7,000万人のT会員の購買データの裏側

橋本直久氏:こんにちは、CCCマーケティングの橋本と申します。本日は、「データに溺れない、これからの顧客起点マーケティング」と称して、少しだけみなさんのお時間をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

まず本題に入る前に、前段としてCCCのマーケティングデータについて、簡単にご紹介したいと思います。

今日は、CCCの100パーセント子会社である弊社CCCマーケティングが保有しているデータベースについてお伝えします。(Tカードを)年間1回以上ご利用いただいている、約7,000万人のT会員のデータベースを基に、さまざまなマーケティングのお話ができたらと思っています。

今日、主にお伝えするのは、広告主の企業のみなさまがふだんお使いになっているマーケティングデータに近しいものである、購買データです。CCCでは現在、月間4,000万人ほどの方が使われているデータがあります。

それに付随して、ネットで連携する4,000万人のデータや、インターネットで結線するテレビのデータ(TV視聴データ)も全国で46万人ほどつながっているので、こういったデータを使ってわかることをみなさまにお伝えいたします。

CCCのデータを細かくご説明すると非常にマニアックになるのですが、「規模・鮮度・種類・粒度」という、4つの特徴があります。そして1つ、特徴的な仕組みがございます。みなさんがデータを扱う時に、規模や種類はだいたいご理解いただけると思いますが、CCCのデータで特徴的なのは「鮮度」や「粒度」といったデータがあることです。魚屋さんのような感じではないのですが、「鮮度」や「粒度」がポイントになっています。

日々の購買情報が集まる、鮮度の高いデータベース

まず「規模」と「鮮度」です。規模としてはだいたい男女は同じぐらいで、3,500万人ぐらいずつ各年代がいます。年代を個別に分けると図にあるように、20代から70代ぐらいまでだいたいの世代別人口に対する(会員)化率が書いてあります。その(会員)化率をかけると、どの世代も1,000万人ほどのご利用ユーザーがいます。

先ほどお伝えした鮮度はデータを扱う上で非常に重要なのですが、ほかの調査パネルの場合ですと、例えば去年にアンケートで「ビールが飲みたい」や「ビールを買った」と答えていた人が、今年はどうなっているか、わからないまま使うデータが多くあります。

CCCのデータは、日々お買い物をしている情報が連携されますので、先ほどの7,000万人(※)は月間で言うと4,500万人(※)、週間で言っても2,700万人(※)の方々の何かしらの行動をデータとして連携いただいているデータベースになっています。ですので、非常に「鮮度が高いデータベース」だとご理解ください。(※2021年12月末時点)

もう1つ、種類ですね。1種類だけ・1業態だけのデータベースも多々出てきていると思うのですが、CCCのデータの特徴としては、さまざまなデータがあることで、非常に立体的にデータを捉えられます。飲食や車、書籍、洋服、ドラッグストア、スーパー、コンビニといったデータが入っていますので、非常に多くの種類のデータがございます。

*主なアライアンス先 https://mk.ccc.co.jp/business/

そして、粒度ですね。レシートに載っている情報が弊社のデータベースに連携されてくるとご理解いただければと思います。

例えばレシートがあると、「いつ、どこで、何をどのぐらい買ったデータか」というのがわかりますし、そこにTポイントをご利用いただくと、性別・年齢もしくは居住地といった情報がデータベースに格納されているので、合わせて活用できるデータベースになっています。

業態やサービス、エリアをまたぐ大規模かつ横断的な分析が可能

次に、先ほどご紹介したさまざまなデータ群で非常に特徴的なのが、このT会員のみなさまに個別に許諾を取ってつながっていることです。会員の属性情報だけでなく、ネットの情報や購買情報です。

例えば、テレビと結線している方たちがテレビの情報も含めて、業界では「シングルソース」と呼ぶのですが、1つの線でつながってデータを管理できていることが非常に特徴的です。

後ほどご紹介しますが、この「つながるデータ」というのが、Cookieなどのデジタルの情報でデータを管理するところとの大きな違いになってくると、ご理解いただければと思います。

