2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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池上雄太氏(以下、池上):2011年の7月にテキサス・レンジャーズに移籍して、チームのポストシーズン出場に貢献されました。この時に、ポストシーズン史上初となる3戦連続の被本塁打を記録して、「すべてが台無しになったと感じた」と語られたと思います。
上原浩治氏(以下、上原):(笑)。ワースト記録ってやっぱり一番悪い記録なわけですから。その記録はいまだに、たぶん破られてないです。その当時は本当にショックでしたよ。でも、終わってみれば笑い話にできますから。まあ、良い経験をしたなと思っています。
池上:(笑)。やっぱりそこも雑草魂ですね?
上原:(笑)。終わってみれば「おいしいな」で良いんじゃないですか?(笑)。
池上:(笑)。上原さんらしいですね。そうした苦労がありながらも、2012年のオフにフリーエージェントとなってボストン・レッドソックスに移籍されます。
上原:はい。
池上:やっぱりレッドソックスは、メジャーでの大きな転機となったのでしょうか?
上原:その当時は考えていませんでしたが、そうですね。結果として、2013年に世界一になれたので、やっぱりボストンを選んで、すごく良かったと思いますね。
池上:みんなテレビで見ていたので、上原さんがクローザーとして活躍されたことは周知のとおりだと思いますが、どういう経緯でチームの守護神になったのでしょうか?
上原:他に、オールスターにも何度も出ているクローザーの選手が2人いて、僕ははじめはやるポジションではなかったんですよ。
でも、その2人が両方とも、肩を怪我してそのシーズンに出られなくなったんですね。チームメイトに田澤(純一)もいたので、まず田澤にクローザーの話がいきまして。でも、彼もあまり成績が出なくて、僕に話が回ってきたという経緯です。
池上:クローザーをやれと指示されたようなものだと思いますが、拒否権はあまりなかったんですね?
上原:拒否することは、まったく考えなかったです。むしろうれしかったですね。
池上:クローザーを取りにいったというか、自分の生きる道を見出せた感じですか?
上原:本当にコツコツ結果を積み上げたことで、周りから認められたということですよね。
池上:クローザーという役割は、けっこうなプレッシャーだと思います。
上原:かなりプレッシャーがありますね。
池上:どうやってメンタルを保っていくものなんでしょうか?
上原:さすがに打たれれば、メンタルはきつくなりますけどね。打たれた翌日、僕はけっこうへこみながらグラウンドに行ったんですよ。それを見てチームメイトが「コウジ、ニューデイ、ニューデイ」「新しい日が来るんだ」と声をかけてくれたんです。「過去は振り返っても、戻ってこない」ということですよね。だったら新しく気持ちを切り替えたほうが、気持ち良く試合に入れるんじゃないかと思いました。
池上:ニューデイ、良いですね。
上原:はい。
池上:ある記事で見たのですが、上原さんのグローブには「我慢」という文字が入っているんですね?
上原:はい、入っています。
池上:それはどういう経緯で入れられたんでしょうか?
上原:ジャイアンツのキャッチャーだった村田真一さんが引退される時に、キャッチャーミットをいただいたんですよ。そのキャッチャーミットの中に、一言「我慢」と書いてありまして。村田さんから「調子が良い時も悪い時も、『我慢』が必要なんだ」と言われたんですね。
池上:それを上原さんのグローブにも?
上原:グローブの内側に(「我慢」と)刻印しました。
池上:そうやってご自身でメンタルを保たれた最大の成果が、やっぱりメジャーリーグのワールドシリーズ制覇ですよね。喜びを爆発させた時のナンバーワンポーズは、みんなが見ていたと思います。
アメリカン・リーグ優勝決定シリーズではMVPも取られましたね。優勝の瞬間、上原さんがマウンドに立っていて胴上げ選手となって。その時は、どんなお気持ちだったのでしょうか?
上原:うれしい以外、ないですよね。でも、冷静になった時に「もう投げなくて良いんだ」と感じました。その当時は本当にいっぱい投げましたから。オープン戦なども入れると、もう100試合ぐらい投げていたので。100試合ってことは、1年の3分の1じゃないですか。3日に1回、投げていたことになるんです。
池上:すごいですね。でもその中で、怪我とずっと戦ってきた上原さんですから、「また怪我するかもしれない」といった思いもやっぱりありましたか?
上原:それはもう、毎年思いましたね。でも、そこでブレーキはかけないようにしていました。手を抜くわけじゃないんですが、ブレーキをかけると、どうしても自分の10の力を出せずに、8か9で留まってしまうんですね。だから、力を抑えるという選択肢はなかった。常に全力を出さないとダメだと思っていましたから。
池上:じゃあもう、ブレーキはかけずに、前にガッと?
上原:「アクセルを踏みっぱなし」ということですね。
池上:ご家族はそんな上原さんを見ていて、どういう感じだったんですか?
上原:ボストンへは、僕は単身で行ったので、試合を見ていたかどうかはわからないです(笑)。
池上:(笑)。そうか、見ていてほしいです(笑)。
上原:(笑)。ワールドシリーズとかになると、一緒に行動はしていましたけど。
池上:その後、2018年に日本球界に復帰、翌年シーズン途中で引退を表明されて。プロになった以上、すべての選手の方々は引退を経験されると思います。
上原さんの引き際は潔くて、今でも印象に残っています。ご自身で選び取られた野球の道を、人生をかけて歩んでこられた。そこから退くということを、ご自身の中ではどういうふうに捉えていらっしゃったのでしょうか?
