2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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井上和幸氏(以下、井上):ハウテレビジョンさんに参画された時は、どのように「型」の共有をされたんです?
長村禎庸氏(以下、長村):それができていたかと言われたら、最後まで未完だったのではないかと思います。今の会社を創業したきっかけでもあるんですけれども。もともと自分がハウテレビジョンに入った時は20人弱ぐらいの会社で、そこから「立て直すぞ」という感じで自分が取締役に入った。そういう入り方をすると、一定数辞める人が出てくるじゃないですか。
だから18人か19人ぐらいの会社が、ぎゅーっと12人ぐらいになりました。そこからどんどん人を入れて、その人たちと一緒に上場したんですが、上場直前で40人ぐらいになっていました。少ない人数ではあるものの、上場まで2年とちょっとでしたので、この期間にしたら「えらく人が増えたな」という感じですよね。
11人とか12人とかだと、非常に忙しいですけど、自分1人でマネジメントできるかといえばできるんですよ。けれども、30人とか40人となると無理だな、と。
井上:そうですよね。
長村:5人ぐらいマネージャーにしようと思ったんですけれども。このままではできないな、という感覚は拭えなかったんです。
本にも書いていますが、例えば僕の考え方だと、目標に対してどのように達成するかという方針がありますよね。方針はこうだと発表したとしても、ベンチャーなので目標はかなり野心的になります。どちらかと言うと、「こういう根拠があってこの目標だ」というより、「もうここまでやりたいんだ」という意志で目標を決めるので。
その、「意志で決めた目標」を達成する方針が、始めから完全に正解のものはほぼないと思っているんですよね。なので、やりながら「ちょっとこれだと厳しいな」という時に、ぱっと変えてほしいんです。当初の方針を、ぱっと捨ててほしいんです。例えば、ベンチャーではないところでマネジメント経験があった人だと、方針は変えないほうが正しいという感じになってしまうので、僕の考え方とフィットしません。
長村:あとは、メンバーの意見はそんなに聞かずに、「マネージャーのほうが身分として上だ」ぐらいの、トップダウンでいくようなスタイル。
井上:なるほど。
長村:そういうのはベンチャーに合わないんですよ。合わないですし、どっちかと言うと正解がないので現場の意見とかを取り入れたほうが、イノベーションが生まれる。ベンチャーで勝とうと思ったらそっちのほうがいいんですけど、イノベーションの必要がない会社さんとかでマネジメントをしていると、基本的には規律とか、命令とか、言うことを聞かせるという方向にいってしまう。それは違うんだよな、というのがありました。
マネジメントという行為の概要は、経験があるのでなんとなく掴めているんですけれども。ベンチャーでマネジメントするとなると、ぜんぜんやり方が違いますし、僕としてもしっくりこなかったです。これはいかんと思って、丸一日ぐらいかけて自分で研修資料を作って、マネジメント研修をやってみたんですけど、1日研修したところで何も変わらなかったんですよね。
井上:そうですね。
長村:結局その時は、一応数名をマネージャーにして、都度「それ違いますよね」と、ずっともぐらたたきのようにすり合わせをやりながら。
井上:なるほど。
長村:なので、もぐらたたきではなくて、初めからこうだとわかる資料があったらいいなと思ったんですよ。「とりあえずこれを読んでおいて」と渡せればそれでいいなと思いまして。それがこの書籍ですね。
井上:そこの納得感、説得力と、体系化が両方必要だということですね。大手企業型のマネジメントとベンチャー型ということでお話しくださいました。大手は仕組みがある程度回っていて、それをしっかり回すことが大事なところでやってきた方が、ベンチャーに行って一番驚くのが今おっしゃっていただいたところですよね。
長村:そうですね。
井上:長村さんが、本の中で内乱を抑えるマネジメントと勝利にこだわるマネジメントのことを書かれていて、「おぉ、そうそう!」とすごく思ったんですよね。
長村:仕組みができあがっている上でマネジメントするのと、仕組みも何も、勝ち方がそもそもわかっていない会社でマネジメントするのは、まったく違う行為だと思いますので。村とか国に例えるとわかりやすいと思うんです。すでに繁栄の領土を築いていて、この領土を広げるより、この領土をしっかり守って豊かにしていくぞという時は内乱のほうが怖いはずなので。
井上:そうですよね。
長村:任用としては、年功序列に流れがちなところがきっとあると思うんですよね。抜擢したらいいことも起こりますけど、それで荒れる人もいると思うので。抜擢というよりは、無難な人事になります。