CCCの「つながるデータ」によって、大規模でかつ横断的に、業態やサービス、もしくはエリアをまたいでも同一規模のデータ、同一基準のデータで管理できます。Tポイントの場合は、リアルなコンバージョン情報にテレビやネットというアクション、もしくはアテンションといった情報もつながるので、成果をシンプルに把握できます。

かつTポイントは北海道から沖縄まで、さまざまな方にご利用いただいています。同じようなレベルでデータをお預かりしていますし、かつ県の中でだいたい平均40パーセントから50パーセントぐらいの人口の会員化率となっていますので、大規模で同じような粒度で扱うことができるのも特徴となっています。

この4種類の特徴と1つの仕組みを使って、今日はさまざまな事例をご紹介していければと思います。

では、自社データと外部データということで、「どういうふうにデータを活用しているのか」、もしくは「どういうふうに活用するといいのか」ということをお伝えできたらと思います。

ユーザーが意図して提供するデータと、意識していないデータ

まずはデータ活用の実態とポイントということで、みなさまが社内もしくは社外からデータを集めて使っているものを簡単に分類してみました。縦軸がユーザーで、情報を提供している方が意図的に意識して提供しているのか、もしくは意識せずとも提供しているのかを表しています。

横軸がいわゆる個社と多社。自分たちの会社だけなのか、パートナーなのか、第三者なのか、もしくはネットワークを組んで使っているなら複数社ということで多社ですね。そういったことを横軸で引いています。

ネットに強い方であれば聞いたことがあると思うのですが、「ファーストパーティデータ」と言って、自社が取得するようなデータは、左下になると思います。売上情報などを提供しているつもりはない中でデータを管理して、未来のマーケティングをするという意味で、左下になりますね。

昨今、非常に使い勝手が良かったのが「サードパーティデータ」です。最近よく言われ始めているものでは、「ゼロパーティデータ」なんていうのもありますね。これはどちらかと言うと提供する企業やサービサーに対して、ユーザーが意図的に情報を提供しますよというデータです。それを提供したことによって、企業との良好な環境を紡ぎだすようなデータということで、ゼロパーティデータという定義がされています。

このサードパーティデータも、許諾を取る中で使えるようなものも出てきています。ただ、この丸の大きさをあえて変えているのは、取得の仕方や仕組みによって、データの大きさが変わってくるためです。

やっぱりファーストパーティデータよりは、ゼロパーティデータの方が小さいですし、レギュレーションが厳しくなるため、昔のサードパーティデータよりも、これからのサードパーティデータは小さくなってくる、という特徴があります。

マーケティングに利用できる、さまざまなデータの特徴と違い

具体的にはどんなものがデータとしてあるのかというと、ファーストパーティデータは、例えばECサイトであれば会員の利用情報や閲覧情報。もしくは利用許諾を取ったモバイルIDやCookieがあります。

(Cookie規制により)Cookieではサードパーティがダメなのであって、ファーストパーティのCookieは使えるというところで、図のようなプロットとなります。昔のサードパーティはCookieやADID(モバイルID)ですが、これはだんだんと規制が厳しくなりルールに則って使いましょう、ということで使えなくなってくるものです。

逆に今残っている、いわゆるサードパーティ的なものは、各プラットフォーマーが会員の許諾を取って使えるようなデータであったり、統計データ、もしくはパネルデータです。こうした統計やプラットフォームデータは昔からあるので、これがいわゆるサードパーティというふうにくくれます。

弊社では、このようなまとめて利用させていただく前提で取得しているデータがあります。あとは、会員の意向情報である興味や関心、嗜好情報を提供することによって、メーカーや企業とコミュニケーションを取っていく軸になるようなデータの渡し方をするものが、ゼロパーティデータです。

このようなデータがある中で、みなさんがどういうデータをどういう目的で利用していくのかを整理していけると、今後自社内でのデータ活用が非常にシンプルになってくるのかなと思います。

今回のセミナーでは、取得したデータを利用して、ファーストパーティデータ、もしくはサードパーティデータがどのように活用できるかを、具体的な事例をもってご紹介したいと思います。

