2024.11.25
「能動的サイバー防御」時代の幕開け 重要インフラ企業が知るべき法的課題と脅威インテリジェンス活用戦略
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高橋浩一氏(以下、高橋):(商談で)断られた時にへこむのは、僕もそうですよ。20代の時ですが、失注して1週間寝込んだことがありますからね(笑)。断りの連絡が来た時に「世界が終わった」と思っちゃいました。もうショックで、1週間で立ち直れなかったことが若い時にはありました。
高松智史氏(以下、高松):わかります。僕も日立で惨敗した後、4日間くらいずっとイライラしていました(笑)。
高橋:(笑)。
高松:そういうことはありますよね。
高橋:やっぱり、営業は質問ですごく成果が出るなと思います。意外と、お客さんが本当に商品が良いかどうかわからない状態で、買う決断をしなくちゃいけない事実がある。悪くても買うと言っているんじゃなくて、良いか・悪いかをちゃんと判断できるまでの材料が集まってから購買判断をするお客さまは、すごく稀なんですよね。
材料が揃う前に判断しないといけないから、多くの方は「保留」という行動をする。ということは、たぶん世の中全体で、お客さまは判断材料がないうちになんだかんだ決めなくちゃいけないという状況が、けっこう多いと思うんです。
そうすると、毎回博打的に迫るよりは、お客さまが必要としている理由を自分からおっしゃっていただくような議論ができると、一番進みやすいんじゃないかと考えたんですよ。
高松:なるほどなあ、確かに。
高橋:まあでも、すごく強いキャラとコミュニケーション力があったら、たぶん僕はぜんぜん違うやり方をしていたと思いますね(笑)。
高松:いや、だいたい5分になっちゃうんですよ。やっぱり8割くらい勝ちじゃないですか。
高橋:あと、特に法人営業でいうと、相手方についてわからないことが多いですよね。そうすると、「自分がわかっている」とか「自分が正しい」というのが強すぎて、見えない壁につまずきやすいんです。だから、やみくもに押すよりは、どこがその意思決定につながる道なんだろうかと考えたほうが、法人営業としては強いと思いますね。
高松:確かに。レクチャー7に「先出し」と「後出し」の話があったと思うので、読んだ人は見てほしいんですが、先出しと後出しには良いところと悪いところがありますよね。僕はけっこう先出し派なんですよ。
高橋:ああ、わかります。
高松:先出しして、「俺が作った天才的なプログラムだから買え」と前プレゼンをして、「でしょ?」と(リリース)すると、ヒットする時もあるけど大外しもあると思うんですよ。一方で、後出しの場合はけっこう話を聞いて、ニーズが出てきて、高まって関係もできてから、「我々はできますよ」と出す。平均点でいうと、絶対に後出しのほうがいいと思うんですが、これは「言われたからそう言ったでしょ?」とならないんですか?
高橋:「言われたからそう言ったでしょ?」というのは(どういうことでしょうか)?
高松:ニーズをお客さんから聞いたからこそ、「それに合わせて営業してませんか?」とならないのかなと思ったんです。占い師と一緒で、占いは先に言うから価値がある。「来年、自転車でこけますよ」と言われて当たったらハッピーだけど、いろいろ聞いてから「実はこける運命だったんですよ」と言われても、「いや、それ当たり前だろ」という話になりますよね。
高松:先に聞いたことによってパンチ力が減ると思っているんですが、そのへんについて高橋さんはどう考えていますか? 僕はそもそもヒアリングする能力に長けていないから、待てないんだけど。
聞いたことによって、せっかく良いパッケージを持っていたとしても、アレンジしたように思われてしまう。コンサルというと、スライドライティングに書いてあるからメッセージとして伝わるけど、聞いた後に口頭で言っても、やっぱり顔を見てメッセージを変えたでしょ? となるから、パンチ力は7割くらいになっちゃうと思うんですよ。その場合は、先出しと後出しを、どうやって考えているのかなと思いながら見ていたんですよ。
高橋:それでいうと、さっきの「お客さまは判断基準がぜんぶ揃ってから購買できるわけではない」ということが前提にあります。じゃあ、どこで決めているのか。
相手に対する信用・信頼がありますよね。例えば僕がその会社の立場だとして、安心してお金を出す時の1つの王道は、自分と同じような悩みや課題を持っている他のお客さんを散々成功させてきたとか、自分と同じように悩んでいるたくさんのお客さまをハッピーにしてきたことだと思うんですよ。
