2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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西村:わっきゃいさん、次はどうしましょうかね。
日野:地球外生命体がいる前提ですけど、「地球外生命体に地球の法律は適用されるのかどうか」。僕たちは(私法上は)「自然人」として定義されるわけですけど、これ、地球外生命体も同じように法律を適用していいのか。
地球の中でも、例えばペットを加害した場合は、器物損壊罪になるわけじゃないですか。(ペットは)自然人としては定義されないんですけど、地球外生命体も同じように「物」として扱われるのか。それとも意識を持った「人」として定義されるのか。どうなるんでしょう?
西村:おもしろい。
(一同笑)
西村:いいですね。弁護士大先生が「どうぞどうぞ」みたいな(笑)。
岩下:これは、本当に前提が難しいですよね。地球外生命体を人として捉えるのか、物として捉えるのか。
例えばペットを物として見て地球外生命体を痛めつけちゃったら、加害者の国の(保障が)適用されるのかというと、まだ実例もないのでこれからなんでしょうけれども。感覚的に言うと、適用されるでしょう。
逆に地球外生命体から痛めつけられたら。例えばペットが噛みつかれた時には、ペットの飼い主に対して責任追求するわけですよね。もし地球外生命体を管理する人がいるんだとしたら(笑)、それは地球外生命体を管理している人に対して責任追及をしていくような、そんなおもしろい世界になるんだろうなと思います。
西村:おもしろい。その時にお金で返される感じがしないですよね。何で返してくれるんでしょう。まず彼らは通貨を持っているのかなという疑問になりますし。
岩下:おっしゃるとおりですよね。地球外生命体のお土産を貰っても困っちゃいますからね(笑)。
西村:そうそう。でもおもしろい。YouTubeからの質問も聞いていいですか? ちょうどいくつかの宇宙法を今から考えなきゃいけない、いろんなプレーヤーがいるという話につながるところです。
「宇宙法に関する国際会議のようなものってあるんですか? 曖昧だったりまだケースが少なかったとしても、やはり何かしらどんどん進めて行かなきゃいけない時に、国際会議的にみんなが年に1回集まるようなことはあるんですか?」という質問が来ています。
星:小委員会というかたちではあるんですけれども、国連の委員会としてありますね。例えばスペース・デブリをどうするかとか、宇宙資源の問題をどうするかというのが、定期的に議論されています。もちろん国連だけではなくて、他にも各国で会議体があったりします。
西村:その時には、今わっきゃいさんが質問してくださったような「地球外生命体」についても話されたりするんですか? 今、ニヤッとされましたけど(笑)。
星:いやいや(笑)。どうですかね。私が見る限りでは、その議論は今のところされてなさそうですけど。何かご存知ですか?
岩下:私が知る限りでもないと思います(笑)。
西村:でも、はやぶさ2が(小惑星の砂を)持ち帰って、岡山大学の惑星物質研究所の先生が分析して「そういう可能性もあるかもしれない」という話を(されていましたよね)。可能性はなきにしもあらずだから、どこで議論が起き始めるのかなとすごく気になるところでございます。
西村:わっきゃいさん、次の質問に行きましょうか。どれにしましょう。
日野:先ほどから基本的に前例がないものばっかりで、法律に関しては起こってから考えようというスタンスじゃないですか。そもそも過去に犯罪が行われたケースだったり、判例だったりがあるのか気になりますね。
星:まさに最近、ISS宇宙ステーションから不正アクセスをしたということで事件になったケースが起きました。ISSに関しては、どこの法律を適用するかのルールは決まっているので、どこの法律で裁こうかという問題は発生していないです。それが本当に不正アクセスだったのかとか、地球でも問題になるような問題が論点になっていたと思います。
西村:これに合わせてなんかアホな質問をしちゃいますけど、「宇宙人に連れ去られた子ども」みたいな写真があるじゃないですか。あれって本当に連れ去られちゃったんですか? その時どうなったんですか? すみません、メルヘン的なところも含めて質問しちゃってますけど……。連れさられちゃったらどうなんだろうなと。
星:どうなんですかね。誘拐罪とかになるんですかね(笑)。
岩下:まさに「地球外生命体に地球の法律は適用されるのか?」と同じで、適用されるかどうかなんでしょうね。
西村:さっきの話に戻るわけですね。それがお金で返されるかどうか。
(一同笑)
西村:なるほど。わっきゃいさん、今のところどうですか。手探りで進めていかなければいけないんですけれども、けっこうやらなきゃいけないことがありそうですよね。
日野:そうですね。基本的に行き当たりばったりというか、手探りのようにも聞こえるんですけど、でももともと地球も南極を開拓した時に、同じような背景を辿ってきたわけです。
大航海時代に他の違う文明と関わってきた時にも、同じように行き当たりばったりで、土地の所有権決めたり、通貨のバランスを決めたりとしてきたわけなので、個人的にはその延長線上にあるだけなのかなとは思います。
西村:実際に現役の京都大学の法律を学ばれている身として、宇宙の法を学んでいきたいと思いますか?