先ほどの丸円を面積に置き換えてみたのがこちらの図です。縦軸が量、横軸が種類になってくると、ファーストパーティデータは量・種類ともに限られていることがわかります。かつゼロパーティデータは許諾に関わるため、さらに小さなボリュームになります。

一方、サードパーティデータは、量も種類も多かったのですが、それが昨今では小さくなってきています。ここがデータを取り扱おうとしているみなさんにとって、課題であったり、これから検討しなければいけないものになってくるかと思います。

“使えるデータ”にするには「単位」を揃えることが重要

ファーストパーティデータとサードパーティデータをどのように活用していくのかというところで、まずは1つポイントがあります。そのポイントを少し抽象的に表現したのが、次のクイズになります。

突然ですが、セミナーをずっと聞くだけだとつまらないと思いますので、ちょっと頭を1回リセットしていただいて、「今100ドルは日本円にするといくらでしょう」という問題を出題したいと思います。

ちょっと考えてみてください。だいたい1万円ぐらいかなぁみたいな。円高なのかな、円安なのかなと考えてもらえるといいんですけれども。

実は答えはいろいろあります。通常は「1ドルいくらですか?」と言うと、だいたいアメリカのドルを想起すると思いますが、実はカナダもドルですし、シンガポールや香港もドルです。

ドルと言われた時にみなさんはさまざまなものを想像してしまうと思うのですが、マーケティングもこれと一緒で、単位を合わせていかないことにはデータとしては非常に使い勝手が悪いのです。

つまり翻訳ができなければ、例えば1インプレッションなのか、1GRPなのか、1点売り上げたのかという単位がわからない。そのまま1という数字を使っていったら、わけがわからなくなるのと一緒で、単位を合わせることが非常に重要です。

ですので、唐突に先ほどの図を出したのですが、実はこのサードパーティやファーストパーティは、昔はCookieを突合することができたので単位を合わせられたのですが、今はなかなかできなくなってきています。

ファーストパーティだけならまだボリュームがあるので、多少引っかかるものもあるかもしれないですが、ゼロパーティデータになってくると規模も小さくなり、そうした橋渡しが非常に難しくなってきます。

ですので、単位をつなげていくことによって、ファーストパーティやサードパーティというデータが生きてくることを前提としてご理解いただけると、「外部データをどう使うのか」という時に、非常に役に立つと思います。このサードパーティとファーストパーティに関しては、後ほどまた細かくお伝えできればと思います。

CCCのデータとつながることで、今日ご紹介するデータベースが非常に生きてきます。ちょっと宣伝じみてしまいますけれども、つながることによってCookieがなくなったとしてもできることをご紹介できれば幸いです。

「お菓子をよく買う人」がどんな人なのかをデータで特定

さっそく具体的な話をしていきたいと思います。今日ご紹介するのは、CCCの7,000万人のデータベースの中で、条件に合ったパネルデータを抽出して分析するという手法です。CCCオリジナル分析の「Market Watch」というBIツールの「Target Profiler(ターゲットプロファイラー)」と、ターゲットを類推もしくは分析するツールを中心にご紹介していきたいと思います。

まずは先ほどあった、自社で捕捉できるファーストパーティデータにどんなものがあるのか、もしくはどういうふうに使うのかをご紹介します。

今回ファーストパーティデータで使うデータは、後ほどご紹介するテレビのデータと関係するので関東に区切っていますが、Tポイントの場合、関東圏で約2,300万人ほどいます。弊社では幅広くデータをお預かりしているので、こういう分析をする時にはエリアごとに、総務省統計局が発表している、5歳区切りの人口動態に合わせてパネルを抽出する、という方法で分析を行っています。

今回の分析では、この2,300万人から無作為に抽出した約630万人を、人口ピラミッドに合わせてパネルを作りました。今回はお菓子にフォーカスし、お菓子をよく買っている人とポテトチップスを買ったことがある人という条件で分析をしています。

(図の)右上の方が少ないのは、定期的にお菓子を買う人ということで、ある程度絞って特徴を見ています。どちらかと言うとご利用いただいたという実績が重要ですので、1回でも買った人より人数が多くなっているとお考えください。

