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【藤田晋氏×堀江貴文】サイバーエージェント藤田晋社長が、ホリエモンの宇宙ビジネスに出資した理由(全3記事)

10年前には失笑された「宇宙ロケットを作る」という夢 堀江貴文氏とサイバー藤田氏が語る、宇宙ビジネスへの思い

「低価格で便利な、選ばれるロケット」をミッションに、観測ロケット「MOMO」と超小型人工衛星打上げロケット「ZERO」を独自開発・製造しているロケット開発ベンチャー、インターステラテクノロジズ株式会社。第三者割当増資により、シリーズDラウンドで総額17.7億円の資金を調達しました。今回は、サイバーエージェントの藤田晋氏が堀江貴文氏の宇宙ビジネスの出資に至るまでの舞台裏や、インターステラテクノロジズへの期待、両社が描く事業シナジーなどを語ります。投資対象としての「宇宙ビジネス」の優位性は、いったいどこにあるのでしょうか。

堀江氏の宇宙ビジネスに出資した、サイバー藤田氏

堀江貴文氏(以下、堀江):藤田さん、よろしくお願いします。

藤田晋氏(以下、藤田):よろしくお願いします。

堀江:インターステラテクノロジズの宇宙の話なんだけど、サイバーエージェントグループにたくさん出資していただきまして。宇宙について、あんまり2人で話したことがないんですけど、率直に言ってどうですか? 最近、前澤さんが宇宙に行ったりして、宇宙がちょっと盛り上がってきていますよね。

藤田:あれはやっぱり、ちょっと身近に感じたよね。

堀江:あ、そう。やっぱりそういうもん?

藤田:いや、まさか宇宙に行こうなんて思っていないけど、前澤さんが行って帰ってきたから、ということは俺も行けるのかぁと思って。

堀江:古くはさ、うちの元ライブドアのね。

藤田:榎本(大輔)さん。

堀江:榎本さんが1回行こうとしていたのは知っています?

藤田:うんうん。やってたね。でも、あれも相当訓練みたいな、身体作りみたいなことをしていた気がするな。

堀江:でも、実際は打ち上げて何もなく宇宙ステーションに行って帰ってくるだけだと、別に宇宙に行く訓練はいらないんですよ。

藤田:そうなんだ。

堀江:だって、基本自動操縦だから操縦するわけじゃないし。

70〜80代でも、健康な人なら宇宙へ行ける可能性がある

藤田:でも、身体の制限とかあるでしょう?

堀江:ないよ、ないよ。

藤田:運動神経的なものもないの?

堀江:ないない。

藤田:ないんだ。

堀江:普通の状態だとMAX3Gくらいなんですよ。

藤田:ん? 3G?

堀江:3G。重力加速度の3倍だから、ジェットコースターよりは楽なくらい。

藤田:うん。

堀江:あの激しめな「ド・ドドンパ」みたいなジェットコースターよりは、かかるGが低い。

藤田:まあ、行きたくはないけどね(笑)。

堀江:だから、別に70代、80代の人でも。

藤田:行けるんだ。

堀江:まあまあ、そこそこ健康だったらぜんぜん行ける。ただ、なんで宇宙ステーションに行く訓練が必要かというと、あれはほとんどサバイバル訓練なんですよ。

藤田:うん。

堀江:つまり、地球に帰ってきた時に、ほら、水切りわかる?

藤田:うん。

堀江:こうやって(手を水平に振って)石を水に切ると、パンパンパンパンって行くじゃないですか? あの水が地球の空気で、大気圏だったとしたら、突入角度を間違うと……。

藤田:怖っ!

堀江:あの水切りみたいになっちゃうんですよね。

藤田:うん。怖っ! そんなの絶対行きたくないわ。前澤さんもよく行くよね。

堀江:(笑)。もちろんそういうのはコンピュータでちゃんと制御しているんだけど、ちょっと突入角度をミスると、300キロ先とかに着陸したりするんで。

藤田:そうでしょう。

堀江:そう。だから、例えば運悪く雪山や凍った湖の上に着陸するとか、太平洋のど真ん中に着水するとか。

藤田:(笑)。

堀江:いろいろあるんだけど、そういう失敗モードの時にサバイバルできる訓練をやるんですよ。

藤田:うん。

もしも搭乗ロケットが爆発したら、どう生き延びる?

