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アイシャ レバイン氏「主体性、自己肯定感、考える力を育くむ 世界基準の子育て」(全5記事)

新しいアイデアは「早すぎる」、2割の人しか主張しない会議… 日本を愛する米国人が体験した、日本人の自己肯定感の低さ

「親も学ぶ」を理念に 子育てや教育に関する様々な講演会を開催し、動画で配信する「花まる子育てカレッジ」に、子育てメソッド本『親から始まる「正解のない時代」を生き抜く世界基準の子育て』を出版したアイシャ・レバイン氏が登壇。家族の日常を通して英会話が学べるYouTubeチャンネル「バイリンガルベイビー英会話」の登録者数が36万人を超えるアイシャ氏が、米国人のほぼ100%が「自分に強みがある」と思う理由や、国連が指摘した日本の3つの問題などを語りました。 ▶イベントを主催した「花まる子育てカレッジ」のYouTubeチャンネルはコチラ

日本企業で16年間働いて気付いた、大人の自己肯定感の低さ

アイシャ・レバイン氏:ここから本題に入っていきますね。自己肯定感というと、子どもだけの問題だと思われがちですが、実際は大人にも関係があるんですね。私は日本企業で働く中で、そう感じる場面がたくさんありました。その中から3つほどご紹介します。

私は「ザ・ジャパニーズ会社」に16年間勤めていました。外資系を担当していたとはいえ、私も16年ですっかり日本企業のDNAを受け継ぎました。しかもリスペクトできる上司、優秀な先輩たち、とても恵まれた環境だったんですね。それでも働きながら、アメリカと日本の働き方の違いに驚くことが多々ありました。よく聞くカルチャーショックというものですね。

1つ目として、まず印象的だったのは打ち合わせですね。けっこう驚きました。外国人などを入れない、ごく内輪の社内打ち合わせでも、みんな遠慮がちで自由に意見を言わないんです。よくよく考えた上で発言し、相手が自分より先輩なら言葉づかいにも注意して。先輩の意見に対して否定するようなことは言えないし、反対できない感じでした。

一人ひとりは貴重な意見を持っているのに、結局フランクに話せなかったんですよね。打ち合わせに15人いたとしたら、強く意見を言えるのは3人ぐらいという感じでした。

2つ目です。私は営業局担当だったので、会社の代わりに得意先などと交渉をすることが多かったんです。はじめは朝から晩まで、翻訳や先輩の通訳ばかりしていました。契約書を作成する際の「1時間の報酬がいくらか」という設定の時にも、よく通訳で入りました。

これはどこの日本企業でも言えることなんですが、「もうちょっともらってもいいんじゃないか?」と思いました。「立派なスタッフがいるんだから、これくらい必要だ」ということを思ったとしても、誰も主張できなかったんですね。

「自分の価値はこれぐらいある」と言うことが恥ずかしかった。誰も実際には「恥ずかしい」なんていう言葉は使っていないんですけどね。相手から安い金額で打診されたら、外国人ならば「いやいやいや」となります。日本人はそういう時に結局、謙虚になってしまうんですよね。

自分をしっかりと理解すれば謙虚になる必要はないんです。フランクに話せばいいだけのことです。私から見ると日本人の方は自分の価値を、自分で思っているよりも下げてしまうイメージがありました。

自己肯定感の低さは、社会全体の問題

次に3つ目ですね。新しい仕事をする時も、これまでの常識をひっくり返すことはしないで、マイナーチェンジをする感じでした。「この市場を変えていきましょう」ということはなかなかしない。これは私が勤務していた会社だけではなく、得意先もそうでした。大きな改革を起こすことよりは、小さな変化を重ねていくことのほうがやりやすいようでした。

新しいアイデアが生まれた時でも、「そんなことは周りのどこもやっていないから、日本ではまだ早すぎるかもね」と言われてしまう。これで立派なアイデアが立ち消えてしまうんですね。

こういうことで、私は悔しい経験をたくさんしました。「アメリカでこんなことがすごく流行っているから、うちの会社でもやりませんか?」と提案しても、「いや、日本はこうだからダメ」と言われて。日本の従来のやり方と違いすぎるものは拒否されるんですね。私としても、提案の仕方には気をつけました。「今までと少し変わった程度」だと印象づけるように工夫したりもしました。

