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世界で活躍するこんまり夫婦舞台裏 自分らしく生きるパートナーシップ(全2記事)

1日8件の取材を受け、「もう限界だ」と泣くほど多忙な日々 公私ともに二人三脚で乗り越えた、「こんまり」夫婦の軌跡

さまざまな壁を乗り越えてきた各界のトップランナーによる、人生の特別講義を提供するイベント「Climbers(クライマーズ)2022 春」。本記事では、「片づけコンサルタントこんまり」こと近藤麻理恵氏と、夫でありプロデューサーでもある川原卓巳氏の講演の模様をお届けします。現在は公私ともにパートナーとして活動する、両氏が出会ったきっかけとは。

夫婦二人三脚で活動する、近藤麻理恵氏と川原卓巳氏

司会者1:「Climbers」3日間の最後を飾るのは、「片づけコンサルタントこんまり」こと近藤麻理恵さんと、夫でありプロデューサーである川原卓巳さんです。

司会者2:こんまり夫婦が二人三脚で紡いだ軌跡。互いの個性を活かし合うことで、どんな障壁も乗り越えていける。自分らしく生きたい人に伝えたいパートナーシップの新しいかたち。世界的に大活躍されているお二人にお越しいただいています。よろしくお願いします。

川原卓巳氏(以下、川原):よろしくお願いいたします。

近藤麻理恵氏(以下、近藤):よろしくお願いいたします。

司会者2:まず、私から簡単にご紹介させていただきます。近藤麻理恵さんは「こんまり」の愛称で世界から親しまれている、片づけコンサルタントでいらっしゃいます。著書『人生がときめく片づけの魔法』は、世界40ヶ国以上で翻訳され、世界的大ベストセラーになりました。2015年にはアメリカ『TIME』誌の、世界で最も影響力のある100人に選出されました。

夫である川原卓巳さんは妻・麻理恵さんのマネジメントと、「こんまり®メソッド」の世界展開を担当されるプロデューサーでいらっしゃいます。2019年には独自の片づけ法「こんまり®メソッド」テーマにしたドキュメンタリー番組のプロデュースも務められ、Netflixで世界190の国と地域に配信。テレビ番組のアカデミー賞とも言われるエミー賞2部門にノミネートされ、同年で最も人気があったノンフィクション番組の1位にも選ばれました。

お二人は2014年にご結婚され、2016年からは拠点をアメリカに移し、現在は3人のお子さまを育てていらっしゃいます。公私ともにパートナーとして、世界を舞台に活躍されています。

本日は、夫婦として、そしてビジネスパートナーとして支え合うお二人がどのようにして現在の関係を築き、共に壁を乗り越えてきたのか。現代を生きる人たちへ、ヒントとなるお話をうかがっていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

川原:よろしくお願いします。

近藤:お願いします。

大学4年生の時、就活イベントで知り合った2人

司会者2:一緒にビジネスをされながら、プライベートでは夫婦でもあるお二人の出会いはいつだったのでしょうか?

近藤:実は大学4年生の時に出会っておりまして、たまたま就活系のイベントのエレベーター前ですれ違ったのがきっかけでした。

司会者2:その時、お互いの第一印象はいかがでしたか?

近藤:その時に、お互い名刺交換をしたんですね。二人とも一応就活スーツを着ていたんですが、彼のスーツの胸に「夢」って書いてあるピンバッチが付いていて。

司会者2:はい(笑)。

川原:ガチ笑いしてるやん!(笑)。

(会場笑)

近藤:「すごい熱い人がいる!」って思いました。

司会者2:川原さん、「夢」というのはどういう意図だったんですか? 

川原:意図を聞くな(笑)。

司会者2:(笑)。気になるんですけど! 

川原:俗に言う「意識高い系学生」みたいな感じでした。いろんなビジネスコンテストや起業を目指していたので、ちょっと目立ちたいみたいな若気の至り……意図を聞くなよ!

(一同笑)

司会者2:いや気になりますよ(笑)。

川原:まあ、そんな感じで付けてました。

司会者2:川原さんから見た、近藤さんの第一印象はどうだったんですか?

