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「明光キャリアアカデミー」学長・田中研之輔氏が語る VUCAの時代に求められる“自立したキャリア意識”とは?(全2記事)

根絶すべきは「転職=会社への裏切り」という、古い価値観 組織が人生を守ってくれない時代の“セーフティネット”とは?

ログミーBizのオリジナルYouTube配信イベントより、法政大学キャリアデザイン 学部教授/一般社団法人プロティアン・キャリア協会 代表理事/株式会社キャリアナレッジ 代表取締役社長の田中研之輔氏が登壇された「『明光キャリアアカデミー』学長・田中研之輔氏が語る VUCAの時代に求められる“自立したキャリア意識”とは?」の模様を公開します。 ※元動画は、こちらからご覧ください

VUCAの時代に求められる“自立したキャリア意識”とは?

ーーはじめまして、こんにちは。本日は「『明光キャリアアカデミー』学長・田中研之輔氏が語る VUCAの時代に求められる“自立したキャリア意識”とは?」といったテーマで、イベントを進めていければと思います。

変化が激しいVUCAの時代。これまでの「新卒で入社した会社で定年までがんばれば、豊かな老後が待っている」といった受け身の時代ははるか昔に終わりを告げ、今は自ら率先してキャリアのビジョンを描く時代に突入しています。

とはいえ、誰も正解を持たない現代社会においては「誰に」「何を」「どのように」相談したらいいのかがわからない。それが、キャリア形成の難しいところです。

そこで本日は、2021年11月に開講された「明光キャリアアカデミー」にて、学長を務めていらっしゃる田中研之輔先生に、VUCA時代のキャリア形成の極意についてお話をうかがっていければと思います。

では本日のゲスト、田中研之輔先生です。よろしくお願いします!

田中研之輔氏(以下、田中):はい、みなさまこんにちは。よろしくお願いいたします。2022年が始まりましたね。ログミーさんとご一緒できて、いいスタートが切れそうな予感がしてます。非常に楽しみにしております。

ーーありがとうございます。では、簡単で構いませんので、自己紹介をお願いできますでしょうか?

田中:はい。今ご紹介ありましたように、明光キャリアアカデミーの学長を務めさせていただきながら、法政大学のキャリアデザイン学部で教員職をやっていたり。あとは、社外顧問として企業経営の参謀役やキャリアに関するプログラム開発・監修などを務めております。

こちらに本を並べていますけども、私の1つのライフワークとしては、1年に1冊。もしくは2冊ぐらいのペースで本を書こうと思ってまして。ある意味、作家業といいますか、執筆業もやってるようなかたちですね。

実はこの『プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術』という本に込めた思いでもあり、今日のイベントのテーマでもあるんですけど「自ら主体的にキャリア形成をしていきたい。そしてそれを自分でも体現していきたい」と思ってるので、結果的にいくつかの肩書をいただくかたちになってますね。

田中研之輔氏の著書“3兄弟”

ーーなるほど。ありがとうございます。(机上の書籍3冊を指して)こちらが先ほどご紹介いただきました本ですね。

田中:そうそう。これ“3兄弟”って呼んでるんですよ。

ーー3兄弟ですか!?

田中:3兄弟(笑)。『プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術』が長男。『ビジトレ:今日から始めるミドルシニアのキャリア開発』が次男。『プロティアン教育:三田国際学園のキャリアエスノグラフィー』が三男。

三男がちょうど2021年の秋に生まれました。これを書いたのは、三田国際学園の内田(雅和)先生という、僕と同い年の教頭先生で。その方が、うちの法政大学大学院の修士課程にいらして、僕が指導担当教員になったんです。そして、1年半ぐらいかけて一緒に本を書いていきました。一緒にっていうか、私が論文を見ていったかたちですね。

そんな三男ができまして。これなかなかいい感じで、まさに長男『プロティアン』を受け継ぐかたちで、こちらは「教育」。今日の話も出るかもしれないですけど『プロティアン教育』ということで、まとめさせていただきました。これはAmazonでしか売ってないです。

ーーなるほど。こちらの2冊(『プロティアン』と『ビジトレ)は書店でも購入できますか?

