“何もしないお父さん”を生んだのは、姑の育て方

ピグマリオン恵美子氏(以下、ピグマリオン):そのあたり(親子の関係性)のお話も、いろいろ悩まれている(方がいらっしゃいます)。例えば申し込み時に質問をいただいているんですけれども、お父さんとお母さんの教育についての意見がなかなか合わないご家庭もとても多くて。

お父さんを変えていく、もしくは巻き込んでいくやり方も本に書いてあるんですけれども、差し支えない範囲で少し教えてもらえたらなぁと思うんですが。

イゲット千恵子氏(以下、イゲット):日本のお父さんの特徴は、なかなかお仕事の関係で、家にいる時間が短い。やはり母子のほうが密着してるという関係性だと思うんですよね。だけど、お父さんが何もしないで困るというのもよく聞いたりします。その場合、正直姑の育て方でそうなっちゃったわけなんで、姑を恨んでくださいと思うんですけれども。

そういう意味では、男性の子育ては、私たちがすごく重要な任務・役割を担っていると思っています。私たちが育てた男の子たちが、もっと女性のことを大事にしてあげたり、手伝ってあげられるようになるよう育てれば、こういったことにはならない。

お父さんが見て見ぬふりをしたり、「ママ、(子どもの)うんちが出てるよ」みたいに、おむつを取り替えられなかったりするのは、手伝う習慣がないからです。

だから今の私たちが、これから育てる男の子たち女の子たちに、お手伝いすることとか人を助けてあげることが当たり前のものとして家族の習慣の中に入れてあげることで、将来子どもたちが大きくなったときにそういったことで悩む、困ることもないだろうと思います。

例えば40歳の旦那さんだったら、中身を変えるにはやはり40年かかるので。そうすると、死ぬ前にやっと初めて気がつくことになってしまいます。なかなか長くかかってしまうんですよね。

そういった意味ではちょっと上手な言い方で、その人が手伝える範囲でお手伝いしてもらったり、またはこれから「お父さんたちも子育てに参加していかなきゃいけない」という風習を日本に作っていったりしないといけないと思います。

若い人たちはだいぶ変わってきていると思うんです。朝も、お父さんが保育園に送っていっている姿を微笑ましいなと思いながら見ています。若い世代はだんだん変わってきていると思います。

母親が、子どもの教育費は自分で稼ぐと腹に決めること

イゲット:教育方針がお父さんと合わない場合はすごくあると思います。お母さんがこういった教育をしたいんだけど、旦那さんが、「いや、うちは別にそんなことをしなくていい」とか、「公立行ってれば大丈夫だよ」という感じで、あまり「うん」と言わない場合があるんですけど。

これには一番簡単な方法があります。お母さんが、子どもの教育費に対して自分で稼ぐと腹を決めていただいて、「自分で稼いだお金は全部子どもの教育に使います」と言ったら、旦那さんは絶対に文句を言いません。「どうぞやってください」と。

今のお父さんにとっても、自分の稼いだお金で子どもの教育も家庭も生活も全部支えるって、負担が大きいんです。お母さんたちの仕事をがんばる意欲にもつながっていくと思うので、「子どもの教育費は私が稼ぎます。好きな教育を、子どもが受けたい教育を私が受けさせます」という心づもりをしてもらうと、お母さんはすごくがんばれると思います。

何か子どもにできること、与えてあげることを増やしていくという意味では、お母さんが好きな教育方針を選べますから。ちょっとやってみてください。

家庭という会社では、母親がCEOで父親が財務担当

ピグマリオン:この本を(お父さんに)そのまま渡して読んでもらったら、わかっていただけるんじゃないかなぁ。こういう論理的な説明をされると、男性も「そうか」と思いますよね。

『親は9割お世話をやめていい』(WAVE出版)

「家庭の中では、お母さんがCEOで、お父さんは財務担当。そういうふうにしましょう」って書き出しに、私はすごく納得したんです。

イゲット:そうですね。今日は男性の参加者の方も多くて(うれしいです)。うちのCEOキッズアカデミーは、子どもにビジネスを教える塾なんですけれども。そちらはお父さんのほうが(熱心に参加してくれます)。