でも、ぜんぜん領土も何もない、外敵だらけで、このまま油断していたらこの村は滅ぼされるぞという時に、「まずはあの人を立てて」とはならないと思うんですよね。とにかく一番強いやつが前に行っておけという話だと思うので。
井上:おっしゃるとおりです。
長村:この差をすごく感じたんです。
井上:この領土の話も、本当にわかりやすいですね。
井上:ここからは、さらに具体的なところに入っていければと思います。型の1つだと思いますが、長村さんはマネジャーを4つの役割に整理されています。ここの話をいただけますか。
長村:僕はマネージャーの役割は4つに収れんされるのではないかと思っています。
まず、経営陣からオーダーされた成果を残しましょう、というのが基本だと思います。「今クォーターは、この結果を必ず残してください」と言われれば、「やります」「残します」と言う。それがやっぱりいいと思います。
あとはメンバーの活用。会社から与えられたリソースが5人なら、成果を大きくするために、その5人を最大限に活用するというのがあると思います。あとは、会社はどんどん成長していくので、成長領域に人を出せるようにすること。あるいは、成長領域に自分のリソースを投下できるように、自分の後任をきちんと育てましょうというのがあると思います。
最後は調整ですね。会社がどんどん大きくなっていくと、部署間連携が常に発生します。自分のチームが他の部署とうまく連携できるよう調整スキルを身につけてくださいというのがあると思います。
大きい会社だと、「育成は人事がやる仕事じゃないんですか」「調整は経営企画がやってくれるんじゃないんですか」といった声が出そうですが、ベンチャーはそこを自分でやらないといけないんですね。
井上:そうですよね。
長村:いろんなお客さんに、「この4つが役割ですよ」と話をさせていただくんですけれども、立ち上げてまだ1年で社員が5人、ようやくシードステージの資金調達をしたぐらいのスタートアップの方に調整事が発生するかというと、発生しないんですよね。育成も、育成対象がいません。経営陣しかいないので、活用する・されるという関係でもない。
となると、とにかく今を生きていくために足元の成果をきっちり残すというのがフォーカスポイントだと思うんですね。
逆に、僕の前々職のDeNAはポストIPOのメガベンチャーと言われていて、国内だけで2,000人ぐらいいます。部署が百何個もあるのでマネージャーだけでも百何人かいるんですよね。そうすると部署間でうまいことやりなさいという調整ごとが発生します。
DeNAぐらいの規模ですら、クォーター毎に組織図が変わるぐらい変化が激しいんですよ。いちいちクォーター毎に変わる組織のために経営企画が各部署の調整ルールを作ってくれるかと言うと、絶対作ってくれない。やっと経営企画のキャッチアップが終わったと思ったら、また部署が変わったみたいに変化が早い。この調整を自分たちで作らないといけません。
井上:本当そうですよね。
長村:あと、育成ですね。投資余力もすごくあって、「どんどん新規事業を作っていくので、そこに人を出しなさい」と常に問われていました。「あなたが行きなさい」と問われることもあります。やっぱり育成はずっと続けておかないと、今の部署の持続的繁栄もないという話ですよね。
活用は言わずもがなです。どんどん中途で人が入ってくる中、合わなかったら「じゃあやめてください」では話にならないので、オンボーディングですよね。その人がちゃんと活躍できるように、その人の能力が生きるような配置や指導をするという活用がすごく大事になります。
初めは成果だけでよかったものが、組織が大きくなっていくごとに4つとも求められるようになる。25パーセントずつ求められる感じですよね。
井上:なるほど。
長村:このスライドの真ん中ぐらいのIPOのちょっと前のステージですかね。ちょうど僕の前の会社、ハウテレビジョンもそのステージでした。そこだったら「もちろん成果にコミットしてください」ということで、比重のイメージで言うと8割ぐらいが成果ですよね。そして、15パーセントぐらいが活用です。
人がぼんぼん入ってくるので、ちゃんとオンボーディングをやってください、と。育成は5パーセントぐらいですね。来年執行役員になってほしい1人2人に注力して育成するぐらいです。30人ぐらいなので、調整事はほとんど発生しない感じです。ちょうど末広がりの真ん中ぐらいにいた会社ではないかなと思っています。
井上:今のイメージはすごく参考になりますね。みなさんたぶんいろんな感覚を持たれているのではないかなと思います。今おっしゃった比率については、僕は正直もうちょっと手前で必要になりそうな感覚を持っています。
長村:ハウテレビジョンの比率は本にも書いてないんですが、はっきり言って、自分の目線はやや近視眼的だったのは否めないかなと思います。
井上:どんなところですか?