なので、先にお客さまの話を聞くと、「なるほど。今おっしゃったことは、私も毎日のようにうかがっているんです」と。そこで、自分がいかにそういうお客さまのお役に立ってきたかをちゃんと伝えられる。商品をわかってもらうというよりは、「同じ課題やお悩みを抱えてきた他のお客さまをきちんとご支援して、ハッピーにしてきたので、すごくお役に立てるんじゃないかと思います」と言います。
今のロジックには商品の話が出てこないですよね。さっきの、「お客さまはすべての判断材料を手に入れてから購買判断をするわけじゃない」という世界観でいくと、商品の良さをちゃんと伝えるのは、けっこう難易度が高いことだと思います。
高橋:会ったばかりの人の商品の良さや真髄を理解するのは、まあまあな難易度ですよね。(例えば)高松さんの講座はやっぱりすばらしいだろうなと、何回かお話しさせていただいているからわかるんですが、初対面でそれを見抜くのはけっこう難しい。
それは、物に価値があるか・ないかとはちょっと違った次元です。お客さまの判断の難しさという観点で、商品アピールはけっこう博打の要素が強いなと思っているんですよ。
高松:ああ……それは確かに。
高橋:僕にはそれをすごく実感した出来事があります。これは『無敗営業』という本に書いていますが、左半分にお客さまのおっしゃっている要件、右側に弊社がどう対応するかを書いている資料があるんです。
ある時、商談までに資料作成が間に合わなかった会社の若手のメンバーが、恥ずかしながら左側のお客さまから聞いた要件だけ書いて、右側は空白でびよーんと図形を引き伸ばしたスライドを持っていたんです。それには提案は書いてなくて、お客さまからうかがった課題のキーワードだけ5個書いてあるんです。なんと、それで受注しちゃったんですよ(笑)。
僕はそれが本当に衝撃的でした。「ちょっと待った。君、提案書なのに提案ないじゃん」と。だけどお客さまからすると、その5つが本当にピタッと並んでいたことが、すごく感動的だったそうです。だから、その瞬間にお願いしたいと思った。「それで、御社はどんな研修をやっているんですか?」と、買うことを決めていただいた後に、いきなり中身を聞かれたようです(笑)。
高松:なるほど、そういうことが(あったんですね)。
高橋:これは『質問しだいで仕事がうまくって本当ですか?』にも書いていますが、最後に決定場面を聞く質問があります。これは本当に受注率に効果てきめんなんですが、どの瞬間に心が動いたのかは、ほとんどの方が知らないまま営業をされているんですよね。
これをやっていくと、まあまあの割合のお客さまが「お金を見る前に心が動いている」ということが、実際にあるんですよ。この間、江戸時代から続いている伝統的な味噌を作っているメーカーさんの営業の方がいらっしゃいました。今までは、「うちは江戸時代から代々殿さまに献上してきた、本当に歴史と伝統がある味噌です」というプレゼンをされていたんです。
ある時、それを聞いてもらったら、いつもだったら3キロパックしか買えないんだけど、「500グラムずつ小分けにできるパックにします」と言った瞬間に受注が決まったと、その会社の人が言っていました。
今まで自分がアピールしていたポイントは「歴史と伝統」だったんだけど、「500ミリリットル×6パック」にお客さまが響いたと聞いて、衝撃を受けてらっしゃったんです。こういうように、世の中のいろんなところで、営業の想像とは違う瞬間にお客さまが決めていることがあるんじゃないかなと思いますね。
高松:確かに。ちょっと聞いてみます。なるほどなあ、おもしろいですね。そういうことですか。
高橋:でも、高松さんのそのアグレッシブさ、僕は正直欲しいなと思います(笑)。ないものねだりかもしれないけど、その自信を持って「これどうですか?」とぶつけてみたい気持ちは正直ありますよ。
高松:高橋さんは会話をちゃんと吸収しますよね。僕もいろんなことを投げて吸収するんですが、たぶん吸収する前にしゃべっちゃうんです。ヒアリングはやっぱり大事ですよね。
高松:そういえば、(視聴者からの)質問で「お話しするのはけっこう苦手ですお話しするのがうまくなるポイントはないですか?」と書いてありました。高橋さんはどうですか?
高橋:話をするのがうまくなる方法?
高松:そう。営業は置いておいて、「人と話すのがそんなに得意じゃありません」と(いう相談です)。営業はものを売るので、ハードルが1個高い。この「お話しする」という、誰かと1対1で話す時に気にされていることや、その壁をぶち(破る)にはどういうアドバイスをするんですか?
