2024.12.03
企業の情報漏えいで最も多いのは「中途退職者」による持ち出し 内部不正が発生しやすい3つの要素
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稲田ズイキ氏(以下、稲田):今日の質問にも「困ったことをどう乗り越えましたか?」という話があったのでちょうどいいやと思って、自分の人生を4つの絶望に分けました。第一、第二、第三、第四、4つの絶望があるので、それを聞いてもらえればなと思います。なにかの参考に……いや、もしかしたらならないものもあるんですが。
第一の絶望は「〜覚醒〜」と書いてるんですが、一番最初に目覚めてしまったものがあるんですね。一番最初(の絶望)だけど、一番最強の絶望だったのかもしれない。
経緯をお話しすると、幼少期に僕は6歳まで母乳を吸ってたんですよ。普通、乳離れは1歳とからしいんですよね。だから人よりも5年長く、5倍の量の母乳を飲んでるんですね。乳離れは自我が生まれる最初の瞬間だと言われてるらしいんです。だから僕は、人よりも自我の目覚めが5歳遅いんだと解釈していて。それがきっかけで、やっぱり人よりも成長が遅いし、人よりもちょっとポンコツさがある。
子どもの頃、遊びでずっと窓に呪文を書いてたんですね。自分でもなんでそれを書いてるかわかんないんですが、「のくちん」というひらがな4文字をずっと書き続けていて。宇宙人からの交信を受けてたのかもしれないし、子どもの頃だけ見られる幻覚みたいなものなのかもしれないけど、当時はそれが一番楽しくて。
あとは壁にボールをペチペチと投げ続けて、アニメや漫画の続きをずっと考えるのが一番の楽しみでした。ずっとボール投げていて、それ以外の趣味はなかったんですね。そういう小学生でした。
稲田:さらにおかしいのは、男女ってものがホンマにわからなくて、そういう身体的な違いに気がつかなったんですね。それが初めてわかったのが小5、11歳の頃だったんですね。若い人はわからないかもしれないんですが、僕ら世代のトップアイドル「モーニング娘。」の加護亜依さんがテレビに出た瞬間、「うおぉ、俺とは違う何かがいる!」と(笑)。初めて男女ってものがわかったんですね。
普通は小5だったら、今どきはもう付き合ってる人がいるぐらいじゃないですか。それが僕は、11歳まで男女の違いもよくわかってなかったんですね。
さらに15歳、高1までずっと口が開いてたんですね(笑)。原因は鏡を見る習慣がなくて、自分の顔というものがぜんぜんわからなかったんです。高校に入って、学生証の証明写真の撮影の時にカメラマンの人に「口開いてますよ」と言われて、初めて「え?」って(笑)。
「なんすか? 口開いてるって」と思ったけど、口が開いてるのは現象として理解できるから、顎を伸ばしたままで口を閉じたら「顎を引いてください」と言われて。「顎引くって何すか?」みたいな(笑)。
「そうか。みんなこうやって顔を認識してるんだ」と、それが自分の中ですごく世界が変わる瞬間でした。15歳でようやく強い自我が確立した。母乳から始まり、ずっと自我が薄いんですが、15歳で急に自我がガツンときました。
ここに「16で自我が芽生え」と書いています。みなさん、急に自我が芽生えると(どうなるか)わかりますか? 普通は小学生ぐらいからじわじわと自我を確立していくわけじゃないですか。「俺はこういう人間で、周りはこういう人たちがいる」「ここが秀でていて、僕はこれが得意だ」というのを認識しつつ、じわじわと自分の輪郭を作っていくわけなんです。
稲田:僕はですね、ずっと何もなかった状態から急に16歳でそれなりの自我がボンと芽生えてしまったがゆえに、めちゃくちゃ絶望したんですよね。「俺の顔ってこんななんだ」「うわ、俺って勉強あんまりできないな」「運動音痴だわ」「しかも歌を歌っても音痴だし、方向音痴だし、味も音痴だ」とか。
