2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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小禄卓也氏(以下、小禄):続いてのテーマです。「漫画家・たらちねジョンの表紙デザイン」ということで、どんなテーマやねんという話になるんですが(笑)。たらちねジョンさんは『海が走るエンドロール』のほかにも作品を出されていますが、同時に同人誌も出されています。
白川氏(以下、白川):そうですね。ここにあるのが、先生の商業誌です。(『グッドナイト、アイラブユー』と『アザミの城の魔女』)
小禄:作家さんサイドとして、商業誌と同人誌の表紙デザインについてどう考えているのか、おうかがいできたらうれしいなと思います。
たらちねジョン氏(以下、たらちね):『VANITAS』という同人誌なんですが、これは商業誌だとラフでも出さない構図といいますか……(笑)。
(一同笑)
たらちね:こんなもの、本屋にもあまり置かないような……。
小禄:なかなか攻撃的な、攻めたイラストですね。
たらちね:そうですね。
小禄:良いイラストですね。
たらちね:実は内容とあまり関係ない絵なんです。
小禄:そうなんですか!?
たらちね:描きたい絵を描いた感じですね(笑)。あとはもう1個、ZINE。こちらは3部構成なんですが、全部クリップで挟んでいます。一番外側は私が旅行で撮った写真をカラー印刷したもので、真ん中にラフスケッチ、最後にカラーイラスト本をまとめています。
白川:これは分解できるんですよね。
小禄:たらちねさんがお面で(手元が)見えないようなので、みなさんの協力で(笑)。
白川:これはクリップで留めてあるだけで、それぞれ折り方やサイズが違いまして、写真、ラフ、カラーイラストをバラバラに分解できるようになっています。これはイベントのものでしたっけ。
たらちね:そうですね。前に行ったトークイベントの同人誌です。
小禄:へー! クリップで留めて販売するんですか?
たらちね:そうです。
小禄:見ている感じだと、同人誌は本当に好きなようにやっているんですね。
たらちね:そうですね。商業ではクリップで留めるなんてできないので(笑)。
小禄:何千部も何万部もやっていられないですからね(笑)。
たらちね:クリップを百均で買ってきて、自分たちでがんばって付けていました。こういうことを相談するのはやっぱり白川さんで、「やりたいことある?」と言ってやるのが楽しかったですね。
小禄:同人誌も商業も、たらちねさんの作品は基本は白川さんのほうで担当していらっしゃるんですか?
たらちね:そうですね。ほぼ白川さんがやっています。
白川:デビューコミックスだけ違う方がやっています。
小禄:なるほど。そこはもう「やっぱり白川さんにお願いしたいな」という感じで、お願いしているんですか?
たらちね:そうですね。私は白川さんにお願いしたいなと思っています(笑)。
白川:言わされている感がします(笑)。
(一同笑)
白川:でも、作品に合ったデザイナーさんがデザインをしてくだされば、誰でも大丈夫だと思います。
たらちね:誰でも(笑)。
白川:誰でもというのは変ですけどね(笑)。
小禄:商業誌の表紙デザインをやる時に、たらちねさんは関わるタイプですか?
たらちね:私は関わらないタイプかもしれないです。
小禄:基本はお任せする感じですか?
たらちね:そうですね。ほかの方がどうやって作っているのかわからないのですが。白川さん、どうですか?
白川:『アザミの城の魔女』という作品の場合は、おそらく何を描くかは作家さんと編集さんで決めていると思いますが、1巻の場合はどうでしたか?
たらちね:1巻の表紙はもともとWeb用のカットイラストだったんですが、それをきれいに描き上げて単行本の表紙にしましょうとなって。先に絵が決まっていて、デザイナーさんにお願いしました。
白川:世界観が独特なので、それが伝わるから背景付きのイラストなのかなと思います。『グッドナイト、アイラブユー』の時も、(3巻を見せながら)いろんな国の背景付きのイラストを表1と表4でバーンと描いていただいて、それをレイアウトしていました。
小禄:イラストを描いていただいて?
