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本気で「働く」をアップデートしたいあなたに贈る処方箋(全2記事)

2022.02.15

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非効率なビジネス慣習を生む「丁寧」の履き違え 澤円氏が説く「やめること」の判断基準

提供:サイボウズ株式会社

毎年恒例、サイボウズ株式会社主催の総合イベント「Cybozu Days」が2021年も開催されました。今回のテーマは「LOVE YOUR CHAOS」。クラウドサービスを活用した組織作りなどについて、豊富な知識を有したゲストがトークセッションを行いました。本記事では澤円氏による「本気で『働く』をアップデートしたいあなたに贈る処方箋」の講演の模様を公開します。軽やかに働くための、「マインドセットのアップデート」の方法について語られました。

ミスが起きるリスクをわざわざ冒すことを「丁寧」に置き換える

澤円氏:メールあるあるの話をさせてください。定型的な話です。

定型的なメールを送る時、「世話になっております」と、「お」が抜けただけで、なんか妙に侍チックな表現になるんですね。「世話になっております」……いかんいかん、これで送っちゃダメだな。じゃあ「お」をつけなきゃ。「お世話になっております」。

「申し訳ございません」ってちょっと謝り入れたほうがいいかなと思うと、ついつい「澤でございません」とか言っちゃうんですね。じゃあお前誰だよ、って話になるんですよね。「澤でございません」って、僕は澤だ。「澤でございます」にもう1回打ち直し。

「お世話になっております。澤でございます」、ここまでいいですね。「メールにて失恋します」……いやいや、どうした(笑)。話聞こうか? って、モードが変わっちゃいますね。

要するに、タイポ(誤入力)ってありますよね。定型文でこんなことをやったら、喜んでくれる相手だったらいいけど、謝罪メールだと大ごとですからね。

こういうことを今月パカパカ家で作っていたら、かみさんが「私、これ全部やったことがある」って言ってましたね。えらいやつと結婚しちゃったな、と思いましたけどね。ちなみにかみさんは「お世話になっておりません」と言ったことがあるそうですね。わざわざ宣言することかそれ、っていう。

こういうことが起きるとややこしいじゃないですか(笑)。ということで、(メールワイズには)メールのテンプレートが用意されてるんですね。仕事ですごく大事なことは、「自動化できるところは自動化する」です。これがポイントです。ここで時々あるのが「いやいや、そこで心を込めるのが仕事でしょう」と、「丁寧」という言葉に置き換えてしまう人がいるんですね。

だけど、ミスが起きるリスクをわざわざ冒すことが「丁寧」と表現されるのは、僕は甚だ疑問です。ギャグでやるのだったらいいですよ。だけどそうじゃなければ、タイポが起きるような打ち方をするぐらいだったら、定型文にしたほうがよっぽどいいですよね。

マインドセットをアップデートするために「やめること」を決める

僕はハッキリ言いますけれども、「手書きで何かを提出させることによって相手の心情をちゃんと測るんだ」とか、「学生の履歴書は手書きでないとならない」というのがよくありますけど。それによってその人のキャラクターが読み取れるって、あんたエスパーかよと思うんです。そんなわけねぇだろ、ただ単に字がきれいなだけでしょ、という話なんです。

僕はこういう効率化できるところはどんどん効率化していったほうがいいと考えるタイプなんですね。だって本当に時間をかけて丁寧にやることは、ほかにいくらでもあるわけじゃないですか。そっちに時間かけましょうよという話なんです。

もうすでに我々は、「働き方」にすごくたくさんの選択肢があることに気づいちゃっているわけです。もうそれをどんどん実行するだけでいい。デジタルの世界を生きるために必要なことは何かというと、ここに尽きます。「マインドセットのアップデート」です。何も投資はいらないんですよ。考え方を変えるだけなんです。心の持ちようを変えるだけなんですね。

だけど多くの人にとって、これが最もハードルが高いと感じるんです。ハードルが高いと感じさせる原因は何かというと、大抵の場合、周りの目です。周囲の目が気になっちゃって、どうしてもアップデートができないと思ってしまうんですね。

だけど、そこを一歩越えましょうよ。せっかく僕の話(を聞きに)わざわざここに来てくれたんだから。まずやっていただきたいことは、「やめること」を決めてください。何かをやめてください。なんでもいいです。そうしたら絶対に時間ができるので。ちなみに『「やめる」という選択』が絶賛発売中です。これ僕の著書ですから一番大事なところですからね。……噓ですよ、冗談冗談(笑)。

やめる基準は「自分がアクションする必要があるかどうか」

要するに、やめることがすごく重要なんですよ。例えば意味の薄いミーティングをやめてください。ミーティングを全部やめろとは言いません。だけど意味の薄いミーティングを開催するのをやめる、そして自分が参加するのをやめる。なぜか。意味が薄いからです。