日野:学びたいんですけど、これがどう活かされるかのイメージがあまりできていないですね。
西村:(笑)。
日野:地球外生命体に法律が適用されるのかどうかというのを、一生研究してもいいんですけど、死ぬまでにその法律が施行されるかどうか……。
西村:前澤さんが宇宙に行ったり、その次には月に行ったりとか火星というのも、もしかしたらわっきゃいさんの年代だったらあり得るかもしれないですね。
日野:あり得るかもしれないですね。
西村:そこでルールメイキングに入るのは、なかなか魅力的なのかなと思いました。
西村:あと質問が2つありますけど、どっちから行きます?
日野:さっきの話の続きになっちゃうかもしれないんですが、「宇宙で生まれた子どもは何人?」。親の国籍とかにもよると思うんですけど。
星:めちゃくちゃ難しいなと思っていて。人類が宇宙環境で生活圏を築いていて、出産できる環境にあるというのが前提なんですけれども、おそらくそこで作るルールというか、そこに参画している国で作るルールによるのかなと思います。それこそ今後の議論になってくるような話かなと思いますね。
西村:だって日本でも(この問題はありますよね)。わっきゃいさんもアメリカ生まれなので、もしかしてアメリカ国籍を持っているんですか?
わっきゃい:僕はアメリカの永住権ですね。
西村:なるほど。日本生まれの親であったとしても(その子どもが)日本国籍とアメリカ国籍を持ってたりするように、宇宙で生まれたら日本と宇宙の国籍みたいなものを持てると、ちょっと素敵だなとも思いました。それも今後の話なのかもしれないですけども。
また先ほどの話に戻りますけれども、年1の国連の会議でも、「宇宙で生まれた子ども」とか、「宇宙人と子どもができたらどうしよう」とか、そういう議論はさすがにまだないですか?
星:私は聞いたことがないです。むしろこの質問をいただいて、「ああ、確かにな」と思ったのが正直なところです。
西村:『月刊ムー』のような話になりますけど、コンタクティ(地球外知的生命体と接触した人物)というか、宇宙人にチップを埋められている人が、地球上に、もしかしたらここにもいるかもしれないし、私もそうかもしれない。チップを埋められている人との子どもは宇宙人の権利があるのかとか、そういうところも気になりますよね。
日野:そうですね。僕も埋められているかもしれない。もしかしたらスパイとして活動していて、JAXAの本部に乗り込んでいく可能性もなくはないので(笑)。
西村:「へっへっへ」、みたいな。
日野:何とも言えないんですけども(笑)。どこから「宇宙人」と定義するかという話になってきますよね。実は先ほど控室で3人で話していた内容がこれで、まさかここでその続きができるとは思わなかったんですけど。
何を持って宇宙人の定義をするのか。宇宙の人なのか、遺伝子構造なのか、出身なのか、思想なのか。人間でもどこにルーツがあるのかはわからないんですけど、それに地球外生命体が加わってしまうと、定義のしようがないと思うんです。どこを持って宇宙人とするんですかね。
星:むしろ「人」の定義から考えていったほうがいいような気もしていて。「人であれば兼ね備えている要素」を兼ね備えていることが必須になるのかなという気がしますね。「それを打ち消すだけの要素を持っていないか」とかも要素になってくるのかなと思います。
日野:先ほどはこれと同じような平行線の議論で、「AIは人なのか」という議論にもなっていましたね。人間と同じように感情を持っていたり、繁殖能力を持つ人工知能なのであれば、それは人間なのかどうかというのと、同じような議論になってくる。
星:そうかもしれないし、そうでもないかもしれないです。AIの場合、今のところは「人ではない」という話になっていますけれども、本当に映画に出てくるような、いわゆる汎用型のAIが出てきて、かつそれが人に限りなく近いような場合にどうなるかというのは、今後要議論かなと思います。
基本的には物として、プログラムとして扱われることになるのかなと個人的には思っていたりしますが、どうですか、岩下先生。
岩下:同意見です(笑)。本当になかなか難しいところで、直感的には人には当たらないんじゃないかなというのが、素朴な感想ですけどもね。
西村:宇宙人は宇宙人のように、(AIも)「スペースアンドロイド」のような名前を付けて区別していくんですかね。
西村:ちょっとまたYouTubeからの質問を受けてもいいですか? このあと登壇していただくバスキュールの朴さんからの質問ですけれども、「あらゆることがステークホルダー同士の契約になるとは思うけれども、まとまらないまま実施を迎えざるを得ないケースが頻発しちゃいそうです。その仲介機関ってあるんでしょうか」。
「まずはトライアンドエラーでやってしまえ」というところがあるとしても、結局まとまらない時に、仲介する立場の人がいるのかという話が質問としてありますが、どうでしょうか。