田中:書店でも売ってます。でも、ネットショップがいいかな。そのほうが簡単に入手できますし、Kindle版なんかもありますよね。

健康診断と同じように、定期的にチェックすべき「キャリア診断」

ーーそして、こちら(『プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術』)は私の私物でして。付箋を山ほど付けさせていただいてるんですけども(笑)。

田中:すごいですね(笑)。

ーー後ほどお話もいただけるかもしれないのですが、プロティアンについての「プロティアン・キャリア診断」というのが載っていまして。

田中:お、やりましたか??

ーー「全15個の項目で、いったい何点なのか?」っていう診断コーナーがあって、私は7点でした。

田中:7点、いいですよ。「セミプロティアン」なので、優秀でございます。

ーーありがとうございます(笑)。「プロティアン人材」「セミプロティアン人材」「ノンプロティアン人材」の3つですよね。

田中:そうですね。3点以下の「ノンプロティアン人材」は、イエロー、黄色信号かなって思いますよ。

ーーなるほど。先生も「ミドルの憂鬱」に陥っていた時は6点で、ギリギリ「セミプロティアン人材」だったと書いてらっしゃいましたよね。

田中:6点ぐらいですね、私も。当時はアメリカにいまして、帰国して法政大学に着任して。学生たちが毎年入ってくるから、一生懸命に伝えますよね。でも、1年終わって、もう1年終わって、もう1年終わって……が3回ぐらい回ると「あれ、また同じこと繰り返すのかな?」ってなってきた時に、自分のキャリアってこのまま、例えば「大学の中だけでいいのかな?」って考えて。そうするとモヤモヤしますよね。

そんな時、過去に時間軸を戻して自分なりに診断してみると、まあ当時は6点だっただろうなって。今でも15点満点じゃないですけど(笑)。まあ、みなさんと一緒に考えたいのは、キャリアって定期的にチェックしながら持続的に自分でより良いコンディションにすることができるから。

健康をチェックすると思うんですよ。その健康チェックと同じように、キャリアも定期的にチェックしましょうって。そんなかたちの診断も本の中に入ってますね。

ーーあとはキャリアと直結はしないと思うんですけど、会議の話。「意味のない会議を撲滅するには?」っていう項目があって。これはすごくいいなと思いました(笑)。

田中:そうですね(笑)。けっこう今、実践してるんですよ。だから自分がもし、今の学長としてとか、あるいはいろんな会議に参加する場合は、できるだけその会議の生産性を高めたり。その頻度でいいのか? とか。この1テーマで90分、60分、30分で良いのか? それはどうやって決めていくの? とか。そういったことを毎回毎回、生産性ベースで考えるようにしてますね。

企業で登壇させていただく時なんかも、そういう意識を一つひとつ持つ。ルーティン化して習慣化してくると、惰性で動くようになるじゃないですか。そうすると、みなさんもたぶん同じだと思うんですけど、スケジューラを見る、朝からダダダダダッて会議の予定が入ってると思うんです。1時間、1時間、1時間、1時間……、もしくは30分、30分、30分……、15分、15分……ってダーって会議が入ってるんだけど。

本当にその一つひとつが意味をなしているか? ってことも考えなきゃいけなくて。今までだったら「組織の中のルーティンワークだから、当然、そういう会議になりますよね」だったけど、これからは会議に関しても、自ら主体的に、我々がしっかりハンドリングする、マネジメントする。そのあたりはポイントかなと思ってますね。

ーーありがとうございます。そんないろいろなお役立ち情報も載っている、こちらの3兄弟。

田中:『プロティアン』は先月増刷。『ビジトレ』も増刷。『プロティアン教育』は出版したばかりですが、比較的多くの人に読んでもらっているなって思ってますね。

ーーぜひみなさんも、お買い求めいただければと思います。

今の時代、約半数が「30歳までに2社目を経験している」

ーーではさっそく、1つ目のテーマに移っていければと思います。「時代とともに移り変わる、ビジネスパーソンのキャリア意識」。

これは昭和・平成・令和と時代を経るにつれて、どんどん働き方への意識、というかキャリアへの意識が変わっていってるのかなと思っていて。それらがどんなかたちで変わってるのかについて、まず背景からおうかがいできますでしょうか。