意味がなければやめやすいですよね。だけど意味が「薄い」というのは、どうやって判断すればいいんでしたっけ? さっきからしつこく言ってますよね。「自分がアクションする必要があるかどうか」です。自分が何らかの役割を担う可能性が高いんだったら出ていいでしょう。そうじゃなくて座っているだけだったら時間がもったいないから、他のところで価値を作ってください。

あと、意味の薄い移動もやめましょう。例えばみなさんが今日ここに来るということは、Cybozu Daysに対して「意味がある」と思ったから移動してきたわけですよね。この移動は価値があるんですよ。時間を使うという価値があるんです。そうじゃないもの、とりあえず顔を出すためのミーティングに移動をしてまで参加するのは、ぜひやめていただいてもいいかなと思いますね。

やめることを決めると、時間が増えます。時間が増えると休むこともできるし、別のかたちで価値を生み出すこともできるんです。だいぶ「出勤しない」ことが定着して実感している方も多いと思うんですけれども。

ただ、在宅勤務はすべての人にハッピーかというと、そうでもなかったりしますよね。家にいると、いろんなことがありますよね。子どもが盛り上がって大喜びもするし、泣き叫ぶし。料理しなきゃいけないというのもあるし、やらなくてもいい台所の棚を作り始めちゃったりするんですよ。なんか知らないけど、やることがいろいろある忙しい時って、関係ないことが魅力的に見えるんですね。

なので、もっともっと軽やかにしてほしいですね。在宅勤務は家でやるものという発想も、どんどん変えていけばいい。もうオフィスの中と外の境界は急激に曖昧になってるので、どこでもいいんですよ。地球上であればどこでもいい。もっと言うと、宇宙に行けて通信できるんだったら、宇宙でもいいんですよ。ということなので、どこでもいいんです。

「会社に行く」ことが「自分が価値を出す」ことではない

場所と仕事のつながりは、今どんどん希薄になっているわけですから。これをどんどん利用していきましょう。これだけの話です。難しいことを言ってるわけじゃないんです。今この時代がそうなっているんだから、そこに乗っかって働きましょう。これだけですね。だから「価値を生み出せるんだったら、場所はどこでもいい」と、マインドセットをアップデートしてください。

みなさんは「会社に行く」ことと「自分が価値を出す」ことが一致してるという感性を持ちすぎている部分もあるんですね。「そうしないといけないのではないか」、これは呪いです。

行っちゃダメと言っているわけじゃないです。行くことによって得られるものもあるので、目的を持って行きましょうということなんですね。先ほど言ったとおりです。「アクション」がそこにある。行けば何か自分が価値を生み出せるんだ。価値を生み出すために時間を使う価値があるんだ。そう考えられるんだったら、どんどん行けばいい。

とにかく「軽やかになりましょう」。これだけなんです。「軽やかに働く」ことが、より一層求められるんですね。サイボウズさんは、それこそ副業OKですし、リモートワークで、そしていろんな人がフラットに、どんどん情報を発信することが許されている会社なんだそうです。まさに「軽やかに働く」ことを実践されていると思うんです。日本という国の中で、すごく気を吐くIT企業でいられるんじゃないかと思います。

軽やかに働くために、お互いが「自己中」であることを認め合う

例えばこのミーティングも、「人を集めて話す」のはプレミアムコースですからね。今、こうやって人を集めて話をするのは、相当気合いを入れてやらないといけないんですよ。これはむっちゃプレミアムな体験なんです。

今までだったら簡単にパパッと「とりあえず集まってやりましょう」「会議室でやりましょう」とできたところが、今はもうプレミアムなんです。「退屈させる」とかやっちゃアカンよ、ってことなんです。

わざわざ集めて退屈な話をする。おもしろいかおもしろくないかだけじゃないですね。「自分は関係ないよな」「アクションする必要ないよな」というところのために、わざわざ移動させ時間を奪うのは、もう犯罪でございます。やっちゃアカンことなんです。

そのためには、お互い「自己中」になりましょう。お互いが自己中であることを認め合えばいい。今、大流行りな言葉がありますよね。「ダイバーシティ&インクルージョン」。これは「お互いが自己中であることを認めましょうね」というだけの話なんです。

そのためには「個」をもっと意識したほうがいい。「うちの会社は」「うちの部は」という、でかい主語を使わないようにしてください。ついつい「うちの部は」「うちのグループは」「うちのチームは」と言います。(その時は)必ず「誰、それ?」と聞いてください。だって「会社さん」はいないでしょ? 「会社さん」という人はいないんですよ。