実はお父さん自身が会社員として働く中で、新しいアイデアを出せとか、何か事業を作れとか言われても、自分は今までそういうことをしてこなかったというので、すごく困っているんです。だから子どもには特別な教育を与えたいということで、けっこう教育熱心なお父さんも最近増えているんですね。

そういった意味では、社会に出ているお父さんは、実体験として社会の難しさを教えてあげられるんです。

お父さんが子育てに参加すると賢い子が育つ

イゲット:あとはやっぱり、お父さんが子育てに参加すると賢い子が育つというか、知識雑学が増えるんです。お母さん1人で育てているとお母さん1人だけの情報になってしまうけど、お父さんと2人で育てたら2人分の情報が入るわけなので、絶対頭が良くなりますよね。

それから、お母さんはいつも忙しいからなのか、お父さんに「早くしてよ」という感じで子育て(も急か)しちゃうことが多いと思うんです。でもお父さんの場合は、子どもがずっと虫を見てるのをずっと一緒に見てくれたりとか、わりとゆっくり根気強く見てくれる部分もあるので。

だから役割分担を決めて、子育てに参加しやすいようにしてあげるのも、お母さんの腕の見せ所なんじゃないかなと思います。

ピグマリオン:そうですよね。でも、日本も少しずつ変わってきてるなという気がしますよね。

イゲット:本当に。

ピグマリオン:だけど、やっぱりアメリカの話を聞いていると、差がありますよね。

イゲット:それは結局、生まれた時から親の育て方が違うから。そこを一緒にしちゃうのは難しいなと私も自分で思います。

親として「新しいこと」を導入するのを恐れないでほしい

ピグマリオン:それこそ今はオンラインでいろいろとお仕事できるわけですから。日本に住んでいながらもグローバル社会でやっていくという時に、この差は大きいですよね。

イゲット:大きいと思います。その意味では、なるべくお母さんお父さんたちには、親として新しいことを導入することを恐れないでほしいなと思っているんですね。人と違う変わったことをするとなると、やはり日本は同調圧力がすごく大きいので、みんなが学校に行ってるから学校に行くとか、塾に行ってるから塾に行くということなってしまいがちなんですけれども。

これからはAO入試がどんどん増えていくと思います。そうなると本当に「みんなと同じ」じゃ大学に合格できなくなりますよね。今は早稲田大学も3割ぐらいはAO入試です。(他の大学より)先にいい人たちを採りたいんです。少子化だからこそ、いい人材をどんどん先に採りたいというのが当たり前だと思います。

あとはどうしても少子化が進んでいくと、大学も経営ができなくなってしまう。やっぱり海外からの留学生に入学してもらう場合に、どうしてもその子たちと競争して入るかたちになっていくと目に見えてわかっている。

わかっているんだったら、その準備をしましょうというかたちで逆算するんです。私はなんでも逆算で考えていくということを、この本の中でも推奨しています。私たちはどうしても遠くの未来を見つめて考えるよりも、自分の目の前の作業のほうを先にやってしまう習性があると思うんです。

どちらかと言ったら、先の未来を見た時に「こういうゴールにするんだったら何をやったらいいか」がわかる。それですごく短くショートカットできるというか、近道でひゅっと行けたりするんですよね。

子育てのゴールは、安心して失敗させてあげられる関係作り

イゲット:逆にチャレンジしたことで失敗しちゃってもいいわけですよね。失敗ってすごく勉強になることで、体験が増えることなので。安心して失敗させる。「今日、何を失敗したの?」って言えるくらい、失敗が大きな人間力になったり、経験値の高い子になったりするわけなので。

失敗して帰ってきても、家から何かおいしい匂いがして、お母さんがご飯を作っていて「あぁ、そう。だめだったの。しょうがないわね」という感じで次にいける。安心して失敗させてあげられる環境作りや関係作りが、今後の子育てのゴールになるんじゃないかなと思っているんですね。

AIによって人間の仕事が当然少なくなっていく中で、コミュニケーションだったり、人間がどんなものが必要なのかとか、どうやったら便利になるだろうかとか、この世の中をどうやって変えていこうかみたいな「社会貢献的な思考」を持っていないと、仕事がいつもある人と、仕事がぜんぜんない人との差ができてしまうと思います。

