苦手な相手にほど、こまめに確認を取ると吉

徳田葵氏(以下、徳田):では参りましょう。まず1つ目、お願いします。

松本利明氏(以下、松本):はい。1つ目は、仕事は自分で進めながら、適宜、上司や関係先と確認しますよね。確認にはコツがあります。「長い1回」ではなく、この穴埋には何が入りますでしょうか。

徳田:「長い1回」ではなくて……何だろう。

松本:正解は「短い10回」です。と言いますのは、苦手な人ほどなるべく関わりたくないじゃないですか。関わりたくないので一発で通そうと思う気持ちはわかりますしかし、一発で通そうとして失敗してしまうと全てがパー。全部やり直しになってしまいますよね。

実は、苦手な相手に対してこそ、細かくチェックしてもらった方が手戻りの回数も減り、速くラクに仕事が終わるのです。

徳田:確かにそうですよね。だから、「長い1回」じゃなくて「短い10回」をスピーディーにやっていこうということなんですね。

松本:特に苦手な上司だと、なるべく関わりたくないと思うじゃないですか。でも逆の立場でいうと、ちょこちょこ確認をしてくれる人のほうが「こいつ可愛いな」とか「俺を認めてくれているんだ」と思うんですよ。

と言いますのは、結局上司は「任せた」と言いながら進捗状況を知らせて安心させて欲しいと思っています。締め切り直前まで一回も持ってこなかったら不安になりますよね。

徳田:不安になります。

松本:ちょくちょく細かく確認してくれたほうが、相手が私を上司として尊敬していると感じるようになるのです、勘違いであっても。なので苦手な相手こそ、確認の回数を増やすとあなたの評判が上がり、むしろ有利にもなります。

徳田:なるほど。可愛いがられるコツでもあるわけですね。

「いちいち聞くな」と言う上司に、声をかけやすくなる魔法の言葉

松本:そうです。一方で、なかなか細かく確認しようと思っても難しい面もありますよね。でも、ある一言を言うとOK な魔法の言葉があります。さあ、それは何でしょう。

徳田:何だろう魔法の言葉……何かを話しかける時に最初に言う言葉ってことですよね。

松本:そうです。正解は「確認ですが」です。「確認ですが」といえば確認なので、合っていても間違っていても問題ないんですよ。たとえ間違っていても、「わかっていない、ダメなやつだ」と思われることがないんです。最初に「確認ですが」という言葉をつければ、どんなことでも聞いていいのです。

徳田:なるほど。じゃあ必ずこの言葉をつければ、どんなことでも聞いていいんですね?

松本:はい、ただ「確認ですが」って一気に20個も聞いたら後回しにされるので、1回で聞くのはどんなに多くても3つまでですね。確認したいことは溜めないことです。口頭で無理だったらメールでも構いません。「確認ですけど」という一言を入れて確認してもらえば、手戻りをなくすことができます。

徳田:はい、まず1個目のこのスキルを是非覚えてみてください。コメントでも、「中には『いちいち聞くな』という上司もいるんですよね」ということなので、確認事項も3つまでなら、何でもいちいち聞いていない印象ですよね。

あと視聴者の方も「ちゃんと考えてから来て欲しい」とおっしゃっています。これは上司の立場からということですかね。だから、自分の意見も持ちつつ、「確認ですが」って提案するのが良さそうですね。

議論をひっくり返す「いじわるな上司」対策法

松本:ちょうど次の項目にその答えが載っていました。2つ目の「100点」を目指すより、何点の出来で突っ込ませるのがいいでしょうか。

徳田:うーん……。Schooでも「60点ラジオ」っていうのがありますね。

松本:そうです、正解は60点です。というのは、100パーセントの出来で持って行っても、「違う」って言われたら、全部やり直しになっちゃいますよね。だから、ある程度出来た段階で持って行って突っ込んでもらうのが正解です。