「お客さん」と漠然と言いますけれども、「お客さんの誰がそれを言ったの?」と聞いてください。必ず主語を細かくしてください。そして「うちのチームはこういうことをやるので」と言った人に対しては、「あなたは何をするの?」とすかさず聞く。「私に何ができる?」と、自分を主語にする。そう考えてください。

アメリカでは、日本企業は「社員を子ども扱いする」と教えられている

「そう言うけどさ、それって自立してる人にだけ言える話でしょ?」というツッコミもあります。リモートワーク中の管理職は「社員がサボっちゃうんじゃないかな」「見てないところでサボるんじゃないかな」という悩みを持っています。

僕はこういう人たちに必ず、何年も前からこう言っています。「心配しないでください、その人たちはずっと前からサボっていました」。サボってた人のYouTubeの見方が変わっただけです。今までは巧みに画面の角度を変えて上司の人にバレないようにYouTubeを見ていたのが、家で堂々とYouTubeを見るようになっただけです。だからぜんぜん関係ないんですよ。

でも、目の前にいないとマネジメントできないという人がいるんです。でもこれをアメリカのMBAでは、こんな言い方してるんですね。「日本は社員を子ども扱いするぞ」。これは僕が言っているわけじゃないです。アメリカのMBAで教わった人がショックを受けて僕に教えてくれたんです。アメリカでは、日本企業は「社員を子ども扱いする」と教えられているんですよ、と。

どういうことかというと、大学の4年間は勉強する人は勉強しますけど、僕みたいな程度のいいアホは、4年間かけてアホになるんですよ。どうにかこうにか入試をクリアして、4年間かけてアホになって、まっさらな状態になって会社に育ててもらうという構図がずっと続いていたわけですよね。で、(会社は)それを一生かけて面倒見ますよという状態。これは子育てなんですよ。

そして子育てのように扱われると、子どものように振る舞ってしまうんですね。子どものように振る舞うとはどういうことかというと、子どもの頃に一番恐れていたのは何ですか? 「怒られる」ことですよね。「怒られないようにする」ことが、トッププライオリティになってしまうんですよ。

「怒られるかもしれない病」から解放されるために

これが先ほど言ったやつです。「もっと自由に働きましょうよ」と言った時に、どうしても「周囲の目が……」となるんですね。「怒られるかもしれない病」です。怒られるかもしれないから、それができないんです。

また、怒る人が成功体験になってしまうんです。怒ったことによって相手が言うことを聞くと、コントロールができると癖になるんですよね。これが厄介なところです。だけどもう我々はいい大人ですから。そんな「他者に怒られること」にコントロールされるなんて、もうまっぴらじゃないですか。

ぜひグレてください。グレればいいんです。別にトイレでタバコ吸えとか、窓ガラスを割れとか、盗んだバイクで走り出せとか、そういう話じゃないんです。そんなことはしなくていいですよ、捕まりますから(笑)。先ほど言ったように、意味が薄いと思ったらやめるという選択をする。あるいは働きたい場所で働く。これだけの話です。

そして困った時には人に助けを求めてください。「助けてー!」と言うのも仕事です。抱え込まないでください。それで時間を浪費させないでください。苦手なところはどんどん人に頼ればいいんです。

自分が「最強」になれる場所を見つけるのが、これまた仕事をやる上で最も重要なポイントになるわけですね。自分が最も力を発揮できる場所を知っているか否が、キャリアを作っていく上では大事です。

自分が活躍できる場所を探すための「外のモノサシ」

僕の他に、元外資系のIT企業ということでAmazon Web Servicesから小島英揮さんが登壇されていましたけれども。小島さんが本当によくおっしゃっている言葉で、僕も大好きな言葉が、「外のモノサシ」というキーワードです。

「外のモノサシ」を知るというのは、結果的に自分が活躍できる場所を探す「単位」を身につけることになります。他の単位を知ってるかどうかは非常に重要なんですね。単位はセンチとかキロとかいろいろありますけれども、測るものはぜんぜん違いますよね。長さとか容積とか重さとか、「測る」概念が違います。そういうことなんです。

自分は果たして「自分を正しく測る単位」を知っているかどうか。例えば短距離走をずっとやってる人で、なぜか結果が出ない。実際はその人は、短距離走じゃなくて柔道のほうが向いているかもしれないわけですよ。これは使う筋肉がぜんぜん違うわけですよね。

単位もぜんぜん違います。100メートルとか区切られた距離の単位を何秒という単位で測るというのが短距離走です。柔道は相手を投げ飛ばしたり抑え込んだりして、期限の時間内に相手よりも自分のほうが有利な体勢になるのが、柔道の単位になるわけです。これを知らないと、そこにチャレンジする選択肢は生まれないんです。