堀江:あとは、打ち上げの時にロケットが爆発する可能性もあるので。

藤田:だよねぇ。

堀江:脱出用のロケットがあるから、爆発した時はそれで脱出するのよ。

藤田:うん、うん。

堀江:それはね、10Gを超えちゃうのよ。

藤田:ほう。

堀江:でも、10Gって言ったら、なんていうの。

藤田:3倍以上っていうこと?

堀江:そう。気絶するんですよ。

藤田:うん。

堀江:もっと言うと、一人ひとりに座席をカスタマイズして、型取りをしているから、前澤君だったら前澤君に合わせたシートを作るんだけど、合わせたやつを作らないと、心臓がもげて死ぬくらいの加速度なの。そういうのには当然耐えられないので気絶するんだけど、気絶しても生きられるような訓練をするみたいな。

藤田:聞けば聞くほど、行きたくないよね。

堀江:(笑)。

藤田:(笑)。

堀江:宇宙飛行士の山崎直子さんに聞いた話が今でも続いているかどうかわからないんだけど、おしっこをするでしょう? 地上にいる時は、重力が手助けをしておしっこしているらしいのよ。無重力になると、おしっこが出ない人がいるらしくて。

藤田:うん。

堀江:おしっこが出ないと、もう大変なんだって。腎臓が尿路結石になったみたいな状態になって、痛みがすごい。

藤田:本当(笑)。

堀江:それを解消するために、自分で尿道に管を入れて、自分で排尿する訓練をしたらしいんだけど。

藤田:ひぇ~。

訓練も必要なく、宇宙旅行へ行ける時代はくる?

堀江:あまり身近じゃない話をいっぱいしちゃったけど、でも、そういう訓練をするためにちょっと時間がかかっていたというだけで、近い将来はそういうの(危険)もなくなるんで、訓練もいらなくなりますよ。

藤田:それこそ、20年以上前に堀江さんに初めて会った頃から「宇宙開発する」って、「宇宙に旅客機を飛ばす」みたいなことを言っていたんですよ。

堀江:うんうん。

藤田:目を輝かせながらそう言っていたけど、「俺は行かない」って言っていたんですよ。

堀江:(笑)。

藤田:(笑)。飛ばすし、そういうビジネスをいつかやるけど、「俺は乗らないんだ」みたいなことを言っていて。当時から、堀江さんが作ったシステムの「サイバークリック」(の事業)を一緒にしていたんで、そこがよくサーバーダウンしていたりとか。

堀江:(笑)。

藤田:故障するから(笑)、そのロケットには乗りたくないなと思った覚えはあるんですよ。

堀江:いやいや、俺がプログラミングするわけじゃないから。あの頃はそうじゃなくて、スピード重視でやっていたんで。スピードと安全性はトレードオフの関係にあるんで。

藤田:はい。

堀江:あの時は「サイバークリック」をとにかく最速で立ち上げて。

藤田:そうね。

堀江:普及させるっていう。

藤田:(笑)。

堀江:そのかわり、1パーセントから2パーセントくらいのダウンタイムはあるかもしれないよね、みたいな。98パーセント、99パーセントくらいの可用性で動かしていた感じですかね。

藤田:まあ、そうですね。

堀江:そうなんですよ。それはね、わかっていてやっていたんで、大丈夫です。もちろん、できるだけトラブルが起きないようなシステムにはしていたんだけど、だいたい想定外のトラブルが起きるので。

10年前には失笑されていた、堀江氏・藤田氏のビジネスの展望

藤田:でも、本当に会った時から宇宙の話をしていたんで。1回目ですよ。それこそ1998年に初めて堀江さんのオフィスに行って、「サイバークリック」を作ってくれという話をしていたら、堀江さんがずっとしゃべり続けて、最後はずっと宇宙の話をしていたんですよね。

堀江:そうだっけ?

