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アイシャ レバイン氏「主体性、自己肯定感、考える力を育くむ 世界基準の子育て」(全5記事)

「自信」と「自分らしさ」を引き出す、子育ての3つのステップ 子どものインプットを増やす前に必要な「親の行動」とは

「親も学ぶ」を理念に 子育てや教育に関する様々な講演会を開催し、動画で配信する「花まる子育てカレッジ」に、子育てメソッド本『親から始まる「正解のない時代」を生き抜く世界基準の子育て』を出版したアイシャ・レバイン氏が登壇。家族の日常を通して英会話が学べるYouTubeチャンネル「バイリンガルベイビー英会話」の登録者数が36万人を超えるアイシャ氏が、日本人のための子育て法「レバインメソッド」のゴールや、「子どもの見本」となるために親にできることなどを語りました。 ▶イベントを主催した「花まる子育てカレッジ」のYouTubeチャンネルはコチラ

「欧米式の子育て」一択ではダメな理由

アイシャ・レバイン氏:では、ここで質問です。自己肯定感の高い欧米式の子育てをすれば、意見が言える子どもが育ちます。それをそのまま、日本に持って来ればいいですよね? 新しいメソッドを作らなくてもいいと思いませんか?

モンテッソーリにしろ、100年以上前に世界に向けて開発されたものですが、日本にも効果的だということで取り入れてきました。もしかしたら少しだけ日本に合わせてカスタマイズしたのかもしれませんが、基本的に世界に合わせて作られた考え方や子育て理論を日本にそのまま持ってきたんですね。

自己肯定感の高め方も、海外のやり方をそのまま真似すればいいと思われますが、実はそうではないんです。ここは、すごく大事です。欧米のやり方をそのまま真似してしまうと、日本の強みのコアの部分が、完全になくなってしまうんですね。これは非常にもったいないです。

ここ(スライド)には日本の強みとして4つしか挙げていませんが、もっともっとたくさんあります。

まずPISA(OECD生徒の学習到達度調査)ですね。3年ごとに15歳を対象に、世界中で行われる試験があります。15歳時点での世界の国の知識を比べるためのものですね。

トップになるのか、真ん中になるのかなど、各国の教育レベルを測る指標の1つになっています。最新のものは2018年ですが、日本は総合スコアで4位です。1位の中国は本当に人口が多くて競争が激しい。目立つためには本当に勉強しているんだと思います。

ここで大事なことですが、日本の私立の学校やインターナショナルに通っている子どもたちがこの数字を引っ張っているかというとそうではないんです。なぜなら日本もアメリカも、中学から私立に通っている子どもは10パーセントしかいないんですね。だから90パーセントは公立ですね。ちなみにアメリカは22位です。

確かにアメリカ人は自己肯定感が高くて、プレゼンテーションが得意で、主体性を持っています。いろいろ意見を持っていて会話も上手なので、それを「いいな」と思って子どもをインターナショナルスクールに入れる方もいると思います。

でも、アメリカの教育ではPISAは22位で、日本は4位です。同じように、私立は10パーセントしかいないのにこれだけ違うということは、日本の公立のレベルは非常に高いんですよ。やっぱりレベルが違うなと思います。

アイシャ氏が見た、日本の良さ

アメリカと違って、日本人は教育を尊重します。リスペクトしているんですね。塾の文化も根付いていますし、大人になってからでも習い事をやり続けます。国家試験の勉強をする方もいますね。

子どもの頃から、いろいろな理由で習い事や勉強をさせる親が多いですよね。中には「子どもにやらせすぎでしょ」という方もいますが、私はこの、常に目標に向けて試験にトライさせる文化がすごく好きですね。

私の長男のアレックスは漢字検定も算数検定も受けました。アレックスはインターナショナルスクールに通っていますが、特に科学や算数は日本の公立のレベルに合わせようと思っているんですね。

また日本の良さは、その文化の中に自然に存在しています。小さなことですが食べる前にありがたく思って「いただきます」を言うこと、ご先祖さまをリスペクトすることなどがそうですね。

