2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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多くの企業が人材育成を重視する中、メンバーに対し適切に「フィードバック」をする能力が求められています。しかし、フィードバックをスキルとして学ぶ機会がないマネジャーも少なくありません。メンバーとの「対話能力」を向上させるにはどうすればいいのか。 本記事では、『対話型マネジャー 部下のポテンシャルを引き出す最強育成術』の著者・世古詞一氏に、1on1でメンバーに聞く「9つのテーマ」や、1on1を継続させる「カギ」などをお聞きしました。
ーーここからは具体的な1on1のやり方、進め方をお聞きしたいと思います。1on1で上司が部下と対話をする際に、何を聞けばいいのか。そして部下の言葉を受けてどうフィードバックしていけばいいのかについてお聞かせください。
世古詞一氏(以下、世古):何を対話すればいいかについては、私自身悩みました。「そもそもマネジメントで必要な対話とは何か?」「結局、上司と部下ってどんなことを話せばいいか?」という定義がなかったんですね。
そこで、その全体像について、『対話型マネジャー』という本の中で「すり合わせ9ボックス」というフレームで紹介しました。大きく分けて、「業務レベル」「個人レベル」、そして「組織レベル」の3種類のテーマを、「現在」「過去」「未来」の時間軸で9つに分類します。
具体的には、業務レベルの過去は「振り返り」、現在は「業務不安」、未来は「業務改善」、個人レベルの過去は「パーソナリティ」、現在は「ライフスタイル」、未来は「将来キャリア」、組織レベルの過去は「理念・制度・カルチャー」、現在は「人間関係」、未来は「組織方針」です。
それぞれのボックスの中で「何をすり合わせるか」「何を聞くか」は双方向で、でも、できたら部下側に準備してもらえるといいかなと思います。例えば業務レベルで現在の「業務不安」であれば、業務を進める中で「これで大丈夫かな」と思うところや、「これで問題ないですか」みたいなところをこういう機会に確認するとか。
あるいは、業務レベルで過去の「振り返り」で言うと、1ヶ月の振り返りの時間に当てて、業務を通じた成長感をすり合わせていくとか。そういう話はメンバーの成長実感につながりますし、そういうプロセスを知ることで評価への認識のすり合わせもできます。
世古:何を(What)対話するかがわかれば、次は、「どのように(How)対話するか」ですね。上司はやっぱり「情報交換のコミュニケーション」になりがちです。つまり、業務そのものの話であり、困った業務をどう解決するかという話ですね。そうではなく「人間の対話」にするにはどうすればいいか。これは、業務の話だけど、業務を通じたその人の考えとか感情、気持ちを聞くということです。
例えば、「あの件、どう進んでいるの?」が業務進捗確認。人間の対話は「あの件を進めていて、何か引っ掛かることはある?」「何か気になること、モヤモヤすることはありますか?」のように、業務やコトではなく、その人の考えや感情にフォーカスを移します。
具体的には「なんとか感」と言われるものを聞くのがいいと思います。「満足感」とか「充実感」とか「成長実感」とか。こういう「なんとか感」は本人が答えを持っているんですよ。その人の満足度が今どれくらいで、さらに満足感を高めるには何が必要で、業務の充実度を上げるにはどういうことができそうか。あるいは「私にサポートしてほしいことはある?」と尋ねながら、対話していきます。
ーー「人間の対話」にするために、「なんとか感」をキーワードに、メンバーの感情や気持ちを「聞き切る」ということですね。
世古:そうですね。深掘りしてブレイクダウンしていく。具体化していく。あるいは広げていく。他にないかを聞いていって、話し尽くさせるということですね。話し尽くさせることで、聞いてもらえたという満足感を得られるし、解決をしなくても、それによってモヤモヤが解消するということもあるわけです。
あるいは話したことで、自分の中であらためて整理ができたり、一番課題や不満に思うのは何かといった優先順位が明確になったり。また、口にすることで「やっぱり、こういうことをやらなきゃダメだな」と意識して、腹が決まることもあるわけです。その手前で上司に「いや、そんなのやらなきゃダメじゃん」と言われると、やる気がなくなっちゃうんですね(笑)。
コミットメント意識を持ってもらうためには、「話し尽くさせる」ことが重要になるということです。上司側は、部下の状況や感情、思っていることを深く正確に理解すると。必ずしもそれに同意するということではありません。ネガティブな話をしたとしても、別にそれに同意しなくていいので、深く正確に理解すること。それを求められることが多いですね。
ーーお聞きしていると、1on1での上司の役割はカウンセラーにも近いようです。
世古:そういう側面はありますね。だから上司は大変で、いろんな役をやらないといけないんですよね。時にカウンセラー的な感覚になりながら、でも当事者だったりもするわけですよ。なので、部下からしてみると、「どの立ち位置で今の話を聞いているんですか?」みたいな。「いやいや、チームの話ですよ」「あなたの責任の話ですよ」みたいに求められることもあるので。
カウンセラー、第三者的な立場でありつつ、時に第二者として入らないといけない時もある。そういう意味では、1on1を完璧にやるのは本当に大変だとは思います。
ーー1on1では上司側の負担が大きいようですが、負担を軽減する、あるいは1on1を継続するためのポイントはありますか?
