2024.11.29
“マニュアル作成が進まない問題”をAIで解決 管理者の負担も軽減できる、先進AIツール活用法
リンクをコピー
記事をブックマーク
櫻井将氏(以下、櫻井):では実際にYeLLのお客さまの事例なども含めてお話をしていきます。この(5つの壁の)それぞれの要因に対応策があるんですね。先ほど言ったとおり、要因3までと、要因4、5ではちょっと話が違うので切り分けて話します。
まず、(先ほどの2つの施策のうち)1つ目の「上司の1on1スキルを上げていく」ことに関して、事例でお話しをしていきます。スキルなので、習得するための型があります。「関心を高めること」「概念的な理解をしてもらうこと」「実践して振り返ること」。この3つをちゃんとセットにしなきゃいけません。
このスキル習得の3要素がそろうと、1on1スキルがついていきます。1on1のスキルはExcelの関数みたいに、理解したらすぐできるというものではないんですね。1日インプットして、すぐできるわけではありません。
先ほどの「長い時間がかかる」という話と一緒です。やっぱり自分自身が関心を持って、理解をしてやってみる。そして、うまくいったり失敗したりを繰り返しながら、より関心を高めて理解していく。(このように)この3つを回していく必要があります。
櫻井:どう「関心を高める」かというと、先ほど言ったように、やっぱり自分自身が良い(聴かれた)体験をすることですね。これによって、関心が高まっていきます。
事例をお話しします。感情知性、EQのお話なんですが、優秀なビジネスパーソンを分析した結果、IQが高い人が優秀というわけではないと。では、どういう人がビジネスパーソンとして成果を収めるのかというと、EQ、つまり感情・エモーショナルな知性が高い方だということです。IQに対して、EQという概念が出てきていますよね。
他者との良好なコミュニケーションを取るためには「自分の感情を認識」して「自分の感情をコントロール」する必要があるといわれています。
これは「(話を)聴かれた体験」と「(自分が話を)聴くこと」との(関係性に)すごく近いんですね。まず、自分が話をして聴かれることで、自分自身の感情を認識したり、自分の感情をコントロールしたりする術を身につける。その上で、自分が話を聴くというアプローチに進んでいくんですね。
EQを高めていく意味でも、1on1スキルを高めていく意味でも、いったんまず自分が良い体験をして、そこに関心を持つことが非常に重要なんです。
具体的に、どんな変化が起きるのかという話をします。(スライドを指して)これは、YeLL(を体験された方からの実際の声です。)
まず、スタート時点では「コミュニケーションがうまく取れず、モヤモヤしている気持ちを聴いてもらえた」「明確に話せそう、何か話せそうな手応えは得られなかった」というところから入るんです。これが1週間目で、毎週セッションしていきます。
だいたいセッションが半分を過ぎた頃、4~5週目ぐらいになってくると「気持ちを口に出すことで少し楽になり、自分の気持ちを話すということに効果があるんだとあらためて認識ができた」という話が出てきます。
つまり、今まで1on1では「何をしたか」「何を考えたか」という話をしていたけど、「今はどんな気持ちなんだ」「どんな感情なんだ」ということを話せるようになったと。プロセスがここまで進んでいるんですね。こっち(旧来型面談)からこっち(自律的な人材を育てる1on1)に、だんだん移ってきている印象です。
こんな変化をしてくると「自分の気持ちを相手に伝えるということを心がけて、自分が変わってきていることが確認できる」。また「今後も周囲にも良い影響を与えられるようになりたいな」と感じてくる。
後半に入ってくると、先ほどの「自分の感情をコントロールする」から、「相手にいかにうまく関わるか」へとだんだんとシフトしていきます。「自分の取り組みや気持ちを話し、サポーターに認めてもらえたことで、自分のコミュニケーションが進歩している手応えを感じて、セッションが楽しみ」。
「自分もこのように『安心して話せる』『話を聴いてもらえる』というような環境をメンバーに提供していきたいな」と変化しています。「(話を)聴いてもらう」という体験が「(人の話を)聴こう」というマインドをセットするんですね。
櫻井:ここにさらに、きちんとした概念を伝え、実践をするといった「振り返り」をしていきます。一般的なスキル研修にありがちなのが、集合研修で1日、1on1研修を行う。そして「あとは現場でなんとかしてください。半年後にまた振り返りの研修をします」というスタイルのものが多いと思います。
YeLLでは、これにマイクロラーニングを取り入れて行います。「聴く(力を上げる)」という意味では、すごく良いと思っています。研修のコンテンツを動画で10~15分のブツ切りにして、その間に1on1を体験してもらい、きちんとつないであげる。