今私は旦那の実家にいるので、そういう話もすごく聞くことができました。アメリカでは、自分のおばあちゃんくらいしか言えないのですが、ここでは(家系図に)18代前まで丁寧に書いてあるんですね。日本でも珍しいのかもしれないけど、それぐらいご先祖さまを大事するということは素晴らしいことだと思います。

それから、協力し合うこと、チームワークが得意なところもすごくいいですよね。また常に質を上げようと努力するところ。ビジネスにおいて、日本人は確かに「0→1」のイノベーションは得意じゃないかもしれませんが、それだけではなく「1→2」も大事なことですよね。

新幹線は壊れません。日本のビルも地震があっても壊れません。日本人はそういうところにこだわっていますよね。やっぱり良いものを作りたい気持ちが強いんだと思います。科学などでも、より良いものができるように努力を続けられる。これは日本人のDNAです。みんな「え、普通でしょ?」と言うんですが、そうではありません。本当に、日本人だからこそのDNAだと思います。

だから、欧米の子育て法をそのまま持ってくるのでは、もったいなさすぎる。失うものが多すぎる。日本らしさを失います。つまり、ハイブリッドが必要なんですね。日本の良いDNAをベースに保ちつつ、その上に「自己肯定感を高めること」「意見を言えるようにすること」「自分の価値を理解すること」「周りに合わせるのではなく、自分を知ること」などを加えていく感じですね。

日本人のための子育て法「レバインメソッド」のゴール

私は、自分が子育てをする中で今申し上げたようなことを行う必要性を感じました。アメリカの真似をすればいいということではないんです。でも日本のやり方だけでもないのかなとずっと思っていて。それでいろいろ試しながらたどり着いたのが「レバインメソッド」という、日本人のために新しく開発した子育て法なんですね。主体性・自己肯定力・自分で考える力を、家で育てることができます。

「家で」と言いましたが、オンラインコミュニティにて、たくさんの先生が教えてくれるんですね。最近、入試方法が変わって、正解のない質問を投げかけられるようになりました。こういう変化も、先生方はすぐに授業に取り入れてくれるんです。5分で答えないといけないようなのですが、これがなかなかできないので、カウンセリングをして「アイデンティティの確立から始めよう」ということになりました。

日本の教育と文化の強みをキープしながら、おうちで自己肯定感を高める。「自分は立派な人なんだ」「価値があるんだ」と、子どもが自然に思えるようにします。

最終的なゴールは「自分の意見を押し付けることでも、相手に合わせすぎることでもなく、どんな国にいても、どんな分野でも、どんな状況の中でも、自分らしく生きること」です。「この人には自分の意見が言えなくてキツい」とか、もっと極端なことだと「ゲイなのに人に言えない」「自分らしくいられない」ということではないんですね。

私の父はユダヤ系アメリカ人です。ユダヤ人の歴史もいろいろ複雑ですが、自分らしさを奪われるということは本当にキツいことです。自分らしくいることがすべてです。アメリカ・ヨーロッパ式に自信を持って生きることも大事ですが、日本式の良いところも同じように大切にした上で「自分らしく」いることですね。

日本の良いところを、日本らしさを吟味した上で4つ挙げましたが、もっともっとたくさんあります。そうでなければ、私は日本に住んでいません。アメリカに帰っていると思います(笑) 良いところを数えると、アメリカより日本のほうが圧倒的に多いです。

でもそれだけではなく、子どもたちにはやっぱり自信を持って、自分らしく生きてほしいんですよ。そのための子育て法が本日ご紹介する、レバインメソッドです。前置きがめちゃくちゃ長くなってごめんなさい(笑)。

ビジネスの交渉にも有効な「エンパシー」

レバインメソッドについての本も出版しています。もっともっと熱く語っているのでご興味がある方はぜひ読んでみてください。レバインメソッドにはわかりやすく言うと、3つのステップがあります。このステップを、子どもが大人になるまでずっと繰り返すんですね。