星:まず一時的には我々弁護士ですかね。そもそも、話がまとまらないままプロジェクトが進行されるのを防止するというのが防波堤になるかなと思っています。最終的には裁判所ですかね。
岩下:おっしゃるとおりだと思います。そこは弁護士が出てくるところですし、まさにそのまま進んじゃって何かが起こってトラブルになった時は、裁判所だったり仲裁所で、解決していくのかなと思います。
西村:例えばの話ですけれども、イーロン・マスクのように、実際に(宇宙に)到達できる技術を持っていてお金も持っている人が、ある程度「俺はこのルールでやっていくからな」と言い張って、国家ではなく個人として宇宙に対してルールを作り、それに対してフォロワーを増やしていくようなことも起きると思うんです。
その時には、実際にはアメリカ政府のもとと言いながらも、「いやいや、だって自分たちはこれで実現できるから」ってエグゼキューションしてしまうと、国という単位では守りきれなくなりそうな気がするんですけれども。
個人の力を持っている人たちが、どんどん宇宙に対して進出することのリスクや、そのポテンシャルも今は議論されたりするんですか? ジェフ・ベソスもそうですよね。
岩下:実際に宇宙に限らず、新しい技術に関する法律については、関わっている人たちがそれなりに発言権、発言力を持って作っていくところがあると思うんですけれども、最終的には、基本的なスタンスとして、それも含めて法律ないし規範として作っていく。
その「規範」には、法的な責任がどうあるのかという(責任所在を示す)意味の規範から、「こうあるべきだよね」という(模範を示す)ところの規範、役割分担の意味に近いような規範もある。
それをどう作っていくかは「1人が言うからそれに従う」というより、全体を見て国家が決めていくというのが、想定されている近代法の考え方かなと思います。
でもおっしゃるように、そういった(技術と財力を持っている人の発言が強くなってしまう)懸念はあるので、きっちり複数のいろんな立場の人から見ていくこと必要があるんだろうなと感じます。
西村:ありがとうございます。わっきゃいさん、最後の質問への思いも含めて、質問いただけますか?
日野:今までの話を聞いたところ、問題は起こそうとしなくても起きてしまうものだと思うんですけども。敢えて問題を起こそうとするテロ組織だったりが、人工衛星、宇宙船を乗っ取る可能性はあるわけです。それを防ぐには、どういった対策が考えられるのでしょうか?
岩下:これは今も可能性としてあると思うので、もっぱらそうさせないようなプログラムやシステムを作ることかなと思います。どうでしょう?
星:まさにおっしゃるとおりで、事実として人工衛星に対するハッキングはすでに起きているんですよ。だいぶ前から起きていて、当初は愉快犯のような感じでした。でも例えば人工衛星から電波を飛ばすことは、電子レンジの中に地球を入れているようなものなので、今よりもっと悪質になっていけば、テロになる可能性がゼロではないわけですよね。
防止するには、ルールというより技術の話かなと私は思っています。先ほどの一部のリーダーがルールを作っていくところに絡むかもしれないんですけれども、これも非常に悩ましくて。
やはりルールは技術に引っ張られていくと個人的には思っているんですよね。ルールメイクをするのは、もちろん我々のようなローヤーもそうですし、ビジネスサイドもそうなんですけれども、どちらかというと技術屋がルールメイクを引っ張っていくようなイメージを持っています。
ルールも重要ではあるんですけれども、技術をどう発展させていくか。そこにどれだけ国としてどれだけコストを費やしていくかというほうが、この観点ではポイントになってくるのかなという気がしています。
西村:それでは時間もギリギリですけど、会場からも質問を1つ受けようかなと思います。先生方、またはわっきゃいさんに質問がある方はいらっしゃいますか? お願いします。
質問者1:興味深いお話をありがとうございました。話が飛んじゃうかもわからないですけど、今スペースコロニーや月で、民間企業がいわゆる独立国家を作った時に、例えばそれが武装国家で、他とは公益をしないし、法律は無視しちゃう。月や宇宙でのものをどうするのかというのを(勝手に)決めるような国家が現れたとします。
それに対して諌めとか調停とか、国連のような組織が武力で攻撃するとか、いろいろな手法があると思うんですけど。それこそ法律がソフトローでしかないところで、いわゆる金銭か武力でその国を壊滅させるようなことがやはり起こりうる(と思うんです)。ちょっとアニメの世界に通じちゃうくらい話が飛躍しているかもわからないですけど。
そういうことにはならないのが理想なんですけど、でも人間は歴史的に見て戦争をやってきた生き物なので、その危険性はあると思います。それに対して、宇宙でどういうルールメイキングをしたらいいのか、率直にお聞かせ願えたらうれしいです。
西村:岩下先生からでよろしいですか?