世古:一番は、部下がきちんと1on1の目的を理解すること。この時間は自分にとってどういう時間にすればいいかという大きな目的と、その準備をして1on1に臨むことですね。上司を活用して自分の考えを整理し、明確にして、何かに気付く。こういう意識で臨むことが重要です。
コーチングを受けることに慣れている人は、コーチを活用して自分の考えを整理しようとします。コーチングって、コーチ側がクローズアップされますけど、実はコーチされる側のスキルでけっこう変わってきます。ですので、いかに能動的に上司を活用するかということです。
また整理をするだけでなく、上司は当事者でもあるので、「この件について何々さんはどう思っているんですか?」とか、「実際上の方はどんなふうに考えているんですか?」とか、上司の考えも聞く。そうやって、すり合わせをしていってほしいと思います。
ーー1on1のやり方について、これまで主に上司側にレクチャーされていたのを、部下側にも行うことが重要になるということですね。
世古:そうですね。ただ、私は部下の人向けの研修や講演もやっていますが、ある程度1on1を経験した後にやるほうが効果的です。実際に1on1がどういうものかをわかった上で研修や講演をすると、上司の方から「部下が準備をしてきてくれるようになって、やりやすくなった」と言われます。
先ほどお話ししたように、1on1では上司はけっこう高度なことを求められて大変なので、部下側の意識を変えていくことがかなり重要であり、現実的だと思っています。上司もちゃんと目的を理解した上で、「意識しながら部下の話を聞いていき、質問されたことにちゃんと答えて認識をすり合わせていく」というのが現実解だと思っています。
ーー世古さんは『対話型マネジャー』の「おわりに」で、平野啓一郎さんの「分人主義」(自己は1つではなく、心の中に何人もの自分が存在し、その集合体が個人であるという考え)を紹介されています。
その中で、自己対話が「自分の中の『分人』の違いを受容して活かしていく」ことにつながったり、「自己を深く理解するほど、他者の中にも、さまざまな存在があると感じられるようになる」と指摘されています。1on1で他者と対話し、理解を深めていくためにも、自己との対話をしていくことが大切だなと感じました。
世古:本当にそうですね。自己との対話がうまい人は自分の中にある分人を認識して、それを他者にも見ることができるので、聞くこともできるのかなと思います。つまり、相手を1つの考えや価値観の枠で決めつけない。相手の言っていることではなく言おうとしていることを見通せる。そして、相手の可能性を見ることができ、信じることができる。だからこそ、相手のポテンシャルを引き出すことができる。
これは、自分自身にも同じことが当てはまると思います。
ーーありがとうございました。最後に、1on1によって「対話」が行われることで実現する、上司・部下・組織の未来をお聞かせください。
世古:私は、1on1ミーティングを「組織のコミュニケーションインフラ」と言っていますが、社長、経営と部長、部長と課長、課長とメンバー……それぞれの結節点でちゃんと組織における対話が仕組み化されていることで、経営の情報が解釈の齟齬なく下に伝わっていきます。
対話を通じて、言葉としては知っている自社のいわゆるミッション・ビジョン・バリューの背景や想いなどが下に流れていくし、ミッション・ビジョン・バリューに対する自分の考え方みたいなものも言えて、すり合わせが起こってくるわけですね。
あるいは経営方針みたいなものをテキストで目にしたり、会議で聞いていても、1on1で「実際あれ、どう思った?」と話題にして、それに対する忌憚のない意見を聞けると、誤解なく、自分ごととして伝えることができます。逆に現場の課題も温度感を持ってちゃんと上に伝わっていく。上から下、そして下から上へとラインがしっかりつながっていきます。
世古:今、「組織」と「個人」の距離がどんどん広がっています。冒頭でお話ししたコミュニケーション不足に加え、少子化や副業解禁など、選択肢を多く持つ従業員との心的な距離。リモートワークによる物理的な距離など、「成り」で進めていれば間違いなく距離は離れていきます。
だから、組織内で少しでも重ね合わせるところを作っていかなければいけません。その最たるものが1on1であり、従業員の働きがいやエンゲージメントの向上や、新しいもの・クリエイティブなものの創出につながると考えています。これからは、こういった対話をベースとした「組織力」が、間違いなく大きな競争力の源泉になっていくと思いますね。
また、1on1で人間の対話ができると、円満な退社もできるようになります。最近は、退職した後も業務委託などで組織と個人の協力関係が続くパターンが増えています。いわゆる雇用関係だけではなく、辞めた後もつながって組織をサポートする関係性。優秀な従業員を別のかたちで会社のリソースとして確保できます。
出戻り社員もけっこう増えていますよね。若い頃はいろいろ試したいと思って会社を出たけど、「出てみて、この会社がいいとわかりました」と。ちゃんと話ができていたり、いいかたちで別れているから、一度辞めた会社に戻るということもできるわけです。「可能性をつなげていく」という意味でも、お互いが本音で話ができることは大事だと思います。
ーー1on1のさらなる広がり、そして世古さんの今後のご活躍を応援しています。本日はありがとうございました。
世古:ありがとうございました。
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