「"はたらく"に歓びを」というビジョンを実現するリコー

高田雅弘氏:本日はみなさまの貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。私は株式会社リコーESG戦略部の高田と申します。昨年末の12月28日に、アステリア株式会社さまから、本日ご紹介する事例をプレス発表していただきました。本日はその内容をもう少し深掘りして発表いたします。どうぞよろしくお願いいたします。

まずは株式会社リコーの会社概要をご紹介します。これは2021年3月期のデータとなります。連結売上高は1兆6,800億円。海外売上高比率は55.2パーセント。それから関連会社数は227社。グループ従業員数として約81,000人となります。

次にリコーグループの主な製品・サービスを紹介します。リコーグループは5つのビジネスユニットに分かれており、それぞれリコーデジタルサービス、リコーデジタルプロダクツ、リコーグラフィックコミュニケーションズ、リコーインダストリアルソリューションズ、リコーフューチャーズとなっております。

複合機のほかにも、例えば、テレワーク環境の早期実現のための「在宅勤務パック」や、衣料用ケアラベルに使われるような熱転写リボン、右下にある360度カメラ「リコーTHETA(シータ)」のような製品・サービスを提供しております。

リコーは従来のイメージであるOAメーカーから、デジタルサービスの会社へ変遷しております。創業以来、お客様の"はたらく"に変わらず寄り添い続け、変わりゆくお客様の“はたらく”に応じた価値を提供し続けています。リコーは今後も、事業活動を通じた社会課題解決により、「"はたらく"に歓びを」というビジョンの実現を目指します。

このチャートは、リコーグループの7つのマテリアリティ(重要課題)を示しています。事業を通じた社会課題解決として4つ、経営基盤の強化として3つ。また重要社会課題として、これら7つのマテリアリティに紐づくESG目標を17つ設定しています。

年々厳しくなる、ESGの「情報開示」の重要性

次に、私が所属しているESG戦略部について紹介いたします。組織概要としては、リコーグループ全体のサステナビリティ活動を推進しており、グローバル本社として日・米・欧・アジア本社と連携しております。

主な機能として、ESG目標の設定・進捗管理のほか、SDGs・CSVの推進、ESG評価の対応・情報開示、社会貢献活動、ISO14001の維持・改善、産業廃棄物の業者の監査の推進などを行っています。

そのうちの企業価値の向上の活動では、ESG分野の主な外部評価として、「Dow Jones Sustainability Indices(DJSI)」のWorld構成銘柄への2年連続採用や、日経SDGs経営大賞の最高評価5つ星を3年連続獲得など、高い評価を受けております。

ESG評価の基準は年々厳しくなっており、「活動のレベルアップ」として、例えば気候変動対策、サーキュラーエコノミー、化学物質管理、排出物管理。「情報開示」として、例えば法定開示、任意開示としてWebサイトでのさまざまなデータの開示など、継続した改善活動とその開示が必須となっております。

リコーグループでは、温室効果ガスや排出物など、さまざまなデータをWebに開示しております。情報開示の重要性もあり、リコーグループでは2019年度から、ESG分野でもDX実現に向けた取り組みを開始し、環境負荷情報の収集分析、情報開示、コンプライアンス対応など、関連業務のデジタル化やシステムの見直し、蓄積データの再利用などを推進しています。

本日はその中でも「ASTERIA Warp」の活用事例として、リモート監査とiPadを利用した現地確認、産廃委託業者監査システムを紹介させていただきます。

廃棄物処理の委託業者の違反は、委託した企業側の責任問題にも

ここからが本題です。産廃委託業者監査システムと「ASTERIA Warp」の活用、その効果について紹介させていただきます。

まず前提知識として、産業廃棄物の排出事業者の責任についてご説明します。製造業などの企業においては、通常、産業廃棄物の処理を業者に委託することが多いのですが、委託業者内で違反があった場合、排出事業者、つまり企業側も責任に問われることがあります。

しかも企業のみならず、担当者個人が懲役刑や罰金刑を課されるという事例が過去に起きています。そのような事態にならないためには、産廃委託業者の現地確認が有効であり、廃棄物処理法にて努力義務となっております。また、25の自治体の地方自治体条例では現地確認が義務化されており、製造業など多くの企業がその義務を果たしています。

そしてリコーグループが廃棄物管理の取り組みを強化したきっかけでもありました、2002年11月に起こった「青森・岩手県境不法投棄事件」は、国内最大級の不法投棄事件でした。対象の業者に委託していた排出事業者は約12,000社に上り、リコーも対象となりました。

