怒りや不快を感じた時、人は体に意識を向けやすくなる

坂東孝浩氏(以下、坂東):みいちゃん、「『感じる』ってどうやるんですか?」という質問が来ています。

由佐美加子氏(以下、由佐):よく聞かれますね。すごくシンプルな答えなんですが、たぶん私たちの体は24時間365日、寝てる時にもなにかしらを感じてるんですよ。そもそも感じている状態なんですね。今も、坂ちゃんやみんなと話して、同時にすごくいろんなことを感じてる。

でも意識的には言葉にもなってないし、「何を感じてますか?」って問いかけると、初めて自分の内側に意識を向けて、何を感じてるのかを感じようとする。「感じています」という状態が人間の体にはあるので、感じていることを認知できるには何が必要かというと、意識を自分の体に向けるだけなんですね。

坂東:体って五感ですか?

由佐:どこでもいいんですよ。でも、必ず体ですよ。

大山亜矢子氏(以下、大山):頭じゃないってことですか?

由佐:そう、考えている頭じゃないってことです。身体感覚に向ける感覚なんですね。なので、「感じる」をすごく練習しやすいのは、感情が大きく振れた時ですよね。怒りとか、イラッとするとか、ムカムカするとか、すごく悲しい時。

じゃあ、なぜ人間に感情があるかがわかるかというと、不快なものには意識を向けやすいんですよ。心臓がバクバクしたりとか、頭がジンジンしたりとか。

坂東:汗がめっちゃ出るとか、心臓バクバク。それも「感じる」ですね。

由佐:そう。だから感情の振れ幅が大きいと、意識を向けやすいんですよね。心電図の波みたいになってると思っていて、ふだん何もない時は小刻みなんですよね。すごく波が小さいんだけれども、なにかが外側で起こって、ワッて(感情が)大きくなる時に意識が向けやすくなるので、感じてることがわかりやすいんです。

とはいえ、私たちは基本的にいつも意識が外側に向いてるから、ずっと感じてるんですよ。例えば坂ちゃんと話してたら、私は坂ちゃんに意識を向けてるんですが、坂ちゃんに向けているのと同時に自分にも意識を向けるんですよ。その練習をしましょう。

日常生活の中で「意識を向ける練習」をする

由佐:でも、最初はみんなどっちかしかできないのね。外でさんざん働いて、ワ-ッと家に帰ってきてフーッてやると、「すげー体が疲れてる」みたいな感じになるわけですよ。

坂東:あるある(笑)。

由佐:そう(笑)。あれは意識が切り替わったからなんだよね。

坂東:達人になると、同時にできるんですか? 

由佐:訓練しとけば同時にはできます。だけど、どっちかしかできない状態になりやすいんですよ。普通、外側に意識が向いてる時は内側に向きにくいし、感情がウワッてなって内側に向いてる時は、もう外側どころじゃない感じになっちゃう。

でも、ちょっとずつ日常の中で、「これを聞いた時に何を感じてるのかな」「体はどこが反応してるんだろう」というふうに意識を向ける練習をしていけると、両方のベクトルを意識的に伸ばせるやり方が徐々に開発されていくんですよ。

「今、何が自分の内側にあるのか」という体の中に起きてることだけに意識を向けるワークも(『ザ・メンタルモデル ワークブック』みは)入ってるんですが、それをずっとやっていくと、だいたいできるようになる。もともと、人間の能力的にはできるので。

