「非IT部門でExcel業務を自動化!」

延沢博氏:こんにちは。株式会社ワコーの延沢と申します。本日は「業務部門による受注処理の内製・自動化」というテーマでお話させていただきます。

まずは弊社の紹介です。株式会社ワコーと申します。東京都千代田区飯田橋に本社と工場を構え、印刷の中でも「オンデマンド印刷」と呼ばれる小ロット多品種の要件を得意としております。テキストのような冊子からダイレクトメールまで、その情報処理、デザインから発送までをワンストップサービスとして提供しております。

(私の)社内の経歴としては、10年以上印刷データの制作部門におりましたが、上流の工程管理に異動。通常業務以外にバーコードでの管理システムの導入、BIを利用した全体工程の進捗の可視化などを行いました。

現在も生産部に所属し、管理・業務部門側から社内のIT利用や、業務改善等を進めています。自社の基幹システムには専任の開発者がおり、私は業務部門からリクエストをするような立場でした。スキルとしては、ExcelのマクロやDBの基礎知識程度となります。

案件受注後に発生する、2つの処理

では今回の事例です。同じ印刷会社からの受注となった、小ロット多品種のテキストの印刷及び製本の案件です。問題冊子や解答用紙等、製本の仕様やサイズが多種多様となっております。

受注が増える時期に合わせて、処理フローの見直しが必要となり、ASTERIA Warpの導入に至りました。受注ごとに先方の独自フォーマットであるExcelの仕様書、印刷データとなるPDFが支給されます。

印刷会社の業務管理につきまして、業種特化型のパッケージソフトもありますが、AccessやExcelをベースにした各社の独自のフォーマットが多いのも特徴です。弊社はDBを利用した自社製の管理システムとなっており、先方の仕様情報を変換して登録する必要があります。

受注後の処理として、まず業務手配(製造指示)があります。左側が先方の仕様書、右側が弊社の仕様書となります。この仕様書間の差異を変換して、登録する必要があります。製造指示の表現も会社によって異なったり、口語的な指示も存在します。製造現場にミスなく作業をしてもらうためには、自社のフォーマットで引き渡す必要があります。

もう1つの処理として、印刷データの編集作業があります。左のような複数ページのPDF。これを最終的な製本の仕様に従って、印刷用紙に対して改めてレイアウトし直す「面付(めんつけ)」という作業が必要になります。これらを経て、製造工程へと引き渡されます。この2つの処理が今回、自動化の対象となりました。

目視によるミスが発生し、高まる作業負荷

(こちらは)従来のフローです。まず顧客の管理するWebストレージを、内勤の営業が定期的(5分ごと)にチェックし、新しい受注がないかを確認します。受注があった場合は(データを)ダウンロードして手配部署に引き渡し、手配部署ではExcelの仕様書を目視で把握し、自社のシステムに転記入力します。その後、編集部門には仕様書の発行、製造部署である工場には予定表の発行を行います。

その他、受注データを編集部署への引き渡しルールに沿って、ファイルサーバに格納します。その後、編集部門においてPDFの加工システムに対して手動で設定を行い、編集作業を行います。

各署、目視で行っている場合が多いので、どうしてもミスが発生し、作業の負荷が高まっている状態となっておりました。先方のExcelをマクロで読み込むことも検討したのですが、先方の仕様書の今後の変化に対応しきれなくなりそうだということで、断念した経緯もあります。

ASTERIA Warpを用いた後のフロー

こちらがASTERIA Warpを用いた後のフローです。まずダウンロードしたZIPデータを、ASTERIA Warpの監視フォルダに投入。ASTERIA WarpでZIPの解凍処理、Excelから情報の抽出と変換、DBに照会して自社の管理番号の採番なども行います。その他ファイルのリネームや、サーバへの格納もASTERIA Warp内で行います。

PDFの加工システムは、CSVファイルでの指示にも対応していますので、その監視フォルダにCSVファイルを出力します。そのまま加工システムで自動的に面付の処理が行われます。また自社のシステムに対しても、同様にCSV出力を行い、それを読み込んで案件の登録を行います。このようにして、加工済みのPDFとシステムへの登録までが自動的に行われます。

それでも例外的に、面付処理のパターンに当てはまらない仕様が1割程度は発生しますので、それに関しては線引きを行い、従来どおりのフローで編集部門にて加工をお願いすることにしています。ここまでで、2つのコア処理の自動化は行うことができました。

その後、周辺作業も自動化を試みました。まず、内勤営業による新規受注のチェック。これはRPAソフトを用いて自動化しました。10分ごとに無人でチェックとダウンロードを行います。

そうします(無人になる)と、手配の部署が新しい受注が来たことに気付かないので、ASTERIA WarpからSlackで通知を出すことにしました。その他、日々の納品総量などを集計して「トラック何台分」といった配送の情報をkintoneに登録するようにしました。

また、予定表を発行していた製造部署に対してですが、これもSlackの通知に置き換えることにしました。ここまで行い、全体のフローとしては従来に比べて70パーセント程度、工数を削減できることになりました。また、従来1日20件ぐらい(の処理)が限度かと思っていましたが、フローの改善後、1日最大80件程度までの実績があります。

業務部門で自主開発することのメリット・注意点

最後に、ASTERIA Warpを導入・運用してみて、私が感じた業務部門で自主開発することのメリットや注意点を挙げてみます。

まずメリットですが、業務部門ですので、改善の材料やポイントが見つけやすい。また、そこから実行に移すまでが「IT部門に依頼」だとちょっと躊躇してしまうようなことも「自分でちょっと試してみようか」というかたちで始められます。

また、私が追加で行った通知の自動化など、継続的に改善を追求する効果もあるかと思います。弊社でも今回の事例以降も活用を広げて、なくてはならないツールとなっています。

そして、これは副産物的なことになりますが、ツールを導入しても技術的な問題などから、開発部門に依頼するケースが発生します。ただ、自身で仕組みを一定程度は理解していることで、要件の切り分けや伝達方法の精度が向上し、やりとりがスムーズになる効果もありました。

また、業務部門での自立開発により、IT部門がコア業務に集中できるというのは一般的にも言われていることだと思います。

一方、注意点です。業務部門の方は、通常業務の傍ら行うことが多いかと思いますので、「時間をどう確保するか・してあげるか」という課題があるかと思います。また、ノーコードツールのPRとして「属人化の防止」が挙げられますが、開発のハードルが低くなることによる「ツールならではの属人化」も起きるかもしれません。

他社のユーザーさまのIT部門の事例などを拝見すると、開発ルールの策定等でカバーされているかと思いますので、弊社でも参考にしたいです。また、IT部門との連携や情報の共有なども重要になってくるかと思っています。

このように注意する点もありますが、トータルとして業務部門での内製・自動化は、業務改善に大きな効果が見込まれると実感するところであります。私からのお話は以上とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。