2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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荒木博行氏(以下、荒木):康ちゃんの本の読み方はどうですか?
渡邉康太郎氏(以下、渡邉):最近、個人的に「本の革命」が起こりまして。もしかしたら収録でもちょっとしゃべったかもしれないんだけど、「読書健康法」というのを編み出したんですよ。
深井龍之介氏(以下、深井):(笑)。
渡邉:怪しいでしょう?
荒木:何それ(笑)。
渡邉:読書で健康になったね。
深井:ほう、どうやって?
渡邉:「読書健康法」、雑誌の後ろのほうにある怪しい広告みたいに聞こえますけど。
荒木:(笑)。
渡邉:以前は、本棚に本をすごくたくさん平積みにしてたんですよ。自分で組み立てる本棚で、けっこう大きな四角のボックスを段々に積み重ねて、自分なりの造形ができるものだったんです。ぎゅうぎゅうになっていて、1冊出すとすべてが崩壊する感じだったの。
それで、かなり時間をかけて(床から天井までの)本棚を導入した時に何が起こったかというと、超単純なんだけど、1個1個の本棚が小さくコンパートメント化されているから(本が簡単に手に)取れるようになった。これだけのことです。
あと、今までは3層くらい手前に向かって重ねられていて、一覧性がなかった。それが、ばっと壁一面、床から天井まで本が並んでいて「ああ、俺の図書館はこういう感じか」(と眺められる)。
博さんの本にも「共有図書館」というキーワードが出てきましたが、(うちの本棚も)やっと可視化されたんですよ。「こういう見渡しか」って。それを見ているだけで頭が良くなった気がして。
深井:めっちゃわかる。
荒木:本当、それわかる。
渡邉:それで、今まではやっていなかったのに、リモートワークする時に本棚の前に机を持ってきちゃって。「その話だったらこれかな?」「うーん、これかな?」と、(本を手に取りながら)人に勧めて、ちょっと調子に乗り始めるという。
荒木:(笑)。
渡邉:本棚を眺めるのが楽しすぎるんです。ベッドの前にあるので、本棚を見たいからとにかくベッドに入りたいんですよ。ベッドに入りながら「本棚いいわ……」と感じ入る。それで早く寝て健康になるので、おすすめです(笑)。
荒木:いや、これは本当にそう。僕もそのまんまだ。
渡邉:まじで、まじで?
荒木:うん、本当本当。
深井:最近リノベーションしましたからね。
荒木:リノベーションして、完全に本棚で生活しているから。
深井:いいなあ。(俺は)だめだわ。
荒木:そこですごくエネルギーもらうね。
渡邉:本当にもらうよね。この本にも書いてあったよね。パイドロスとか、いろんな人から声をかけてもらっているって。
荒木:そうそう。
渡邉:あと、背表紙が語ってくる。
深井:背表紙ってエネルギーがあると思うんだ。これを見るだけで想起するパッケージがあるじゃん。
荒木:そうでしょ。
渡邉:あるよね。
深井:その本が与えるイメージとか、感覚とか、それを感じられるということなんだろうね。
渡邉:わかる、わかる。
渡邉:そういう意味では、本のクライマックスって「買う瞬間」にあるよね。
深井:ああ、わかる。
渡邉:背表紙に惚れて買って、一回仕事が終わるよね(笑)。
(一同笑)
荒木:終わる、終わる。
深井:わかる。すごくわかる。
渡邉:「買えた。もういつでも読める」みたいな感じになる。
荒木:そうそう。
深井:いつでも読める感、あるね。
渡邉:(笑)。それでね、僕なりの読書法を1つ共有するので、龍ちゃんからも聞きたいんですけれども。「積読から脱したい」という時があるじゃないですか。買ったらちゃんと読みたいけど読めてない時。「なんで俺はこんなに読みたい本があるのに、実際に読んでいないんだろう」という自己嫌悪みたいなもの。ですが、「最強の積読解消法」を最近開発したんです。
僕、何に関しても大事な仕事ほど先延ばしにしがちなんですよ。重要度が高いものほど締め切りギリギリまで放置しちゃう。それで自己嫌悪に陥る。(そしてそんな時ほど)掃除したり、片づけたりなんだり、大事な仕事以外が捗るじゃないですか。
荒木:はいはい(笑)。
渡邉:それで、ある時これについて詳しく知りたいと思って『ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか』という本を熟読したんですよ。すごくおもしろいの。「先延ばしパターン4つ」という分類があって、めちゃくちゃ深く語られていて、とにかくその本は役立ちました。僕が大事な仕事から目をそらすのに、すごく役立った(笑)。
荒木:だめじゃん(笑)。
渡邉:締め切りがある時にその本を読み始めちゃって、超捗ったよね。
(一同笑)
渡邉:それで気づいたんだけど、「読みたいのになかなか読めない」という本を積んでおいて、大事な仕事がある時に現実逃避で読めばいいんですよ。これ、すごく捗るからおすすめ。
深井:積読は解消されるけど、何かを失うね。
(会場笑)
渡邉:何かから逃げるために、ただ楽しむために読む。これ、おすすめですね。
荒木:なるほど。
深井:実践的だね。
(一同笑)
渡邉:龍ちゃん、何かある?