川原:第一印象は、とにかくちっちゃい。

司会者2:小柄でいらっしゃると。

近藤:身長が147センチなので、ひときわ小さく見えたんだと思います。

学生時代から「片付けコンサルタント」の活動を開始

司会者2:近藤さんは、大学時代からすでに片づけコンサルタントとして活躍されていたとうかがっています。実は私、(近藤さんと同じ)東京女子大学出身なんです。入学式の時にゼミの先生から、「卒業生の中で一番活躍されている方は近藤さん」というお話があって。

近藤:うれしいです。

司会者2:学生生活と仕事の両立、大変だったんじゃないですか? 

近藤:そうですね。ただ、学生時代はそれなりにバランスは取れていましたね。基本的に片づけコンサルタントとして仕事をしていましたが、当時は基本的には友だちからの紹介でやっていたんですね。ビジネス1本でやっていたというよりも、時々友だちの家を片づけさせてもらうのが私の趣味だったので。

時々その噂を聞きつけて、「お金を払うから片づけをしてほしい」と言っていただくようなことがあって。それで、少しずつ仕事として始めていったという感じです。

司会者2:川原さんにとって、学生生活をしながら仕事もしていた当時のこんまりさんの印象はどうでしたか?

川原:僕は女子じゃないので、もちろん学校は違うんですが。

司会者2:(笑)。もちろん。

川原:最初に聞いた時は、「何をしている人なんだろう?」というのが正直な感想でした。今でこそ片づけを仕事にしている方って、なんとなく社会的に認知されていますが、15年前だと「片づけコンサルタントをしています」と言われても「?」だし。

なおかつ女子大生でもあって、片づけをしているって、もう本当に謎なんですよ。しかもこの風貌じゃないですか。この風貌って、どういう風貌かわからないですが。

司会者2:小柄な(笑)。

川原:だから友だちになってからも、しばらく本当にわからなかった。

司会者2:そんなイメージ(だったんですね)。

1冊目の著書を出したあと、劇的に仕事が忙しくなった

司会者2:お二人の距離が縮まったタイミングはどこだったのでしょうか?

近藤:出会った当時は、1年に1回連絡を取り合うかどうかの友だち関係だったんですね。ですが、私が会社を辞めて独立して『人生がときめく片づけの魔法』の1冊目を出版をした後、仕事が劇的に忙しくなって、日本全国を講演して回っていた時期があったんですね。

たまたま大阪出張に行く機会があって、「そういえば川原君が大阪に転勤したって聞いたな」と思い出して、連絡をとってみたのがきっかけです。それで本当に久しぶりに再会して、「実は今、私の本がすごく人気なんだよ」みたいな話をしました。

川原:ドヤられたよね(笑)。

近藤:それで話をするようになりましたね。

司会者2:一緒にお仕事をするようになるのは、どういった経緯だったんですか? 

川原:その時、28~29歳ぐらいだったよね? 30手前やもんね?

近藤:27歳。

川原:27歳か。そのぐらい(の年齢)で会ってご飯食べると、だいたい仕事の話をするじゃないですか。「最近どんな感じ?」とか、話していて。

僕は当時コンサルタントの仕事をしていたので、(彼女の)いろんな仕事の悩みを聞くようになったんです。それで「僕が手伝えることもあるのかな?」と思ったので、その後ちょっとずついろんな相談に乗ったりしていました。そこから、「ビジネスの意思決定をどうするか」という話をするようになったのが最初ですね。

近藤:そう。ビジネス上の相談をするようになっていくうちに、だんだん仕事をお願いするようになって、彼の業務が増えていきました。自然な流れで一緒に仕事をするようになっていきましたね。

体力的にもぼろぼろで、公私ともに「壁」にぶつかる日々

司会者2:なるほど。結婚後はご家族でアメリカへ移住されたということですが、アメリカに移住された当時、何か壁があったりしましたか?

近藤:アメリカに移住した1ヶ月後ぐらいに第二子を出産したんですね。出産ギリギリのタイミングで(移住したんです)。体力的にもぼろぼろな状態なのに、そこからどんどん仕事が入ってくる。

かつ、私はまったく英語がしゃべれないから、習得のためにレッスンを入れたので、とにかく日常が仕事でパンパンになってしまって。その時点でずっと壁に当たっていましたね。

司会者2:やっぱり、言語の壁はかなり大きいですか?

