『自分の頭で考える読書』刊行記念イベントを開催

司会者:お待たせいたしました。お時間になりましたので始めさせていただきます。代官山蔦屋書店のイシヤマと申します。本日はご参加いただき、誠にありがとうございます。本日は「『自分の頭で考える読書』刊行記念イベント~Podcast『超相対性理論』番外編~」、荒木博行さん、渡邉康太郎さん、深井龍之介さんをお招きして開催いたします。

荒木博行氏(以下、荒木):みなさん、こんばんは。感染対策で少人数なので、会場のみなさまはプレミアムチケットですね。

(会場笑)

荒木:本日、ほとんどの方がオンラインでの参加です。オンラインのみなさまもこんばんは。質疑応答の時間もありますし、チャットなども拝見しながらやっていきますので、ぜひ適宜コメントを入れてください。よろしくお願いします。

深井龍之介氏(以下、深井):お願いします。

渡邉康太郎氏(以下、渡邉):始まりました。よろしくお願いします。

荒木:康太郎さんと私は、代官山蔦屋さんでイベントをする話があったんですよね。

渡邉:そうだよね。2020年の4月でしたっけ?

荒木:そうでしたね。『ビジネス書図鑑』を出した時に「2人でイベントをしよう」という話になったんですが、残念ながらコロナの関係でなくなっちゃったんですよ。文章まで作っていたんだけど、直前で(中止で)ね。

渡邉:やっぱりコロナ禍が始まった直後くらいは、「どういう感じで有人イベントを行ったらいいか」というプロトコルがまだできていなかったから、キャンセルせざるを得なかったんですよね。

荒木:そうでしたね。(今日は)そのリベンジです。

渡邉:ついに。

荒木:ついに(笑)。

深井:2年越しで。

Podcastで共同の番組を持つほど、親交のある3名

荒木:じゃあ簡単に自己紹介をしますかね。あらためまして、荒木と申します。どうぞよろしくお願いします。

(会場拍手)

荒木:ありがとうございます。1月末に『自分の頭で考える読書』を出させていただきました。また、学びデザインという会社をやっていて、いろんな企業のお手伝いもしています。今日のこの3人は、Podcastで『超相対性理論』を一緒にやっているメンバーです。かれこれ、どれくらいですかね?

深井:1年ちょっとくらいかな。

荒木:そんな関係です。蔦屋さんからイベントのオファーをいただいた時、真っ先にお二人に声をかけさせてもらいました。「絶対にやろうぜ」と(笑)。龍ちゃんは福岡から来てくれました。

深井:はい。

荒木:みなさん、どうぞよろしくお願いします。

(会場拍手)

深井:株式会社COTENの深井と申します。ここで何を言えばいいんだろうな(笑)。

荒木:(笑)。

深井:3人の『超相対性理論』の他に、『COTEN RADIO(コテンラジオ)』というPodcastもやっています。会社では「世界史のデータベース」を作る活動を行っていて、最近は主にリベラルアーツの大切さを世に発信しています。今日はよろしくお願いします。

(会場拍手)

渡邉:渡邉康太郎といいます。Takramというデザインの会社で仕事をしています。形のあるもののデザインもやるし、(形の)ないものもやります。

「形あり」では、最近だと北区の東十条や王子のあたりにある、明壽庵というパン屋さんの立ち上げを手伝いました。100年続く3つの老舗(パンの明治堂・久壽餅屋の石鍋商店・餡の王子製餡所)が力を結集して作った食パン屋さんです。(その時に)やっぱり老舗だから、職人の手に伝わる、長年の見えない血みたいなものを写真に収めたりもしました。

また、企業のミッション・ビジョンを言語化するお手伝いも行っています。傍ら、J-WAVEで番組(『TAKRAM RADIO』)を持っていて何年か続いていますが、むしろ「超相対性理論」のほうが人気が出てきていて、どういうことだと。

(一同笑)