上原:正直、引退はしたくなかったですね。「できるのであれば、何歳でもずっと現役でいたかった」というのが本音ですね。
池上:達成感と同時に、ちょっと悔しさもあったというところでしょうか?
上原:いや、達成感はなかったですね。やっぱり悔しさしかなかったです。
池上:自分が今までやってきたことを引退する時って、どんな気持ちになるんですか?
上原:一軍で投げていて充実している時は、「心・技・体」ともに良い感じで毎日を過ごしていたと思います。
でも引退の間際には、どうしても心がマイナスのほうにいきがちで。ずっと二軍にいたので、「このままチームにいて良いのかな?」とか。二軍で投げていても、あまり抑えられていなかったので「これはちょっとダメだなぁ」と感じたり。やっぱり気持ちがどんどんマイナスのほうにいってしまいましたね。
池上:そのマイナスの気持ちを上げる方法みたいなものは、ご自身の中であったんですか?
上原:その時は、もう本当になかったですね。1つ崩れると、どんどん他の部分にも影響が出てきました。「心・技・体」の技術にしても、体力にしても、どんどんマイナスになってしまって。
池上:なるほど。
池上:引退をされて、今はYouTuberで良いんですかね?(笑)。
上原:YouTuberではないと思うんですけどね(笑)。
池上:YouTuberではないですか(笑)。それでも新しいフィールドに挑戦されていますよね。上原さんのYouTubeを観ていると、「野球を愛しているんだなぁ」ということが、画面からすごく伝わってくるんです(笑)。
上原:(笑)。はい。
池上:あのYouTubeは、どういう思いでスタートされたんですか?
上原:引退して、アメリカの家に帰ったのですが、一切何の仕事もなかったんです。その時にスタッフの方から「ちょっとYouTubeやってみませんか?」と言われまして。時間もいっぱいありましたし、最初はちょっと軽いノリでスタートしました。
池上:なるほど。でも、再生回数がすごいですよね。
上原:最初はぜんぜんでしたけど、方向性をしっかりすれば、けっこう見てくれる方もいるんですよね。
池上:最新のものは、審判の方が出演されていますね?
上原:そうなんです。審判がどういう仕事なのか、なかなか世の中の方にはわからないと思ったので。実際に審判の方を呼んで、一緒に語っています。
池上:あれを見ていると、「上原さんって、『人を楽しませたい』という気持ちがあるのかな」と思ってしまいますね。
上原:僕がやっているYouTubeはゲストをけっこう呼んでいまして。現役選手が多いのですが、僕の現役時代にあまり話したことがない方に来てもらっているんですよ。殻を破って、どんどんしゃべってもらいたくて。それをどう引き出すのかっていうのを、僕は今考えています。
池上:考えているんですね。(笑)。それは現役時代とはぜんぜん違うお仕事ですよね。お仕事への取り組み方や気持ちは、今も一緒なんでしょうか?
上原:いや、雑談なので、仕事だと思っていないですね。「一緒に雑談しましょう」ってことです。
池上:なるほどね。
池上:引退されて2年半が経ちましたが、今上原さんが目指していること、これからの夢などはありますか?
上原:うーん……。それが見つかっていないですね(笑)。
池上:見つかっていない(笑)。動画以外に、これから野球解説者とかそういう仕事もあると思いますが。
上原:辞めてから、本当にすごく野球を見るようになりましたね。依頼があれば、解説などもしないといけないですから。「日本の野球がどういうものか」という視点で、すごく見るようになりました。
池上:そこで、新しい気づきがあったりもしますか?
上原:「自分だったらこうするだろうな」っていうのは、すごくありますよ。ただ、チームとして動いているので、僕が言ったところでぼやきにしかならないですから。
池上:今のYouTubeのチームは、どのように組まれているんですか?
上原:アシスタントとして元アナウンサーの上田まりえちゃんという方がいまして。彼女がけっこうしゃべってくれるので、助かっていますね。
池上:ご出演していただいているみなさんと、ふだんからもけっこう連絡は取り合うんですか?
上原:そうですね。「出てください」っていう交渉もほぼ僕がやっているので。
池上:そうなんですか。やっぱりあれを見ると、野球の知らなかったことがいろいろわかりますよね。
上原:そうですね。現役時代はやっぱりみなさん、あまり本音で語らない部分があるので。
池上:(笑)。
上原:その部分を引き出したいと思っています。
池上:野球を知らない人にもけっこう刺さる部分がありそうですよね。
上原:たまに技術的なことも取り上げたりします。本当にたまにですね(笑)。
池上:(笑)。上原さんのラッキーカラーが黄色だという話を聞いたことがあります。
上原:そうです。だからグローブも黄色ですね。
池上:どうして黄色なんですか?
上原:幼稚園の時に「黄組」だったのもあるんですけど(笑)。
池上:(笑)。
上原:そんな流れで、プロに入ってからも黄色のグローブを使ったらすごく良い感じで、成績も出だしたりして。だからバットにも黄色を付けてやっていましたね。
池上:そうなんですね。
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