高橋:そうですね。僕が思っているのは、人間には、人と話す時に自分を良く見せたいという気持ちが絶対にありますよね。僕にもあります(笑)。その時に、自分を良く見せたいという気持ちに対して、良く見せられる十分な自信がないと怖いと思うんですよ。
だから、わりと初めから良く見せるといっても、実体以上に良く見せられるものでもないしと割り切るのが、心持ちとしては大事かなと思いますね。
上司と部下の関係にもあると思うんですよ。自分は上司だから「上司たるもの部下にちゃんと教えてやらねばならぬ」「上司たるもの見本を見せなければならぬ」というように(よく見せようとする)。
あとは営業もそうだと思うんですよ。「営業だからすごく良い提案をしなきゃ」「お客さんを唸らせなきゃ」ということがあると思うんですが、それをいったん置いといて、1対1の人間として素で話すのが一番いいと思うんですよね。
高松:確かに。だそうです、聞いていましたか? せっかく「質問次第でうまくいく」よ言っているんだから、全員質問するだろうと思っていたら、ぜんぜん質問してないから、本を読んでないんじゃないかって思ったんです。そういうところがやっぱりゆるいなと思って。
パッと見て僕の生徒がぜんぜん質問してないわけ。お前ら俺の何を学んだんだ、と。ここで高橋さんがちょっと考えなきゃわかんねえだろう質問をするからこそ、このイベントは濃くなるのに。「おい!」って思った。
高橋:みなさん、チャットでもQ&Aでもリアルタイムでいただけたらと思います。
高橋:今、チャットで(質問を)いただきました。
高松:いいですね。
高橋:「お客さまが本当に『欲しい』と言うまで自分からお金の話をしないという話がありましたが、BtoCの営業でお客さまの購買意欲が高まっていない時点で金額の質問をされた際は、どのように対応されていますか? 金額を伝えることで見送りとなってしまうケースもあり、良いアプローチ方法があればうかがいたいです」。
高松:いいじゃないすか。
高橋:いい質問ですね、ありがとうございます。じゃあ、どうしましょう。これに答えていきますか?
高松:いいですね、答えましょうよ。
高橋:はい。まずさっきの、お客さまはそこまで材料が揃っていない時点で判断するという世界観にのっとると、想像よりもちょっと高い価格がきたら断る理由を考え始めますよね。だから、基本的には購買意欲を高めてからがセオリーです。
とは言っても、答えないのも不誠実なので、僕のおすすめは「あ、やっぱりそういうのって気になりますか?」と質問することなんですね。例えば、お客さまから「ちなみに、いくらなんですか?」と聞かれた時に、「そうですね。……10万円」と恐る恐る言うと、「やっぱり高いんだ」となる。そうすると、お客さまは断る理由を心の中で作り始めちゃいます。
「やっぱり、そういうお値段とか気になりますか?」と聞くと、それに対する答えで、まず温度感がわかりますよね。欲しいから聞いているのか、なんとなく気になっているから聞いているのか。
欲しいから聞いている場合と、なんとなく気になっている場合に分けてお答えします。欲しいから聞いている場合もすぐに金額を答えるんじゃなくて、さっき高松さんがおっしゃったように、価格と価値は相対観なので、「どういうところに魅力を感じて、欲しいと思っていただいたんですか?」と聞くのがおすすめです。
高橋:そうすると、お客さまが欲しい理由をどんどん言い始めます。とにかくそれをひたすら聞いて、聞いて、聞いていくと、実は価格の前に(価格を聞く前に)買う腹積もりを決めてくださることがけっこう多かったりする。
なので、あらかじめ「買いたい」が前提にあるタイプのお客さまだったら、むしろまずは買いたい理由をちゃんと深堀りしたほうがいいです。
そこまで(購買意欲が)高まっていない方が「ちなみに……」と聞いてきたのであれば、「価格以外にも気になるポイントはあるんですか?」と、それとなく価格以外のことに話を持っていくのがおすすめです。価格以外のところで温度感が上がるポイントをつかんでいくと言うんですかね。いずれにしても、「すぐには答えない」ということになります(笑)。
高松:「何が気になるんですか?」って、温度感を見るのは確かにいいですね。
高橋:そうですね。さすが、高松さんのコミュニティからいらっしゃるだけあって、鋭い質問が来ますね。「商品価値の大半を価格が占めるコモディティの営業をする場合でも、価格以外の価値にフォーカスして話をしますか?」。はい、します。
高松:いや、質問に「コモディティ」とか使っている時点でダメですね(笑)。
高橋:そこはいいじゃないですか(笑)。僕は前に、塗料を売っている会社の営業者から相談されたことがあって。塗料って、競争がすごい厳しいんですよね。どういうことかと言うと、塗料は色が変わるのが嫌だという理由で変えたがらない。
高松:あー、そういうことね。なるほど。
高橋:そうなんですよ。例えば、同じ赤でもちょっと微妙な赤は嫌がるじゃないですか。だから、それをスイッチしてもらおうとするためにめっちゃ値下げをするのが、塗料や色ものを扱う世界の営業なんです。
