ヤンマーエンジニアリングのkintone活⽤と業務改善の⾵⼟作り

紀平智志氏:みなさん、はじめまして。ヤンマーエンジニアリングの紀平智志と申します。

さて、本日は「kintoneの社内展開、こんな方法がおすすめですよ」というお話です。突然なんですが、みなさま。kintoneってすごく便利ですよね。いろんな業務に使えるし、しかもアプリを自分で作れる。

私、kintoneがすごく好きなんですが、一方で社内展開が難しく、その社内展開自体が非常に重要なツールでもあると考えております。本日は、もうすでにkintoneを導入されている方はもちろん、これからkintoneの導入を検討されているという方におかれましても、ぜひ参考にしていただきたい内容となっております。

本日のお話、こんな流れで進めてまいります。

まずはじめに当社の概要や、これまでkintoneをどう使ってきたか? という、簡単な沿革。そして、これから何をkintoneでしていくか? という目標。

それらをお話ししたあとに、本日のメインテーマが2点ございます。「チームの改善を社内の改善へつなげていただく」が1点。「社内展開に悩んだら、『点の働きかけ』から『面の働きかけ』をお試しいただきたい」というのが2点目のお話です。本日はメインテーマの内容をもう少し深掘りした後日談についても、補足の3番でご説明していきます。

ではさっそく、当社の会社概要をご説明いたします。当社・ヤンマーエンジニアリングは、1958年創業のヤンマーグループの会社です。事業内容はヤンマー製の舶用エンジンの修理や、その船のエンジンに使う部品の卸売販売を通じて、船舶の安全航行に貢献してきた会社です。そしてグループの中でも珍しい、アフターサービスに特化した会社でもあります。

企業規模は資本金が8,000万円。人員が232名となっております。この232名の人員は、その多くがエンジンを修理するエンジニアとして在籍しております。ちょっと意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、当社は事業の内容と企業規模を考慮すると中小企業に分類される、そんな企業でございます。

続いて、私の自己紹介もさせていただきます。改めまして、ヤンマーエンジニアリングの紀平智志です。ヤンマーエンジニアリングに2018年の夏に入社いたしまして、以来、経営分析であったり決裁等による内部統制、社内工数の低減、マーケティングなんかにも従事してまいりました。プライベートでは学生のころから続けているギターや、資格試験の勉強などをして、休みの日を過ごしております。

2018年の入社当時。私は直属の上司から言われました。「紀平。今は企画でしか使ってない、このkintoneっていうツールをもっと社内に広げていきたいんだ」。そう言われましたが、当時2018年の企画管理部はこんな状況です。

自部門の業務は、分析業務だけで手一杯。ほかの部門や経営層から「kintoneを普及させてくれ」という話が出てきたわけでもございませんでした。本日はこのような状況から、どのように社内を巻き込んでいったか? についても、のちほどご説明いたします。

なぜ改善風土にkintone?

そして続きまして、これまでどのようにkintoneを使って拡大してきたか? というお話と、これから何をしていきたいか? というお話を、もう少しさせていただきます。

これまで企画管理部は7ユーザーからkintoneの活用を始め、徐々に社内にも展開して、アカウント数を増やしていきました。一方で直面した“壁”として、ログインしたことすらないという社員もかなりの数いました。これはかなり悩ましい問題で、このままでは「kintoneのアカウント数を減らそう」といった話も出かねない、非常に危険な問題でした。こちらの”壁”を乗り越えたお話についても後ほど詳しく説明しますね。

次に「なんでkintoneを使っていきたいのか?」を説明します。それは、多くの社員が日常的に業務改善に取り組む風土、この風土をkintoneを通じて作っていきたいからです。

なぜ改善風土にkintoneなんだ? について、もう少し深掘りしてお話しします。kintoneの特徴は「主体的に業務改善が行える」というところ。具体的にはアプリの作成を自分で行って、そのアプリの利用者の反応を自分で見て、そしてなにか反応が微妙だったら問題を明確にして、さらにその改善方法を考えて、またアプリを改良していく。

こんな迅速で柔軟な改善を行える、いわゆる「OODAのループ」を、社員は主体的にどんどん回していくことができる。これがkintoneの強みだと考えています。

そしてこの主体的に作られた仕組みは、どう使われるのが理想的か? こちら、多くの社員間でやり取りされることで、より社員の満足度・効用がアップします。主体的に作られた仕組みが、多くの社員の効用をアップさせる。