自分自身が毎週1on1をしていたり、部下と関わったりしているので、体験学習でいうところの「言語化」「抽象化」していく。
研修を1回やって後はお任せではなくて「ああ、自分はここがうまくできているんだな」「(ここは)うまくできてないな」「得意なんだな」「苦手なんだな」「じゃあ次はこうやってみよう」と(毎回振り返る。)インプットしたものを実践して振り返るんですね。
これをマイクロに繰り返していく。これが、1on1スキルを上げる・聴く力を上げるという意味では非常に有効な施策だと思っています。
櫻井:先ほどの一般的なスキル習得のための3要素を、1on1に紐づけてみます。(まず)「良質な体験が関心を作る」。作った上で「体系的・継続的にインプットをしていく」。
でも一回言われただけだと、現場の業務に戻ってしまうので、「体系的・継続的インプットを続けていく」ということと、「実践すること」。その上で「定期的に振り返っていく」。この3つがそろうと、1on1のスキルが高まっていくんですね。
今、エールでは、これを「YeLL|聴くトレ」というサービスで提供しています。
念のためにお伝えしておきますが、エールで聴く力を高める場合は、最初に「話を聴かれる体験」をきっちり作ります。その後、動画とセッションを繰り返していきます。
社内でやられる場合も、ペアを組んだり、斜めの関係などで、まず(話を)聴かれる体験を管理職の方々に体験していただいた上で、学びのコンテンツとセッションを繰り返していくと、学びが深まると思います。
先ほどお二人(古川氏、村松氏)も繰り返しおっしゃっていましたが、実際に(話を)聴かれた体験をきちんと積んでいくと、本当に「聴こう」という意欲が高まり、「聴く力」も高まっていきます。こうして、管理職の1on1スキルは上がっていくんです。
以上が、1つ目の施策の話でした。上司が旧来型の面談から、自律型人材を育成していく方向に向かうため、思考・行動だけではなく感情・価値観を扱えるようにしましょう。このようにして上司自身の1on1スキルを上げていきましょう、という話でした。
櫻井:こちらの施策もしっかりやっていただきたいと思いますが、先ほど言ったとおり利害関係があって、最終的に話せないことがある。本当の意味での「自分の価値観」、本当の意味での「自分のキャリア」などを深く話すためには、上司以外の方、(例えば)メンターや社外の人と話すほうが効率的だと思っています。
この場合、業務や進捗をいったん置いておいて「自分自身がどんな人間であるか」「どんなことが好きなのか」「どんな思いを持っているのか」などをセッションの中で深く考えていくんですね。
すると、組織のパーパスや会社の方向性や存在目的に、個人を無理矢理引き込まなくても良くなるんです。「この組織の理念、良いだろう?」「このパーパス、良いだろう?」と無理矢理に個人を変えようとしなくても、一人ひとりの価値観の解像度が上がっていくので、(みんな自然に感応できるようになるんです)。
「自分は本当はこんな人間だ」「自分はこんなことが好きだ」「自分はこういうふうにやりたい」という解像度が上がっていくと、(組織のパーパスとの)重なりが自然に増えていくんです。
組織が無理矢理「こういう方向性だからこれをやれ」「これを考えろ」「こういうふうにしたほうが良い」ではなく、(一人ひとりが)自分について考えることにより(組織パーパスへ感応する部分が)自然と増えていくんです。
櫻井:実際に、聴かれることでエンゲージメントスコアが向上した結果を見ていきます。YeLLを受けた層と受けていない層があり、受けた層は「自分自身の価値観」や「自分自身とは何者か」ということをセッションを通して深く考えています。
YeLLを利用して、これを半年間考えた層と、利用せずに普通に仕事をしていた層で、エンゲージメント評価の差分を取っています。ビフォアとアフターでの差分ですね。
YeLLを利用していない方々は、上がった項目もあれば、下がった項目もある。利用している方々、つまり自分自身が話を聴いてもらう体験を持って、自分自身について考えた方々は、軒並みエンゲージメントスコアが上がっているのがデータから見えてきます。
おもしろいのは「仕事量が適切か」の項目が特に上がっているんですよね。これ、話を聴かれただけで(仕事量が)変わるはずないですよね。でもおもしろいもので、人間は主観的な動物なので、話を聴かれて自分自身の仕事に対する納得度が上がったことで「仕事量は適切だ」と思い始める。
「成果に対する承認」も、たぶん(実際には)変わっていないんだと思うんです。「挑戦する風土がこの会社はあるか」という項目も、(実際の)環境は変わってないと思いますが、自分の認知が変わる。自分自身に対する理解が深まって、会社との関わり方が変わってくる。こういう変化を起こせるのが「聴く力」なんですね。