坂東:身体感覚って、単に物理的なものとしか思ってなかったです。「肩が重いな~」とか(笑)。

由佐:そうだよね(笑)。

大山:子どもの頃って、緊張したりするとお腹が痛くなりませんか? 自分たちの子どもとかも「おしっこめちゃくちゃ行くやん」「緊張してるな」みたいな。

由佐:そうそう。

坂東:つながってるんだよね。

乾真人(以下、乾):感情には体感覚があるっていうことを教えてもらったんですよ。すごくわかりやすかったです。

坂東:なるほどね。感情には体感覚がある。

自分を俯瞰視できると、緊張や不安の対処にもなる

由佐:グーッと喉が詰まる感じになったり、心臓がバクバクしたり、顔が赤くなったり、どっかがジンジンしたり、背中が痛いとか、体は必ず反応があるので。

坂東:それは性格だから、「恥ずかしがり屋」を治さなきゃいけないと思っていました。

由佐:そうだよね。基本的には、私たちは感じないように生きてきているんですよ。だって、「感じないようになっていくことが大人だ」ぐらいの定義なんですよ。

坂東:そのほうが、なんかかっこいいですもん。顔が赤くならない人のほうがかっこいい。

大山:それ(笑)。

由佐:できる男はポーカーフェイスで、いつも理性的で、合理的で、ロジカルで、どんな時も取り乱さず……みたいな感じでしょ。

坂東:かっこいい。だから、体をコントロールできてないと思ってましたね。体をコントロールできるもんだっていう信念があったんですかね。

大山:緊張したりすると、手や声が震えだすじゃないですか。そういう時に、「自分は何を感じてるのかな?」って、ふっと幽体離脱するようなイメージですか?

由佐:そうです。常に俯瞰して、意識は常に自分に向ける。(意識を外側と内側の)どっちにも向けられるようにしておいて、自在なところに置いとておく感じですね。

大山:そうすると、気持ちも落ち着いてきそうな気もしますけどね。

由佐:落ち着きます。だって、常に俯瞰してるんだもん。「今、どういう体験してるの?」って自分を見てるだけだから、常に自分に共感する自分の芽を育てていくということですよね。自然な感情をコントロールしようとするって、この文明の象徴的な根幹だと思うんですね。

坂東:そうですね。体も自然もできると思ってる。

由佐:もちろん科学はそれで発展してきたんですよね。人間の生命すらコントロールできると思ってるぐらいだから、自然に対してもそれができると思っているわけですよ。その結果、人間は自分という自然を感じられないし、他の人間のことも感じない。だって、自分の感情は閉ざしているし、感覚器官は全部シャットダウンして思考だけで処理をして、合理的に判断しようとしているからです。

『ザ・メンタルモデル ワークブック』はリハビリ道場

由佐:でもその結果、どういう現実が作られてるのか。簡単にいうと、自然の一部としては切り離されていっちゃう。人間が「これこそが自然だ」という完璧な体に、すべてのインテリジェンスがあるんですね。

坂東:頭じゃなくて、体にね。

由佐:そう、頭だけじゃないですよ。頭とハートと腹と、全部がつながって機能してるんですよ。左脳と右脳はもちろんつながってるんだけど、すべてがつながっている機能の仕方をできてないと思っていて。必ず(体か心かの)どっちかになっちゃうんですよ。

そうじゃなくて全部がつながってる状態だと、感じながら考えられるし、考えながら感じられる。本当は全部自在に本当は使えるんだけれども、コーディネーションがいまいちつながってないんですね。

なにかを生み出す人なんかは、両方使ってるんですよ。アーティストもそうだし、クリエーションってそういうものだから。だから、「直感」とか「インスピレーション」って言うじゃないですか。

合理的な思考の左脳の脳みそのパターン処理だけでは、(クリエイティブは)間違いなくできない世界なので、両方が開く必要がある。どうやったら「感じる」という世界を人間は取り戻せるの? ということを探求していった時に、どうしたら人間はリハビリができるか。

坂東:リハビリですか?

由佐:リハビリです。『ザ・メンタルモデル ワークブック』はリハビリ道場なんですよ。人間がシャットダウンしてしまった機能を、自分の内側で取り戻していく。身体感覚、感情、自己共感がすごく大事。自己共感できることによって、内側を感じられる、体の感覚を感じられる、感情を感じられる、痛みに踏みとどまれる。

ただただ「痛い」「悲しいんだ」というところに留まれるエネルギーを自分の中で循環させて感じると、エネルギーは動きます。

物理的な体の「痛み」に意識を向けると気がつくこと

坂東:エネルギーが動く?

由佐:不思議なのでみんなに実験してほしい。「痛い」とか「悲しい」という感情に意識を向けると、必ず変化を起こして、普通はその感覚が失くなっちゃうんですよ。

だから、痛い時とかにしょっちゅう実験するんだけど、体が痛い時にずっとそこに意識を向けていると、いろんなことを感じ取れるんですよ。「この痛みはこういうことを言いたいんだろうな」とか、なんかわかったりするの(笑)。

坂東:痛みと会話する?

由佐:痛みはいろんなことを教えてくれてます。

:その時は痛みが消えていって、何があったのかはわかんないんだけど、1日経って風呂に入ってた時に気づきが降ってきたり。そういうのが、すごく多くなった感じがします。

大山:降りてくるとは?

由佐:突然ひらめくの。道を歩いてて「はっ」て思ったりとか。

:そう、ひらめく感じ。

大山:何をひらめくの?

