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『「組織のネコ」という働き方』刊行記念イベント 「組織のネコは意志が10割」 仲山進也×守屋実スペシャル対談(全5記事)

「組織に忠実」なのがイヌ、「自分に忠実」なのはネコ 4種類の動物に分類できる、ビジネスパーソンの特徴

代官山 蔦屋書店で行われた『「組織のネコ」という働き方』刊行記念イベントに、著者で楽天大学学長でもある仲山進也氏と『起業は意志が10割』の著者・守屋実氏が登壇。イベント名は、2人の著書のタイトルを合わせた「組織のネコは意志が10割」。本記事では、「ネコ」「トラ」「イヌ」「ライオン」の組織人としての特徴や、トラとイヌの組み合わせにハレーションが起きやすい理由などが語られています。

組織で働く人は「ネコ・トラ・イヌ・ライオン」に分けられる

中村優子氏(以下、中村):こんばんは。本日は『「組織のネコ」という働き方』刊行記念イベント「組織のネコは意志が10割」、仲山進也さん、守屋実さんスペシャル対談にお集まりいただきありがとうございます。

まずお二人の紹介をします。仲山考材株式会社代表取締役で、楽天グループ株式会社楽天大学学長の仲山進也さん。そして、ラクスル、ケアプロの創業をはじめ、これまでに50以上の新規事業を起こしてきた新規事業家、守屋実さんです。

これから1時間半にわたりまして「『組織のネコ』とはそもそもなんぞや?」ということや、他の3種類の動物との違いなどについて語っていただきたいと思います。

それから本書『「組織のネコ」という働き方』でいうところの「トラの中のトラ」である守屋さんと仲山さんのお二人に、どうやったらトラを目指せるのかをお聞きして、またトラを目指さない生き方についても触れていきます。ネコ、トラ、イヌ、ライオン的な生き方を起点にいろいろ掘り下げていきたいと思います。

あらためまして、本日司会を務めますアップルシード・エージェンシーの中村と申します。守屋さんの著書『起業は意志が10割』のプロデュースをした会社の者です。よろしくお願いいたします。

守屋実氏(以下、守屋):よろしくお願いします。

仲山進也氏(以下、仲山):よろしくお願いします。

守屋:今日参加されている方は、トラですか? ネコですか? ライオンですか?

中村:それをまず聞きたいですよね。1番「ネコ」、2番「イヌ」、3番「トラ」、4番「ライオン」でアンケートを取りたいと思います。

仲山:内容を知らないと答えられませんよね? 今、図を出しましょうか?

中村:お願いします。

仲山:読んでいない方は、この表紙の図を見てお答えください。

中村:そうですね。「1」、さっそくネコの人から回答いただきました。数字でも動物の名前でも構いません。

守屋:ネコなんだ。

中村:会場のみなさんはどうですか? ネコの方、手を上げてください。半分ですね。イヌの方? じゃあトラ、ライオン……。いろんな方がいらっしゃいますね。オンラインで答えてくださった方はみなさん「1」(ネコ)ですね。

守屋:みなさんネコ?

中村:そうですね。でも、お一人イヌの方もいますね。

「組織に忠実」なイヌと、「自分に忠実」なネコ

中村:では始めていきたいと思います。本日の大まかな流れは次のようになっています。

①「組織のネコとは何か?」②「組織のネコは意思が10割ってどういうこと?」③「どうやったらトラになれるの?」④「ネコとイヌの共存は可能か?」⑤「質問タイム」の流れでやっていきます。

最後に質問タイムを取りますが、お二人に聞きたいことがあれば随時チャットに書き込んでください。会場の方も、手を上げたり、私に熱い視線を送ってくだされば聞いていきますので、よろしくお願いします。

では、1つ目のテーマ「組織のネコとは?」からいきましょうか。ここは仲山さん、資料を共有しながら、新刊の説明も兼ねて「どういうこと?」をお伝えください。お願いします。

仲山:はい。もしかしたら本を読まれている方もいらっしゃるかもしれませんが、読んでいない方のために、15~20分くらい本の内容をお話ししますね。

出てくる動物はイヌ、ネコ、トラ、ライオンです。「組織のイヌ」という言葉は、慣用表現としてありますよね。飼い主に忠実な「イヌ」のようなイメージで、会社の指示命令に従順な人のことを言います。自分の意志よりも、社命を優先して行動します。

その対照的な存在として、「組織のネコ」がいてもいいのではないか。これが本書のテーマになります。組織に属しつつも、自由で気ままであると。自分の意志がしっかりあって、会社の言うことをなんでもかんでも鵜呑みにして動くとは限らない。こうした態度をとるのが「ネコ」です。

またイヌとネコだけではなく、上位互換のような「ライオン」と「トラ」がいるというのがこの本の考え方です。

図の左側に「組織の中央を志向」と書いてあります。右側は「組織にいながら自由」ですね。縦軸は「パフォーマンス高い」と「パフォーマンスふつう」です。本を読んでくださった人から「下が『パフォーマンス低い』じゃないところに優しさを感じた」という感想をいただいたりしました(笑)。

