2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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沢渡あまね氏(以下、沢渡):小田木さん、過去のぶっちゃけトークを1つしてもいいですか。
小田木朝子氏(以下、小田木):どうぞ。
沢渡:私が20代の頃に辞めた会社。名誉のために、プロフィール上公表していない会社なんですけれども。50歳を超えた管理職が毎日遅くまで残業していて、休日出勤もして代休も取らない職場で、50歳で家族を持ってまでそんな生活、自分はイヤだなと思ったんですね。
小田木:「滅私奉公」という4文字が頭の中に浮かびました。
沢渡:そうです。未来が明るくないなと思って、転職したのはありますね。
小田木:なるほど。そういう意味では、優秀な人材が組織から逃げ出すのは、多様なリーダーが増えないどころか、そういったネガティブな側面さえも生み出しているかもしれない課題、ここにありという感じですよね。
沢渡:そうですね。
小田木:じゃあ、これからはどんなリーダーが組織に求められて、かつパフォーマンスが出せて、変化が激しくて多様性を求められるこの時代に「それならなりたい」と言われるリーダー像なのか。この定義を言葉でしていくのがすごく大事なんじゃないかなと思います。
私たちは、いろんな企業さまや人事の方々とこの言語化にトライをしてました。すごく文字がいっぱい書いてあるので見にくいかもしれないですが、これから求められて、かつ多様な人材が、多様性を活かしながら担えるリーダー像を3つ定義してみました。
1つめ、個性を引き出して多様性を価値に変える。要は「こういう人じゃないとできない」ではなくて、その人の年齢、働き方、抱えているライフイベントや事情も含めて、自分の個性も大事にするし、メンバーの強みも引き出せる人がリーダーかな。
2つめ。1人だけでがんばらなくていいけれども、1人で生む以上の成果が出せるために必要なのは、コラボレーションですよね。自分のマンパワーで成果を出すのではなくて、連携によってチームの成果を最大化できる人。
沢渡:言い方を変えれば、「マネージャー、リーダー。あなたは1人で抱え込まなくていいですから」という話ですか?
小田木:そうなんですよ。「もっとがんばれマネージャーたち」ではなくて、1人でがんばらなくてももっと成果を出せるから、そのための技術やスキルを組織として高めていこうぜ、という感じですよね。
3つめの観点は、ジョブ型マネジメント。ジョブ型雇用制度じゃないんですよ、ジョブ型マネジメントをチーム運営の武器にできる人。いろんな人がいていろんな強みがあるということは、チームの成果に対してどんな役割を担ってほしいかをちゃんと言語化して、合意形成できるスキルが強烈に必要になると思うんです。一方でそのスキルを身につけると、強烈にパフォーマンスが発揮できると思うんですよ。
沢渡:小田木さんもよくおっしゃっている「期待役割」ですね。
小田木:そう。
沢渡:期待役割。大事なので2回言いましたよ。
小田木:ありがとうございます。このジョブ型マネジメントについては、これだけで90分腹落ちセミナーが成り立つぐらいの内容だと思うので、今日はさらっと触れておきます。
この3点をきちんと定義して、ギャップがあるようであれば埋めていくような手が、実は女性活躍推進とも連携してすごく大事なんじゃないかなという投げ込みが1つめです。沢渡さんに、こんな定義もしていただきました。
沢渡:そうですね。これからの時代、コラボレーション型のチームを作っていくために求められる5つのマネジメント、9つの行動の話をしています。これだけ見ると「また新しいことをこんなにやんなきゃいけないの」「マネージャーになりたがらねぇよ」って思われがちなんですが、そうではなくって。
小田木:スーパーマンじゃん、みたいな。
沢渡:チームで何が足りているか・足りていないかを分析して、足りないものは別にあなた1人で抱えなくてもいいわけです。課長代理と連携してもいいわけで、チームでどうマネジメントをしていくか。その観点でマネジメントの再定義をしています。
沢渡:このテーマでアセスメントをする企業研修もよくやっているんですが、こういう振り返りとアップデートの機会をマネージャーに対して作っていくのも、女性のみならず全員が正しく活躍して組織力が上がっていくチーム作りに欠かせないかなと思って、こういう話をしています。
小田木:ありがとうございます。私は本当に、沢渡さんのマネージャーの定義に心救われた1人ですね。
沢渡:うれしいですね。
小田木:(マネージャーとは)全部できる人じゃなくて、チームに必要なマネジメントを定義して、チーム全体でマネジメントを担えることが主導できる人という、これにどれだけ勇気を貰ったか。
沢渡:うれしいですね。だってマネージャーだって、聖人君子でもスーパーマンでもないさ。人間だもの。
小田木:そう、人間だもの。
沢渡:さすが小田木さん、息あってるぅ。
小田木:ありがとうございます。ということで1点め、これからのマネジメント定義を更新することが、多様な人材が力を発揮していく女性活躍推進のDoingの1つになりますという提議ですね。
沢渡:コメントうれしいですね。「仕組みをきちんと作らないといけないですね」。おっしゃるとおりです。
小田木:次、2点めの提議にいきたいと思います。1番ともちょっと絡むところなんですが、メンバーからリーダーへの意向を適切に支援していこうと。どんな問題の見方をしているかということですね。(スライドに)急に絵が出てきたぞ(笑)。
沢渡:川が流れている(笑)。