近藤:大きいですね。もちろんある程度は準備をしてきたんですが、いきなり「英語で講演をしてほしい」というご依頼をいただきまして。

川原:「SXSW」(サウスバイ・サウス・ウエスト)という、アメリカの中でも最大級の、エンターテイメントと最新のテクノロジーに関するイベントがあるんです。

その前年にはマーク・ザッカーバーグさんが出ていたり、イーロン・マスクさん、ジェフ・ベゾスさんとか、すごく著名な方が最新のトレンドや自分の考えをプレゼンされる場所があるんです。そこに「近藤麻理恵さんもどうぞ」と呼んでいただいて。

しかも、その期間中の一番大きいステージで45分間話すという。まだ当時はまったく英語が話せないのに、「45分間通訳をつけちゃダメ」というイベント(に呼ばれたんですね)。

近藤:なので週4日、全部違う英語の先生に見ていただいたんです。(先生方には)それぞれの強みがあって、プレゼンが強い方、発音が上手な方、発音指導が上手い方とか。

川原:そうだった。そうだった。

近藤:いろんな先生に来ていただいてトレーニングをしつつ、講演の組み立てとプレゼン方法を勉強しました。私自身、英語を話すことが得意でもなんでもなくて、とにかくプレッシャーが大きくて眠れなかったですね。

そして、子育てがある。出産直後で体もがたがたの状態でした。毎日毎日練習を続けて、「つらい、つらい」と言いながら泣いているような日常でしたね。

3,000人のオーディエンスを前に、45分間英語でスピーチ

司会者2:川原さんから見て、その時の近藤さんはどんな様子でしたか?

川原:本音は、「やめられるのであれば、やめさせてあげたい」と思っていました。それは夫としての顔ですね。それと同時に経営者であり、プロデューサーでもあったので、「やりきってもらわなきゃいけない」という両方(の気持ち)があったので、とにかく苦しかったですね。

司会者2:では、そういう苦しい時期を乗り越えたきっかけが何かあったんですか?

近藤:一つひとつの機会ですね。結果的に、英語の講演もできたんです。本当にぼろぼろだったんですが、できた。

川原:すごかったんですよ。45分間英語でしゃべって、オーディエンスは3,000人ぐらいだったんですけど、ステージで笑いまでとってましたからね。

司会者2:すごい! 

近藤:ぼろぼろなんですけど、ご依頼をいただいたお仕事一つひとつ、とりあえず打席に立って打つみたいな。だから、1個の経験でいきなり良くなったというよりは、そういうものの積み重ねによって、ちょっとずつできるようになってきましたね。少しずつ、英語でも人前に出られるようになってきて。

与えていただいた機会を活かしていくことを繰り返して、本当に少しずつ度胸と筋力がついてきた感じですね。

司会者2:苦しい時でも、人前に立てば結局できてしまうのがすごいですよね。「さすが成功者!」という感じです。

多忙を極め、「もう限界だ」と泣いていた時期も

司会者2:川原さんだけが知る、こんまりさんの姿として衝撃的だった出来事があったとお聞きしたのですが。

川原:そうですね。僕の初めての本『Be Yourself』の中にも書いたんですが、彼女が今言ったとおり、ふだんはすごく大変そうだし、事実泣いたり、「やめたい」と言ったりもする。だけど、いざ本番になるとできちゃうから、僕もそこに甘えて仕事を入れたり、大変な時にも任せていました。

でも、マンハッタンのホテルで、「これ以上やったら本当に危ないな」と思ったことがありました。(その日は)1日8件とかメディアの取材が詰め込まれていて、自分たちが今、どこの国に、何に向けて、何をしゃべっているのかもわからない状態だったんですね。確か最終のフライトでニューヨークに入って、そのままホテルに運んでもらって。

翌日も朝が早いので、ホテルでご飯を食べて、寝る前に仕事の話をしながら「もう限界だ」と泣いていたんですよね。でも僕は「明日になればなんとかなる」と思って、とりあえず寝ることにしたんですよ。

それで、夜中にハッと起きたら寝ているはずの彼女が窓際に立っていて。ホテルのかなり高い階だったので、「うわ、飛び降りるかもしれない」と寝起きですぐに思ったんですね。その時に、彼女が仕事がつらすぎて、それこそ死ぬという決断をしてしまうぐらいだったら、そこまでしてする仕事なんだろうか? と思うようになりました。