白川:そうですね。
小禄:なるほど。オーダーがあったら描いて、デザインしていただくという感じだったんですね。
たらちね:そうですね。
小禄:ありがとうございます。今回はせっかくお三方に来ていただいておりますので、実際にガッツリお話をしていきたいなと思うので、テーマ3にいきたいと思います。「『海が走るエンドロール』の装丁デザインはこうして生まれた」ということで、いろいろとお話をさせていただきたいと思っております。山本さんもようやく出番です(笑)。
山本氏(以下、山本):お邪魔します。
小禄:山本さん、ここまでで白川さんたちに聞いてみたいことはありますか?
山本:『グッドナイト、アイラブユー』のカバーの紙がいろいろ遊べていて、弊社ではあまりできないなと。KADOKAWAさんどうなっているのかなと、ものすごく気になりました。(笑)。
(一同笑)
小禄:けっこうお金がかかった紙を使っているなと。
山本:この値段だと、どうやっているんだろうかっていう(笑)。
白川:そもそも表紙もカバーも一風変わった紙なんです。しかも帯って普通は2色印刷が多いのですが、これはフルカラーにしていただいているんです。
山本:中も2色ですごくかわいいですよね。
白川:そうですね。(目次のページは)コーヒーの染みをやりたかったのかな?(笑)。目次のところで茶色と黒の2色を使っていたり、最終巻は家族写真が入るものだったので、漫画の最後を4色印刷にして、その裏をまた写真用紙っぽいデザインにしています。
小禄:すごいなぁ。
山本:すごくおもしろいですね。
白川:でもこの作品の場合は、担当編集の方が「好きなことをやっていいよ」と言うタイプなんです。例えばこの家族写真なんかも、編集さんが提案してくださったんです。目指すもののためには「いいよ」と言うタイプだったので、珍しいですね(笑)。
小禄:珍しいケースですね。
白川:あまりこういうことはないかな。本当にありがたかったです。
小禄:なかなか珍しいことだそうです。
白川:これはちょっとチートな感じですね(笑)。
山本:ありがとうございます。
小禄:では、本編の『海が走るエンドロール』のお話をしていきたいと思います。まず、スライドのものは1話目のカラー扉ですね。ここは白川さんがデザインを組まれているんですよね。そもそも『海が走るエンドロール』の装丁デザインをなんで始めたのか、最初のきっかけはどんな感じだったんですか?
山本:雑誌の1話目が載る時に、扉のデザインやロゴデザインなどもデザイナーさんにお願いしているんです。なので、最初にこの作品が始まってどなたに(デザインを)お願いしようかという時に、これまでたらちね先生の作品を手がけられてきた白川さんにお願いしたいなと思いました。
(今までのデザインが)どれも本当にすてきだったので、たらちねさんにも「白川さんにお願いしたいと思っているんですが」とご相談をして、ご連絡させていただきました。
小禄:山本さんから依頼したのは、これが初めてでしたっけ?
山本:そうですね。白川さんにお願いしたのは初めてです。
小禄:作品によって、依頼する人やデザイナーさんはぜんぜん違うんですか?
山本:違いますね。きれい系の作品やポップな感じだと、それぞれ得意なデザイナーさんにお願いすることが多いです。
小禄:なるほど。白川さん、依頼が来た時はどうでしたか? 「やってやるか」という感じですか?
白川:そうですね(笑)。でも、このデザインをやった時はかなり気合いが入っていました。すごくおもしろい漫画ですし、私の中では以前の『月刊ミステリーボニータ』さんとイメージが変わっていて。最近はいろいろ新しい作家さんにも声をかけていて、すごく勢いのある雑誌だなというイメージがあります。読者さんにも「すごくおもしろい漫画が始まりますよ!」と思いながら作りました。
(完成版のカバーを指して)これとは別に、もう1つラフがあったんです。それをお送りする時に、今スライドに出ているデザインについて「ちょっとこれエモすぎますかね? 読めないし、攻めすぎかな? どうでしょう」とメールに書かせていただいたんです(笑)。そしたら「ぜひこれがいいです」と返事が来たので、すごくうれしいなと思いました。
小禄:すごいですね。しかも「シルバーガール×ブルーボーイのシーサイド・シネマ・パラダイス」というキャッチコピーなんですが、このコピーを決めたのは山本さんですか?