60点の時点で出すと、そもそも方向性が合っているのかどうかというところを早めに確認できるので、ズレていても軌道修正が最小限で済みます。

あとは相手に突っ込ませてゴールを明確にする。「考えてこい」と言う上司の半分ぐらいは、実は自分ではちゃんと考えていないんです。自分が考えていないから、部下に任せて「考えてこい」と言う、任せているようで振っているだけということもあります。

人間は自分の頭で考えるよりも、出てきたものを突っ込む方が楽なんです。だから、上司に考えてもらって指示をもらうよりも「たたき台」と言いますか。そういうものを出して突っ込んでもらったほうが、上司も考える負荷が減り、具体的な支持に集中できるのです。

そして「いじわるな上司対策」っていうのは、みなさんの会社にはいないと思うんですけど、たまにダメ出しをすることが自分の存在価値だと思っている方がけっこういます。

徳田:それはちょっと嫌ですね。

松本:だから、パーフェクトの状態で持っていくと「そもそもこの資料作る意味はあるのか」とか、訳のわからないことを言ってひっくり返そうとしてきます。そういう方は、何回突っ込んだら気が済む、という目安があります。そう、突っ込む回数が決まっているものなのです。

3回突っ込んで満足するんだったら、3つくらい突っ込む箇所を作っておく、もしくは確認しておいた方がいいなと思うことを3ヶ所くらい空けておく。そうすると3ヶ所突っ込んだ時点でその方は満足するので、本丸までやり直しにはならないのです。

60点の提案でも怒られずに済む、魔法の言葉

松本:突っ込ませると言っても、手を抜いたら絶対ばれます。手を抜かずにある程度突っ込む箇所を作っておいて、突っ込ませる根回しで「いじわるな上司対策」ができます。ただし、ストレートに「60点で持ってきました」と言われたら、あなたはどう感じますか?

「ちゃんとやってから持って来てよ」という話になることは目に見えます。こういう時にも、魔法の言葉があります。何かというと、1つが「ドラフト」です。「ドラフトなので、突っ込んでください」ということです。ドラフトという代わりに「たたき台」でもOKです。

徳田:「まだまだこれから伸びしろあります」ということですね。

松本:はい、もう1つが「速報」という言い方があります。集計をするときに山のように全てのパターンの集計を持って行ったら、「こんなものいらないよ」ってなると悲惨ですよね。でも「速報です」って概観を持って行って、特に知りたいところを先に聞いておけば、今度はそこを中心に持ってけばいいことがわかるので、余計な作業がなくなります。

徳田:そうですね。すぐに動き出せるっていうのはこの「60点」のメリットかもしれないですね。完璧を目指すと、なかなか出来上がるまで持っていけないということがありますからね。

松本:はい、それと持って行った後にひっくり返されるとショックは大きいですよね。

徳田:そうですね。やる気がちょっと削がれるかもしれないです。

やり直しになるくらいなら、上司にこまめに確認を取る

松本:逆に「速報」とか「ドラフト」と言って資料を持ってきてもらったほうが、「俺を上司と認めてくれているからだ」と上司も喜ぶんですね。「仕方ないな、俺を頼ってるな」と思ってもらえたらラッキーですよね。

徳田:そうですね。1つよろしいでしょうか。「確認したいけれど過去に上司がなかなか捕まらないことがあるので、結局質問が溜まってしまうことがありました」とコメントが来ております。忙しい上司の方にそういう質問をぶつけたい場合って、まとめて持って行くのがいいのか、小出しにした方がいいのか、どっちなんですかね。

松本:私だったらまずメールを送ります。もしくは上司を待ち伏せをします(笑)。アクセンチュアの時、上司が何時に戻ってくるのかを聞き、3分前くらいから待ち構えます。30秒くらい見て確認をしてもらえればOKなので。

徳田:端的にシンプルに確認してもらうということですね。

松本:もしくは忙しそうでも、携帯で無理やりかけちゃうとかですね。

徳田:なるほど。聞きたいことはちゃんと聞くということですね。

松本:遠慮はしない方がいいと思います。確認をせずに最後の最後にやり直しになるくらいだったら、上司は忙しくても細めに確認してくれた方がありがたいのです。

徳田:ちょっとずつ修正していくと前より進んだ感もでるので良さそうですね。「まさかの待ち伏せを学んだ」とコメントも来ております(笑)。

「ロジカルに話す」よりも大事なこと

徳田:3つ目、進んでいきましょうか。

松本:はい。ロジカルに話すより、何がいいのでしょうか?