このイベントの参加申し込みが130人以上あったということなので、けっこう人気ですよね。今日は一体感のあるイベントにできればと思います。よろしくお願いします。

荒木:よろしくお願いします。

(会場拍手)

直近では、3人で北海道旅行にも

荒木:我々、実はつい最近一緒に旅行に行っていまして。

深井:札幌に行っていましたね。

荒木:札幌でホースコーチングというものをしてきました。「ホースセラピー」といって、馬と対面することによって自分の内面を見つめるということを体験してきて。あれも楽しかったね。

深井:楽しかったし、ホテルの僕の部屋で収録もしましたよね。

荒木:(笑)。

深井:それもまたPodcastで放送するから、ぜひ聞いてみてください。

渡邉:超楽しかったですよね。

深井:楽しかったですね。

荒木:楽しかった。

渡邉:僕たちが旅行に行った3連休は、札幌でも8~9年ぶりの大雪だったんです。札幌駅前は歩行者信号が隠れるくらい雪が積もっていて、「何これ?」みたいな。そして、ここ数日もまた大雪らしいです。だから旅行が一週間後の今だったら、そもそも行けなかったんですよね。

深井:そう、今週だったら行けなかったらしい。

荒木:今、また雪がひどくなっているらしいので。

深井:あれ以上ひどいのはやばいよね。

荒木:そうね。我々はこれまで、基本はZoomで収録したりとバーチャルなお付き合いだったんです。でも今回は寝食を共にして、またいろいろ見えてくるものがありましたね。

深井:ありましたね。

渡邉:おもしろかった。

オンラインではなく、対面でより深まった相互理解

渡邉:最初は「どんな感じだろう?」と思ってたんだけど、馬にハマりました。

深井:康太郎さんは、馬の絵を描いているもんね。

渡邉:そうそう。今、毎日馬の絵を描いていて。

(一同笑)

荒木:上手かったよね。

渡邉:(笑)。我々、意外にリアルで会うのは今日で4回目なんですけれども。

深井・荒木:そうそう。

渡邉:それも、札幌旅行が(リアルで会った)3回目でした。普段からオンラインでトークはしているけど、リアルにあまり会ったことがなかったという。

深井:直はあまりないもんね。

荒木:一緒に過ごして、お互いに性格もよくわかった。

渡邉:とか言いながら、ロビーで待ち合わせしていた時、僕だと思って違う人に声かけたりしていて(笑)。

(会場笑)

荒木:僕じゃなくて(深井)龍之介がね。

深井:めちゃくちゃ似ている女の人がいてね。

荒木:すごいトラップがあったんですよ。若い女性だったんだけど。

深井:そう、20代くらいのね。

荒木:ちょうど康太郎さんと同じような髪型の女性で、ちょっと下を向いていて、着ているものもほぼ一緒。

深井:そう。着ているものや、鞄の色も一緒で。

荒木:いつも最後に来る「康太郎さんが俺より先にいる」と思って。今日も(来たのが)最後だったよね。

渡邉:今日も遅刻した。

(一同笑)

荒木:めっちゃ几帳面なんだけど、時間にはルーズ。

(一同笑)

荒木:それで僕は「あ、似てるけど違う」ってわかったんだけど。

深井:俺は普通に行ったわ。

荒木:龍之介は声かけちゃって(笑)。

深井:「すみません」ってなったけど。

渡邉:(笑)。

深井:ね。性別も間違えるとは思わなかった。

(一同笑)

量より質派の深井氏は「1冊の短編で3年いけます」

渡邉:何を話してたんだっけ? 今、自己紹介が終わったのかな?

荒木:はい。じゃあ、徐々に本題にいきますかね。

渡邉:うむ。『自分の頭で考える読書』、おもしろく読みました。

荒木:ありがとうございます。

渡邉:本についての詳細は後ほどまた話したいのですが、「読書ってこういうことだよな」「本当にそうだよな」と思いまして。

(会場笑)

と言いながら、内容の話を軽く始めちゃうと、おもしろかったのが(本題の)本を読むことについて書かれるまでに、39ページかかること。29ページだったかな?