このことによって業務改善した社員は「もっともっと業務改善していこう」という、さらなる改善の「動機づけ」にもつながります。この「動機づけ」こそが、風土の構築には非常に重要であると考えているので、kintoneを使いたいというお話です。

そんな業務改善風土構築の取り組みの中から、本日お話しするメインテーマは2点。1点目が「企画管理部・チームの課題をどう改善して、社内に展開を広げていったか?」。もう1点が「どうやったら多くの社員が日常的にkintoneを活用するようになるのか?」という“壁”を乗り越えたお話を進めてまいります。

定量的な財務情報を集約した「財務情報ポータル」

それではさっそくメインテーマの1点目です。「チームの改善を社内の改善へ」。先ほどもお話しましたが2018年当時、企画管理部の業務は逼迫していました。。企画管理部の業務は、月が明けた段階で前月の財務データを取り出して、それをもとに資料を作成、経営分析をしていきます。そして拠点へのヒアリングの内容なんかも踏まえながら、その内容を経営層に報告。そして、月末に行われる経営会議で会社の意思決定が行われる。そんな流れです。

しかし、こちらのカレンダー見ていただいてわかるとおり、資料作成・部門からの情報収集にかなり時間を要しておりました。このことは、さまざまな要素に分岐していきまして、意思決定の遅れであったり、経営状態の適切な把握などに支障をきたしたり。そんな恐れがありました。

そこで私は考えました。なんとかこの問題を解決したいと思いまして、大元のExcelによる資料作成、また拠点へのヒアリングによる情報収集。これをスムーズにしたいと考えました。そして作成したスペースが2つ。1つは定量的な情報をまとめた「財務情報ポータル」。もう1つは定性的な情報をまとめた「経営情報ポータル」でした。

まず財務情報ポータルは、こういったかたちで損益とか在庫とか、経営に関する数値の情報をまとめた特設スペースです。スペースを作る時のワンポイントなんですけれども、こういったかたちでスペースの目的をはじめに書いてやることが、活用の促進をする上での1つポイントです。また、kintoneを使い始めてすぐの場合は、操作方法の補足を入れてあげるのも1つ、親切で活用促進につながります。

さて、では実際に重要なその改善、どう変わったのか? というお話をします。従来は先ほどお話ししたとおり、会計システムからデータを引っ張ってきて、それをもとに資料を作成。そして、メールで配信する流れでした。

それが現在はダウンロードしたCSVファイルを、直接kintoneにインプットしてあげる。そうすることで、グラフや資料が自動で作成されるので、あとは部門長が見たい時にアクセスする。こういったことで資料の作成・配信の手間を削減いたしました。

また、グラフの切り口を見たい切り口に表示を自由に切り替えられるようにもしました。こちらはグレープシティさんの「krewDashboard」というプラグインを活用しております。財務情報ってけっこう、社員によって見たい切り口がまちまちなんですね。そういった社員の要望に応えるためにも、個別の資料を作ることなくスムーズに改善を行いました。

外出先でもアプリから“承認”できる「経営情報ポータル」

今お話ししたのは、定量的な情報をまとめた財務情報ポータルです。続いては、定性的な情報をまとめた経営情報ポータルに関するお話です。経営情報ポータルでは、報告書などをkintoneに置き換えています。このメリットとしては、やはり外出先でもアプリから「承認」ができるところが非常に大きいです。当社のエンジニアは、船の上であったり外出がとても多いので、重宝しています。

ほかにも、主キーを作ることでほかのアプリとの連携を容易にしたり、ラベルフィールドを使うことで欲しい情報「どんな報告書を書いてください」ということを補足したりします。

このラベルフィールドが、私はkintoneの中では特に好きですね。こういったかたちで「どんな報告書を書いてください」と、運用面に働きかけられる非常に有効なフィールドだと考えています。それでもわからない情報に関しては、kintoneのコメントツールを使ってコミュニケーションを取る。そんなことをしております。

その他、提出の際に関わるさまざまな手間を削減しております。従来はExcelと電子印とメールが飛び交ったあとに、OneNoteにファイルをアップロードという流れだったのですが。現在はkintoneに直接記入するので、こういったメールの作成やファイルのアップロードの手間も削減しています。メールボックスの中からメールを探すのって、けっこう手間ですよね。これはとても便利になったなと思っています。

結果、企画管理部の業務がかなり改善されました。半月かかっていた資料作成日数が、稼働日5日で作成できるようになりました。ほかにも分析内容・会議日程、こんなふうに改善がされております。

