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政官民のトップランナーが語る、「女性活躍」の未来(全4記事)

今までの管理職のように働けないなら“そうじゃない管理職像”を目指していい 女性が活躍する職場を作る「まずやってみる」のマインドセット

「社外メンター×女性管理職育成」に特化して支援を行う株式会社Mentor Forが主催で行われたイベント「政官民のトップランナーが語る、「女性活躍」の未来」の模様をお届けします。特に政治分野・経済分野で遅れをとっている、日本の「女性活躍」。本イベントでは、政官民それぞれのトップランナーをゲストに迎え、女性活躍推進の現状・課題・取り組みを共有しました。本記事では、「まずやってみる」のマインドの重要性が語られました。

女性の管理職登用が難しいのは本当か?

池原真佐子氏(以下、池原):それでは事前にいただいた質問や、チャットの中でもいくつか質問をいただいているので、Q&Aタイムに移ります。みなさん聞きたいことがてんこ盛りだと思うので、聞いてみたいと思います。

まず事前に来ていた質問としては、「女性が活躍できる組織作りをしたいんだけれども、重要なポジションに女性を登用することに、産休などで一時的にいなくなるかもしれないという理由で躊躇してしまう。どうしたらいいか」。まず源田さんに聞いてみましょうか。いかがですか?

源田泰之氏(以下、源田):すごく難しい質問なんですけど、答えとしては「1回やってみたらいいじゃん」と思っています。僕らの中にも当然バイアスがあって、躊躇するというのが人間の本能というか。まさに無意識のバイアスの中で、何かブレーキをかけることがあると思うんですけども。

外部のアドバイザーの方々から話をしてもらって、おもしろいなと思ったのが、正解はないんだから試してみるのが重要じゃないかということです。

例えば一般的に「女性の営業の管理職はなかなか難しいんじゃない?」と言われていたり、当社の中でもそんな話があったんですが、「それ本当? まずやってみたらいいんじゃない?」と。そんな言葉が私にはすごく響きました。

これまでのやり方をすべて見直して、フラットに考えて、自分自身の中にもバイアスがあるんだと意識した上で、まずやってみるということがすごく大事じゃないかなと思っています。

「悩んだらやってみよう」のマインドセット

源田:あとは、これもなかなか一企業の立場だと難しいですけれども、やっぱりラウンドテーブルしている中で、同じように働いていても何となく男性に「家事は女性が8:2でやるものだ」とか「7:3でやるものだ」とか「手伝っているんだ」という感覚がある人もいて、それを変えるのはなかなか難しいという話もあります。

そこに対しては、一企業としての取り組みで何ができるかというのは悩ましいですが、例えば冒頭のあたりでお伝えしたような、男性育休をちゃんと会社として認めてというか、むしろ推奨していくこととか、そういったことはできると思っています

そういう意識改革を、社員に対して会社の中でどうやったらできるか、女性だけではなくて男性も含めて、引き続き啓蒙をしっかりやっていくべきかなと思います。

答えになっているかは別ですけど、「悩んだらやってみよう」が少しあってもいいのかなと思っています。

池原:ありがとうございます。まずやってみる。そしてうまくいったらなぜうまくいったのかとか、うまくいかなかったらどこがうまくいかなくて、次どうしたらいいかってヒントにもなるということですかね。もしかしたらそれに関連する質問かもしれないんですけど、3人のうちどなたかにお話いただきたいです。

男性のような働き方ができないなら、自分のスタイルでやってみる

池原:「女性が管理職になるように支援しているけれども、女性からは『今まで見てきた男性のようにリーダーになれる気がしない』という声を聞く。それを男性の上司に伝えても、『具体的に何が違うの? 別に男女差じゃなくて個人差じゃないの?』と言われ、うまく説明できない」。

自分らしいリーダーシップとか、女性がリーダーになることにおける振る舞い、リーダーシップの在り方。これはいかがでしょうか。川村さん、内藤さん、このあたりはいかがですか? 川村さんからお願いします。

川村美穂氏(以下、川村):今、経済産業省の中で、局長級の女性は0人なんですね。もちろん次官も男性です。そして私のような管理職は、特許庁は比較的数が多いんですが、本省だけだと数パーセントというような状況です。