人よりも秀でているところが何もないとか、自分はなんで生きてるんだろう……とか、けっこう絶望しましたね。これで完全にこじらせたんですよ。だから、急に自我が芽生えるとこうなるんだなと。それにはもう慣れていくしかないので、こじらせた自意識は未だに解決してないんですね。
今日は仏教の話をする会じゃないから軽く説明するんですが、要するに仏教は自意識とどう向き合うかという話なんですよ。自分というものがあると思い込んでるから苦しみが生まれる。『テニスの王子様』の技にも「無我の境地」があったりしますが、「無我」ってよく言いますよね。
無我の境地というのは、自分の自意識とどううまく付き合っていくかっていう話です。僕は僧侶なので、現在進行形でこじらせた自意識と実際に向き合ってる状態ですね。ごめんなさい、これは解決もなにもしてないですが(笑)。もし仏教の話が聞きたいんだったら、また今度します。質問がありましたら、どんどんしてくださいね。
稲田:時間もないと思うので続けるんですが、次の絶望はキャリアや人生に関わってくる話です。「~運命~」と書いて「さだめ」とでも読みたいところなんですが、自我が芽生えたタイミングで俺は気づいたんですよ。
俺の家は寺で、長男がいるので僕は次男なんですね。寺って基本は長男が継ぐところが多いんですが、僕と比べて兄は自我の芽生えがめちゃくちゃ早くて、小学校ぐらいで「俺は(寺を)継がない」と言ってたんですね。
一方、父親・母親は照らし合わせたように「みずきのほうがお坊さん向いてるわ」という話をしてました。……僕の本名が「みずき」で、お坊さん名が「ズイキ」なんですが、ややこしくてごめんなさい。その言葉を真に受けて、なにも考えずに「お坊さんになるわ」とずっと言ってたんですね。
自我が芽生えたタイミングで、「俺、お坊さんになりたくねぇ!」と。これは「お坊さんあるある」かもしれないけど、寺を継ぐのは嫌になってくるんですね。ここは端折るけど、(僧侶になるために)修行に100日間ぐらい行かなきゃいけないんですが、運命に抗いきれずに修行が終わってしまい、僧侶になってしまいました。
これもややこしいけど、うちの寺は兼業をしています。寺だけで食えてる寺って世の中には少なくて、うちは父親もサラリーマンをやりながら住職してるし、おじいちゃんも役場勤めながら住職してるし、僕もお坊さんになるにあたって「就活しろよ」と言われていて。
就活・修行が終わり、目の前に定められたレールがビシーッと引かれてしまって、未来が見えすぎてしまう。これが一番の絶望ですよね。もしかしたら共感してくださる方もいるかもしれないですが、これってすごく虚しくなりませんか。
60歳ぐらいまで会社員をして、そのまま父親の跡を継いで、死ぬまで住職して終わるんだ……って、もう60年後ぐらい先の人生が全部見えてしまった気がして、これがホンマに絶望したタイミングだったんですね。
そのあとに芽生えた自我を外に表現して、「こうありたいんだ」と初めて強く願ってて。「とりあえず、予定調和しかない人生を崩していこう」と、ホンマに軽い気持ちで思って(笑)。タモリも「大学院は中退したほうがかっこいい」って言ってたし……と自分に言い聞かせて、あとは修士論文を書くだけのタイミングだったんですが、大学院を中退しました。
稲田:これは今でもぜんぜん説明できないけど、突然インドに行きました(笑)。仏教の聖地がインドというのもあるんですが、センチメンタルジャーニー的に1ヶ月間インドを放浪しました。この時には「将来僧侶にならないといけないんだったら、今のうちに僧侶としてちゃんと仏教を勉強したい」という気持ちになってました。
インド旅行中にトラベラーズハイになって、たまたまFacebook見ていて「この人と映像を作ったらおもろいぞ」と思いついて、お寺ミュージカル映画『DOPE寺』を作ったら、これがめちゃくちゃバズったんですよね。