以上の3つのことも、自己肯定感が関係していると思ったんです。自分の意見に自信があれば、先輩に対してでも意見を伝えられますよね。エンパシーを用いて、相手の気持ちを考えながら傷つけないように話せばいいんです。交渉の時も「私にはこれだけの価値がある」と思ったら、それを主張できます。自己肯定感が高ければ、新しいビジネスに関しても「やってみよう!」と大きな声が出せるし、いろいろな変化を起こすこともできます。

自己肯定感は子育てだけの問題ではありません。私は会社や市役所で見てきましたが、大人に対しても自信や主体性を持つことについて、たっぷり話をする必要性を感じました。私は、「自己肯定感は社会全体の問題」だという見方をしています。

米国人のほぼ100%が「自分に強みがある」と思うワケ

次は、「国として自己肯定感が必要とされているのか?」という話をしたいと思います。(スライドにある表の)数字を出すと必ず驚かれるのですが、これは日本の政府が出したもので、「自己肯定感の高い国、低い国」がわかるんですね。

質問としては当然「あなたは自己肯定感がありますか? ないですか?」ではなくて、「自分に満足していますか?」とか「自分に強みや長所がありますか?」というものです。圧倒的に違うのがアメリカと日本ですね。極端に違います。考え方や文化が違うので当然ですが、ここまで差があるんですね。日本はこんなに立派な文化があり、素晴らしい国、社会です。なのに「自分に満足している」人が50パーセント未満なんですね。

毎日いい人ばかりに出会います。外国人から見ると、日本人は50パーセントではなく100パーセント「自分に満足している」でもいいかなと思います。でも実際に日本人に聞いてみると、みなさん謙虚で「いや、私なんか……」という感じなんですね。

また、逆に恥ずかしいんですが、アメリカ人はほぼ100パーセントの人が「自分に強みがある」と思っています。小さい頃から「あなたはこういうところがすごいね」「これがすごいから伸ばしていこうね」と親や先生が言ってくれるからなんですね。

学校なども一人ひとりに合った教育方法を提示することがあります。ギフテッドの子がいれば、別の授業を受けさせたり、なかなかうまくいかない子ならばスペシャルケアを用意したり。このように外国では、一人ひとりの個性に合わせた教育も行っています。企業も同じで、その人の強みに合わせて配属先や異動先を決めるんですね。

今は違うかもしれませんが、私が市役所にいた頃は、いつどこに異動させられるかわからない状態だったんですね。みんないきなり慣れない部署に行ったりしていて、「ジェネラリストを作る文化なんだな」と思いました。

日本は「自分の個性や強み」をあまり主張しない国なんだと思います。アメリカは昔からかなり主張するので、恥ずかしいくらい100パーセント自信を持っています。ちょっと高すぎだと思います。日本は「自分に長所がある」が65パーセントでも低すぎですね。

これまでいろんな日本人と友だち付き合いをしてきましたが、強みがなかった人は一人もいませんでした。だから100パーセント強みがあるんです。結局は自信の問題なんですよね。

自己肯定感は「イノベーションの種」

では「自己肯定感がないのは、そんなに悪いことなの?」ということで、同じ調査に関して、もう少し大きな社会的な質問の回答も見てみましょう。

今度の質問は「あなたは社会現象を起こせると思いますか?」といったもので、「はい」と答えた日本人は30パーセントだけですね。一方アメリカ人の50パーセント、半数が「自分は社会を変えられる」と思っているんですよね。相当な自信ですね。これが自己肯定感です。

次は「将来への希望を持っていますか?」というものです。アメリカは保険制度に問題があり、銃で人が殺されていて、貧困も多いし、格差が広がっていて、教育が良くないなど、いろんな面でボロボロなんです。それでも、未来への希望は高いんですね。一方、日本の社会は安定的に機能していて、健全ですね。それなのに、将来への希望を持っている人は60パーセントもいません。

この調査結果は「私なら、この世界を変えられるぞ!」という気持ちを持っているかどうかですよね。これはまさにイノベーションの種だと思います。

さて、イノベーションってそんなに大事なんでしょうか。そもそもイノベーションとは何だろう。新しい発想で考えること。今までにまったく存在していなかった「0→1」を作り出すということですね。もしくはまったく存在していなかった「発想・やり方」を考え出すこと。「今まで、このやり方だったけど、このやり方でもいいんじゃない?」という発想や考え方を持つことですね。