もう1つ、ビジネスから少し遠いところですが、ウェルビーイング、幸福度のスコアも上がっているのが明確に見えています。これもYeLLを利用した約2,000名から(データを)取っているので、統計的に優位なデータが出ています。
(こちらの分析では、)幸福学の第一人者、慶應(大学大学院)SDMの前野(隆司)先生の幸福の4因子と、世界的に使われている(エド・)ディーナー先生の人生満足尺度を使っています。ビフォア・アフターで、この折れ線グラフの下の値はゼロなので、すべてのスコアが、YeLLを受けた後で上がることが明確になっています。
これもエンゲージメントと同じように、聴かれることで「私は有能である」「私は社会・組織の役に立てている」「要請に応えられている」といった項目が、認知によって変わっています。
(実際は)変わっているはずがないんです。3ヶ月でそんなに有能さは変わらないと思うんですね。ですが、自分自身が話を聴かれることによって、認知の仕方に変化が起き、幸福度が上がっていますね。
櫻井:自律人材を育成するために、社内だけでは対応できない会話を外部の人としたいという時に、(YeLLを利用していただいたり、)古川さんのように「若手のリーダーを育てていきたい」「世代の違う方々の話をもっと聞きたい」というところに利用していただくケースもあります。
また、最近では非常に多いのが、これを40・50代のミドルシニア層のジョブ・クラフティング(仕事を主体的に捉えなおし、やりがいを持てるように導く手法)に利用されるケースで、効果も高いと思っています。大企業だと、ミドルシニアの方々がキャリア自律の研修を受けることが多いと思います。あれも1日研修なんです。そして、受けた後は放置になりがちなんですよね。
研修直後は、40・50代社員の方々は、自分のキャリアを考えることで、モチベーションが上がっているんです。でも、(研修が終わって)話す機会がなくなると考えないし、1人で考えたとしても深まらない。
40〜50歳まで考えてきた結果が今なので、今から1人で考えても深まらない。また、仕事が忙しくてつい後回しにしてしまうし、キャリアについて考えるのは重いし、良い相談相手も見つからない。
ここに外部の人材を使っていく。社内の上司でももちろん良いと思いますが、人数的にも、内容的にも社外人材がすごく活躍する領域だと思います。このあたりに社外人材を使っていくと、ミドルシニア人材のキャリア、ジョブ・クラフティングをより真剣に考えていけると思います。
櫻井:では、まとめに入ります。「旧来型の面談」から「自律人材を育てる1on1」にするには、内発的な動機づけ、価値観、感情を扱うテーマで1on1をしていかなきゃいけない。でも、いろんな壁があります。
方向性の1つとして、上司の1on1スキルを上げていく。上司がより、感情や価値観も扱うような1on1をしましょうと。とはいえ、(利害関係により)できない話があるので、それは社内の斜め・横の関係を作るか、社外にお願いしていきましょう。このように関係を作っていけば、1on1というものが全体設計として、うまくいくんじゃないかと思います。
一応、最後に宣伝です。エールは「YeLL|聴くトレ」というサービスで、「関心」「知識」「実践」のサイクルを繰り返して、1on1スキルを向上させるお手伝いができます。そうではなく、「純粋にこっち(自律人材を育成する1on1)を社外人材を使って実施したい」お客さまに関しては、「YeLL」というサービスで支援をしています。
最初(「持ち帰っていただくヒント」)のところに戻ると、「職場で個の力を引き出す」ために、1on1という切り口から何かヒントを持ち帰っていただけたら、と思いお話ししました。以上になります。ありがとうございました。
榎本佳代氏(以下、榎本):櫻井さん、ありがとうございます。つながってきましたね。では、残り5分となりましたが、もう一度古川さん、村松さん、画像と音声をオンにしていただけますでしょうか。
古川さんと村松さんは、いただいたご質問に少し触れながら、最後に今日の場を通じて、あらためてみなさまに伝えたいことがあれば、一言ずついただきたいと思っております。
では古川さん、長いお時間ジュネーブから参加していただいてありがとうございました。よろしければ、みなさまに一言、質問も踏まえながらお話しいただけるとうれしいです。
古川将寛氏:本日はありがとうございました。我々JTも、2年半ぐらいかかってようやく「組織が変わってくるかな」という兆しがみえてきました。こんな実情なので、本当にえらそうなことは言えないんですけれども。
チームメンバーの後輩たちに支えてもらいながら、また上司のサポートを得ながらなんとかやってきたのが実際のところです。さまざまな環境だったり、いろんな施策のパーツを組み合わせながら、地道にやってきました。