その辺りも逆算して、「うちの子がこういうゴールを目指すには何をしたらいいかな」と考えておくと、わりと迷わずに子育てできるんじゃないかなって思います。

ピグマリオン:本にも詳しく、その逆算の仕方を書いていただいてましたよね。そう思うと日本のお母さんって、その逆算思考をされてない方が多いような気がしますよね。

迷い悩む時間があったら、「経営者思考」で行動する

イゲット:そうですね。この1つは「経営者思考」だと思うんですね。私たちはどうしてもいい労働者で、消費者になるように育てられている。そういう学校の教育でここまできているんです。

でも経営者思考で、毎日毎日いろんな問題が起きていているけれども、それを解決する方法を考えるほうが、友好的に先に進めるじゃないですか。

だけどどうしても(お母さんたちは)重箱の隅をつついちゃったり、だめなことにフォーカスしちゃったりとか、浮き沈みがあってどーんと沈んでいる時間が長かったり、悩んでいる時間が長かったりするんです。

悩んでいる間に子どもなんてどんどん成長しちゃって、あれ子育て終わってましたみたいになっちゃったら、もう手遅れじゃないですか。

ピグマリオン:そうなんですよね。

イゲット:だから迷ってる時間があったら、何か行動してみる。合ってるかどうかは行動してみた結果で、「あぁ合ってたんだ」ってわかるし。「ああ、これ違ったんだ」と思ったら、また方向転換すればいい。「我が家の子育てはこういうものなんです」という指標を、ある程度お母さんたちがどんと構えて、失敗しても大丈夫ってなればいいですよね。

ピグマリオン:ご夫婦で話しあってもなかなか出ないですよね。ここは「家の中の社長」ということで、お母さんにびしっと決めてもらいたいところです。

イゲット:そうですね。だって、自分の会社の社長があっちもこっちもと迷っていたら、絶対そんな会社なんかに勤めたくないじゃないですか。

ピグマリオン:日本のお母さんって、「自分が社長」という意識があまりないじゃないですか。一応パパという大黒柱が我が家の舵を握っていると思っているお母さんは多いんだけど。子どものことはお母さんが決めないと、お父さんはわからないですよ。

イゲット:そうですね。あと、男性の場合は、例えば受験でA校とB校とC校があってとか、選ぶものがあって「この中でどれがいい?」と聞くのならすぐに回答をもらえるんだけど。「え~どうしたらいい?」というのに付き合うのはちょっと苦手だと思うんですよね。

だから、そこが男性脳と女性脳とか、考え方の違いもあるので。奥さまたちも、自分が選んできたものの中で「これとこれとこれのどれがいい?」みたいにしたら、すぐ回答をもらえるので。迷わずにというか、時間を無駄にせずに子育てできるんじゃないかなと思います。

ピグマリオン:貴重なご意見ありがとうございます。

クラウドファンディングを使った「子育て革命」

ピグマリオン:ここで千恵子さんの本のクラウドファンディングを先にご紹介してもいいですか?私は普通にネットでこの本を買おうと思ったら、もう買えなくて、買っても届くのが先になるぐらいすごい売れ行きですけれども。クラウドファンディングもされていて、そちらの(画面を)共有します。

イゲット:CAMPFIREでクラウドファンディングをしていて、今日の23時59分までなので、あと3時間ぐらいで終わりなんですけれども。

ピグマリオン:子育て革命ですね。

イゲット:そうなんです。今269人の方に参加していただいています。ここで本を購入していただくと、3月12日に、この本には書ききれなかった内容のセミナーに招待させていただきます。AmazonとかKindleで購入していただいたり、書店で購入していただくよりもちょっとお得になっているので、ぜひこちらで。

ピグマリオン:セミナーに出たかったら、お友だちにも(クラウドファンディングで)買ってもらうみたいな。

イゲット:ぜひ、お友だちにもプレゼントとか。あと、これから赤ちゃんを産む人のお祝いにあげるという方なんかもいらっしゃるので。

ピグマリオン:みんなこの子育て改革をしたいという、仲間ですもんね。