徳田:ロジカルが大事ってよく聞きますけどね。

松本:マッキンゼーが言っているんですが、正しくは2つあります。1つは、「客観的に正しい」です。もう1つは「相手の○○に沿って正しい」

徳田:相手の考え? 想い? 主張?

松本:そうですね。「主観」です。主観って何かと言うと、相手の考えている優先度合と判断基準です。例えば、家電量販店で「安いクーラーが欲しい」と言うお客さんがいたとします。

このお客さんに定員さんが「高いクーラーの方が品質が良い」って客観的に正しいロジックで売り込んでも、絶対に買わないじゃないですか。お客さんの一番の優先順位は「安さ」なので、「一番安いのはAです」から伝えないと、そもそも話を聞いてくれないので、ここからスタートします。

優先度には順番があります。次に優先度が高いことを聞き、その流れに沿って答えればいいのです。次に「何年使うんですか」って聞いたら「30年使う」と答えたとします。そこで「じゃあ品質がよくて壊れないBが良いですよ」って言えば、最初から売り込んだ時より、値段の高いBの商品を買ってもらえる可能性が高くなりますよね。

このように、自分自身が考えている優先度合や判断基準ではなくて、相手の考えている優先度合や判断基準に沿って並び替えてあげる。そうすると確実に結果に繋がります。

徳田:そうですね。その相手の優先順位を考えたり、こちら側から慮ることってすごく大事ですね。コツはありますか。

松本:噛み合わないなって思ったら、「何が一番大事ですか」とか「一番のポイントは何ですか」って聞けばいいんです。相手のことを良かれと思って話してると、嫁姑の会話みたいに噛み合わなくなるんですね。

話が噛み合わない時、言葉を並べて説得するのはNG

松本:さっき話した例で言うと、「安いものが欲しい」って言うのであれば、「安い」というところから紐解けばいいですよね。

その次に「重要なことは何ですか」と聞いたら「長く使いたい」と返ってきたとしたら、「安いもので長く使いたいということであれば、こちらで詰めていた商品はいかがですか」という言い方もできますよね。このように困ったら「何が重要ですか」と聞きながら答えてあげればいいんです。

徳田:テーマと論点の順で聞くっていうのがコツなんでしょうか。

松本:はい。というのは、人間は思う通りにいかない、噛み合わない時は、だいたい枝葉の細かいところに目が行くんです。噛み合わないなと思った時に、大抵の人はわかりやすくしようと思ってたくさんの言葉を並べる。もしくは説得しようとするんですよ。そうすると相手は嫌になっちゃうんですよね。

徳田:わかります!

松本:そういう時は「そもそもの目的ってなんだっけ」とテーマに戻ってみたりとか、「なんで困ってるんですか」と聞いてみたり。

だからテーマでいうと「クーラーが欲しいです」ということであれば、論点が安いのか、高いのか、品質がいいのか、デザインがいいのか、っていうふうに、テーマ→論点という順番に根っこから聞いたほうが、結局、早く楽に相手にアプローチできます。

徳田:そうですね。「大事なことは何ですか」と。あと、「そもそもこれって何のための議論なんだっけ」みたいなことを考えられればいいということですね。

松本:聞いてみることですね。自分で考えても相手の考えていることと違う可能性があるので、「一番のポイントはなんですか」とか「重要なことはなんですか」と聞いてしまって、答えていただく。それが一番のポイントになります。

仕事のやり直しを防ぐコツは、相手の優先度に沿って話すこと

徳田:なるほど。コメントでも「抽象力ですよね」ということで、抽象化するっていうビジネススキルが必要ですね。

松本:そうですね。抽象化した後に重要なことは「聞く」ということですね。つまり、仮説を立てて聞けば、外れても相手は答えてくれるんです。 徳田:一応、土台はこちらから示さなきゃいけないっていうことですね。