小田木:女性という観点だけじゃなくて、多様なリーダーが増えていかない問題の一端に、「メンバーとリーダーの間に見えない大きな川が流れているんじゃないか問題」を、実は定義をしていまして。
沢渡:このダムの下流に川があるわけですね。
小田木:そうですね。
小田木:言い換えると、誰かのマネジメントのもとで自分の仕事がちゃんとできる人が、メンバーという役割かなと思いますね。多くの職場では、メンバーとしての評価を受けてリーダーになっていくんですよね。
沢渡:スーパープレイヤーみたいな。
小田木:そうそう。プレイヤーとしての評価を受けた人が、次はリーダーになっていくんですよ。これは別に否定ではなくて、客観的事実としてそうなっている。これはめっちゃ大きな“川”があるので、きちんと移行していかなければいけないんです。
メンバーとしての仕事ぶりを評価してリーダーになっていった場合に、はまっちゃう落とし穴。私もそうですが「メンバーとしての勝ちパターン」でリーダーとしてもなんとかがんばろうとしちゃう。さっき、沢渡さんのこの図があったじゃないですか。そもそも、マネジメントリーダーとして求められている成果の出し方って違うんですよね。
沢渡:違います。
小田木:自分1人のパフォーマンスでなんとかがんばるのではなくて、チームに必要なマネジメントを定義して、1人でやる以上の成果を出す。なのでここでは必要な武器も違うし、求められている行動や知識・技術も違うんですよね。
沢渡:平たく言うと、優秀な選手が優秀な監督とは限らないというね。
小田木:そうそう。なので、選手としての勝ちパターンのまま監督としてもがんばろうとしちゃうと、選手としてもっとがんばるかたちで成果を出そうとしちゃうので。
たぶんそれが、「私には無理かな」「もうこれ以上、がんばれないので無理です」という状態を生み出したり、もしくはメンバーの目に映る管理職が、今まで以上にさらにがんばって長時間労働して成果を上げなければいけない「大変な役割」になっちゃっているんじゃないかなという問題です。
小田木:「マネジメント=管理」ではないということを、しっかり持つことが大事ですね。もっと言うと、じゃあどうしたらチーム成果を最大化できるやり方があるのか、この適切な移行サポートはちゃんと組織が教えていく。
「勘と経験でなんとかしてもらえませんかね」、もしくは「やりながらつかんでもらえませんかね」というのももちろん大事なんですが、知識と技術の話ですので。(メンバーからリーダーへの)移行を、育成というかたちで適切にサポートするのがけっこう大事かなと思います。
沢渡:そうですね。育成とマネジメント体験をメンバーの頃からしていても、まったく問題ないですし。
小田木:そういう意味でいうと、マネジメント研修ってあるじゃないですか。一般的には階層別研修になってるので、(マネージャーに)なった人が1日研修で受けるスタイルがわりと多いのかなと思うんですが、もしかしたら本当に(研修が)必要なのは川を渡る前かもしれないですね。
沢渡:そうですね。
小田木:やり方がわかれば、「じゃあやってみましょう」という人が増えるんじゃないかという仮説を、私も沢渡さんも持っております。1のテーマともリンクする打ち手として、移行を適切に育成でサポートする。
沢渡:そうですね。マネージャー育成については、次回またじっくりやるのでね。楽しみにしていてください。
小田木:そうなんです。そして最後、3つめのテーマにいきましょう。時期にフォーカスするのが2番ですが、そもそも全般的なところが3番です。
成果を出せる人材のスキル定義をアップデートして、育成をサポートしていきましょう。4~5年も続けていると、もしかしたら育成のテーマ・カリキュラムが古くなっちゃっていることもございませんかね?
沢渡:まさに“賞味期限切れ”。
小田木:今日のテーマは「賞味期限切れ」ですかね。例えばこれはどんな図かというと、人材育成のテーマがいろいろありますよね。年次や役割において必要なテーマを提供していく。これは多くの組織であるかと思います。
このテーマ自体に問題があるわけではなくって、そのテーマに対しての要件定義が、もしかしたら悪気なく古くなっちゃってるかもしれないんですよという仮説ですよね。沢渡さん、わかりやすいのはこれじゃないですか?
沢渡:そうですね。今、コミュニケーションのやり方が時代の過渡期です。過去の対面ベース、その場にいる人たちの同期のコミュニケーションベースのやり方だけでは、パフォーマンスが上がってこなくなったわけです。これはコミュニケーションのやり方をアップデートしていく必要があると思うんですね。
小田木:報連相から、今度は雑相(雑談・相談)や対話による相互理解へ。報連相がなぜ古いのかというのも、ぜひ聞いてみたいなと思います。
沢渡:そうですね。報連相って、いわばトップダウン型なんですね。トップがテーマを決めて、トップの心地のいいやり方にして報連相を申し上げるやり方ですから、基本的に上が正しい。上が答えを持っていることありきの設計なんですね。
ところが世の中は複雑化していますから、若手が答えを持っているかもしれないし、他社から転職してきた人が答えを持ってるかもしれない。雑談や相談や、雑な相談。対話ベース、同期・非同期の対話ベースによる相互のすり合わせが、組織にはなくてはならない。
あるいはコンプライアンスの話もそうですね。ヒヤリハットが共有しにくい職場は、やっぱり堅苦しい縦割り型のコミュニケーションフローを作っています。「こんなことを報告したら申し訳ない」「忙しい上司の手を煩わせるのではないか」と思うと、ヒヤリハットが共有されにくい。自分で抱えてしまうので、ある日突然火を噴くわけですね。
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