藤田:そうなのよ。

堀江:(笑)。

藤田:(笑)。「宇宙開発をいつかやるんだ」みたいな。でかいことを言うやつがけっこう見所があるというのは昔からあったけど、宇宙までいかれると「もう話すことないわ」みたいな感じになるもんね。

堀江:なんかね、そう。テレビに一緒に出た時も宇宙の話をしていたんです。

藤田:そうそうそう。

堀江:僕は「宇宙ロケットを作る」と言っていて、彼は「藤田テレビを作る」と言っていたんですよ。

藤田:(笑)。

堀江:(笑)。藤田テレビを作るって。

藤田:そう。あと、野尻さんも何か言っていた気がする。

堀江:ノジトンホテルを作る。

藤田:(笑)。そうか、みんな作ってるじゃん。

堀江:みんな作っちゃった。TRUNK(HOTEL)を作っている野尻(佳孝)さんという人と、「ABEMA」を作っている藤田さんという人がいて、3人でテレビに出たんですよ。

藤田:昔ね、当時は20代の上場企業の社長が我々3人しかいなかったということで。

堀江:ああ、そうね。

藤田:そういう番組に出たんですよ。

堀江:はいはい。

藤田:20代の時はみんなでふかしまくっていたんだけど。

堀江:うん。でも、10年ちょっとで、だいたいみんな実現しているんでいいんじゃないですか?

藤田:言えば形になるということなのかな。

堀江:みんなけっこう失笑されていたけどね。

藤田:そうだね(笑)。

堀江:(笑)。あのテレビに出た人は(失笑されていたよね)。

藤田:(笑)。そうです。

堀江:BSか何かのテレビ番組だったと思うけど。

藤田:当時は、本当に失笑されるのが日常みたいな感じだったもんね。

AI技術を柔軟に取り入れる、若手の棋士たち

堀江:でもね、ちょっと時代がくだりまして、こういう状況になって、「ABEMA」もまさかの展開というね。今も、そこで藤井聡太さんの試合をやっていたけど。

藤田:やっていましたね。

堀江:俺は将棋がこんなに盛り上がるって思わなかった。

藤田:将棋はABEMAの人気コンテンツのひとつだよ。

堀江:すごい。藤井さんはどうなんですか?

藤田:強すぎでしょ。

堀江:でもさ、あれはAIの将棋と対戦しているから強くなったって聞いているんですけど。

藤田:うん、やっぱり若い棋士たちは技術的な進化をちゃんと取り入れているんですよ。そこに柔軟な世代が伸びてきているんじゃないですか?

堀江:だって、あれなんでしょう? ロジックとかじゃなくて、勝ち筋というかパターンというか。AIの考え方だと模様として捉えて、この模様が強いとか、この局面で何を打つと強いのかを機械学習して、すごく強くなっているっていう。

藤田:そうそう。将棋ファンの中では「藤井曲線」と呼ばれているんだけど、評価値って言って、どっちが有利というのは(最初はお互いに)50パーセント、50パーセントから始まるんですよ。

堀江:うん。

藤田:それが、藤井聡太さん側に少し傾くと、そのまま差をずっと広げていっちゃうのよね。途中でミスらないようにする。コンピュータ並みに正確で、コンピュータが一番推奨しているところにピシピシ打っていくから、どんどん差が開いちゃうっていう。

スマホの技術進歩が、ロケット製作にも影響を及ぼしている

堀江:他の棋士はそれができないってこと?