松本:そのほうが得策ですね。上司はけっこうアバウトに仕事を振ってきたり、指示してくること多いですよね。ここで、つい「わかりました」と言いながら上司と自分の優先度合が違うと、上司の指示が悪くても、「何やってるんだ」ってこっちが悪者になりますよね。

だから、「わかりました」と言った後で「一番のポイントはなんですか」とか「どこから着手すればいいのか確認したいです」みたいな感じで聞けばいいです。重要なのは、相手にちゃんと聞いて確認することです。洞察して仮説を考えてぶつければ、なお良いです。

徳田:はい、そうですね。今日のテーマが「仕事のやり直しの予防策」なので、やり直さないために上手くスムーズに進むためには、この論点が大事になっているということですね。

松本:論理的に説得することが重要じゃなくて、やり直しをなくすには、相手の優先度合に沿って話しましょう、わからないことがあれば聞きましょうということですね。

徳田:はい、ありがとうございます。進んでまいりましょう。

「報連相」に代わる「ソラ・アメ・カサ」とは?

松本:「報連相ではなく○○」。Schooさんとかだと、けっこう話されている講師が多いんじゃないですかね。これも私ではなくて、マッキンゼーの日本オフィスが考えたフレームワークなんですが、正解は「ソラ・アメ・カサ」です。

徳田:私、聞いたことないかもしれないです。

松本:あ、そうですか。みなさんは「ソラ・アメ・カサ」って聞いたことありますかね。

徳田:聞いたことがある方、ぜひコメントで教えてください。

松本:「ソラ・アメ・カサ」って何かと言うと、簡単です。「空は青い」これは事実です。次、「雨は降らない」これは「事実の解釈」です。つまり、「空は青い=晴れている、だから雨は降らない」という洞察ですね。「カサ」は、雨が降らないから「傘を置いていく」というような「事実と解釈を踏まえた判断」。

この「ソラ・アメ・カサ」は事実の把握と事実の解釈、それから事実と解釈を踏まえた判断のことです。これが3セットになっていないと相手に伝わらないのです。先ほど「抽象化」っていう言葉が出てきましたけど、「ソラ・アメ・カサ」が全部セットになっていないと、こちらがどう考えても相手に伝わらないということです。

だから上司と会話が噛み合わなくなったら、「ソラ・アメ・カサ」を確認するのが一番いいです。なぜかと言うと、日本語だと、「アメ」が省略されてしまうことが9割だからです。

徳田:「アメ」が省略される……どういうことでしょう。

松本:つまり、洞察が省略されてしまうんですね。わかりやすく言うと、例えば「空を見ると曇ってきました」だから何かしますよね。

「雨が降りそう」とだけ聞くと、相手は「だからなんでしょうか?」と思いますよね。外出しないほうがいいのか、てるてる坊主を作ればいいのか、相手はあれこれ勝手な解釈をしてしまう可能性があります。

「カサ」だけでも伝わりません。例えば「傘を持っていこう」と言ったとします。そうすると、「大げさだな」とか「心配症だ」「確かに」と相手はさまざまな反応をしますよね。自分と相手の意見にブレが生じてしまうんです。

わかったつもりでも、なかなか「何をどう」とらえているかって人によって違うんですよ。でもわかったつもりで「わかりました。」と言ってしまう。そうすると、本来の伝え手の意図と違うことをしてしまいます。こういうことってけっこう多いんですよね。

日本語で起こりがちな、解釈の齟齬を防ぐために

松本:「ソラ・アメ・カサ」が3つセットになっていますと、「空を見ると曇ってきた」(=事実)「雨が降りそうだ」(=解釈)「傘を持っていこう」(=判断)正しく伝わりますし、相手も正しく判断できるのです。