深井:僕はさっきも言ったけど、やっぱり最高の1冊を何回もマジで読みまくる。これが一番いいんじゃないかと思っていて。
荒木:それはそうかもしれないね。
深井:中途半端なものを何冊も読むのではなくて、世界的な名著みたいなものを「3年間そればかり読んでいます」というほうがセンスも磨かれると思うし、結果的に強い気はする。
荒木:女川のライブラリを作った時も、龍ちゃんのおすすめの本は本当に歴史的な書物ばっかりだったものね。「詳しい内容は女川に来てください」という感じなんだけど。
深井:そうでしたね。まあ、あそこに並べたものがそうというわけでもないんだけど。
荒木:あ、そうなの?(笑)。
深井:(笑)。
渡邉:全部青い岩波文庫でね。
荒木:そう、全部岩波。
深井:たまたま岩波になりました。本当にいい本をちゃんと読む、何度も噛みしめるのが一番いいと思うな。真面目な回答。
荒木:いやいや、そうだよね。僕もそう思う。
渡邉:ダイナブック構想を発表したアラン・ケイの言葉に「未来を予言する一番簡単な方法は作ることである」というのがありますよね。彼はダイナブック構想の中で「小さな子どもがラップトップやタブレットみたいなもので本を読む」「レシピを検索する」ということを1970年~80年くらいには描いていた。
アラン・ケイがダイナブック構想に至るために読んだのが、マクルーハンの『グーテンベルクの銀河系』で、とにかく1冊を読み返し続けたんだって。他の情報は摂取せずに、その1冊にぐーっと潜る。つまり、未来を考えるには過去に浸る必要があるということなのかもしれないね。
いたずらに情報を摂取する、最新に触れるということじゃなくて、「人間の本質」「コミュニケーションの本質」「メディアの本質」にアプローチしたんだろうね。
深井:そうだと思うね。基本的に、1冊わかったら全部わかると思うんだよね。芸術もそうだと思っていて。1つの映画のことを超深く理解したら、だいたいどの映画を観ても(わかるようになる。)
もちろん、いきなりわかったりはしないかもしれないけど、自分の中に勘所ってあるじゃん。1つのものを堪能して、噛みつくしたという勘所。それは全部に生きると思っている。そんな感覚。
渡邉:いいね。「深く何かに交わっていく」という体感を、覚えているということだよね。
深井:そうそう。
荒木:この本の中でも、内田義彦先生の『読書と社会科学』という本を紹介していますが、彼は「概念装置」という言葉を定義していて。今語ってくれた話は、それに近いのかなと思った。徹底的に「その人がどんな概念で物事を見ていたのか」ということを理解するという。
だから文字面だけじゃなくて、その人の「物の見方」を理解しようと努力する、ということだよね。もしそういうことをビルトインできたとしたら、それはすごく本質に近づけるかもしれないよね。
深井:そうだと思う。同じ本を何回も読むと、もう(内容は)わかっているから、新しいことを見つけたりするんだよね。
荒木:それはわかるな。
深井:文体が気になってきたり、行間が気になってきたりとか。そうすると、さらに見るべき観点が増えていくし、すげえいいと思う。これが僕からのおすすめ。
渡邉:なるほど。もう「1冊をかじり尽くせ」と。
深井:そう、かじり尽くせと(笑)。
荒木:最初から最後まで見るわけじゃないんだけど、僕も同じ本はけっこうよく見るかな。例えば、この本でも書いた遠藤周作の『沈黙』とか。
深井:わかる。あれ、俺も大好き。
荒木:ぱらぱらと見て「ああ、キチジローはこんな時にこんな話をしていたんだ」「ええ!? スルーしていたけどすげえなこれ。深いこと言ってんじゃん」とか、当時見逃していたものを発見できることがあるよね。