長村:育成が5パーセントと言いましたが、2年先の上場がターゲットだったらそれはそうですけれども、5年先・10年先と考えたら、「本当に今それだけでいいの?」というのは正直言って思います。
井上:なるほど。
長村:雇われた経営者で、短期的なトラックレコードが自分の目的になる場合は、どうしても右(育成・調整)に寄りにくいです。特に育成には寄りにくいですよね。
井上:(笑)。そうですよね。
長村:間違いなく中長期的な施策になってくるので。だからマインドシェアが寄りにくいというのはあるんじゃないかと思います。
井上:あるかもしれないですね。あと、トップおよび経営陣の趣味嗜好みたいなものも少し出る気もしますね。
長村:そうですよね。経営スタイルがここに影響することもありますよね。
井上:標準的に言えば、IPOしたあたりが、4つの役割がイーブンになる感じですかね。
長村:このスライドは会社全体のマネージャーの役割はこういう比率だよという図です。一部署一部署を見ていったら、部署ごとに微妙に違ったりします。例えば新規事業の立ち上げ部署だったら、メガベンチャーであったとしても成果に寄るでしょうし。既存事業でも、これ以上ものすごく伸びるわけでもないんだったら、右の人材輩出機関としてなんとかせよという話だったり。
効率化するための調整事は増えると思います。会社全体の基準はこうだというのがありつつも、それを参考に各部署で少し比率を変えて、クォーターの始めとか半期の始めに経営陣がマネージャーにこの点をすり合わせたらいいと思うんですね。
経営陣が、「長村さん、今こういう状況なので、成果50パーセント・活用25パーセント・育成25パーセント・調整0パーぐらいのイメージで動いてくださいね」と言ったり。「井上さん、今回は新規事業なので育成や調整を考えなくていいので、とにかく成果90パーセントで、フォーカスしてください」とか。マネージャーの前提の動き方のすり合わせに使っていただくといいと思います。
井上:それはすごく大事ですね。これはベンチャーのみならず、そこがすり合っていないケースが多いんじゃないかなぁ。
長村:すり合っていないと、一つひとつのアクションの話をしてもずれるんですよ。
井上:そうですよね。
長村:例えば井上さんに「成果90パーセントでとにかく成果フォーカスでお願いしますね」と言った時に、井上さんから「とはいえ育成も大事じゃないですか。育成はどうすべきですかね」と話をされると、「今は育成を言ってる場合じゃない!」「なんでですか。育成もすごく大事じゃないですか」と、ここでまたすり合わなくなりますよね。
井上:すごく「あるある」な気がします。
長村:この表も、型なんですね。経営陣からマネージャー陣まで、きちんとすり合わせる。それがすごく大事かなと思います。特に変化が激しければ、この比率がクォーターや半期ごとに変わるはずなので、こまめにすり合わせるのがすごく大事です。パーセンテージは、別に正確に27.5パーセントとか追ってなく、頭の中のイメージをわかりやすく数字で示しているだけですね。
井上:わかりやすい。これを型としてあらためて持っておくべきですね。順番があるということも、すごく大事だと思います。
長村:そうですよね。
井上:例えば、成果を置いておいて調整ばかり考えているとか、育成ばっかり考えて、足元のビジネスを動かすことをやらないでどうするんだ、という話があるわけで。
長村:育成という言葉を使う時は要注意ですよね。どうしても絶対正義のように聞こえてしまうので。育成をするのかどうか、という議論から入らないとだめだと思います。
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