まず最初に、もしみなさまがファーストパーティデータをお使いの場合は必ず、どういう性・年代になっているのかを見ると思います。ただ、お菓子をよく買う人がどんなデモグラフィックなのか、基準がないとわからないので、今回の基準値に関しては、エリアの中の5歳刻みの人口出現率を、後ろの薄いグレーのグラフで表現しています。

この薄いグレーのグラフがエリア内の人口動態構成比で、濃い色の細い棒グラフが今回で言うスナックをよく買っている人たちになります。だいたい3.5万人の方たちがいます。こうやってみるとなんとなく、スナックを買うお菓子好きな人は、35歳ぐらいから54歳の男女、特に女性のほうがちょっと多いのかなというのがわかります。

ポテトチップス好きが多いのは埼玉県民

自社のデータですので、ポテトチップスを買った人がわかります。データを集めてみると、女性が多い傾向だなと。先ほどのデータと比べてもらえると、スナック好きとポテトチップス好きでは、ポテトチップスのほうが少し女性に寄っていっているんだな、ということがわかります。

これを比べて並べてみると、お菓子を買っている人たちの属性とポテトチップスを買っている人と、どちらのグラフも若干赤みが濃くなっているので、お菓子を買っている消費者の中でも、ポテトチップスは女性に支持されている商品なんだなぁとわかり、ちょっと女性を意識したプロモーションをしてみようかなというのが、ファーストパーティデータの使い方になるかと思います。

では、さらにエリア情報を掛け算すると、もう少しおもしろいことがわかります。関東の15万人の方たちの中で、先ほどのポテトチップスをよく食べている都道府県はどこでしょう? 

正解は埼玉県になります。これは先ほどの後ろのグラフの見方と一緒で、薄い文字や薄い帯のところが関東圏の人口出現率になります。この濃い棒グラフがポテトチップスになるのですが、埼玉県はいわゆる全体の構成比よりも、プラス7ポイントも高い。もしくは千葉県も高い傾向ですね。

ですので、埼玉県や千葉県にポテトチップス好きが非常に多くいる、というのがわかります。一方で東京は、12ポイントも構成比を落としています。図をみると東京や神奈川の人たちはあまりポテトチップスを食べないな、ということがわかります。エリアプロモーションという切り口にしますと、非常に参考になるようなデータが出ています。

データベースから見える、ユーザー像の特徴

次はファーストパーティより、お客さまのインサイトに近いゼロパーティデータについてです。主に趣味嗜好(のデータ)を取ることが多いと言われていますが、今回はCCCのデータベースの中で、定性的な興味深いデータを抽出してきています。

弊社もお客さまとコミュニケーションをとって、「アンケートに答えてください」というお願いをしております。図をみると、例えばポテトチップスを買っている人たちで特徴的なのは、やはり子どものいる世帯が多くて、女性が多いのでパート・アルバイトをしている方たちがいることがグラフからわかります。

さらに特徴的なのは、1ヶ月の可処分所得が平均値より少ない。弊社のデータベースで言うと、(平均値の)4.4万円ぐらいに対して3.9万円ぐらい。ちょっとお小遣いが少ないかなという方たちが、日々お買い物されていることがわかったりします。

ですので、このようなデータから、お子さんのいる女性をターゲットにしたプロモーションが最適なんだな、ということがわかります。また、弊社はいわゆる定性的なデータ、ゼロパーティデータでよくある「好み」のようなものをアンケート以外の方法でも取っていますので、あわせてご紹介します。

顧客DNAといって、衣食住に関わる嗜好性をポイント化して表現していますが、例えば今回のポテトチップスは、一般的な関東圏に住む人と比べると、(他には)テイクアウトが好き、ファーストフードが好き、お肉が好きということがわかってきます。

さらに食に関してご紹介すると、お店に行った時に比較的同じようなものを頼みがちで、好きなものが決まっている。ジャンクフードを好む感じのユーザー像なんだなということが、データベースからわかってきます。

これはどちらかと言うとファーストパーティですので、自社のデータだけで見ていくとこんなことがわかりますよということで、これだけでもさまざまなマーケティングに活用できると思います。