「外のモノサシ」をぜひ知ってください。まったく違う単位が外には存在する。その中でもしかしたら自分は最強になれるかもしれない、ということを知るのが大事なんです。どんどん外に出ていって、どんどんいろんな人とコミュニケーションしていく。これが今一番求められていることです。

測るためにはアクションが先。たっぷり準備をしてからではなく、まずやってみる。そして改善していく。足が速いかどうかは走ってみないとわからないですよね。自分の生い立ちや、筋肉量とか心臓の拍動を測っても、足が速いかどうかなんて測れないんですよ。まず走ってみるのが一番手っ取り早いんですよね。まずアクションです。

時間と体力を使うべきは「自分がコントロールできるところ」

さて、大前研一さんはこんなことを言ってます。「人間が変わる方法は3つしかない」。時間配分を変える、付き合う人を変える、住む場所を変える。この3つです。全部、今日言ってるところに当てはまりますね。最も意味がないのは何かというと「決意を新たにすること」だそうです。これだけじゃ意味がない。だからアクションしなきゃいけないんですよね。

もちろんマインドセットのアップデートをした上で、アクションを変えていくことによって、最大の効果が発揮されます。まずはアクションをする。そして、自分がコントロールできることに集中してください。自分がコントロールできる何かに対して、時間と体力を使ってください。

ソクラテスもこんなことを言っているんですね。「世界を動かそうと思ったら、まず自分自身を動かせ」。昔の人が言っているわけですから、人間の心理ってそうそう変わらないんですよね。まず自分が動くこと、これが大事です。

そして、新しい働き方がどんどん出てきているわけです。これは「靴ひもを結ぶ」のと同じレベルだと思ってください。スニーカーのひもでも革靴のひもでもなんでもいいんですけど。靴ひもを結ぶって、子どもの頃はちょっと苦労しましたけど、今はとりあえず指が動けば誰でもできますよね。どうしてもサポートが必要な方もいらっしゃるとは思うんですけれども、一般的に健常者であれば結ぶことができる。そういうレベルのものだと思ってください。

どういうことかっていうと、わざわざ人を呼んで靴ひもを結んでもらう人っていないんじゃないかと思うんです。よほどの理由があるんだったら別ですけど、一般的には自分で結ぶのが普通の振る舞いですよね。

わざわざ人を呼んでやることなのかどうか、自分でできることは自分でしよう。だけど、それでも突き指したとかいう時には、人を頼ればいいんですよ。「助けて」と言えばいいんです。そうやって、自分がコントロールできるところに集中していく。そうじゃないものはどんどん人を頼る、そう考えていただければと思います。

映画『イージーライダー』のセリフが示す、テクノロジーが作る未来

もう早いもので残り時間もあと少しなんですけれども。最後にあるエピソードをご紹介したいと思います。これは僕の最近のお気に入りなんですけど、僕と同い年の映画です。『イージーライダー』という、ジャック・ニコルソンさんも出ているんですけど、ピーター・フォンダさんとデニス・ホッパーさんのダブル主演の映画です。見たことがある方はどのぐらいいらっしゃいます?

(会場挙手)

あまりいないな。すごくおもしろい映画なので、ぜひ見てください。ベトナム戦争直後のアメリカの若者の姿を描いたロードムービーなんですけれども、その中でジャック・ニコルソンが主演の2人と焚き火を囲んで、酔っ払ってだべっています。

どんな話をしているかというと、「地球にはもうたくさん宇宙人がやってきている」と言っているんですね。そして「宇宙人たちは社会が進んでいて、戦争も通貨制度もない」。そして「指導者はいない。全員が指導者だ」。そして「高度なテクノロジーのおかげで、日常の生活は競争なしで満たされる」という話をしているんですね。

これ、ヤバイことを言っていて。52年前に「通貨制度もない」と言ってます。今、国家信用本位制を超えた通貨制度ができていますよね。仮想通貨です。技術が信用できれば価値があるという通貨制度ができてるんですよ。

「指導者はいない、全員が指導者だ」。SNSですよ。SNSは、自分自身が自分の主張をどんどん発信できるツールですよね。そういったものが生まれているのも、ある意味当たってるわけです。

そしてたまらないのがこれですよ。「高度なテクノロジーのおかげで、日常の生活は競争なしで満たされる」。ここ、サイボウズさんのイベントですよ。テクノロジーによって我々はむっちゃいい未来を作れてしまうわけですよ。すてきな未来をテクノロジーの力で、ぜひ一緒に作れればいいなと思っております。

ちょうど時間になったようです。僕のプレゼンはここまでです。ありがとうございました。

(会場拍手)

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