山本:はい。
小禄:最初から「これでいくぞ」と決めていたんですか?
山本:いただいたイラストを見たり、作品内容に合っているものを付けようとしていて、何案か作って最終的にそちらになりました。
小禄:ボツ案は覚えていますか?
山本:えー! 覚えてないですね(笑)。
小禄:すみません。急な無茶ぶりをしてしまって申し訳ないです。
(一同笑)
白川:でも、すごくいいですよね。
小禄:いいですよね。めちゃくちゃインパクトが大きいですし。
白川:私もこのコピーがすごく好きなんです。
小禄:「65歳、“映画”はじめます」というのも、すごくいいですよね。今見たら、1話目はTwitterで28.5万ぐらい「いいね!」がついていました。
たらちね:ありがとうございます。
小禄:たらちねさんは、Twitterで28.5万いいねも反響が来ると思っていましたか?
たらちね:いやいや、思ってないです(笑)。
小禄:「たくさん反響が来たらいいな」という感じですかね。
たらちね:そうですね。
たらちね:ツイートする文や、実際に「創作の波に」という文を付けているツイートも、「どういうキャッチコピーを付けようかな?」というものは山本さんや白川さんに全部相談しています。
白川:タイトルもですよね?
たらちね:タイトルも山本さんに相談させていただきました。100個ぐらい送ってくれましたよね(笑)。
小禄:『海が走るエンドロール』の前に、いろんなタイトルがあったんですね。100案ってけっこう大変ですね。
たらちね:大変だったと思います。
山本:そうですね。一番初めにたらちね先生からいただいたタイトルが、「海の映画」でしたっけ?
たらちね:シンプルでしたよね。
山本:すごくシンプルで、それを編集長に提出したら「もうちょっとキャッチーなものにしてほしいな」ということで、いろいろ編集部員のアイデアも貰いながら考えました。
小禄:なかなか100案から選ぶのも大変そうですけどね。
白川:確かに。
たらちね:結局、選ばなかったんですよね(笑)。
山本:そうですね(笑)。
小禄:そこから選ばなかったんですね(笑)。
山本:キーワードは「エンドロール」とか……。
たらちね:そうですね。キーワードをいただいて「エンドロールいいですね」とか言って決めました。
小禄:この物語自体のキーワードが「海」と「映画」なので、そこはタイトルに入っているんですが、装丁デザインに行く前の段階からかなり苦労されていますね。
山本:そうですね(笑)。
小禄:生みの苦しみをすごく感じています(笑)。
小禄:Twitter上でも、「山本さんのコピー最高」という感想をいただいていますね。
山本:ありがたいです。
小禄:そしてこれ(タイトルロゴ)ですね。これはどんな気持ちで描かれたのでしょうか?
白川:すごく抽象的なことを言うんですが、海が走っている感じがあるといいなと。あとは動き出す感じですね。ストーリーのおもしろさももちろんですが、おそらく漫画の表現の叙情的なところが、読者さんにすごく刺さるんじゃないかなと思っています。
波のシーンが出てくるので、波が走っている時のイメージというか、ザーッと波が来た時みたいな勢いがあるものになるといいなと思って描きました。「イメージ」と言ってばかりでアレなんですが(笑)。
小禄:これも、いくつかパターンを描いてという感じですか?
白川:そうですね。どれがいいかな? と組み合わせて、ちょっと加工したりして作っています。
小禄:表現的なところは確かにおっしゃる通りですね。足元にザパーンと波が来たりする表現は、漫画の中にたくさんあります。海が走っている感じを表現したというのは、なかなかおもしろいですね。
白川:出ているといいんですが(笑)。
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