私が管理職になる時に、男性のようにとにかく朝早く来て夜遅くまでいて「この人、ここに泊まっているのかな」と思うような働き方は絶対できないと思いました。私は下の子がもう中学生ですけれども、家庭のこともしたいし。

そういう働き方ができないなと思う一方で、内藤市長からもありましたように、「ただ、ここでやらないと私を見て続いてくれる人もいなくなるよね」と考えて、その時にやってみようかなとと思いました。

私は私のスタイルでやってみようかなと。とにかくやってみて、それで働き方がダメだとか、足りないと言われるようなのであれば、そこはそこでまた課題があるということなのかなと思って、今、チャレンジしています。

「そうじゃない働き方を目指す管理職像」を作ってもいい

川村:私は夜7時くらいには必ず帰ることを心がけています。私は育児休業を長期に取ったことで、(経験が)必要な時にその経験をしていないという劣等感があるんです。「私、国会対応なんてそんなに経験していないんだよね。答弁作成も数回しかやったことがないんだよね」とか。

経験の浅い自分への劣等感の塊のまま管理職に就いて、本当に不安を感じながらやってきましたけど、案外何とかなるもんなんですね。いきなり「議員のところに行け」と言われても、まあ周りが助けてくれました。

お答えになっているかどうかわかりませんけれども、「まずやってみませんか?」と。「私、あんな働き方できない」と言うんだったら、そうじゃない働き方を目指す管理職像を作ってみませんか?と、女性の方にはお伝えしたいですね。

勇気を持って飛び込んで、できなければその時また考えればいいかなと思います。いい加減な私自身の感想になりましたけれども、以上です。

池原:川村さんも悩んだり、劣等感をお持ちだったんだなと思うと、それだけですごく励まされます(笑)。内藤さんはいかがですか?

内藤佐和子氏(以下、内藤):私も「やってみればいいんじゃない?」というところに賛同します。男性のイメージがあるところに、例えば消防局とかでも女性の管理職を作ったり、市役所の経済部長も女性ですし、女性をきちんと登用していくというのをやっています。

「何か難しかった?」って聞くと、「いやいや、別にやってみたら案外大丈夫だった」とみんな言ってくれるので、それを下にどう伝えていくかが課題かなと思っています。

「自分らしい在り方」を前提にリーダーシップを発揮する

内藤:あとはやはり、新しいリーダー像を作っていくこと。まさにそのとおりだと思いますし、そこをDXで補っていく省力化が大事かなと思っています。

徳島市役所も行政版のLINEを入れています。報告のために市長室にわざわざ来なくていい、資料をポンって1枚ペラで添付して、ピッて送っておいてくれたら、それでわかんなかったらまた聞くから、それで会議を減らそうよと。レクの時間も減らそうよと。そういうかたちで、時間の省力化を図っています。

それはもちろん私自身のためでもあるんですけれども、「(常に)市役所にいなきゃいけない」ではなく、できるだけ会議の時間を減らすとか、報告の時間を減らすことによって、働き方改革という意味でみんなにとって働きやすい環境を作っていけるのかなと思っています。

池原:ありがとうございます。今のお話の中から1つキーワードとして、まず「自分らしいリーダーの在り方を自分で作る」こと。そこに紐付いて、これまでの旧態依然とした長時間労働を前提とした働き方を変えていくチャンスにもなるというのが1つかなと思いました。

あともう1つ思ったのが、よく言われる「リーダーシップのジレンマ」という言葉で、社会に求められる女性のイメージ。そして社会がリーダーに求めるイメージが男性的であるというところで乖離があると。

なので女性がリーダーになった時に、男性的なリーダーの振る舞いをするとバッシングを受けやすい。逆に求められている女性的な振る舞いをすると「指導力不足」と言われたりするというジレンマが、日本でもアメリカでもあると聞いています。

その答えとして「自分らしい在り方」。ちょうど働き方改革が出ている中で、時間的な制約が男女問わずこれからも起きるものだという前提ができるので、長時間労働を是としないような働き方を探していく感じになるのかなと思いました。ありがとうございました。