ライオンは左上で、群れを統率する役目の人です。これは従来型の優秀なリーダーのイメージだと思ってください。そして「組織に忠実」なイヌがいて、「自分に忠実」なネコがいて、トラには「社命より使命」と書いてあります。社命に背くわけではないんです。社命で動くというよりは「その会社に属している自分の強みを、どう活かすと世の中の役に立てるか」という考えで働く。ここでの使命とはこんなニュアンスです。

「自由」に働くとは、「自分に理由」があって働くこと

仲山:図の右側に「組織にいながら自由」と書いてありますが、この「自由」のイメージが要注意です。「自由に働く」というと、世間的には「わがまま放題」「好き勝手」みたいなイメージになりがちです。

でもそういう意味合いではなく「自由」を定義してみました。まず「自由」の対義語を調べると、「拘束」「束縛」「強制」「統制」といった言葉が出てきます。これを見ると、わがまま放題・好き勝手な人をなんとか押さえつけるニュアンスの言葉ばかりで、意味が広がりません。

そこで、訓読みをしてみたんです。そうすると「自分に由(よ)る」と読める。つまり「自分に理由がある」ということです。「自分がやりたいと思う」「自分にとって意味があると思える仕事を選び取ってやる」ということは、「自分に理由がある」と言えます。これが自由の定義になると思いました。

ということは、対義語は「他由」です。「自分じゃなくて他人に理由がある」という造語です。「自由に働く」とは、要は「自分に理由がある」ということだと考えたいと思います。

この4種類の動物の理解を深めるために、相性を考えてみました。まずライオンとトラは成熟しているので「人はみんな持っている資質や強みが違うよね」と理解しています。

「得意分野も違うので、役割も違って当然だよね」と思っている。「自分ができないことをあっちの人がやってくれている」と理解していて、相互にリスペクトできる関係が「ライオンとトラ」です。

イヌはライオンに対して畏敬の念を抱いています。「ガオーッ」って怒られるとビビります。ネコはトラに憧れているイメージです。

「イヌとネコ」の関係ですが、「ライオンとトラ」ほど成熟していないので、「自分と違う価値観の人を理解する」という姿勢がまだ取りにくい。なのでお互いにちょっと馬鹿にし合っているところがあります。

イヌはネコに対して「ちゃんと言われたことやろうよ」とか「統率乱さないでもらってもいいですか?」と思っている。ネコからイヌに対しては「言われたことだけじゃなくて、ちゃんと価値のあることをやろうよ」「上ばっかり見て大変ですね」みたいに思っている。こんなふうに、お互いちょっと軽蔑しがちというのが「イヌとネコ」の関係です。

対照的で、ハレーションが起きやすい「トラとイヌ」

仲山:この斜めの矢印は、文字は書いてないですが、一番対照的な位置にあるわけです。「群れを統率する」ライオンと、「群れるのが好きじゃない」ネコは、対照的です。

でもライオンは「ダイバーシティ大事だよね」と理解があるので、「ネコみたいな人がいてもいい」と思っている。「まあ、イヌのほうが評価しやすいけどね」みたいに感じているかもしれません。

ネコとしても、最初から歯向かう気はないので、うるさいことを言われなければ別に気にならない。適度な距離感が保たれていれば、お互いそんなに気にならないのが「ライオンとネコ」の関係です。

それに対して「トラとイヌ」は一番ハレーションが起きやすい関係です。組織に属しているという前提をはずすと、社長のトラも世の中にいますよね。スタートアップの社長や、創業者にはトラっぽい人が多いのかなと思います。

イメージ的には、そのトラ社長のところに、イヌの営業マンが訪問してくるとする。そして思いっきり自社の都合ばかり言っているイヌ営業マンは、トラ社長に「もう帰ってもらっていいかな」とか言われちゃう感じ。相性が悪いイメージですね。また、イヌ上司に、トラの部下がついているパターンも、世の中にはあり得ると思います。そういう場合は、トラ社員はぜんぜん評価されない気がします。

以上がお互いの相性ですが、どうでしょうか?

守屋:ばっちりそのとおりだと思います。別に、こういうことを考えながら人生を過ごしてきたわけじゃないし、こういうことを経験して今に至ったわけじゃないのに、この本を見て「そうそう」と頷くことばかりでした。

みんなも、この話を聞いて「いやいや、そんなことないでしょ」とは思わないですよね。たぶん「そうだよね」って思うんじゃないかな。

仲山:ありがとうございます。

ルールの捉え方にも明確に現れる、4者の違い

仲山:この本を読んでくれた僕の知り合いが感想を言ってくれて。その人は昔、ベンチャーの社長を引き受けたことがあるんですね。

「社長というのはライオンになることだと思っていたから、一生懸命ライオンの皮をかぶってがんばったんだけど、あんまりうまくいかなくて。この本を読んで、自分は本当はネコだったと気づいたんです。うまくいかなかった理由は『それだ!』とわかりました」と言っていて。

守屋:なるほど。

仲山:「『トラになる』という選択肢に気づいていれば、もっと会社の役に立てたかもしれない」と感想をいただいたことがありました。

あとは、イヌからライオンになって、今執行役員をやっている人がいるんですね。その人はライオンになってから「イヌ時代はネコの部下にめちゃくちゃ吠えたり、噛み殺したりしてきた気がします」と言っていました(笑)。

