:そうなんです。相手の状態は千差万別であり、それぞれに合わせた対応が求められると思います。
駒野:軽い場合はそういう感じでも、深い場合には違いますよね。段階的にやっていかないといけないのかもしれません。
川野:ですから、トラウマを持っていらっしゃる場合は、自己判断で安易に取り入れずに、マインドフルネスやコンパッションの治療に、ある程度精通している治療者に相談してください。その上で、「どのレベルの治療まで取り入れるべきなのか」ということを判断してもらうことが大事です。
トラウマを抱えている方が、「やってみたけど、うまくいかなかった」となると、さらに自分を傷つけてしまいます。そういう心境になってしまうリスクもあるので、そこは慎重に専門家と相談してやっていただきたいですね。
駒野:ありがとうございます。そろそろお時間ですね。では、10分ぐらい慈悲の瞑想をやりたいと思います。時間のない方は退室していただいても大丈夫です。
(瞑想の時間)
駒野:みなさん、いかがだったでしょうか? 本当にいろいろなお話、お役に立ったのではないかと思います。私自身はおかげさまで、勉強になりました。今日はお休みのところ、本当にありがとうございました。最後の慈悲の瞑想も、とっても心が穏やかになったと思います。ではみなさん、三々五々退室よろしくお願いいたします。
川野:ありがとうございました。お疲れさまでした。
駒野:ありがとうございました。
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