深井:ああ、なるほど。その視点はなかったな。

渡邉:だから、「本を読むための前提」がすごく丁寧にひもとかれているな、という感じをおぼえました。今日はこの本の(内容の)詳細に入る前に、博さんの読書法はこの本を読めばわかるので、龍ちゃんと僕がどんなふうに本と付き合っているのかをアイスブレイクにできたらなと思います。

荒木:ぜひぜひ。聞きたい。

渡邉:龍ちゃん、どうですか?

深井:僕はもともと文学部だから、けっこう文学的に読むのが好きなんだけど、たくさんの量は読まないタイプ。この本にも書いてあったけど「1冊の短編で3年いけます」くらいの感じ。

(一同笑)

学生時代に読んだ本で、心に残っている作品は「5冊」だけ

荒木:学生時代から?

深井:安能務さんの小説で『封神演義』って知っていますか? 

渡邉:うむ。

深井:たぶん中学生の時、それをめっちゃがんばって読んで。一番最初に「初めに混沌があった」みたいな文があるんだけど、「混沌」が読めなくて。

(一同笑)

深井:いきなりつまずいた本を、がんばってマジで読んで。もちろんそれまで児童文学とかは読んでいたけど、小説というのか、大人向けの本の初めての読書体験がそれでした。

荒木:へえ、なるほど。

深井:僕は歴史の話をよく聞かれるんだけど、初めての読書体験は中1ですね。それがすごくおもしろくて、そこから一気に何冊か読んだかな。

荒木:でも、そんなに多読ではないんだよね。深く読む感じ?

深井:そうですね。深く読むタイプ。本当に文学部って感じ。なので、学生時代を通して心に残っている本も(全部で)たぶん5冊とか。もともと、「それをおかずにずっと飯食えます」みたいな読み方をするタイプ。

荒木:なるほど。

深井:ビジネス書を読み始めたのは社会人になってからですね。もはや読んでいないんだけど。もともとの読み方は(ビジネス書の読み方とは)ぜんぜん違いますね。

書籍のジャンルごとに使い分けている「3つの読み方」

荒木:今はまた違う読み方をしているよね。

深井:今読んでいるのは社会科学の本なので、ざっとは読めないんだよね。因果関係や時系列を理解しながら読まないと意味がわからないので、歴史の本はすごく時間がかかる。これもまた、ぜんぜん読み方が違う。

渡邉:どうやって読むの?

深井:もう、がんばる。

(一同笑)

荒木:なんだ、それ(笑)。

深井:一つひとつ理解しながら読むんです。理解を飛ばして読んだら、全部の意味がわからなくなっちゃうから、一つひとつちゃんと読む感じ。だから、3つくらいの読み方を持っているかな。

荒木:3つというのは、つまり……。

深井:まず、文学的な読み方。これは本当に、芸術として受け取ること。それからビジネス書(の超速読)。目次と最初の文章と最後の文章を読めば、だいたい意味がわかるから超速読系の読み方。あとは、社会科学系をちゃんと理解しながら読む。この3つを使い分けていますね。聞かれてはじめてわかりました。これ(『自分の頭で考える読書』)は文学的に読んでみた。

荒木:なるほど。じゃあ、深く読んでいただいて。

深井:深く、人格を感じながら読みました。

渡邉:人格、感じたよね。

深井:すごく感じた。今、ちょうど本を書いているところだから、その違いも感じた。適性というか……適性じゃないな、人格の違い?

荒木:3月何日(に出るの)?

深井:3月30日だけど、今日それはいいから(笑)。この本にみんな集中してほしいな。

荒木:(笑)。

渡邉:3月30日ってけっこうすぐだよね?

荒木:もう今、Amazonでも出ていますので。

深井:本当に人格を感じながら読んで、おもしろかったですね。

『自分の頭で考える読書』では、64冊を紹介

渡邉:私がどのへんに人格を感じたかというと、まず巻末の本紹介です。この本に紹介されている本は……。

荒木:64冊だね。

渡邉:64冊紹介されているんだけど、その紹介文があまり本の紹介になっていなかったりでおもしろいの。

(一同笑)

渡邉:そう思いませんでした? 