その時に塗料の会社の営業の方に、「今まで決めてくれたお客さまは、100パーセント全員が価格で決めてくれたんですか?」と聞くと、「いや、100パーセントじゃないです」と。「じゃあ、どういうケースがあるんですか?」と聞きました。
高橋:先ほどのご質問にあったような世界は、例えばその業界に営業の人が1万人いるとすると、だいたい9,950人ぐらいが価格で勝負してきている人たちです。そういう営業の人たちから、あんまりよくないサービスを受けているお客さまが多いんですね。
1万分の50のわずかな存在にいきなりなれるチャンスがある業界です。だから逆に、コモディティの世界こそ、価格以外で勝負をしたほうが圧倒的に価値を訴求できる。
高松:なるほど。それは確かに。
高橋:その時に、冷静に今までの結着関係をひっくり返してみる。例えば、塗料なら「そろそろ在庫がなくなるんじゃないですか?」と、こまめに来てくれるとか。あるいは、色持ちすることについて安心感のある説明をちゃんとしてくれるとか。
1万人いたら9,950人は「うちの業界なんかどうせ価格で決めるんだ」と思いながらやっているので、実はそういうところで勝負ができることをみんな無視しているんですよ。コンサルティング会社の営業だと、みんな価格で勝負せずに付加価値で勝負するじゃないですか。よっぽどそっちのほうがシビアだと思います。
高松:確かに、それもありますね。結局は同じものを売っているわけじゃないですからね。
高橋:そうです。だから、僕は営業の世界は思い込みの存在に気付くかどうかがすごく大事だなと思っています。みんな「価格で決める」と思い込んでいる業界だったら、むしろ「うちの業界はどうせみんな価格で勝負しているんだから、価格以外で訴求したほうが得じゃないか」とメタ的に気付いた人から、順番に成果が上がっていく感じなんですね。
でも、そういう会社さんで研修をやると、オーラがすごいですよ。「うちの業界なんか価格で決めるんだから」と、けっこうな迫力があります(笑)。
高松:逆に価格で決めるとなった瞬間、「営業はポンコツでよくないですか?」という話になりますよね。リクルート1つとっても、「強い営業マンってどこにいますか?」というと、最弱のサービスのところにいるわけですよね。
それと同じで、「価格が売りです」と言っていたら、その営業マンは価格でやるだけなのでレベルが下がりますよね。やっぱりBtoCとBtoBだったら、BtoBのほうが難しくないですか?
高橋:まあ、それは確かにあるかも。
高松:ですよね。
高橋:難易度の問題はもちろんありますが、どっちかと言うと、1人の人間の心の内に焦点を当てて「どうせ価格で決めるんだ」と思いながら仕事をすると、心がどんどんやられちゃうと思うんですよ。自分の存在価値が感じられないというか。
だから、半分言い聞かせる感じでもいいので、「価格で決められがちな業界だからこそ、価格以外が勝負のポイントになる」と思いながらやったほうが、自己肯定感も上がる。それで結果が出始めたら、めちゃくちゃ自信がつきますよね。だって、価格で決まると思われていた業界で、価格以外で成果をあげたらめちゃくちゃ自信がつくじゃないですか。
高松:確かにいいっすね。
高橋:あっ、さすが。高松さんの促しで次から次へと質問が来ましたね。
高松:俺に怒られるからですよ(笑)。
高橋:でもね、ここまで思わせる高松さんはやっぱりすごいですよ。
高松:というか、こういう時に質問しないのは人生が薄すぎるんすよ。だから、そういうところですよ。高橋さんに質問できる機会なんてもうないから、と思いますけどね。
高橋:せっかくなので、どんどんお答えしていきましょうか。「接客時の質問ですが、お客さまが店舗にいらっしゃった時はどのタイミングでお声をかけるのが一番良いのでしょうか? あまりがっつくのもよくないなとは思いつつ、せっかく見に来てくれたお客さまなので、チャンスを逃したくないなとも思います」と。
高松:いいじゃないですか。
高橋:「2段階の接点」に注目していただくことがいいかなと思っています。1段階目は、「ファーストインプレッション」。さっきの売り手100パーセントのモードにならないように注意して、まず来店のお礼を雰囲気でも伝わるようにあいさつをする。
「さあ、売るぞ!」のあいさつと、「来てくれて本当にありがとうございます。自分にできることをちゃんと精一杯やらせていただきます」のあいさつは、やっぱり違いが出ます。その印象が1段階目かなと思います。
例えば、服だったら「試着できますよ」と言うよりも、「すごくお似合いですね」「お客さまと商品がすごく調和していますよ」と一言お声掛けするのが、わりと気持ちのいいお声掛けなんじゃないかなと思います。
それで関心を示してくださったら、次の話をしたらいいんじゃないでしょうかと思いました。高松さん、こんな回答でも大丈夫でしょうか。
高松:ぜんぜんいいです。
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