私たちが生きている間に「宇宙旅行」へ行けるのか?

田原彩香氏(以下、田原):生きている間に果たして本当に宇宙旅行に行けるのかについて、お聞きしたいと思います。金額についてだったり、その他不安なことについて深掘りしていけたらと思います。

黒田有彩氏(以下、黒田):やっぱり一番気になるのは、「いつから行けるのか」ということだと思います。毎年、「今年こそ宇宙旅行に行けます」と聞くのですが、安全面や法律の面だったり、いろいろなところが追いついていない状況です。2020年は「宇宙旅行元年」と言われていましたが、本当に元年には来るのでしょうか?(笑)。

大貫美鈴氏(以下、大貫):毎年、「今年こそ」という状況がここのところ何年も続いているんですけど、やはりそれだけ期待値も高いと言えます。宇宙にはいろんなプロジェクトがありますが、輸送機に関してはそれだけ難しいとも言えます。

特に安全性・信頼性というところは、究極に求められるところだと思います。ただ去年は、無人で軌道旅行をスペースXのクルードラゴンが民間機として初めて国際宇宙ステーションにドッキングもして。

次は人が乗るという段階になっていますし、商業運行は1年1年先延ばしにはなっているものの、1歩1歩近づいている状況です。いよいよ今年というのは、軌道旅行においてもサブオービタル(準軌道)旅行においても、両方で宇宙旅行ができると言えると思います。

黒田:もう、本当に迫っているんですね。各社、どこが先陣を切るのかというところですね。

大貫:そうですね。注目です。

宇宙旅行に行くために必要な「資格」はあるのか?

黒田:私たち一般人は、旅行をお金で買って宇宙に行くことになると思うんですが、気になるのはやはりお金ですよね。今、ヴァージン・ギャラクティック社とブルーオリジン社の宇宙旅行が、サブオービタルに行って5分ほど無重量状態を味わい、また地球に帰ってくるもので大体2,500万円くらいと言われていますね。

田原:ワンフライト2,500万円くらいなんですね。

大貫:ただ、今はまだブルーオリジンは値段を発表していないです。

多分、人を乗せて飛ぶようになって、試験飛行が始まった後半あたりで値段発表をするんじゃないかなと思いますけど、ブルーオリジンがヴァージン・ギャラクティックより高く出してくるのか、安く出してくるのか、その辺は注目されるところですね。

田原:お金があれば誰でも行けるんでしょうか? 適した人であったり、健康面的に行っちゃいけない人とかいるんでしょうか?

大貫:そうですね。資格というか、行けるか・行けないかで言うとそんなにきつい条件はありません。今のところ「18歳以上の大人の方」とされています。何歳以上は行っちゃダメとか、上に関しての決まりは特にないです。

重大な基礎疾患がないとか、妊婦さんではないか、ジェットコースターに乗れるくらい健康かという基準がありまして、こういったきつくない条件はサブオービタル旅行においてあります。ただ、軌道旅行においてはかなり厳しい条件になっています。

田原:18歳以上とされていますけど、何か特別な訓練は必要なんでしょうか?

大貫:サブオービタル旅行では、3泊4日程度の座学や脱出の訓練があります。軌道旅行に関しては、今まではロシアのソユーズで行っていましたので、宇宙飛行士と半年間同じくらいの訓練をして、それに合格した人だけが宇宙旅行に行けていたんです。アメリカの商業機で行く場合では、もっと短い期間の訓練で行けるようになるとされています。

「政府の宇宙開発」と「政府の宇宙開発」の違い

田原:2,500万円かかるというお話がありましたけど、今後安くなっていったりするんでしょうか? 宇宙旅行が一般化したら、宇宙ハネムーンとかを考えてくる人もいるんじゃないかなと思いますけど。

黒田:そうですね。初めの頃のハワイ旅行が、今のお金でいうと800万円くらいだったんですね。今だと20万円あればいろいろ楽しめるので、1/40くらいの金額になっています。なので、宇宙に行きたい人が増えて需要と供給のバランスが合ってきたら、もしかしたら数十万円くらいで行ける未来が来るかもしれないですね。

黒田:宇宙に関する機関の、民間と政府における求められているものの違いを教えていただけますか?

大貫:宇宙開発って聞こえは同じに思えるんですけど、政府の宇宙開発と民間の宇宙開発があって。民間のほうは、「宇宙ビジネス」や「商業の宇宙開発」というふうにも言われるんですけど、政府の宇宙開発とは違っていますね。

政府の宇宙開発は、政府の予算で政府の宇宙計画を実行する宇宙開発のことを指します。民間は民間が資金調達をして、それぞれの企業が事業として宇宙計画を実行していくものとは異なりますね。

宇宙旅行に関しては「宇宙ビジネス」なんですね。これは研究開発でもなくて、商業運航を行うビジネスとして行われますので、民間の宇宙開発の代表的なものと言えると思います。宇宙旅行は一般の人に開かれた宇宙開発として新しい事業です。

世界の宇宙ベンチャー企業は1,500社以上にも及ぶ

黒田:そうなんですね。大貫さんが注目されている、日本の宇宙ベンチャー企業はありますか?

大貫:そうですね、非常に難しい質問ですね(笑)。海外でも宇宙産業のベンチャーについてのニュースが流れてくるようになりましたが、日本でもいろんな方面の取り組みが注目されていると思います。

今、日本には50社以上の宇宙ベンチャー企業があると思うんですよ。世界には1,500社あると言われているので、数としてはそんなに多くはないんですけど、小型ロケット、小型衛星、あるいは宇宙デブリを除去する会社なんてのもあります。

また、流れ星を作るなんていうエンターテイメント企業もあるので、どれか1社というよりは、それぞれ50社が世界からも注目されているっていうのが日本企業の特色です。それぞれの分野をリードしているとも言えると思います。

田原:なるほど。本日はありがとうございました!