田中:ではまず、僕が今どういうふうに整理してるかについてお話しますね。昭和のキャリアロールモデルって何か? っていったら、組織内キャリア。これはキャリア論でいうと「オーガニゼーショナル・キャリア」といって、組織の中でキャリア形成していきますよ、と。大学を出る、高校を出る、社会に出たら1つの組織に入る、その中での昇進・昇格。

これがスタンダードとされていた組織内キャリアから、平成になると少し個人での活躍が許されるような「インディビジュアル・キャリア」。個人のキャリアっていうのが出てきたと。

今は令和ってことで考えると、個人のキャリアの「2.0」になってきたなと思ってるんですね。それを最新のキャリア知見である「プロティアン」でどう捉えているか? なんですけど。プロティアンっていうのは、個人と組織の関係性をより良くしていく関係論的な考え方。だから個人と組織をつなぐキャリアが、令和のポイントになってくるかなと思ってますね。

組織から個人へ。そして、組織と個人をつなぐ。これが今の「2.0」のキャリア形成のスタンダードになりつつあると。

ーーなるほど。昭和なんかは終身雇用が当たり前で「新卒で入った1社に、人生のすべてを捧げる」みたいな感じでしたもんね。

田中:そう。だから、例えば私の親世代なんかね。私は今年45歳になるので、我々の世代の周りを見てても、やっぱり「入社する」っていうのは、ある種の「覚悟を背負う」こと。それは何か? っていったら「この会社でやり遂げる」みたいな価値観で。

今、いろんなキャリア本の中でも、例えば「転職」とか「新しいチャレンジ」みたいな本ってよく読まれてると思うんですけども。今の30歳以下ぐらいだと、いろんな統計データがありますけど「50パーセントぐらいが、30歳までに2社目を経験している」と。

これって明らかに日本社会においても「キャリアに関しての新しいステップを踏むこと自体が、ネガティブではない」となってきた。これは大きなトランスフォーメーション。本当に変容の過程なんですよね。

「1つの組織にずっといる=昭和型キャリア形成」というワケではない

田中:変容の過程というのは、実は目に見えないですよね。例えば「みなさんの友人を5人集めてください」と。友人を集めた時に、昭和時代の友人だったらみんな(新卒で入った会社と)同じ職場で働いてたんだよね。

でも今は見てください。たぶん、今日このイベントにご参加のみなさんを含めた周りの友人。例えば5人を見ていった時に、2社目・3社目を経験してる人が、おそらく「5人中3人、もしくは4人」だと思う。もうそれぐらいになってきてる。

僕なんかは、けっこうレアなキャリアになってきたなって思ってるんです。それはなぜか? っていったら、アメリカで研究員やってましたと。そこから法政大学のキャリアデザイン学部で働く機会をいただいたので、実は僕、まだ1社目なんですよ。

ーーなるほど!

田中:研究員としての社会人キャリアがあるから、それを「1つ目」って考えると、2つ目なんだけど。「組織の中に入る」って観点でいうと、法政大学で初めて雇われて、今もずっと法政大学。もう14年、1つの組織の中にいます。

でも、1つの組織の中にずっといる人が、いわゆる「昭和型のキャリア形成」をしているか? っていったら、これもまた違うと思っていて。僕はその組織にいながら、ピボット型でどんどん外に行ってる。

例えば、今回も「明光キャリアアカデミー」の学長として就任させていただいて。そういう複数のキャリア形成をしていく人っていうのは、昭和のキャリアの中ではなかなか見られなかったと思うんですよね。

まさにこれが、外に行って主体的に、変幻自在にやっていく「プロティアン・キャリア」でもあるし。1つの軸をピボット化しながらやっていくことも含めて、プロティアン・キャリアって我々は呼んでますね。