徳田:必ずこの3つセットで、1つも抜けてはだめだということですね。

松本:日本人って察することが多いじゃないですか。例えば、中学校の時に初めてのデートで花火を観に行きました。「きれいだね」「そうだね」っていう会話になった時に、花火がきれいなのか、夜景がきれいなのか、浴衣姿の君がきれいなのか。お互いこの会話だけで「きれいだね」と思っていることが伝わった気持ちになりますよね。

デートだったら思い出でいいかもしれないですけど、これが仕事だったら大変です。同じ状況を見て「わかりました!」と言いながら意図と違うことをしてしまうと、確実にやり直しになります。これは「ソラ・アメ・カサ」が使えれば解消できます。

例えば、水がコップに半分入っていた時に半分入っていることは事実なんですけど、「もう半分」なのか「まだ半分なのか」っていう話があるじゃないですか。こういう洞察の違いによって、このコップに入った半分の水の状況は違ってきますよね。

徳田:同じ状況でも、どう解釈するかがお互いに認識できていないと、全く違った結果になってしまうということですね。

松本:はい。例えばさっきの「空は曇っている」という事実があったとすると、「雨が降りそうだ」「帰るまで天気は持つだろう」「日が短くなったな」などさまざまな解釈ができますよね。

そうすると「傘を持っていこう」という発言に対して、「はい、持っていこう」「上司はそう言っているけど私は止めておこう」「上司はそう言っているけど、受け流そう。それより洗濯物を干していたので早く帰ろう」のように、まったく意図とは違うふうに伝わってしまいます。日本語は特にありがちです。

「ソラ・アメ・カサ」は、状況に応じて順番を使い分ける

松本:あともう1つ。「ソラ・アメ・カサ」って必ずしもこの順番ではなければいけないというわけではなくて、3つがセットになっていればいいんです。こちらの例でやってみましょう。

「ソラ:お客様が来ない」「アメ:来月にはお店が潰れそうだ」「カサ:銀行から追加融資してもらおう」です。相手が結論から知りたい場合だとすれば、そういう時はカサから言ってもいいんです。

「カサ:銀行から追加融資してもらおう」「アメ:(なぜなら)それはお店が潰れそうだから」「ソラ:(なぜなら)お客様が来ないから」っていうふうに、「カサ・アメ・ソラ」もしくは「カサ・ソラ・アメ」で言えば伝わるんですよね。

つまり、先ほど相手の考えている主観=優先度合・判断基準を考えなさいって言ったんですけど、基本的に事実なのか論点なの打ち手なのか、相手が気にしているのはこの3つになってきますので、ソラ・アメ・カサのどれか1つをしゃべったら、残りの2個をくっつければいいんです。

例えば相手が論点から入りたければ、今度は「アメ」から言えばいいんですね。「アメ:来月にお店が潰れそうだ」「ソラ:(なぜなら)お客さんが来ないから」「カサ:(ゆえに)銀行から追加融資してもらおう」。

このように「ソラ・アメ・カサ」というのは3つを1セットにするだけではなくて、相手が知りたいことを初めに言って、残りの2つをあとから付け足せば、確実に伝わります。上司と部下の行き違いもなくなります。通常は報連相でしょう。

報連相には致命的な欠陥があります。報連相は「ソラ・アメ・カサ」で言うと、ほとんどが「ソラ」です。「ソラ」を上司に伝えると、いきなり指示である「カサ」がとんできます。そう、報連相は「ソラ・カサ」で一番大事なアメが抜けるのです。アメを考えるのは上司の頭の中だけで、確認するステップが報連相にはないのです。

上司の「アメ」を確認すると、上司の視点が手に入る

徳田:そうですね。たしかに報連相と「ソラ・アメ・カサ」って何が違うんだろうと思っていたんですよ。

松本:伝える時に、上司の頭の中でどうなりそうかなっていうことを考えるんです。先ほど言った「アメ」の大事な解釈ってよく抜けるんです。

みなさんもありませんか。上司の指示通りにやったのに「ちがうだろ」って怒られたりとか、逆に「なんでこいつ指示しているのに違うことやるんだろう」とか。これは「アメ」がずれて起こる現象なんです。

徳田:なるほど。けっこうコメントも来ています。「アメがないときは常に相手に確認しよう」とか、「あ~、分かります。経験が長い人ほど指示を端折ります。自分も気をつけなきゃってその度に思いますね。解釈をちゃんとつけないといけないんですね」。

松本:はい。だからよく「一歩上の視点で考えろ」って言うじゃないですか。上司の視点で考えることってできます?