みなさんが本日視聴してくださっているのも、まさにそういうことですよね。子育てについての、「他の考え方もあるんだ」「それも知りたいね」もまさしくイノベーションだと思います。「今まではこんな方法でやってきたけど、それをやめてこうやってみよう」といった、新しい考え方やアプローチを思いつくこともイノベーションなんですね。

国連が指摘した日本の3つの問題

実はイノベーションだけで見てみると、日本は遅れているわけではありません。2020年は世界で16位、昨年2021年は13位になったんですね。世界での順位なので、実はぜんぜん悪くない。さらにアジアではトップのほうになります。

このGlobal Innovation Indexというランキングの中で、日本に特化した問題として挙げられていることが3つあります。1つ目は「教育」です。GDPの比率からみると、教育にかけている金額は少ないですね。でも、日本は公教育がかなりしっかりしているので、これは一概には言えないのかもしれません。

2つ目に問題とされているのは「創造力」、クリエイティビティですね。世界的にみると、「今まで存在しないものを0から作る力」は相当ランクが低いんです。3つ目は「新しい企業の起こしやすさ」です。私は会社を辞めて、旦那が作った企業に入ったんですね。

確かに旦那が起業した時に、日本政府はあまり親切ではないと感じました。もうちょっと簡単にスタートアップや企業を起こせるようなルールや法律を作ってくれればいいのにと。アメリカと比べるとだいぶ遅れているのかなという印象を受けました。

2つ目と3つ目は、どちらもイノベーションに関することですよね。「社会のためにこんな新しいサービスを思いついた」「じゃあ明日から会社を作ろう」と思ったとしても起業するのがかなり難しい。だから「じゃあ、まあいいや。今の会社に残ろう」「新しい会社を作るのは難しいね」となると、イノベーションが潰されてしまいますよね。またイノベーションには「創造力」も必要です。

このGlobal Innovation Indexのランキングをより上げるには、イノベーションスピリッツが必要で、そのためには自己肯定感が不可欠です。今私が話してきた自己肯定感については、子どものことではなく、全部大人のことです。

欧米の名門校の「カリキュラムのコア」となる考え方

でも、みなさんも大人だからわかると思いますが、いきなり明日から「自信を持ちなさい」「自己肯定感を高めなさい」と言われてもそんなに簡単ではないですよね。本当は、0歳からやらなければいけない。後ほど「レバインメソッド」でゆっくりと説明します。主体性や自己肯定感のベースには、先ほど申し上げたように「自分がどういう人間であるか」「自分の強みはこれだ」というアイデンティティが必要です。

それからエンパシーですね。相手の苦しみを、見て見ぬふりをしない。例えば、優先席に座っていて、「もしかして困っている人がいるかもしれない」と譲ることができるかどうか。日本人の友だちに「日本人は優しいのに、なんで電車で席を譲らない人が多いの?」と聞いてみたことがあります。

すると「相手に譲ることによって、相手が傷つくかもしれないから。『私、お婆ちゃんじゃないし』とか」と言うんです。それでエンパシーが終わってしまうみたいなんですね。確かに、自分がお婆ちゃんだと思われたらショックですよね。でも、だからといって人の苦しみを無視するわけにはいかない。これがエンパシーの考え方です。

今まで話してきた「自己肯定感」「主体性」「声を出せること」「エンパシー」「アイデンティティ」などは、冒頭でもお話ししたように新しい発想ではありません。むしろ、アメリカや、特にイギリスやヨーロッパの名門校のカリキュラムのコアとなる考え方なんです。

「国際バカロレア」や「ケンブリッジ」といった国際的なカリキュラムがあります。そのカリキュラムについて調べていただくとわかると思いますが、「コミュニティのために尽くす」「エンパシーを持つ」「相手の気持ちを考えて発言する」など、先ほど申し上げたこととまったく同じことをやっています。プライベートスクール、ボーディングスクール、名門校なども同様です。

なんと年間の授業料が900万円の全寮制の学校が日本にできるんですよね。その校長先生に私がインタビューした動画もあるのですが、この学校のカリキュラムは国際バカロレアではなくケンブリッジなんです。どちらにせよ、コアには主体性、自己肯定感、エンパシー、アイデンティティなどがあります。

これから私が紹介するレバインメソッドは、すべてがまったく新しいというわけではありません。昔からある海外のやり方を部分的に拝借しているんですね。名門校やハーバードへの出願に必要なことや、ボーディングスクールでやっていることなどを取り入れた子育て法になります。

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