男女問わず仲間を増やし、ムーブメントにして巻き込む

池原:たくさん質問が来ているので、すべては巻き取れないかもしれないんですが、まず「男性の巻き込み」というところですね。

「D&Iを本気でやろうとする経営戦略が大事である。しかし女性が現在マイノリティの中、トップがコミットしても、従業員が納得を持つこと、経営戦略に男性を巻き込むのが難しい」。

巻き込みという点で、どのようにヒントがありますでしょうか。どなたかよろしければご回答ください。源田さん、お願いします。

源田:さっきお伝えした仲間を作っていくところの、「作り方」がすごく大事だと思うんです。トップのコミットと、仲間の作り方ですね。仲間というのは、女性活躍推進が本当に重要な経営課題であるということを、心から一緒に思えるような人たちを、どれだけ広げていくのかが大事かなって思いますね。

池原:ありがとうございます。次に来ている質問も同じなんですが、やはり男性・女性も含めて、どんどん社内に志を同じくする仲間を作っていって、ムーブメントのようにすることが大事なポイントかなと思いました。

日本の20〜30年先を行く、アメリカのダイバーシティの歴史

川村さんに質問が来ております。「欧米は性別役割分担の意識が日本ほど強くないということなのですが、これはもともとなのか、それとも社会の働きかけなどで徐々に弱くなっていったのでしょうか」。このあたりいかがでしょうか?

川村:私は後者だと思います。欧米も、例えばアメリカの例を挙げますけれども、アメリカはもともと人種差別の問題がダイバーシティの取っ掛かりだったんですね。黒人の方の問題から始まって、(実際に起こったのは)訴訟対応だったんですね。

要は、差別をすることで訴えられて企業ごとコケてしまうような、そういったリスク対応から「多様な人を」という考えになっていき、多様な人を活躍させる中で、「ああ、実は多様性にはいいことがあって、成長につながるんじゃない?」というデータが出始めて、しっかりと根付いていっているというのが、大雑把に申していますけれども、アメリカの流れなんですね。

アメリカと日本でどのくらいダイバーシティの度合いが違うかと言うと、日本が20年から30年遅れていると言われています。アメリカでは人種の問題があり、その中にジェンダーの問題があり、最初は訴訟対応から否応なくやっていたものが、成長につながってきたといった流れになった歴史があります。

先人の研究があるからこそ、女性活躍に取り組みやすい日本

川村:日本がある意味、逆にラッキーだなと思うのは、手探りで進むトップランナーではないところです。他国がたどってきた道で効果があるということが、先人の研究で出ているんですね。ですので、所与として「ダイバーシティ、女性の活躍は企業の成長に効果があるんだ」と、そこから入っていただくことが可能なんです。

そういった意味では、日本の意識は一気にギアを上げて高めることが可能だと思っていますので、ぜひしっかりとみなさんで取り組んでいただければなと思います。

例えば、フランスは非常にジェンダー意識が強かったんですね。先ほど冒頭に申しましたけれども、今、女性取締役比率が40パーセントを超えているんです。これはひとえにクオータ制度ですね。他国では女性割合を強制的に法律・制度で決め、達成できなければ罰金を払うということをやり、一気に変えていったという事実があります。

クオータ制度は、善し悪しあると思いますが、企業の経営の部分に、女性を何パーセント入れると強制することについては、個人的には課題が多いと思います。もともと層が薄い中から、引き上げないといけないこともありますし。

私自身はクオータ制度は、お互い不幸になる場合もあるかなと。ただその反面、こういった状況の中でクオータ制のようなものを入れて一気に意識を変えてしまうことは、案外やればできるような気もするんですね。

話が散発しましたが、もともと他国にもジェンダーバイアスやレイシャルバイアスはあったんですが、そこを歴史の中で対応することによって変えてきた。アメリカの場合は歴史が古く、それが今に至る。フランスの場合は、クオータ制度のように、一気にギアを強制的に変えてきた。それぞれ自国にあう形で今に至っているという状況です。

今はエクイティ(​​公平)でも、今後はイコール(平等)へ

池原:ありがとうございます。クオータ制度であったり女性活躍の施策を進めて行く時に1つ、よく代表的に挙がる声として「これは男性差別ではないか」というお声があるのかなと思います。