その結果、AbemaTVや朝日放送のテレビやニュースに取り上げられて、「なんかいい感じだな」って浮ついていました(笑)。その時は大学院を中退してニートだったんですが、そういう実績がついた状態で内定をもらっていた会社に入ります。これが第3の絶望、「~不条理~」。
これは会社員あるあるですが……。実は学生の時から趣味でブログをしていて。ブログがおもろいからという理由で「君、編集者に向いてるよ」と言われ、デジタルエージェンシーの会社に新卒で入ったんです。だから、編集者になれると思ってたんですよ。
要するに、コンテンツを企画できる仕事に就けると思ってたんですけど、実際はクリック広告の価格を上げ下げする仕事。よくスマホで漫画とかを読んでても、バナーで出てくる広告があるじゃないですか。あれって実は、裏で1クリック何円なのかが設定されてるんですが、その価格を調整する仕事だったんですね。1年間、ほぼずっとそればっかりやっていて。
「編集者として採用されたはずなんですけど」と言っても、「いやぁ……」みたいな。「稲田くんにはオールマイティになんでもできる人材になってほしいから、まずは企画よりもビジネスのことをわかってほしいんだよ」という話をされて。
僕の考え方的に、苦手なことはずっと苦手なままだという考え方があって。「得意なことに専念したほうがいい」という考え方をしていて、自分でも思うけど、どう見ても僕もそういうタイプなんですね。苦手なことはずっと苦手です。広告の価格を調整して、Excelにまとめていくのはすごく苦痛で。これが第三の絶望でした。
稲田:そのフラストレーションから、仕事とは関係なく友だちとWebメディアを立ち上げました。そこで僕がコラムやエッセイを書き始めたらバズり始めて。ここでは言えないような、ちょっとどぎついコンテンツとかを書いてたりするんですが。
それがバズり始めて、会社以外の場所で認められる経験ができました。「あれ。もしかして俺って、もう会社辞めてもいけるんじゃないの?」みたいに調子に乗ってきて(笑)。とはいえ、やっぱり不安でしたね。お金の稼ぎ方もわかんないし、どれぐらい稼いでいいのかもわかんない。
佐伯ポインティ君というYouTuberをやっている人がいるんですが、運営していたWebメディアをきっかけにたまたま友だちになったんですが、彼が「大丈夫だ」と言ってくれたのが、一番背中押してくれた経験になっていて。
「稲田だったら大丈夫だよ」。もう本当にこれだけ。けど、「すごい天才だ」って思ってるような同業者が「大丈夫だ」と言ってくれたってことは、大丈夫だろうと。入社してまだ1年ぐらいだったんですが、これを言われた瞬間に「辞めよう」と思って、次の日に辞表を渡しました。
すごくいい会社だから、人事の人とかに「稲田くん、これからどうする気なの?」「ビジョンとか、ちゃんと働く術はあるの?」って聞かれたんです。僕はいい意味でバカなんですが、「未来とかはないっす」「なにも考えてないです。まぁなんとかなるでしょ」って。……これは本当に参考にならないけどね(笑)。
これ、ホンマに白紙の状態でして。別に何をするかも決めてないんだけど、ポインティと一緒に「煩悩クリエイター」という肩書きだけを作りました。「俺は煩悩クリエイターとして辞めます」と言って、1年で辞めました。
煩悩クリエイターと名乗ったのは、ポインティに「『僧侶』って名乗ってると、どうしても僧侶のイメージからしか仕事がこないから、僧侶じゃない名乗り方をして『実は僧侶です』にしようよ。たぶん、そっちのほうがおもしろいから」と言われて、じゃあ何がいいかなと思って肩書きを考えました。
(自分自身も)煩悩まみれだし、「煩悩クリエイター」にすると仏教の話もできそうだしなって。これがけっこう正解だったんだと思うんですが、今はそのおかげでいろんなお仕事をいただいています。
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