人は無意識のうちに、損をしないほうを選んでいる

ステファン・チン:人生には小さな決断がつきものです。クッキーを1枚食べる? 2枚食べる?

友人に買ってあげるのはどちらのプレゼント?

人の悩みは尽きませんが、こうした小さな決断を延々と引きずることはほとんどありません。これは、人間が無意識のうちに有利な決断を下せる戦略を取っているからです。私たちが無意識に行っている決断の戦略の1つ、それが「リスク回避」です。

リスクとは「危機」です。危機は回避しなくてはいけません。FOMO(the Fear Of Missing Out;取り残される不安・恐怖のこと。現代人のSNS病)の経験者なら、身に覚えがあるでしょう。誰しも、楽しくて有益な情報を逃したくありません。

安定性を求め、リスクから逃れようとすることを「確実性効果」と言います。

人はわずかでもリスクがある結果よりも、確実に利益が上がる結果をより強く選好します。例えば、絶対にクッキーを1枚くれるジャマルと、もしかしたら2枚クッキーくれるかもしれないアナがいれば、確実にクッキーをもらえるジャマルの所へ行きますね。

「リスク回避」では決められないもの

一方で、ジャマルのクッキー1枚と、リッキーの見事なアート作品、どちらも確実にもらえるとなれば、ジャマルの所に行くという選択は怪しくなります。

まったく異なる物を比較検討することになり、考慮の対象となる価値がまったく異なるからです。

たとえば、アート作品とクッキーは、どちらも自分を幸せにしてくれますが、アート作品のほうがクッキーよりも長く楽しめますね。でもお腹を満たしてはくれません。つまり、同じクッキーを比較対象とした先ほどの選択よりも、別の因子が考慮されます。これを「孤立効果」と言います。

共通点を無視することで、両者の相違点を比較検討できるようになります。たとえば、クッキー2枚と1枚の違いは、クッキー2枚の方が「数が多い」という点です。

しかし、クッキーとアート作品がもたらしてくれる幸せは、まったく異質の物です。クッキーをバスケットボールと比較するとなれば、またさらに違った比較検討がなされます。

つまり、最終的には「何に最も重きを置くか」はその人によって異なり、比較対象によっても変化します。そして、決断後に変更をすることはよいことだとはされません。決断の変更は不確かなことであり、人は確実なほうを好むからです。

さて、これで決断に伴う心理学用語を学びましたね。では、こうした戦略を意識したり、活用してパッパッと意思決定できるように実践してみましょう。前述のとおり、人生にはちょっとした決断がつきものであり、年明けのこの時期は、決意も新たに問題を解決しようと考えるものですからね。