徳田:いや~できないです。

松本:けっこう難しいですよね。「わかりました」と言いながら、わかっていない部分があって悩んでしまうんですよね。一番の違いはアメの解釈です。つまり上司になればなるほど視点の高さ、広さが変わってくるんですよね。ですから、上司のアメを確認すると上司の視点が手に入るんですよ。

つまり、同じ事実をどう捉えるかっていうのが、上司と部下の視点の高さの違いなってきますので、アメを確認すると一つ上の視点を手に入れられるのです。

逆に部下やメンバーの方にアメを教えることによって、もう一歩上の、自分と同じ視点を教えられるのです。それは報連相では伝わらないのです。アメを伝えることで自分も成長できるし、部下の方も成長できる。だから、手戻りがなくなるということです。

察することが多く、解釈が抜けがちな日本人

徳田:なるほど。アメの解釈の仕方って質問をするのがいいんでしたっけ?「どう解釈していますか?」ってストレートに聞いちゃえばいいんですか?

松本:そうですね。「どう思われますか?」とか、もしくはこちらから「こうなりそうですよね。」って言っちゃうとか。

徳田:あーなるほど。

松本:「そうだね。」となればそれでいいし、「何言ってるんだよ、違うよ」となれば、「どう違うんですか?」と聞くと違いがわかります。だから指示をするときに、突っ込む方が相手にストレスがかからないっていいましたよね。

自分の方から仮説をぶつけてあげるのが早道です。「確認ですけどこういうことですよね。」と自分のアメを伝えて突っ込んでもらうのです。

徳田:そうですね。「確認ですが、こういうことで良かったんですよね。」と聞いてみればいいんですね。完璧ですね。みなさんはいかがでしょうか。 色々感じたことをぜひコメントで教えてください。

コメントが来ています。「日本人の特性として察することが多くて解釈が抜けがちですよね。判断に責任が伴うというより、もしかしたら解釈に責任が伴うのかも」。解釈が大事なのかもっていうことですね。いいですね。ありがとうございます。

松本:結局、落合陽一さんでもホリエモンさんでも同じ事実を見ても、自分自身のフィルターをかけたときにコメントがちがうじゃないですか。これはアメ=洞察がちがうからなんです。

徳田:だからこそ、いろんな意見があるってことになりますもんね。

松本:だから、アメを確認すると手戻りがなくなるということですね。

徳田:ここが今日のポイントな気がしてきました。

「ソラ・アメ・カサ」の身につけ方

徳田:では進んで行きましょう。お願いします。

松本:はい。実は「ソラ・アメ・カサ」を身に着けるのは簡単なんです。ソラを伝えたので、アメとカサも一緒にしなきゃいけないねと思えばいいだけなんです。3つそろっていればいいので、「最初にソラを入れなきゃ!」とか思わなくていいんです。誰でもすぐに身に付きます。

次のポイントは「自分の価値観ではなく、会社の価値観を賢く利用する」です。というのは部下が上司に提案した時に、上司と意見が違った場合、基本的には個人の価値観で考えたものって上司に負けちゃうんですね。「会社の価値観に沿って判断しました」と言うと、上司もひっくり返しにくくなるんです。

特に日本の会社さんがそうなんですけど、どちらかというと同種性が高い部分っていうのが大きいじゃないですか。私が外資系企業にいたときにつくづく感じたのですが、とにかくみんなが違うので、お互いを尊重するしか他に方法がない。ゆえに、一番効率がいい方法を考えてみんな、そのルールに沿って進めていこうとなるしかないのです。