ステップ1に入る前に、実は前提としてやらないといけないことが7つあります。本日はポイントとなる2つだけご紹介しますね。まず親、もしくは教育者が、子どもと対等になるということ。「私のほうが上」「私のほうが先輩だ」ではなくて、お互い対等にならないといけない。

2つ目は、親が行動にエンパシーを持たないといけません。よくある勘違いですが、特に「なんちゃってインターナショナルスクール」に入れると、子どもはとりあえず自分の意見をよく言うし、パッと見は積極的でいいなと思う。でも、よくよく聞いてみると「こうでしょ、こうでしょ」と押し付けているだけだと。

実はビジネスの交渉でも、それは逆に不利になってしまうんですね。相手のエモーションを感じ取って、相手の反応を見ながら話すのが、一番コミュニケーションとして成り立つんです。エンパシーとは、「相手にはこういう気持ちがあるんだから、言い方に気をつける」「話す内容にも気を付ける」といったシンプルなものです。

それと「自分らしくありたい」「自分の意見を言いたい」ということのバランスを常に取ること。だから、「自己肯定感を高めるだけ」「意見を言わせるだけ」ではないんです。相手のこと、周りの社会のことを常に見ながら・考えながら話をしましょう。そうでないと相手の感情を害してしまいます。以上、2つの大前提でした。

エンパシーという言葉は今、日本でもいろんなところで耳にしますし、今後もっと話題に出てくると思います。相手の感情を読み取るだけでなく、言い方に気をつけて話すことは「行動を起こすこと」ですよね。行動を起こすことは、エンパシーとして一番高度なレベルです。

これは私が言っているだけではなく、「相手はこう考えていて、こういう気持ちなので、私はこういうことをしよう」「こういう言い方にしよう」といったことは、特に海外のボーディングスクールやプライベートスクールでは、カリキュラムの基本中の基本となっています。

子どものインプットを増やす前に必要な「親の行動」

次にレバインメソッドの3つのステップを紹介します。

私もたくさん日本の子育て本や、モンテッソーリの本も読みました。よく書いてあるのはステップ3の「世界について子どもの意見を求める」ですよね。時々ステップ2(「子どもを世界の情報に触れさせ、彼らの視野を広げる」)も目にします。

レバインメソッドが他と違うのは、ステップ1なんですね。「親や教育者が意識して世界を見ることで、子どもの見本になること」です。これから細かく説明していきますね。子どもに「こう考えなさい」とか「自分で考えなさい」と求める前に、まず親自身の行動はどうなっているのか。まず自分の行動を意識しましょう。これがステップ1です。

ステップ2は子どもにシフトします。子どもに、いろんな世界の話に触れさせることで、彼らの「インプット」を増やすんですね。つまり彼らの視野を広げるのがステップ2です。親も世界について興味を持っているし、意識している。常に行動すること、インプットすることを心がけている。子どもにもたくさんの情報、インプットを与えている。

こうしてステップ1とステップ2を少なくとも半年ぐらい回してから、ようやく子どもに「君はどう思う?」と聞くことができます。子どもは、親の行動を少なくとも6ヶ月見てきているし、自分もいろんな世界の話を取り入れているから、ここで頭の中の回路がつながるんですね。子どもは「これとこれとこれ、確かに前に聞いたね。親はいつもこうだったよね」ということを統合して、意見を形成するんです。

いきなりステップ3から始めた人はよく「アイシャ、とりあえず子どもに意見を聞いてるけど『わからない』しか返ってこないんだけど」と言うんですね。「親も世界について意識的になったり、自分の意見を話したりしているの?」と聞くと、「いや、やってないですね」と。

それはそうでしょう。まだ4~5年しか生きていない子どもは、世界について何も知りません。それでは、意見を持つことは難しいと思います。必ずステップ1、2、3と段階を踏まないといけないんです。