近藤:(仕事の)質というよりも、量ですよね。

川原:量ですよね。当時の僕の反省としては、一度の人生で二度とないぐらいのさまざまな光栄なお仕事やチャンスがあって。経営者でありプロデューサーの僕からすると、チャンスだからとにかく受けたいし、「これをやればもっと多くの人に片づけに出会ってもらえる。幸せになる人が増える」と思って。

彼女が幸せそうじゃないのはわかっているのに、見て見ぬふりをしながらやっていた。それを「違うな」と思って、その時に「彼女が幸せでいられる仕事量に変えよう」と決めました。

結婚当初、Excelを使って「家事の見える化」をしていた

翌朝、その日の仕事に行く前、「今までごめんなさい」と謝りました。「今まで(仕事を取るだけ取ってきて)しまっていたけど、今後はあなたが喜んでできるぐらいの仕事量に減らすからね」という話をして、そこからはたぶん多少マシになったよね。

近藤:多少。

川原:多少(笑)。

司会者2:でもやっぱり、今の成功があるのは、裏で努力をしたり、困難にぶつかったり、いろんな壁(を乗り越えた)からこそだと思います。多くの働く女性にとって、壁になることの1つが家事や育児ですが、男女ともに自分らしく働くために、お二人はどのような工夫をされていますか?

近藤:育児と家事が本当に大変なんですよね。

川原:本当に大変だよね。

近藤:だから「本当に大変である」という意識を、2人ですり合わせることがすごく大事だなと思っていて。

川原:わかる。確かにそうだわ。

近藤:片方だけが「すごく大変」ということを知っていて、(もう片方は)それを見ているだけの人という立ち位置だと、やっぱりつらいと思うんですよ。

川原:「家事・育児」というと、さもできて当たり前のように聞こえる。でも、こんなにも多様で、労力もかかって、なおかつ誰にも見られなくて、さらに絶対しなきゃいけない仕事。こんなもの、なかなかないから。

近藤:だから我が家の場合は、結婚した当初に2人でExcelの表にすべての家事を書き出して、家事の見える化をしたんですね。その家事を、「今日はどっちがやったか」ということをまず管理してみる。どっちがどれくらいの家事をやっていて、今どういう状態なのかを見える化したんですね。

Excelの表の中で、例えば相手がゴミ出しをしてくれていたとしたら、その横に「ありがとう」の印をピュッと付けておくとか。スタート地点でこんなすり合わせをしましたね。

今はExcelで管理をしているわけではないんですが、はじめの段階でそれをすることによって、どれくらいの家事があるのか、そしてお互いどの家事が得意で、どれが苦手なのかをすり合わせることもできる。今ではその経験をもとに、自然に分担できるようになりましたね。

夫婦の家事分担にも「片付け術」を応用

司会者2:こんまりさんの片づけ術って、そういった家事の分担などにもすべて共通すると思っていましたが、やっぱりそうなんですね。

近藤:そうですね。「こんまり®メソッド」は、今自分が持っているものをすべて出すことからはじめます。そしてそこから「ときめくもの」と「ときめかないもの」を選ぶステップに進むんですね。

それと同じで、家事も「どういうステップがあるのか」を出した上で、お互いにどれだったらできるのか選んでいく。そういう意味では、片づけと通じていますね。

司会者2:そのすり合わせの中で、お互いの考え方や生き方にギャップを感じたり、違和感を持ったこともありましたか?

川原:そりゃあるよ。今の(やり方を)さらっと言うと「すごい! やってみよう!」と思うじゃないですか。でも、そもそも他人同士で、なおかつ僕なんて家にほとんどいなくて、(ずっと)仕事をしていたような人間だったから、生活に対する基準が低いわけですよ。

洗濯物を干したら、干した場所から着ていたし。かたや麻理恵さんは毎日玄関のたたきを拭くとか、靴の裏まで拭いて収納するのが当たり前の人なので、このギャップがすごい。だから「どうやっていけば共同生活者としてお互いが心地よく過ごせるか」を知ることが、僕にとってすごく価値があったんだよね。

そして、それをやると実際にすごく心地よかったし、すごく違いを感じた。だから僕にとって、家事や暮らしに関しての師匠はやっぱり奥さん。麻理恵さんですよね。

司会者2:確かに結婚生活には、それぞれの生き方や価値観のギャップがよくあると思います。

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