出版のきっかけは、Twitter経由できた執筆依頼
岩橋ひかり氏(以下、岩橋):最後に、いつか本を出したいと思っている人もいるかもしれないので。いきなり内容がガラリと変わるんですが、佐野さんがこの本を出すと決まったエピソードが、けっこうワンダフルじゃないですか。
佐野創太氏(以下、佐野):ワンダフルですね(笑)。
岩橋:ちょっとそのへんのお話を聞きたいです。いろんな人に可能性があるんですよね。
佐野:本当にそうですね。僕はTwitterとかFacebookとか、だいたいネット上にいるんですけど、まったくインフルエンサーではないんですよ。何万人もフォロワーがいるとかではまったくないんですけど、編集者の方からTwitter経由で「本を書きませんか」というオファーがあったんです。
編集者の方もタイプが分かれるらしいんです。やっぱりすぐ売上が見込めそうなインフルエンサーの方がいい方もいらっしゃれば、「どうでもいいわそういうの」っていう、ロックな感じの人もいて。
僕は幸いなことにその「どうでもいいわ」タイプの編集者の方に出会えて、かつ何年か前に『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)』という10万部ぐらい売れた本がありまして。
いわゆる退職本じゃないですけど、「ブラック企業から逃げようぜ」という本を手がけた編集者の方だったので。「退職」に関して、お互い興味が一致したんですよね。1分の1の出会いで始まったのが、この本でございました。
岩橋:Twitterで声をかけられたのは、1年も経ってないくらいですよね。
佐野:去年の5月です。びっくりしました。
岩橋:当時も「退職」をテーマにTwitterやnoteをやっていたんでしたっけ。
佐野:やっていました。なので今話したようなことをとにかく発信だけしていた感じで、別にフォロワーも多くなくて、noteだってまだ250くらいしかいないんです。
岩橋:そこまで少なくないですけど、増えてそのくらいになったのか。
佐野:Twitterは3,000人とかいますけど、noteのフォロワーはぜんぜん、200とか。ザコキャラです。
岩橋:(笑)。一番きれいな決まり方じゃないですか。
佐野:そうですね、思えば一番いい決まり方をしたなと。
「メジャーにつながるニッチな領域」のススメ
岩橋:そういうことが本当に起こるんだなって、私はすごく勇気づけられました。きっとこれを見てくださってる方の中で、誰かそういう発信を始めて、来年の今頃本が出てるかもしれない。
佐野:1個良かったのは、僕は無意識にメジャーにつながるニッチな領域を取ってたんです。メジャーにつながるっていうのは、たぶん誰もがキャリアとか働き方に悩んでるじゃないですか。その大きな枠の中の「退職」というニッチなところ。でも「退職」を通じて、それこそライフキャリアとか大きなところにつながる川を見つけられてたんだと思うんですよね。
なのでもし自分の領域で何かしたい方は、「メジャーにつながるニッチな領域」をなんとなく思いながら、自分のキャリアを棚卸しすると意外といいかもしれない。
岩橋:なるほどねぇ。
佐野:メジャーにつながる領域でメジャーなこと言っても、もうメジャーな人がいるので入れてくれないんですよね。
岩橋:メジャーにつながるニッチな領域ね……。今日はけっこういいヒントもいただきましたよ。
佐野:やった。(もしこれで本を出すことになった人は)、あとがきに「佐野さんから聞いた」と書いてくださいね。「『メジャーにつながるニッチな領域』という言葉を聞いたからこの本が出せました、佐野さんありがとうございます」って書いていただければ、元気が出ます。
「自分だけの満足」では、あまり満足できない
岩橋:ちょっと時間もアレですけど、。私Kindleでこんなことができるんだってことに気づいたんですけど……。
佐野:カッコいい。
岩橋:これ(Kindlequotes:Kindleの書籍を画像で引用するサービス)、カッコよくないですか(笑)。すごくすてきだなと思ったメッセージを、ちょっといくつか紹介して終わりたいなと思います。
「私たちが思う『自分らしさ』や『自分』とは、決して『私が思う自分』だけでつくられているわけではないのです。『周囲の人の声や評価』と『私たちの本音』が合わさってつくられる」という一文があって、本当にそうだなと思って。
分人主義を提唱した『私とは何か 「個人」から「分人」へ』という平野啓一郎さんの本もピックアップされてらっしゃいましたけど。
佐野:これ、すごくひかりさんと共通してるなと思ったんですよ。ひかりさんは「どんな社会にしたいかを描く」って、最後のほうに書いているじゃないですか。あれにすごく共感していて。たぶん今「ありのまま」とか「自分らしさ」っていうキーワードが、何年もバズワードになっていますけど。「自分だけの満足」って、たぶんあまり満足できないんですよ。
岩橋:そうですよね。