もう少し解像度を上げるために、いろいろなテーマで比べていきますね。まず「ルール」についてどう捉えるかという話です。

ライオンにとってルールとは「群れを統率するために自分で作るもの」。イヌにとっては「誰かが作ったきちんと守るべきもの」。

ネコは、そういうのはあんまり好きじゃなくて、「息苦しいから嫌いなんですよね」と思っている。

トラは「自分や自分たちがうまくいくために、こんな約束事で動くとパフォーマンスが高くなるよね」と思っている。要は「ルールとは自分のために自分で作るもの」であると。

ライオンやトラの人がルールを作る時は「OBライン型」なんです。ゴルフのOBラインのように「ここから外側はダメだけど、この内側ならばどこでもOKですよ」といった、自由度の高いルールを作ることを好みます。

イヌがルールを作ると、周囲が息苦しくなるワケ

仲山:一方、イヌがルールを作ることもあります。その時は「こうやってください」というやり方を1つ示して「全員これでお願いします」という「正解一択(指示)型」のルールを作りがちです。

なぜならOBラインのルールを作る時にはいろんなケースを考えなければいけないからだ。その線引きのためには、世界観を持っていたり美意識がはっきりしている必要があります。イヌにはその線が引けないんですね。

例えば、校則が典型的だと思います。服装自由の学校で、近所から「服装が乱れている」と苦情が来た。そこで「制服を決めたので、全員これを着てください」となった。ネコの人は「別に『節度をわきまえろ』と言ってくれれば適当にやるのに。その制服を着なきゃいけないですかね? 息苦しいなぁ」と思っている。

イヌが指示型のルールを作るのは「考えやすいこと」「管理しやすいこと」がメリットだからだと思います。このルール観はいかがでしょうか?

守屋:わかる。「自分で考えてよ」って思いますもん。僕はライオンとかトラっぽい考え方なんだろうな。

仲山:このイヌルールは嫌ですよね?

守屋:めんどくさーい。

仲山:(笑)。

守屋:世の中にはいろんなところがあるから、どこまで分けても最終的には分けられないと思うんですよ。結局のところ「細かくし過ぎてわからない」というところに行き着く。「わかるために作ったルールで、結局わかりにくくなるなんて、何やってんだろう?」という思考回路になる。だから僕はイヌじゃないんだなって思いました。

仲山:ありがとうございます。

ルールに自由度を持たせたい「トラ」と持たせたくない「イヌ」の不調和

仲山:さっきテレビを見ていたら、街角にあって自由に弾けるピアノのニュースをやっていまして。コロナ対策で「歌とか合奏はしないでください」というルールになっていたらしいんですね。そこで、6歳くらいのバイオリンを弾ける男の子が「ピアノの演奏に合わせて合奏していいですか?」と聞いたら「ルールだからダメです」と言われたという。

バイオリンは別に声を出すわけでもないし、近くに寄らなくても弾けるんだからいいんじゃないかという話もあって。それで、そこの市長がルールを見直して「もう少し自由度の高い表現に変えました」というニュースをやっていました。

その後、ピアノの管理者が取材されていて「そんなこと言われても、もし何か起こったらこっち側の責任になるので、困るんですよね」と言っていて。まさに「イヌとトラの話だな」と思いながら見ていました(笑)。

では次にいきます。「役割」についての捉え方です。ライオンは肩書に「部長」「事業部長」など、「〇〇長」と付いていることが多いのでわかりやすくリーダーですと。イヌはそうなりたいと思って、がんばって言われたことをやっています。

ネコは肩書に興味がないので、「昇進できないよ」と言われても「いや、別に興味ないんで」と、言うことを聞かない。

トラは、肩書からは想像できないことをいろいろやっているので、自己紹介がわかりにくい。「自己紹介、苦手なんだよね」と言う人が多い。初対面の人に、2~3分話したところで理解してもらえないことがわかっている。だから自己紹介する気があまりないんですよね。

ここはいかがでしょう?

守屋:僕ね、自己紹介すると「新規事業家」って肩書になるんですよ。

仲山:ですよね。

守屋:いつも「それで具体的には何をしているんですか?」と言われる。「だから、新規事業家だって言ってるやん」っていう。

例えば、僕は以前ラクスルという会社に参画していて、副社長だったんです。なのに、よく「なんでラクスルを支援されたんですか?」と聞かれて。「だから副社長だって言ってるじゃん。副社長は支援しないよ。僕の会社だよ」って話をするんです。どうしても通じないことはありましたね。なんかわかる気がしますが。

仲山:守屋さんが普通に肩書や所属を書いていったら数えきれないぐらいあると思うんです。それだとめんどくさいから「新規事業家」を名乗るわけですよね。そうすると、またその説明がめんどくさいという(笑)。

守屋:そう。「それで、将来どうされたいんですか?」とか聞かれて、「いや、新規事業家でいいんだけど」っていう。そんな感じですね。

仲山:もう無理問答に近いですね(笑)。ありがとうございます。

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