「仕事の流れを客観的に図解する『業務フロー』の作り方」

青木俊子氏(以下、青木):みなさん、こんにちは。株式会社TMJの青木と申します。このセミナーでは「業務改善の第一フェーズ! 仕事の流れを客観的に図解する『業務フロー』の作り方」と題して、業務改善に必要なフローの作成、更新のノウハウをお話しいたします。

弊社TMJでは日々さまざまな企業さまから、コールセンターやバックオフィスの業務をお預かりしており、本日は実際にそれらの業務運用や改善に取り組んでいる、担当の中村にお話を聞きながら進めてまいります。中村さん、よろしくお願いいたします。

中村拓磨氏(以下、中村)::はい。TMJの中村です。よろしくお願いします。

青木:本日はこちらの6つの項目についてご紹介いたします。でははじめに、直近の業務や働き方の変化について整理したいと思います。TMJでは、コールセンターや事務の業務委託、いわゆるBPOベンダーとして業務を行っておりますが、最近の変化や傾向はありますでしょうか?

中村:そうですね。これまでのような外部委託のご相談に加えて、最近では業務改善や、そのための可視化のお手伝いに関わることが増えている気がします。

青木:それはやはり、コロナ禍の変化が影響しているんでしょうか?

中村:そうだと思います。リモートワークにシフトするために、今の業務を見直そうという動きは加速しています。あとは、コロナとは関係なくですが、働き方改革や高齢化の問題などもありますので。ワークスタイルの変化や組織体制の見直しの点でも、業務改善は避けて通れないテーマかと思います。

現在の業務を棚卸し・可視化するための、2つの手法

青木:なるほど。そういったご相談があった時に、どのような解決方法があるんでしょうか?

中村:まず我々がお伝えするのが「現在の業務を棚卸しして可視化しましょう」ということです。「改善」とひとことで言っても、取り組みがしやすいかとか効果が見込めるかとか、個々の手段を考える前に方向性や優先順位をつけていくことが必要です。

青木:具体的にはどんな方法でしょうか?

中村:1つは、業務の「種類・量・難易度」を棚卸しする方法です。TMJでも「BPEC」という業務調査手法を使って、2ヶ月程度でクイックに、負荷をかけずに業務を可視化するサービスを提供しています。

青木:なるほど。

中村:そこで業務量が多いところを優先的に改善するとか、定型的な作業にはRPAを入れるとか、業務を可視化することで改善の方向性や優先順位の目処が立てられます。

もう1つが、本日のテーマである業務フロー作成と更新です。私たちも、クライアント企業さまからお預かりした業務を立ち上げる際には、必ず業務フローを作成しています。

青木:業務フローがないと始まらない、ということですね。

中村:そうですね。自部門の業務はもちろんですが、他部署との連携がどうなっているかですとか、システムがどのように使われているかといったことも業務フローでわかりますので。他の部門の人にとっても有効な情報となります。

青木:なるほど。

中村:あとは改善する際にも、現在のフローがベースとなるので、業務フローが現状の運用に合っているか。つまり、最新化されているかというのも重要になります。

目的や登場人物、システムなどを大まかに記述した「業務シナリオ」の作成

青木:では、具体的にはどのように進めるのがよいのでしょうか?

中村:まずは、それぞれの業務フローの目的や登場人物、システムなどを大まかに記述した、業務シナリオを作ります。これはフロー自体の設計図のようなものですが、細かく作り込む必要はなくて、あくまでもフロー作成の準備材料という位置づけで作成します。

青木:なるほど。その後、業務フローを作る、あるいは見直すとなったら、どのような進め方になりますか?

中村:まずは全体像の把握とスケジューリングです。いきなり作業に取りかかろうとしても、日々の業務もありますし、先が見えてないとやりづらいので。

青木:確かにそうですね。

中村:そして具体的には作業量、つまりフローが何本あって、必要な作業はどれぐらいかとか。あとは作業担当者、期限などを決めていきます。

青木:そうなんですね。その後は、さっそく作業に入りますか?

中村:いえ、その前にフロー作成のルールを作ります。具体的には、ExcelなのかPowerPointを使うのかとか。アイコンの使い方や矢印の引き方など、細かいところまで決めていきます。

青木:なるほど。

中村:例えば、システムを導入するといった横断的な改善プロジェクトが走っている時に、ルールがバラバラだと困りますので。

ルール作りのポイント

青木:なにかルール作りのポイントはありますか?

中村:はい。多くの会社では、過去に作ったフローが多少あると思いますので、それらを比較・検討して“いいとこ取り”といいますか、見やすくてわかりやすいルールに向けてすり合わせていくのがよいと思います。

青木:そうなんですね。すり合わせをうまく進めるコツはありますか?