幸いにも法的問題は確認されませんでしたが、業者の現地確認をしていないという指摘もあり、2006年度より「廃棄物処理業者委託監査制度」を立ち上げました。

アプリの操作だけで完結する管理システムを導入

こちらの図は、現在のリコーグループの廃棄物管理活動の全体像です。左の列で示しているように、管理範囲は廃棄物発生前の事業活動から、委託業者での処理までを含んでいます。

それに対しリコーグループの取り組みとしては、各フェーズでさまざまなルールや制度を設け、2006年から15年継続して活動しています。また15年で約2,250件の現地確認を実施し、約140社のリスクがある委託業者を抽出し対応しており、育成した監査員数は約150名に上ります。

また近年のトレンドとして、廃棄物管理の規制制度は強化され、行政や委託業者の意識も向上していること。高まるESG要求からも、廃棄物管理業務のさらなる強化・効率化が期待されています。またコロナ影響などもあり、現地訪問しない監査方法の確立が急務であったことから、2021年度より委託業者の情報をマスタ化し、それに毎年の報告書を紐付けて管理するシステムを導入しました。

監査項目の見直しやリモート監査など、新たに運用ルールなども見直し、全国内のリコーグループへその管理を徹底させております。

こちらが、新たに導入したシステムをかなり簡素化したイメージになります。従来の紙ベースでの報告書運用、管理を見直し、監査報告業務の効率化を推進する目的で、タブレットアプリとサイボウズ株式会社の業務改善クラウドkintoneを導入しました。

またシステム間のデータ連携ツールとしてASTERIA Warpを採用し、現場調査の時にタブレットアプリに入力した情報は、ASTERIA Warpを介してkintoneに自動的に連携されるシステムを構築しました。この結果、調査内容報告から承認申請までのプロセスを、タブレットアプリのみの操作で完結することが可能となりました。

前日・翌日の作業をなくし、業務工数を30パーセント削減

こちらは実際の運用ベースで、Before/Afterでどう変わったかを示すイメージになります。

従来は、前日までの監査依頼書作成や業者の企業プロフィール、前年度フォロー事項などの確認などに1日近く費やしていました。当日は紙にヒヤリング結果を記載し、デジタルカメラで現地確認箇所を撮影しますが、移動中などでできることは特にありませんでした。

翌日以降にヒヤリング結果をPCの報告書へ転記し、写真は整理して写真台帳として報告書に添付する作業を行っておりました。

それに対して新しいシステムでは、業者マスタなどがすべてモバイルアプリに自動で転記されることから、前日作業から解放されました。また現地では、ヒヤリング結果は直接モバイルアプリに登録でき、写真もモバイルデバイスでそのままクラウドへアップロードします。さらに移動中にコメント追記や審査承認まで済ませることで、翌日以降の作業からも解放されました。

これにより監査報告業務の工数を、約30パーセント削減しました。業務が大幅に効率化されたことで、担当者数を維持したまま、監査対象拠点数を3倍に拡大できました。

このスライドに記載はないのですが、ASTERIA Warpにより、ノーコードでkintoneやタブレットアプリなどと連携できることから、プログラミング未経験者でもシステムの内製化が可能となり、構築コストの削減なども実現しております。

開発者から見た、良かった点・苦労した点

まとめになります。「開発者(ASTERIA Warp初心者)は見た!」。実際の開発者から良かった点と改善してほしい点を挙げてもらいました。

まずは良かった点として、フロー図の処理の流れがわかりやすいこと。ヘルプデスクが詳しく教えてくれることなどが挙げられました。またアダプター関係では、kintoneアダプターが秀逸で入力ミスなく便利であることです。

苦労した点としては、1レコード毎のループ処理が感覚的に難しい。テキスト入力処理が感覚通りに行かない。パーツごとのテストと連結テストが効率的でなかったことなどが挙げられました。ここは機能を使いこなせていないだけであればすみません。アダプター関係の期待は記載どおりなので、あえて触れないことにいたします。

最後のページは「今後のASTERIA Warpでの開発計画」です。ESG、特に環境系のデータの統合データベースを完成させるべく、委託業者監査などのリスクマネジメント情報だけでなく、国内外全拠点の環境データ収集のシステムと連携させること。

さらにLCA(life-cycle assessment:製品やサービスに対する環境影響評価の手法)関連データや社会性データとのインターフェースとも連携し、ESG関係のデータベース構築を加速させます。さらに入力系の連携だけでなく、データ活用として冒頭で紹介したようなスピーディな情報開示により、企業価値向上に結びつくような、出力系の連携を重点に移していくことを考えております。

以上、株式会社リコーからの事例紹介でした。ご清聴ありがとうございました。