佐野:自分と、大切な人と、大切な人の周りの大切な人くらいまでを満足させる自分じゃないと、あまり幸せじゃないんだと思うんです。それで「自分一人だけの満足だけで終わらせないようにしよう」というのが、最後のほうのメッセージです。「明日への手紙」という章です。
あそこもやっぱり、ありのままの自分を取り戻し、他者とつながっていく。その「他者とつながっていく」ところまでちゃんと伝わらないと、キャリア論としてはすごく弱い。ありのままになりました、やりたいことを見つけました、でも不幸で、またループに入りますという。
「自分らしさ」を考える時の「社会どうしたいか」という視点
岩橋:私も最初の会社を辞めたくらいの時、「好きな場所で好きな時間に好きなだけ」という感じにちょっと憧れたし、できるようになったんですけど、なんかちょっと……別に海外でいいホテルに泊まっても、ちょっと虚しい(笑)。
佐野:そう、虚しいんです。自分だけが幸せになっている時って、なんか虚しいんですよ。ひかりさんの「社会をどうしたいか」という視点は、他者目線を入れるすごくいいワードです。
岩橋:その「社会」は別に、「日本を」とかそういう大きなことじゃなくていい。本当に身近な、自分以外の誰かが関わればもうそれで社会ですからね。
佐野:そうなんです、それでいいんです。
岩橋:いくらでも話せちゃいそうな感じなんですけれども、時間なので終わりたいと思います。今日これを聞いてくださった方は、ぜひよかったら感想をコメント欄に書いていただけると。アーカイブでご覧いただく方も(コメントをいただけると)うれしいです。なにはともあれ、佐野さんの本を読んでください(笑)。
佐野:ぜひ。2022年はこの2冊の白湯本で体を健康にしてください(笑)。
岩橋:書店で買える白湯(笑)。
佐野:「キャリア界の白湯」枠ですね。これはちょっとメジャーにつながってないニッチかもしれないんで、危険ですけれども(笑)。
岩橋:でも白湯は万人が飲みますからね。
佐野:そう、誰でも飲める。今回の本の中に音楽とか哲学とかを多く引用したのは、年齢とか問わず、何歳でも読めるようになったらいいなという願いが正直あるんですよ。僕だけの経験とか相談者の話だけだと、同じような世代の人の話で終わるなと思って。
岩橋:だから読んでいてすごく深みがあったし、ちょっと賢くなった気分にもなって。「この本読んでみたいな」とか思う本にも出会えるので、すごく良かったです。
佐野:めちゃくちゃうれしいです。やっぱり本1冊で完結してほしくないので。
岩橋:けっこう古典的な本とか、いっぱい引用されてましたもんね。
佐野:エーリッヒ・フロムとかも好きなように出してきますからね。
岩橋:なのにあの音楽グループの本が引用される謎(笑)。
佐野:まさかの音楽グループと、著名なシンガーソングライターの話も出てきますからね(笑)。
手紙のように書いた本は、「返事」をもらって初めて完成する
岩橋:(笑)。みなさん「キャリア界の白湯本」を読みたくなったところだと思います(笑)。「白湯本」は私たちのおもしろトークとして留めておけばいいかなと思うんですけど、佐野さんの本は先日発売されたばかりで、たくさん刷られたようで書店にも多く並んでいると噂を聞いております。こういうお人柄の佐野さんが初めての書籍を出されて、売りたいに決まっているのではないかと。
佐野:そうなんですよ、1人3冊からご購入いただけます(笑)。
岩橋:(笑)。なのでぜひ買っていただいて、読んでください。Twitterで応援していただけるのもありがたいです。この本を一緒に盛り上げていきましょう。ということで今日のトークイベントを締めたいなと思います。佐野さん、最後に聞いてくださってる方にメッセージがあればお願いいたします。
佐野:ありがとうございます。今日はたくさんコメントも書いていただいたり盛り上げていただいたり、とても楽しい時間を過ごせました。ありがとうございます。こんな性格もあって、本を書いた実感が、今まったくない状況でございまして。
その理由はおそらく、僕がこの本を手紙のように書いたところがあるからです。読者の方に向けた手紙のようなところがあるので、返事として感想をいただいて初めて完成するものなのかなと正直思っています。
なのでFacebookでもTwitterでもなんでもいいので、もし感想書けるよという方がいたら、感想を書いて僕に連絡いただければ、必ずお返事しますので、ぜひぜひ感想をいただければ。まだ未完成なので、完成を一緒に見届けていただけたらなと思います。よろしくお願いいたします。
岩橋:ありがとうございます。「今(私に)必要なメッセージでした」、よかったです。本当にすごくすてきな本だなと思いました。私も読めてよかったです。今年のみなさんそれぞれのキャリアが良い方向に進みますように、ということでイベントを終わりたいと思います。佐野さん、ありがとうございました。
佐野:ありがとうございました。
岩橋:ご覧いただいた方、プロコメンターのみなさん、ありがとうございました。