渡邉:ありそうだね。
渡邉:この本(『自分の頭で考える読書 』)でも博さんが「僕の中にもキチジローがいるかもしれない」という内省を語っていますよね。この本には、そういう丁寧な自己開示がたくさん出てくる。
深井:あるね。
渡邉:決して気取らない。
深井:そうね。飾らない。気取らない。
渡邉:「弱み」みたいなものもさらけ出すことで、「だよね、だよね!」って読み進めていける。例えば、ビジネススクールの先生時代に「自分の経験でなく本に頼る必要があった」とか。そこで挑戦したこと、失敗したことのエピソードとか、「ああ、めっちゃ切ない」みたいな。
(一同笑)
深井:そんなに切なかった?
荒木:そんなに切なくはないよ(笑)。確かに今、本の見方を語るとなると、当時とはぜんぜん違ってくると思うけどね。
深井:基本、博さんは達観しているもんね。
荒木:え?
深井:この本でも、元も子もないことをぼんって言うじゃん。
荒木:(笑)。例えば? どういうこと?
深井:なんだったっけな。ちょっと待って。「また博さんが元も子もないこと言っていて、いいな」と思ったんだよね。それを言ったら全部終わるようなやつを。
(一同笑)
渡邉:何、何? どういうこと、どういうこと? 何系?
深井:ちょっと待って、探すのに時間がかかる。
渡邉:OK、じゃあ探していて。
荒木:「読み方は自由だ」という話?
深井:いや、もっと元も子もなかった。
渡邉:「人生のタイミングによります」みたいな話?
深井:いや、もっと元も子もなかった。
荒木:なんだよ、気になるじゃんかよ。
深井:「究極的に、本を読んでも何もわかんねえ」みたいなことを言っていた。
(一同笑)
渡邉:でも、そう言われればちょいちょい出てくるよね。「おすすめの本はありますか?」と聞かれても、「人生のタイミングによります」とか。
(会場笑)
深井:そう。
渡邉:「え、いやそうだと思うけどさ……」みたいな。
(一同笑)
深井:でもやっぱり、そこがいいんだよね。
深井:元も子もねえことが。
渡邉:元も子もないね。
深井:そう。それがやっぱり真だなと思うんだよね。「人生は元も子もねえんだな」と思うし(笑)。
荒木:確かにね(笑)。
深井:それを提示しつつ、最大限丁寧に寄り添おうとしている姿勢に愛情を感じた。元も子もなくても、「そんなことを考えるのはムダなんで」と突き放すことはしないんですよね。「それはしない」というものはすごく感じたな。
荒木:そっか。本の中でもちょっと触れたけど、構造がはっきりしないままこの本を書いたんだよね。だからこういう言い方も変なんだけど、自分の中で明確なメッセージがなかったの。普通は企画書があって、章の構成があって、「これが言いたいからこういう構造で」と、設計図を作ってから本を書くのが一般的ですよね。
今回は「筆が動くままにとりあえず書いてみました」的な部分がすごく多くて。だから、書きながら自分でけっこう発見があったんだよね。「おお、こんなエピソードがここで?」という。
深井:ふだんはそういう本の書き方はあまりしないですよね?
荒木:しない。
深井:これが初めて?
荒木:これが初めて。そういう意味で、書く時の楽しみはちょっとあったんですよ。
深井:そういうふうに構成が作られていないのもすごく感じた。あと、さっき言っていた「元も子もないやつ」を今見つけたんだけど、「『役に立つか?』という問いに『意味はない』」というもの。
荒木:ああ、それね。
深井:「問い自体に意味がない」と書いてあって。
(一同笑)
深井:確かにって思った。ずっと優しいんだけど、こういうことをちゃんと言うという。
渡邉:すごく具体的な本の話に入っていいですか?