:勝手に「あっ、そうだ」って思う。

坂東:それについて?

由佐:そうです。「あれってああいうことだったんだ」って、突然わかるとか。

坂東:ぜんぜん違うひらめきじゃなくて、つながるんですね。「肩が痛かったのはあれが原因だったのかな?」とか。亜矢子さんがめっちゃ笑ってるんですが、大丈夫ですか(笑)。

由佐:でも、本当にそうなんですよ。ただそれが、左脳思考みたいに「考えたらすぐわかる」というロジックの直線思考じゃないので、時間軸が測れないの。

でも、感じた後に直感的に「あれってこういうことだったのかもな」って、なぜか自分の内側からいろんな情報が湧くんですよね。そんなことがしょっちゅう起こります。「あれを抑圧してたからこの痛みになってんだ」とか、突然気づきが起こるんですよ。

無視しがちな「自分の身に起こること」に潜む気づき

由佐:だから、感じる世界の叡智って半端ないですよ。ものすごいインテリジェンスがあると思っています。変な外側の情報を探すよりも、その声を聞いてたほうが、ぜんぜん確かなものだったりします。

坂東:なるほど。ググるよりもね。

大山:それって、机の角に小指をぶつけて痛いとかじゃなくて、「最近お腹が痛いな」「肩こりが……」とか、そういう内なる痛み?

由佐:全部使える。

大山:全部? どっちでも?

由佐:っていうか、理由なく小指をぶつけないですよ。

坂東:ええ!? そうなんですか?

由佐:やっぱり何かがあるんですよ。

由佐:自分の身に起こることって、本当におもしろくてさ。みんな「どうでもいい」って無視するんだけど、すごく観察していると、起きていること理解できるものは必ずありますよね。(一般的にはみんな)認知しないから、ほとんど無視してる。

坂東:「つながってる」とは思ってないですね。回路を閉じているというか。

由佐:そうですね。外に起こっていることは外のことで、「私とは関係のないことだ」と思ってるんですよ。

坂東:下手したら、体に起こっていることもそうです。自分とは関係ないと思っている。

由佐:だとしたら、私は何とつながって生きてるんですか? って話なんだけど(笑)。外側と内側は確実につながってるんですよ。だから、内側が整うと外側の流れは絶対に良くなるんですね。

「俺やってる感」が原動力の行動は、疲労や無理が生じる

坂東:なるほど。それが「統合」なんですか? 

由佐:そうです。要は一番自然なフロー、「調和」です。ぶつかったり、行き詰まったり、どん詰まったり、抵抗があったり。人間関係がうまくいかないとか、自然の流れですごく無理してる時は何かがあるんですよ。

だいたいみんな気持ちをぶっちぎってやろうとするから、立ち止まって何があるかを感じてみたら流れは整えられちゃうんだけど、いろんな力を使ってスルーしようとするんですね。

それがいろんな無理やひずみ、過剰な消費、肉体の過労・疲労を生み出しているから、(感じることができれば)もうちょっと楽にできるんだろうなと思ってます。でも、がんばりたいからね。効力感にはエゴがすごく餌なので。

坂東:「俺やってる」感ね。

由佐:「やってるぜ」みたいなアドレナリンを材料にして生きている人たちがほとんどだし、それって間違いなく一時は成功できる。もちろん、成果も出せるので何も悪くはないんですが、たぶん自然なエネルギーの使い方ではないから。

どこかですごく疲れたりとか、不自然なことが起こりますよね。不自然なことが起こったら、「調和から外れたんだな。何が原因なのかな?」というのをただ見て、「あ、これが源にあるんだ」って気付けば変わるのに、難しい課題解決になっちゃってるからどんどん大変になってしまう。

外側に起こっているどんなことでもすべて理解しようと思ったら、いろんなふうに認知ができるので、自在にできるんですよね。

坂東:なるほど。

自分を「見ない」経営者は、経営においては不適切

坂東:また質問が来てるんですが、「外だけでなく内にも意識を向けることと、メタ認知は違うものでしょうか?」って。

由佐:メタって(内と外の)どっちも見ている感じだと思うんですね。基本的に人間は、皮膚の外側と皮膚の内側、誰もが両方の空間を持ってるじゃないですか。その両方を認知することができちゃうんですよね。

私が今、ここで体に意識を向けたら体の内側を見ることができるし、板ちゃんの外側を見たら、板ちゃんが今どんな感じなのかなって、いろんなことを感じとれるわけですよ。それって自在にそれって使えるんだと思っています。

主体じゃなくて常に客体化させて、いろんなところに意識を持っていって認知をする能力を人間は持ってるから、内も外もメタ認知できますよ。

坂東:なるほど。同じ意味だと思っていい? 