深井:これね。

渡邉:冗談みたいなのもあってちょいちょい笑えるから、このへんにたくさん(付箋)貼っちゃったもん。

荒木:(笑)。

深井:ああ、ここに貼ったんだ。

渡邉:俺が好きなのは、芥川龍之介の『トロッコ』について解説している文で、「わずか5分くらいで読めてしまうが余韻の残る短編。関係ないが、中学時代の試験で芥川のことを茶川と書いたやつがいて、それ以降、そいつのあだ名は茶川になっていた」。

深井:本当に関係ねえわ。

(一同笑)

荒木:関係ないね(笑)。

渡邉:ぱっと見、本の書影があって見開きに8冊細かな字で紹介されているから、いかにもありがたそうなのに、よくよく読むと中学時代のあだ名の話なのが、すげえいいなと思って。

荒木:(笑)。

深井:そうね。

渡邉:人格を感じました。

深井:やっぱり? 

ビジネス的配慮ではない、文体ににじみ出る「愛情」

深井:じゃあ僕も言っちゃうと、全体を通じて愛情を感じた。

渡邉:ああ、わかる。

荒木:そう?

深井:読む人に対しての細かな配慮があって、愛情を感じた。わかりやすく書くとか、構成とかビジネス的な配慮じゃないんですよ。シンプルにその人の人生を考えながら書いているなと思って。その愛情は、僕にはなかったんですよね。

(一同笑)

深井:それを感じた。

荒木:え、なになに? もうちょっと(具体的に)言って。僕、それ無意識だからわからない。

深井:ある話をした後に、また別の話でちゃんと補足するとか。

荒木:ああ、そういうことね。

深井:話しかけ方とか、本当にいろんなところからにじみ出ているんです。「読んでいる人の役に立ちたい」「読んでいる人の人生を豊かにしたい」という能動的なスタンスがないと、このような文章にならないと思っていて。

相当、人を見ながら、意識しながら書いている。それが、売りやすくして、わかりやすく書いて、理解してもらおう……というビジネス的なものじゃない。そこが僕にはすごく新鮮だった。

渡邉:いいですね。

荒木:なるほど。

渡邉:さすが博さん、「先生経験者」ですね。丁寧に、理解へ誘う。

深井:そう。すごくいい先生が教えてくれている感じもした。

「俺しかわかんねえだろうな」という本に対する憧れ

荒木:康太郎さんが来る前に龍之介と話していたんだけど、自分が読書する時に、「難解な本を読みたい」という憧れもあったりするわけ。

渡邉:ふむ?

荒木:「これ誰もわかんねえだろうな」「俺しかわかんねえだろうな」みたいな本に憧れるんだけど、書こうとすると絶対に難解に書けない。だから、難解な本を書いてみたいなという気もする。

(一同笑)

深井:向いてないのかな。

渡邉:なんで絶対に書けないの?

荒木:いや、だめだね。

渡邉:自分が納得できないのかな?

荒木:そうかな。だから言葉を足していっちゃうのかもしれない。

深井:それだけじゃなくて、なんだろう、表現しにくいんだけど、物事の紹介の順番がかなり普通じゃなかった。

渡邉:それ思った。ちょっと前後して、ちらっと先出ししたり。

深井:そう。それがたぶん戦略的ではなく、無意識で行われている感覚もあって。そこに俺は愛を感じた。

渡邉:愛を。

荒木:(笑)。

深井:愛を持っている人間じゃないと、この順番でこのようにはならないなと感じながら見ていた。

荒木:なるほど、おもしろい。

渡邉:「愛を探す」みたいなものは、ホースコーチング合宿のテーマでもありましたね。

深井:そうですね。

(一同笑)

深井:ちょっと足りなかった。

渡邉:うん。

荒木:(笑)。