なので繰り返しになりますが、マジックソリューションみたいなものはないんです。本当に、大事なのは地道にやり続けることだけだと思います。
そういった意味でも、「聴く」ことに特化しているスペシャルワンのエールさんは、(施策を)組み合わせる意味でも非常に頼もしいパートナーだと思っています。
今日のセミナーを聞いて「JTの事例がもっと聞きたい」などがあれば、エールさん経由でも直接でも良いので、「あいつを呼べ」ってジュネーブの私につないでいただきたいと思います。一緒に変革を推し進めていきたいと思います。本当に、本日はありがとうございました。
榎本:村松さん、お願いできますでしょうか。
村松浩義氏:短い時間でしたけど、ありがとうございました。現場で取り組まれている古川さんとお話しできて、こちらのお話もよく聴いていただけてすごく心強かったです。良い時間になったと思っています。
「『聴く』だけのYeLLを導入してみよう」と思ったのは、正直、自分自身が聴いてもらいたかったからです。まだ我々のところはそういう段階なので、なかなか有効かどうかというお答えができないんですけど。
先ほど櫻井さんのお話にあったように、(YeLLを利用することは)テーマ次第で誰にとっても有効な手段だと思います。また古川さんがおっしゃったように、すごく導入しやすいサービスだと思っています。今後もぜひ、協力していただきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
榎本:ありがとうございます。篠田さん、お願いできますでしょうか。
篠田真貴子氏:私からは一言だけ。本当に古川さん、村松さん、ありがとうございます。今日ご参加のみなさま、ありがとうございます。
櫻井さんからの話にもあったように、私たちエールは、働く人たちへ、自律性と共に豊かな人生を生きる橋渡し(をさせていただいています。このことは)「聴く」ということ抜きにできるとは思えません。世の中に「聴く」の総量が足りないと思っていまして、微力ながらやっています。
こうしてヤマハモーターエンジニアリングさんやJTさんを通じて、実際、現場に携わる機会をいただいていることに、今日はあらためて感謝の気持ちを強く持ちました。また、そういった思いで組織運営にあたられている方々に、少しでもお力になる機会を私たちがいただけたら本当にありがたいなと思っております。今日は本当にありがとうございます。
榎本:ありがとうございました。それではちょうど2時半の定刻になりましたので、本ウェビナーはこちらで終了とさせていただきます。櫻井さん、古川さん、村松さん、ありがとうございました。
2024.11.26
タスクの伝え方が部下のモチベーションを左右する マッキンゼー流、メンバーが動き出す仕事の振り方
2024.11.25
論理的に「詰める」マネジメントでは本質的な解決にならない マッキンゼー流、メンバーの理解と納得を得る接し方
2024.11.25
仕事はできるのに、なぜか尊敬されない人が使いがちな言葉5選 老害化を防ぐために大切な心構えとは
2024.11.27
何もせず月収1,000万円超…オンラインゲームにハマって起こした事業 大学中退し4社立ち上げ・2社売却した起業家人生
2024.11.28
管理職の「疲弊感」がメンバーに伝わるリスク 部下の「働きがい」を育む6つのポイント
2024.11.27
部下に残業させられず、自分の負担ばかり増える管理職 組織成長のカギを握る「ミドル層」が抱える課題
2024.11.27
仕事中の「今ちょっといいですか」が苦痛… いしかわゆき氏が語る、ADHD気質にマッチした働き方のヒント
2024.11.21
40代〜50代の管理職が「部下を承認する」のに苦戦するわけ 職場での「傷つき」をこじらせた世代に必要なこと
2024.11.26
仕事の質を左右する「ムダな習慣」トップ5 忙しくなる前に棚卸ししたい“やめたほうがいいこと”とは
2023.03.21
民間宇宙開発で高まる「飛行機とロケットの衝突」の危機...どうやって回避する?
ログミーBusiness リニューアル記念イベント開催
2024.11.29 - 2024.11.29
品がある人、育ちがいい人の見える 人のセリフ 3選
2022.11.30 - 2022.11.30
ミドル層が組織成長のキーになる!〜働きがいを高める、一生働きたい職場の作り方〜
2024.09.25 - 2024.09.25
新しい事業創出のヒントはスタートアップにあり! ~著者に聞く、今こそ知りたいスタートアップの世界~
2024.10.23 - 2024.10.23
Next Innovation Summit 2024 in Autumn
2024.11.01 - 2024.11.01