藤田:みんなどこか人間なんで、ミスったり評価値が逆転することってよくあるんですよ。よくあるというか、ほぼみんなやるんだけど。藤井聡太さんだけ、1回差がつくともうずっと差を広げていっちゃう。

堀江:ある意味、AIと同じようにそのへんはけっこう割り切って打っているというか。

藤田:そうだよね。あらゆる分野がそうで、競馬とかも最近聞いたら新しい技術革新が起きていて、配合とかもそうだし、騎手の技術的なものもそうだし、育成もそうなんだけど、そういうのを大手ほど早く取り入れていて、人材も大きく育って、そうじゃないところと差が開いた。設備投資できないマグロ漁師みたいに。

堀江:大間のマグロのね。

藤田:そうそう。毎年釣れるのに差が出る感じだと思うんだけど。

堀江:実はロケットもそうなんですよ。ロケットも、やっと我々の手に届くようになってきたのは、まさにスマートフォン革命が大きくて。あれに使われているセンサーとか、ITに使われているセンサー類が安くなったりしたことによって、ニュースペースという分野が出てきている。

藤田:そうだろうね。

堀江:うん。

インターネットの歴史と当時の価値観

堀江:僕が最近わかりやすいように説明をしているんだけど、技術的に言うと、これまでのロケットはインターネットで言うところの、UNIXが入っているサン・マイクロシステムズの高いサーバーみたいな感じなんですよ。

僕らが起業した頃って、1台100万円以上するようなサーバーがないとインターネットサーバーが作れない感じだったじゃない? 

藤田:うん。

堀江:だけど僕らはLinuxとかを使って、「PCでやっているので、うちは安いんです」みたいな売り方をしていたんだけど、やっぱり大企業ってぜんぜんそれを導入してくれなかったんだよね。

藤田:そうですね。

堀江:大企業にそれをプレゼンすると、「いやいや。そんなところで安物買いの銭失いしたくないから、高いの使おうよ」みたいな話になっていたのよ。なんですけど、「サイバークリック」とかは、まさに最初からそういうオープンソース系のデータベースを使って安く仕上げていて、そこがやっぱり技術革新になった。

逆に言うと、今、そんなのを使っていないところはないわけじゃない。みんながもう寄ってたかって使うようになったわけじゃない。でも、それはベンチャー企業だったから、そういうものに対しての理解があったというか、よくわからなかったというか、どのへんなんでしょうかね?

藤田:やっぱり、堀江さんが、みんなが信じている前提を信用しないというか。

堀江:うん。

藤田:「こっちのほうが便利じゃん」とか「こっちのほうが安いじゃん」と率直に正しいものを選べるっていうのが、たぶんネットの最初の頃にあった優位性だと思うんだよね。

堀江:うん。

藤田:そういう感じなんじゃない? もうどんどん変わっているってことでしょう。

投資対象としての「宇宙開発」のアドバンテージ

堀江:そう。まさにそういう時代に来ていて、国の偉い人たちとか頭のいい人たちがやっているから間違わないんじゃないかと思っているんだけど、そういう人たちが集まる場所だからこそ、意外と古くて実績のあるものを追ってしまうところが、まず1つある。にもかかわらず、インターネットみたいな新しいものがあると飛びついちゃうじゃない?

藤田:うん。

堀江:例えば、今だったらIT業界だとメタバースとかNFTがバズワードで、ワーって飛びついているじゃん。

藤田:うんうん。

堀江:ビットコインとかイーサリアムの黎明期から関わっている者としては、NFTはもう3周目くらいで、「これは昔、散々っぱら実験したトークンエコノミーの一種だよね」みたいな。

バブルとバブルの後退を何回も繰り返して、イーサリアムとかビットコイン長者になった人たちがけっこういて、その人たちの投資先として盛り上がっているなという感じはするけど、技術的にはそんなに目新しいものじゃない。わかんないけど、そういうものに大企業も飛びつくじゃない?

藤田:そうね。そのへんは参入障壁が低く見えるんですよ。例えば、うちが参入するにしても、そのへんだったらいつでもやれる感じがするんだけど、宇宙開発というともうわけわかんないし、「できないわ」というところがある。今回投資するにあたって、それはすごくアドバンテージになるんだろうなと。

堀江:逆にね。

藤田:その中を精通している人たちしかできないっていう。

堀江:はいはい。

藤田:だから、半導体の装置メーカーもそうだけど、中をめっちゃ知っている人しか作れないので、おいそれと参入できないですよ。うちがやっているメディアとかコンテンツはみんな参入してくるんだけど、みんな見まくっていて、よく知っているからですよね。

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