労働の流動性は、キャリア形成にとっては不可欠

ーー昔は「転職する人=会社に対する裏切り者」みたいなイメージでしたよね。

田中:そう。そういう価値観って、もう本当に根絶せなアカンなと思います(笑)。その“村八分”的な扱いって、まだあります。

例えばどういうケースか? っていうと、まずは、いわゆるリテンション(退職の引きとめ)が作用するから「辞める」ってことを言えないよね。どういうタイミングで言わなきゃいけないか、みなさん相当悩みますよね。

3ヶ月かけて上長から入っていって、組織の中での役割上の引き継ぎやっていって。さらに半年〜1年かけて転職する、みたいな。まだまだその、転職したらなんとなく組織に対して「悪いことしたな」っていう気持ちがあるから。

例えば、元々はすごく熱心にSNSをやられてる人でも、その(離職・転職)期間はSNSの更新がパタッとなくなって。それで数ヶ月経ってから「実は(離職・転職活動してました)……」みたいな。そういう退職・転職エントリーみたいなのも、今の時代の状況を浮かび上がらせているなって思って見てますけどね。

労働の流動性っていうのは、キャリア形成にとっては不可欠で。必要な場所に必要なタイミングで、人的資本を最大化するために新たなチャレンジをしていく。つまり、その選択肢の1つが転職であり、副業であり、新しい活躍の場所を広げてくっていうチャレンジなので。

そういうケースを全うしてるキャリアロールモデルが増えてくっていうのは、本当に日本社会にとっては必要なことだと思ってますけどね。

決定的になる「新たに挑戦していく人」と「居続ける人」の格差

田中:(モデレーターのログミーBiz編集部員対して)いままで転職とかされてるの?

ーー私はこの会社が7社目でして、これまで6回も転職してるんです(笑)。

田中:その意思決定の理由は何なんですか? 次なるチャレンジにいこうっていう感じ?

ーーそうですね。「編集者」っていう軸はブレてなくて、今回この会社(ログミー)で初めてWebの編集者になったんですけど。それまでは常に「紙の編集者を極めるぞ」と。例えば料理雑誌を3年経験して「このジャンルはもう極めたな」ってなったら、次のジャンルにいく。さらに、次のジャンルにいく。そして「雑誌編集はもう極めたな」と思ったから「次は書籍編集にいこう」といった流れで、チャレンジしていってる感じですね。

田中:プロティアン型っていうのは、キャリア自律型の最新知見なんです。キャリア自律っていったい何なのか? っていうと、自ら主体的にキャリア形成をしていくってことね。だから、新しいチャレンジ、まさに今のお話のように「次なるチャレンジにいくぞ」ってすごく良いことだから、そういうふうに「自ら新しいチャレンジをしていくぞ」っていう人たちが増えてきてるんだけど、そうじゃない人もいるわけ。

つまり「目の前の業務の仕事が、自分の仕事のすべてである」ってなると、その人たちはその仕事に対してはしっかりと向き合ってらっしゃるんだけど、「新たなチャレンジをしていく人」と「そのまま居続ける人」の格差は、もう決定的なものになると思っていて。

僕はそれを「プロティアン格差」って呼んでるんです。例えば「学歴格差」ってありますよね。昔でいえば、一生懸命勉強して大学に入って「○○大学を出た」。それが自分の人生の格差になってるって説明されてたけど。

でも考えてみてください。高校で3年、大学4年。22歳で社会に出る。マスター(修士)だったら24歳とかで出る。でも「(働くのは)70歳までですよ」って、この書籍『プロティアン』には書いてある。大学はたった4年なのに対して、働くのはミニマムで約40年だから、そういうことを考えるとどこで格差が生まれてるのか? と。

「キャリアを考える必要性があるのはなぜか?」っていったら、例えば明光キャリアアカデミーの立ち上げもそうだけど「キャリアを考えることが我々自身のセーフティネットなんだ」ってことを僕は伝えたいんだよね。

たとえ組織が我々の人生を守ってくれなくても、自分たち自身で自分たちのキャリアを、そして自分たちの人生を守っていく。そういう、変化の激しい中でのキャリア形成のセーフティネットが、やっぱりキャリア自律だって思ってるんですよね。

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