岩下:可能性という意味ではありそうですよね。そうなった時にどう治めるのがいいか。それこそ武力に頼ってしまうと、スペース・デブリの話のような環境の問題もあるでしょうし、また無辜の人が不幸に遭うこともあるでしょうから、基本的には穏やかな方法で解決できればいいんだろうなと。
ただ、それをどう解決すればいいかについては、政策や政治的なところがあって非常に難しいので、宿題とさせてもらいたいなと思っております。
西村:質問ありがとうございました。それではそろそろお時間になりますので、最後にみなさまから一言ずついただきたいと思います。
星先生と岩下先生は今、第一線で宇宙のルールを作ってらっしゃるので、これからどういう仲間が必要なのかを教えていただきたいです。わっきゃいさんは今日の話を聞いて、YouTuberであり実際に法律を学ばれているという立場から、宇宙に対して今後どう関わっていけると思ったかを教えていただきたいと思います。
最初に岩下先生、お願いします。どういう仲間が必要だと思いますか?
岩下:今日のイベントのポスターが、けっこうクリエイティブでポップだと思うんですよね。「法律」というと、裁判が起こってそれを解決していくようなイメージがあって、実際には間違っていないんですけれど。
まさに何かをやろうという時、事業を起こして儲けて、儲けた利益を分配して、みんながハッピーになろうという時に、関係する人たちで契約を結ぶわけですよね。どうすれば事業がうまくいって利益が出るのか、その利益をどう分配するかを決めるのに契約書があって、その文書を作っていくのが我々法律家の仕事なので、まさにクリエイティブな仕事なんだと思います。
柔軟な発想を持って、既存のシステムや今ある仕組みを応用・参考にして新しい仕組みを作っていく。それは非常に楽しい作業で、そういった仕事を私もこれから勉強してやっていきたいと思っていますし、みなさんにも加わっていただいて、一緒に盛り上げていければと思っています。本日はどうもありがとうございました。
(会場拍手)
西村:ありがとうございます。星先生、お願いします。
星:まず、本日は貴重な機会をいただきましてありがとうございます。
私は2つあるかなと思っていて、1つは各分野のプロフェッショナル。もう1つは、プロフェッショナルたちをつなげる人、あるいは場かなと思っています。
プロフェッショナルというのは、もちろん我々も法律の専門家ではあるんですけれども、ローヤーだけが集まってルールを作れるわけじゃないんですよね。技術ありきですし、その技術をマネタイズするビジネスサイドの人たちが必要になってくる。もちろんアカデミックサイドのプロフェッショナルも非常に重要だなと思っています。そういった「プロフェッショナルが揃っている環境」ですよね。
また今は連携が徐々にできてきているんですけれども、なかなかスムーズにできてないような印象も受けています。なので、各分野のプロフェッショナルたちを結びつけられる人、あるいは場が必要かなと思っています。
もちろんクリエイティブ面も重要だと思っています。今日わっきゃいさんからいただいた質問の半分以上は、今まで考えたことないような問題だったりします。頭の使い方もぜんぜん違うので、クリエイティブ面も非常に重要なのかなと思っています。本日はありがとうございました。
(会場拍手)
西村:どうもありがとうございます。では最後にわっきゃいさん、お願いします。
日野:「宇宙」と聞くと、高い次元でのアカデミアの面だったり、技術的な面だったりを想像しちゃうんですけども、今日話したとおり、けっこう行き当たりばったりな面があったり、ポテンシャルの塊だとわかった部分もありました。若い世代としても、当事者意識を持って宇宙と向き合っていければ、スペース・デブリじゃないですけど、指数関数的に成長できるんじゃないかなと思います。
西村:うまいな! 素晴らしい(笑)。ありがとうございます。
(会場拍手)
西村:あらためまして、本日のスペシャルゲストのお三方に拍手をお願いします。以上を持ちまして「宇宙×法律」のセッションを終了させていただきます。
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