中村:そうですね。例えばフロー改善プロジェクトのように、社内でプロジェクトを立ち上げて、最終的にはそのオーナーが決定権者となって、リーディングしていくのがよいと思います。

青木:なるほど。

中村:あとは「BPMN」という国際基準の業務プロセス記述ルールもありますので、それを参考にするというのも1つの手になります。

青木:そうなんですね。判断の基準や拠りどころを設けて、それを各部門に落とし込むということですね。

中村:そうですね。そのためには説明資料を作っておいて、説明会のようなかたちでみなさんにお話しするのがよいかと思います。その際なんですけれども、ワーク、いわゆる実習のような時間を入れておくと、聞いている方も退屈しないのでおすすめです。

青木:確かに、説明を受けたその場で手を動かすのはいいですね。

中村:あとは説明会のアンケートですとか、質疑応答も設けるようにすれば、説明資料のブラッシュアップやルールの微調整にも役立ちます。

業務可視化・改善の要となる作業

青木:そこからフロー作成や更新作業に入っていくわけですが、どんな点に注意したらよいでしょうか?

中村:先ほど申し上げた、進捗管理が重要となります。日常業務の合間に行うことになると思いますので、進捗管理表を作って、管理や共有ができる仕組みが必要になります。あとは、できあがったフローをチェックすることも必要です。

青木:チェックの際のポイントはありますか?

中村:ルールに則って作成されているか? ということが重要です。そして、それを誰がチェックするか、フロー改善プロジェクトメンバーの中でチェック担当チームを作って、集中的にチェックするといいですね。

青木:そうなんですね。それはセルフチェックではなく、ということですか?

中村:そうですね。自部門のチェックですと、どうしても過去のルールや慣習に偏る可能性があります。

青木:なるほど、確かにそうですね。

中村:チェックの際には、作成者にきちんとフィードバックすることも大事です。それによって、全社にフロー作成ルールが浸透していくことになります。

青木:チェックするほうも、なかなか大変ですね。

中村:そうですね。特にはじめのうちはルールの隙間をつくような作り方をされたり、ルールにとらわれてかえってわかりづらいフローになったりと、いろいろな課題が出てくると思います。

ただ、それをクリアすることでより良いルールができて、標準化されたフローになっていきます。ここがまさに業務可視化・改善の要となる作業ですので、がんばりどころかなと思います。

青木:これでめでたく、作業完了というわけですね。

中村:はい。ただ、フローは作って終わりではなくて、更新や管理などのサイクルを回すことが重要で。そのための仕組みや運用方法も決めておく必要があります。

青木:具体的にはどのように決めるのがよいでしょうか?

中村:まずはスケジュールですね。四半期ごととか半期ごととか、できれば部門バラバラではなくて、共通のタイミングを設けるとわかりやすいですし、全社共通の意識付けになると思います。

青木:なるほど。

中村:あとは、担当者を決めておくのも重要です。実際に更新作業をする人はその都度決めるとしても、全体的な進捗を管理する担当者が決めておくとスムーズに進みます。

「フローの完成で終わり」ではなく、定期的な更新・管理サイクルの継続が大切

青木:ありがとうございます。ここまで、業務フローの作成や更新に関するノウハウをおうかがいしてきましたが、TMJとしてもそのようなご支援をしているのでしょうか?

中村:はい。実際に、ある企業さまの人事給与部門からご相談をいただきまして。全部で200本ほどのフローを更新するお手伝いをいたしました。

青木:200本。それは中村さんが更新作業をされたんですか?

中村:いえ、私たちはまずフロー更新のルールの作成から始めまして。この時も、クライアントさまの中にフロー更新のプロジェクトチームがあって、そのリーダーの方と相談しながらルールを固めて、みなさんに説明会を行いました。その上で、各部門の方々に更新作業をしていただいて、私たちがチェックやフィードバックをしました。

青木:なるほど。あくまで改善の主体はクライアントさまということですね。

中村:はい。TMJはその活動のご支援をする、という位置づけで活動いたしました。

青木:それでは、本日のまとめに入りたいと思います。業務改善を成功させるためには、仕事の流れを客観的に共有できる業務フローの作成が重要です。そこで、まずは業務フロー作成や更新の目的を明確にすること。その上で作業量を把握して、スケジュールを定めること。作業にあたっては、標準化されたルールに基づきチェックを行うこと。最後に、フローの完成で終わりではなく、定期的に更新・管理するサイクルを継続すること。以上がポイントとなります。

中村さん、ここまでありがとうございました。

中村:はい、ありがとうございました。

青木:今回ご紹介したような、経理・人事・総務といったコーポレート部門の業務改善事例については、TMJのホームページに公開しておりますので「TMJ 事例」で検索して、ぜひご覧ください。また、業務改善手法についても関連記事がありますので、併せてお読みいただけると幸いです。

本日は最後までご視聴いただき、ありがとうございました。