なにより大きかったのが、この「企画管理部の業務のマインドが変わった」というところ。効率化、工夫を考える習慣がすごくつきました。これを考えることで改善のノウハウが貯まっていき、そのノウハウを他部門に伝えることを通じて、まずkintoneの横展開が徐々に徐々に成功していきました。

有効な「点での働きかけ」にある、1つの難点

結果、他部門にもkintoneのファンができ始めました。ただ、冒頭お話しした「使ってる人は使ってるんだけれども……」という“壁”。ログインしたことがない社員もいっぱいいる、という問題に直面しました。このお話を、本日2点目のテーマとしてお話しいたします。

みなさま。新しいツールを使う時に、社内からの反発って大きくないですか? 当社もそうでした。ですので、多くの社員に影響するような業務にkintoneを組み込もうと試みましたが、いきなりはできませんでした。そこで私が行ったのが、こちら。影響力のある人であったり、積極的に使ってくれそうな人に個別に働きかけました。

これを私は「点での働きかけ」と呼んでいるのですが、メリットとしては、使ってくれそうな人にアプローチしているので社内の反発にあいにくい。そして丁寧なアドバイスで使いどころを理解してもらって、着実にファンを増やせる。もしその働きかけた人が部長さんとか影響力のある人であれば、そこからさらに伝播していく。こういうメリットがございます。

非常に有効な「点での働きかけ」ですが、1つ難点があるとすると、この赤字ですね。「利用拡大のスピードが遅い」という点があり、注意が必要です。しかしこの非常に有効な「点での働きかけ」、どういうところに注意を払って働きかけたか? それは3つございます。

まず「話を聞いてくれる人」、これ前提でアプローチをしました。そのあと「ほかの人を巻き込んでくれそうな人」というのを、できるだけ対象に選びました。そして3つ目が「チームの改善・自分がやった業務改善をできるだけ横展開可能な業務」を狙いました。こうすることで、一度自分が改善している業務なので適切なアドバイスがしやすいんですね。こちらを是非、ご参考にしていただければと思います。

「どうやら便利そうだ」という社内の雰囲気が、大きな反発を抑制

しかし、それでもまだまだ壁は高かったです。やっぱり使ってない人は「どんなことに使えるか、理解しづらい」というところがございました。そこで次に行ったのが、多くの社員が行う業務にkintoneを組み込む「面での働きかけ」。こちらは当社の事例で言うと、多くの社員が起案する決裁業務でのkintone活用が、この「面での働きかけ」に該当したのですが。

このメリットとしては、一斉にみんながkintoneを体験するので、かなりスピーディに拡大が進みます。しかしデメリットとしては、社内の反発が大きくなりがちです。ですが先に「点での働きかけ」で一定数ファンを獲得しておけば、「どうやら便利そうだぞ」という社内の雰囲気が大きな反発を抑制してくれる。そんな効果もございます。実際、当社もこの働きかけによって社内展開がグッと広がりました。

こちらが決裁のアプリを作った際の、実際の画面です。柔軟な通知ルートや、ほかのフィールドの条件を読み取って自動でアドバイスをくれる機能。そのほか従来はExcelで別途作る必要があった添付資料なんかも、すべてkintone化。あとこちら、私の好きなラベルフィールドを使って、初めて操作する人でもわかりやすい注記を入れました。

こうすることによるメリットは、大きく分けて「手間の削減」「仕組みの柔軟化」がありました。決裁のルールって年々変わっていきますよね。kintone活用により、そのルールの変化に追従できる、柔軟な仕組みを作り上げることができました。

今回、社内展開はかなり意識はしてたんですけれども、やっぱり利用者が「便利になったな」って思えなければ、逆効果になっちゃいます。ですので、この「面での働きかけ」の際に注意したことは、利用者に優しい仕組みを作ること。そして迅速な問い合わせ対応。なにか問い合わせがあった時はすぐに答えることを心がけました。

本日のメインテーマ、特にお伝えしたかったのがこの2点です。チームの改善ノウハウを、積極的に社内の改善ノウハウに広げていってください。そうすることで、kintoneの社内展開の大きな第一歩につながります。そして、もしそれでも社内展開に悩んだら「点での働きかけ」でファンを着実に増やしてから、「面での働きかけ」で一気に広げていただく。これをぜひお試しください。

以上が本日のメインテーマになるんですが、20分間ダーッと足早にお話ししたので、みなさんちょっとお疲れだったりするかなと思います。伸びとかしていただきながら、気軽にこのあと聞いていただければなと思います。