「子どもの見本」となるために、親にできること

ではここから、具体的なお話をします。まずステップ1です。親にとっては、これが一番難しいようです。ちなみに、日本人にとってはステップ2が一番簡単みたいですね。ステップ1は親自身・教育者自身が、自分で考えることですね。子どもに「自分で考えなさい」と言う前に、まず親が率先してこれを実践する。

本の中や、レバインエデュケーションというオンラインコミュニティの中にも、やり方としてたくさんの事例を挙げています。例えば、ニュースを見ることですね。これは子どもと関係なく親の行動ですが、子どもの前でもいいですね。親はニュースを見て「リアクションをすること」「意見を持つこと」「それについて会話をすること」が大事です。ママとパパはもちろん、祖父母の方と話すのもアリだと思います。

「この家庭は、世界に興味を持っていろいろ考えている」ということを子どもに見せることです。昔、会社に勤めていた時に、得意先のためにブランドの調査をやったことがあります。人の家に行って、1日中行動を見させてもらって、それを記録するんですね。

日本人が外国人と大きく違ったことは、テレビを常につけていたことですね。ちなみにこれは5年前のことなので、今ではスマホやYouTubeになっていると思います。テレビを流しっぱなしで、見ているというより流しているという感じ。ニュースも常に流れていて、親としては見ている感覚でも、子どもからすると単なるBGMになっていました。

例えば昨日タカは、20人のウクライナ人を受け入れるというニュースを見て「遅いでしょ。日本はもっと早くやるべきだったと思う。しかもなんで20人だけなの?」という話をしていました。

お父さんがそういうことを言っていることによって、それを見ていた子どもは「お父さんは世界に興味を持っているんだな」「ただ見ているだけじゃなくて、自分で考えているんだ」「意見を持っているんだな」と感じます。まずはこのように、子どもに教えるわけではなく、親が見本としてそのプロセスを見せます。それが1つですね。

なんとなくしている行動を変えるのではなく、「意識」する

もう1つは、「親や先生が『当たり前』とか『常識』で行動していないでしょうか?」ということですね。「私はしてないよ」と思うのですが、意外とやっているんです。本の中にいくつか実例を載せていますが、私自身も子どもの洋服の色に関して、「男の子のアレックスには緑・青」「女の子のオリビアにはピンク」にしていました。ぜんぜんそんなつもりもなかったのに、ごく自然にこんなふうに行動してしまっていたんですよね。

それを「変えましょう」ということではないんです。ここ大事ですね。「変えましょう」ではなくて「考えましょう」。そういう行動をしているんだと意識しましょう。そして、話し合って、それが良いか悪いかを判断すればいいんです。自分のアイデンティティもあるから、ピンクが好きならそれでいいんです。

問題は自分で考えずに、なんとなく社会に倣って行動することです。例えば、Twitterが炎上すると、何も考えずにただ乗っかってリツイートするとか。自分が本当に考えてそう思うならいいと思います。

日本人だけではなく、人間は「流れに身を任せる」ことがラクなんですね。そこをストップして、意識してみる。「波に乗っちゃった。本当に正しいのかな?」と考えて、「うん、正しいね」ならOK。「違うね」だったらダメ。「変える」ではなく「考える」ですね。

もう1つ、親もライフゴールを立てることです。子どもに「将来何がしたいのか、考えなさい」と言うけど、親にはライフゴールがあるのでしょうか? 親も「何かの検定にトライしている」「オンライン英会話をやっている」「手作りの品をメルカリに出品する」など、やっていますか? 子どもには「自分の将来について考えないといけないよ」と言っているけど、親は日々の忙しさに何も考えていないことが多いと思います。

要するに「見本になりましょう」ということです。子どもに望むことを、まず親が率先してやらないといけない。そうでなければ、会社の「デキない先輩」になってしまいます。そういう人はとりあえず後輩に仕事を頼むけど、自分はできないので見本になりにくいんですね。だから、まずは家庭で真似のできる環境を作りましょう。

以上、ステップ1は親が自分の行動を意識したり、自分で考えたり、世界に興味を持ったりすることでした。

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