個人の価値観からの判断はどれもが正解だけど、我社として判断するのであれば、会社の価値観をもとにYes・Noを決めようと。日本人はそういうのに慣れていないので、自分の意見が「違う」と言われると、自分の人間性とか人生観まで全てを否定された気持ちになっちゃうんですよ。

徳田:わかります。

松本:ありますよね。悔しいじゃないですか。上司に「わからずや!」と思うのが普通です。でも、大事なことは手戻りをなくすことです。提案は会社の価値観に沿って判断してこうなったと言われると、上司や経営陣も「No」と言えなくのです。

経営理念に沿って話せば、大抵の提案は通りやすくなる

松本:ブランディングが立ってる会社さんほど、ここがはっきりしています。わかりやすい例で言うと、Apple。Appleは何を判断の決め手にしているかというと、「シンプル」がありますよね。ゆえに複雑な機能とか大量の機種生産は捨てていますよね。

サウスウエスト航空さんは「安い」。捨てているものは「コスト」。コストがかかることをやらないということですね。「ペットボトルの水をプレゼントすると顧客満足度上がる」ということもわかってはいるけど、コストがかかるからやらないっていう判断になりますよね。

東京ディズニーリゾートもそうですね。「夢」の国ですよね。だからなるべく「現実」を感じさせないようにしています。 こういうふうに会社の価値観って、うまく利用するとYes・Noの判断基準になるんですよ。それを元に資料を作って提案をすると「No」と言いにくくなります。逆に「よく考えてくれた」っていうふうに感謝してくれますよね。

徳田:そうですね。自分の会社が何が決め手で何を捨てているのかを気にした方がいいですね。

松本:まずは会社の価値観が入っている経営理念とかありますよね。それをザーッと並べるんです。それで、判断に迷ったシーンや解釈が違って怒られたシーンを思い出し、経営理念の各項目を軸にして、これだったら何がYes、何がNoかっていうのを整理しておけば良いんです。そうすると、いざという時にそれを元に話せばOKです。

会社の価値観を判断基準にこちらから整理して提案すると、大抵の人はたじろぐんです。たじろぐと通しやすくなります。会社の価値観に沿っていて間違いないので。逆にその論点に沿って解釈を進めていくと、変なひっくり返しがなくなるので、その点ではぐうの音もでなくなります。

「上司の価値観」と「会社の価値観」が違う場合はどうする?

徳田:いいですね。1つ質問が来ておりまして、「もし上司の方が会社の価値観と相違がある場合、どんなふうに折り合いをつけたらいいでしょうか」。こっちがいくら会社の形に合わせて提案を持って行っても、上司がそれを認めてくれなかったりとかする場合ってあるんですか。

松本:上司も会社の価値観に沿った意見なら「No」とは言えないはずなんですよ。その場合、他のところが引っかかっていることが大半です。なので、上司に「どこが引っかかっていますか」と聞けばいいのです。

もしかしたらコストが高いのかもしれないですし、実現性が低いと言われるかもしれませんし、効果がもっと出ないなど、上司が引っかかっている論点がわかるので、その論点に沿ってもう1回出せば、次はNoと言われません。

迷ったり悩む前に、聞いちゃえばいいのです。人間は真剣に考えて提案されると、100パーセント当たっていなくても、相手の心をかすめます。心をかすめられたら、つい本音でどこをクリアしたらOKなのか言っちゃうので、逆に安心して聞いてしまうといいのです。

却下されてプリプリするんじゃなくて、「じゃあ何がポイントですか?」って聞く。それだけで5〜10回やり取りしていたところが、2〜3回で済むんです。

徳田:なるほど。「どこが引っかかりますか?」と聞いて言われたところを直せば、そりゃあ通りますよね。

松本:大事なのでもう1回言いますが、会社の価値観に沿って提案しても上司の方が「No」と言った場合、違うところに重きを置いていると思うので、そこを聞いちゃった方が手戻りがなくなります。

徳田:はい、素直に聞いてみましょう。ありがとうございました!