由佐:そう。どこからでも見えます。

坂東:なるほど。ありがとうございます。

由佐:認知が全てなんですよ。どういう認知をとるか、あるがままをどう見る。

坂東:今回トークライブでは、「自分を見ると生き方が変わる、経営が変わる」をテーマにしているんですが、経営者も自分を見たほうがいいですか? 

由佐:うん。というか、経営者が自分を見ずに、なぜ経営できるのかがわからないって思ってる。

坂東:あぁ……!(笑)。たぶん「自分を知ってる」と思ってるんですよね。

由佐:「あなたはどういう性格ですか?」「何をしてますか?」ということを言ってるのではなくて。要は、外側に起きている現実と、自分の内側がどうつながっているのかという“解像度”を上げていかないと、外側のことに対して手を打つことは難しいと思うんですよね。経営者の意識は根幹にあるので。

人はみんな、他者に向けた意識ばかりに囚われている

由佐:私、企業研修をずっとやってて本当に嫌になっちゃったのが、人ってみんな指を外に指してるんですよ。

坂東:なるほど。

由佐:経営者の多くは、「うちの役員をなんとかしてくれ」「うちの管理職をなんとかしてくれ」と言ったりするんだけど、その意識を内側に向けてくださいよ、と言いたい(笑)。

経営者は会社のソース(源)なので、その意識はすごく大きく鳴り響いています。あなたが不本意な現実だと捉えていることを、あなたの内側の何が作り出しているのかを見ない限り、意識が整わないと始まらないんですよ。

坂東:本当は始まってないんだよね。

由佐:そう。課題と(自分の意識を)分離してしまっては、何も変えられないんです。人間は常に自分と事象を切り離して、課題だけを事象的に取り上げ、その事象をどうやって変えられるかという話を延々としてるんだけれども、それだけでは本当に変わらないんですよ。

散々変えようとしてきたんだけど、一過性だし、必ずゆり戻される。ここから自由になれたことはなくて。もちろん、やらないよりかはやったほうがいいかもしれないけど、それでは本当に望んでいる変化は作り出せないんだなというのが、私の10年間の結論なんですよね。

坂東:対症療法でしかないということですね。

由佐:分離から物事を変化させることはできない。経営者の意識は会社のすべてとつながっているから、そこが核なんですよね。例えば、経営者が恐れと不安に駆り立てられたら、それに伴った現実が起こる。人と分離してたら、もちろん人との間で分離していくというふうに、鏡になってるんですよね。

なので経営者には、まずは自分の内側で統合を起こしていくプロセスがどうしても必要です。組織開発の一番の根幹は、そこからしか始まらないという結論に達しちゃったから。

労働時間は10分の1なのに、利益は増加

坂東:なるほど。先月から『今日も斬らせていただきます。』という番組を始めさせてもらいましたけれども。

由佐:そう、板ちゃんのおかげで。

坂東:経営者個人を斬ることで、経営者が自分とつながれることができるんだったら、それは価値があるということですね。

由佐:そうです。あれも1つのやり方でしかないけれども、外側に起きている事象と内側でつながっているのは教えられることじゃないから、感じてもらうしかないので。

坂東:本当ですね。

由佐:見てもらうということは、観察の「観」を使うんですが、基本的には感じることとほぼ同じなので、見ることは感じること。今、私たちは見ているのにぜんぜん感じてないから、見ることも難しいなと思っています。

坂東:なるほど。ぬいさんが斬られていただきました。

:一応、経営者として斬ってもらったんです。

坂東:どうだったんですか?