荒木:どうぞ。
渡邉:中盤のハイライトは「2×2マトリックス」の部分だと思ったんですよ。「自分の本のポートフォリオを作ってみよう」みたいなところ。
荒木:問いと答えね。
渡邉:新しい問い、既知の問い、新しい答え、既知の答えで2×2を書こう、というやつ。「知っている問い」と「知っている答え」という領域も、一見学びがなさそうだけど、「既知のリマインドになって、足場を作るためにいいものだよ」とありますよね。それも愛情の1つかもしれないな、なるほどそういう見方かと思って。
このマトリックスの特徴や、一つひとつにどういう意味があるのかは、この本を読んでくださいという感じですが。(このマトリックスで)「新たな問いが既存の答えを与えてくれる」の領域はバツになっていて「たぶんない」と書いてあるよね。でも僕は「もしかしたら、あるんじゃないか」って思ったんですよ。
荒木:聞かせて。俺、ちょっとそこ考えたんだ。
渡邉:ちょっと解釈違いなのかもしれないんだけど、問いがまったく新しくて「何それ?」と思うんだけど、語られていることは「これなら知っている」と思える時って、実はあるような気がするの。問いが新鮮だから「新しいジャンルの知」かと思ったら、自分が知っていることと接続していて、「え! これもなの?」という体験がけっこうあるような気がしていて。嬉しい驚きというか。
この本の言葉を使えば、「三角飛びをせずとも抽象と具象の行き来ができる」という瞬間なんじゃないかなと。まるでワームホールにしゅっと入るように、「この2つの異なるジャンルはつながっているんではないか」という気づきを得られる瞬間。それがこの「新たな問いによって、既存の答えが与えられる」のことではないかと思っていて。
荒木:なるほど。
渡邉:ちょっと話が抽象的すぎる?
荒木:いやいや、わかるよ。「実は知っていたんだ」みたいなことね。
渡邉:そうそう。「このジャンルでもこういう答えに行き着くんだ。それ、知っているかも」みたいな。
深井:確かにあるわ。
渡邉:「ということは、ジャンルAとジャンルBってもしかして航路を通せる?」とか。
荒木:なるほど。そのマスどうしようかなと思ったんだけど、いまいち浮かばないから「まあいいや、バツ」にしちゃったの。
(一同笑)
荒木:康ちゃんに聞いておけばよかったな。
渡邉:わからないんだけど、例えば将棋の羽生(善治)さんや分子生物学の福岡伸一さんが、よくいろんな方と対談しますよね。1つの道を極めまくっている人が“地下トンネル”でつながっているという話は、たまに『超相対性理論』でも話しているけど、ジャンルは違えど、深く潜った先に「相似形が表れる瞬間」があって。
そうすると「具象と抽象の三角飛び」ができる。「つまりどういうこと?」「例えばどういうこと?」というステップを踏まずに、ぱっと紙を折っただけで、異なる二つのジャンルがくっついちゃった、みたいなことです。
荒木またおしゃれだな、「紙を折って」ですって。
渡邉:おしゃれか?(笑)。『大長編ドラえもん』のその2の「(のび太の)宇宙開拓史」の中で、ワープ航法の説明するのに紙を折る話が出てきたんですよ。
深井:そうなんだ。
荒木:ドラえもん好きだもんね。
渡邉:ドラえもん大好き。
深井:俺もそれ知ってるわ。ちっちゃいやつが出てくるんだよね。
渡邉:あ、ちっちゃいやつがでてくるのは、『ドラえもん のび太の宇宙小戦争』かもしれないけど。
荒木:なるほど。いやいや、それはすごいヒントだな。
深井:第2版で書き直して。
(会場笑)
荒木:刷版が新しくなったら、もうこのマトリックスが変わっていて(笑)。
深井:このバツのやつは幻の初版本になりますね。
(一同笑)
荒木:いや、うれしいな。それは確かにそうかもしれない。
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