私の個人的な意見としては、今まで機会が偏っていた。そこに下駄を履かすということではなく、手の届く位置をそろえるというか、今まで届かなかった位置だったのが、今は同じにしているという点で、必要な対策であるのかなと思います。

ただおっしゃるとおり、そこをそのままに済ますわけではなく、みんな手を伸ばせば普通に届くような、男女関係なく手が届くような社会にしていかなければいけないなと、今のお話を聞きながら思いました。

川村:イコール(平等)とエクイティ(​​公平)の考え方ですね。

池原:エクイティですよね。

川村:まさにそう思いますね。今の時期は「エクイティ」が必要な時期かなと思います。ただ、将来的には「イコール」で、女性が男性同様、平等の世界、誰もが平等の機会を得られるといった状況を作ることが目標かなと思います。まったく同感です。

池原:ありがとうございます。本当は聞きたいことや、もっとお話いただきたいことが山盛りだと思うんですが、そろそろお時間になりましたので、最後にみなさまからあらためて一言ずつ、みなさんへメッセージをいただければと思います。それでは、川村さまからお願いします。

「成長と分配」

川村:ありがとうございます。本日はあっという間の時間でした。企業の源田本部長のお話、地方自治体の内藤市長からのお話、それぞれ私たちが企業の方に推し進めていく上で、いろいろヒントになるお話がたくさんありました。

一生懸命私たちが考えていることを、それぞれみなさまもがんばってやろうとしてくれているんだなと、非常に私自身も元気が出たというか、勇気が出ました。

先ほど少し申し上げましたけれども、政府もなでしこ銘柄の調査票をより時代に合うものにしていったり、メンター制度が非常に効果を出しているという他国の事例なども踏まえながら、新しい施策ができないかと検討しているところでございます。

そして、源田本部長からも話が出ましたけれども、人的資本ということで、岸田内閣の下「成長と分配」というお話が出ています。よくお聞きかと思いますけど、分配するには、成長しないといけない。

成長というのは、やはりそれに見合う人を育てていかないといけないというところで、経済産業省の中でも人的資本経営をどのようにやっていったらいいかというガイドラインを検討しています。

また、未来人材会議では、将来の人材をしっかりと育てていくために、どのようなことが必要かというような話も進めております。本当に誰もがイキイキと活躍できる世の中になるように、引き続き努めてまいりたいと思いますので、みなさまどうぞよろしくお願い申し上げます。

池原:ありがとうございます。それでは源田さま、お願いします。

女性活躍が当たり前になる社会へ

源田:本当に今日は大変勉強になりました。女性活躍推進は自社の中だけで考えるのではなくて、こういう機会をいただいたことで、たくさんの取り組み事例や悩み、方向性など、間接的にアドバイスをいただけて、すごく楽しかったです(笑)。

引き続き、他の企業や外部の皆さまと情報交換をしつつ、模索しながら、チャレンジしながら、女性活躍推進のリーダー的な会社の1つであると言われるように、頑張っていきたいと思います。引き続きどうぞよろしくお願いします。

引き続き、他の企業やいろんなところと情報交換を進めながら、正解を探すというわけではないんですけど、いろいろ模索しながら、チャレンジしながら、女性活躍推進のリーダー的な会社の1つであると言われるように、がんばっていきたいとに思います。引き続きどうぞよろしくお願いします。

池原:ありがとうございます。それでは内藤さま、お願いします。

内藤:本日はみなさんありがとうございました。私自身もすごく学びになる部分もありましたし、源田さんがおっしゃるように楽しかった部分も非常にあって、有意義な時間でした。本当にありがとうございました。

やはり女性活躍にはいろんな課題もありますし、進めていこうとすると難しい部分もまだまだ日本でもあるとは思うんですけれども、女性活躍が当たり前になる社会に、みなさんとともに取り組んでいきたいなと思います。

また、いろんな事例を教えていただければ、徳島市としても取り組んでいきたいなと思いますし、日本のジェンダーギャップ解消のために、政治分野でこれからも私もがんばっていきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。 

池原:ありがとうございます。月曜の朝でしたが、非常に多くの方々にご参加いただきました。あらためてみなさま、本当にありがとうございました。

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