:あれから考えて振り返ってみたんですが、化粧品の事業に関しては、斬られる前からみいちゃんにはいろいろ教えてもらっていて。作業量というか、仕事している時間が10分の1ぐらいになったんですよね。

売上は微減なんですが、利益は上がってるんですよ。働く時間はめちゃくちゃ減ったのに、結局利益は残っていくという不思議なことが起こっています。そうしようと思ったわけじゃなくて、「自分が本当はどうしたいのか」を感じていくと、自然にそうなってた感覚なんですよね。すごく不思議だなぁと思って。

坂東:自分とつながることによって、外側の現実が変わってきたってことですかね。

:そうですね。変にがんばるとか、無理することがなくなってきてるなって。ゼロじゃないんですが、無理することが減ってる感覚はめちゃくちゃあります。

由佐:すばらしい。

坂東:なるほどね。

:何がどうつながってそうなったのかは、ぜんぜんわかんないです。

『メンタルモデル』を経て、怒りの感覚が収まりやすくなった

由佐:パフォーマンスは「意識×エネルギー」なんですよね。簡単に言うと、意識が整っていて安心・安全である状態。何があったとしても、自分はただ体験して、経験から気付いていけばいいという自己信頼のようなものですよね。

命に対する信頼があって、ただ自分が命として満たされるものを純粋にやった時に、一番自然な状態のエネルギーとして循環するんですが、それが最もパフォーマンスが高いですよね。

イチローがバットを振るような、本当にあの感覚なんです。みんなはそれを「フロー」とかいろんな言い方で言っているけど。『メンタルモデル』のワークブックは、イチローみたいなすごい人たちだけがフロー状態に入ったり、「突然フローがやってきました」みたいな神頼み的なものではなくて。

人間が内省力を持って胆力を整えていける状態になった時に、近しい状態でエネルギーとして在れるんじゃないかと思っていて、それは誰でもできるんですよ。誰でもできるから、やったらどうよっていうお誘いの本なんですよね。

坂東:ぬいさんがセッションしたのは7月だから、半年ぐらい前ですよね? 

:そうですね。

坂東:そこからだいぶ変わってきた感じがあるんです? 

:嫌な気持ちや嫌なことが起こった時に、「嫌なことを感じればいいんだ」って思えるようになったのはすごく大きいです。

今までは、「どうしたらこの嫌な状態がなくなるんだろう」って一生懸命考えて生きてきたのが、「すごい腹立つなぁ」「こいつむかつくなぁ」とか思っても、「そう思っている自分がいるんだな」と俯瞰して思えるだけですごく救われるというか。

そういう自分も居ていいと思えていると、「自分はこれを大切にしたいから、こんなにも腹が立ってるんだろう」という感覚が、後からふっと降りてくることがすごくたくさんあって。その気持ちを大切にすれば、別に腹を立てる必要はないなって感情が治まっていくというか。感覚に敏感になったのは、セッションをしてもらってからすごく感じます。

坂東:なるほどね。

人間は、嫌な出来事に抗おうとする「抵抗マシン」

:劇的に何かが変わったわけじゃないんですが、徐々に生きやすくなってる。

大山:確かセッションが終わった後も、「乾さんはじわじわタイプだよね」って言われてましたよね。「後から来るはず」とか。そのとおりになってる。

:日々、後からじわじわと感じます。

坂東:今、万々歳な感じですか?

:嫌な感情がなくなるわけではないじゃないですか。すごく不本意なこともどんどん起こるんですが、それも含めて受け止めればいいんだと思えていることが、すごくありがたいなと思いますね。

由佐:私たちは「抵抗マシン」なんですよ。起きちゃいけないことと、起こっては困ることと、今起きている嫌なことに抵抗している。それ以外は別に何もしてないんです。頭では意味付けを変えて、いいことや正しいことをしていると思い込んでいるんだけれども、根っこでは不快をなんとかしたいんです。

不快をなんとかしなくなっちゃうと、エネルギーを使わなくなっちゃうんですよね。そうすると、あるものをただあるものとして見て、感じて、必要なものを理解して、対処していくだけで、実際はすごく省エネなんですよ。

坂東:確かに。

由佐:でしょう? だって「あれが起こったらどうしよう」「それを避けるためにはどうしたらいいんだ」「何をしたらいいんだ」って、どんどんやることを増やしていく。そこから解放されると、自分が使いたいところにエネルギーを割けるようになっていくんですよ。でも、不安に駆られた組織は、仕事量がめっちゃ多いんですよ。

坂東:もしかしたら、ぬいさんもそうだったのかもしれないですね。

由佐:仕事がどんどん増えていくの。

:そうですね。「全部自分がやらないと」って思っていたので、(講義を受けてからは)仕事量が10分の1ぐらいになったんです。じゃあ僕のやってた9割はなんだったんだ? ってめちゃくちゃ思いますもん。(仕事量は減ったのに)利益が増えるんだから、本当に不思議ですね。