ベンチャーキャピタルは、どうやって投資先を探すのか

千葉直愛氏(以下、千葉):大変お待たせしました。BAMBOO INCUBATORのランチウェビナー「若手キャピタリストに聞く! VCってどうやって案件をソーシングしてるの?」を始めたいと思います。私は司会進行をする弁護士の千葉と言います。よろしくお願いします。

BAMBOO INCUBATORは、いろいろな士業や投資家や起業家が集まって、スタートアップ起業家に必要な専門知識のごく初歩的な情報を無料でお配りをして、起業家同士の情報格差の解消を目指している任意団体になります。月に2回、このようなウェビナーをやっていますので、よろしければご参加ください。

今日のお品書きは、いつもどおり最初に2問ほど私からクイズを出させていただき、次に講師紹介、本編、アンケート、お知らせと進み、長くても12時50分には終了できるようにがんばりたいと思います。

それではさっそく、今日は2問クイズを出しますので、よろしければチャット欄に、「自分は1番だ」「2番だ」「3番だ」と書いて、アピールいただければと思います。

「ソーシングって、どうやっているのか」。3択です。

1番。「シリーズBとかCとかまで進んでいる先輩起業家の紹介が多い」と思う方、1番と書いてチャット欄に貼っていただけるとうれしいです。

2番。「そうではなくて、インターネットの時代なのでとにかくググって情報を集めている」と思われる方、2番と書いていただければと思います。

3番。「このようなYouTubeでは、とてもじゃないけど言えない特別なルートが存在する」と思う方は3番をお願いします。

では、2問目に参ります。「VCにアプローチをする時に、好まれるプロフィールの書き方は?」というクイズです。3択です。

1番。「自分の経歴をちゃんと書く。どこの大学を出て、どこで働き、どんな仕事をしていたかといった自分の経歴をちゃんと書いた一般的なプロフィールが好まれる」と思う方は1番をお願いします。

2番。「特に決まった様式はなく、自由に自己アピールをしたらいい」と思う方は2番とコメントください。

3番。「スタートアップ起業家なので、自分がやろうとしている事業の内容をちゃんと書いたものが好まれる」と思う方は3番と書いていただければと思います。

VCにおけるソーシングの基本は、紹介とネット検索

千葉:それでは本編に入っていきたいと思います。今日の登壇者を紹介します。まずゲストとして、インキュベイトファンドから岩崎さんに来ていただいています。自己紹介をひと言お願いできますでしょうか?

岩崎遼登氏(以下、岩崎):はじめまして、インキュベイトファンドの岩崎と申します。少し緊張しておりますが、本日はよろしくお願いいたします。

千葉:とても緊張しているようには見えないんですけれど(笑)。

岩崎:しています(笑)。

千葉:それとBAMBOOメンバーで、弁護士の冨田先生、よろしくお願いします。

冨田英司氏(以下、冨田):よろしくお願いします。

千葉:弁理士の多田先生、よろしくお願いします。

多田裕司氏(以下、多田):弁理士の多田です。どうぞよろしくお願いします。

千葉:最後に起業家の白木さん、お願いします。

白木淳郎氏(以下、白木):よろしくお願いします。

千葉:さっそく中身に入っていきます。「ソーシング」という言葉を今日初めて聞く人もいるかもしれませんが、案件(投資先となるベンチャー企業)を探すということです。そこで、一体どうやって行うのかという一般論から入っていきます。まず岩崎さん、ソーシングの代表的な方法にはどんなものがありますか? 先ほどのクイズの答えになるのかと思いますけれども。

岩崎:そうですね。1と2はすごくありますね。先輩起業家、先輩VC、あとは大学の先輩、高校の先輩など、本当に人からご紹介いただくことはすごく多いかなと思います。それだけではなく、こちらから「こういう人、こういう起業家の方と会いたいな」と思ったら、GoogleやTwitter、Linkedinなどの各種ツールで検索させていただくことも多いです。

千葉:起業家などの周りからのご紹介と、インターネットで普通に検索して調べるという2種類が大きな方法ということですね。

キャピタリストが実際に使う検索ワード

千葉:では、ちょっとそれぞれを深掘りしていこうと思います。まず1つ目の紹介ですが、これはどういった方からの紹介が多いのでしょうか。

岩崎:やっぱり、元からつながりのある起業家の方や先輩VC、あとは事業会社に行った知人などでしょうか。起業家の周りには起業家が集まるので、特に起業家からの紹介が多いですね。

あとは、私はシード(起業前の立ち上げ時期)のベンチャーキャピタリストですが、シリーズA(事業が本格的にスタートし、顧客が増え始める成長段階)など別のステージのVCからご紹介を受けることはかなり多いです。

千葉:シリーズA、B(事業が軌道に乗り始めた段階)、C(黒字経営が安定化し、IPOやM&Aを意識する段階)のステージのファンドからすると「(私たちの)投資対象じゃないので」ということで、シード段階の会社をご紹介いただけると。

岩崎:まさにおっしゃるとおりです。

千葉:ありがとうございます。それともう1つ。一般論なのでさくさく行きますけれども、インターネットを使うソーシングとは、具体的にどういう媒体を見ておられるんでしょうか?

岩崎:これは本当に企業さんや人にもよると思うのですが、私はTwitterとLinkedInあたりが多いですね。あとはPR TIMESとかもけっこうありますかね。「β版をリリースしました」みたいなのが出たら「おっ」となります。

千葉:1日にPR TIMESとかどれぐらい読むんですか。

岩崎:最近は少し疎かにしていますが、例えば、毎日毎日「β版」と検索をかけて、全部記事をあさって見たりしていました。

千葉:「β版」とかの特定のキーワードで?

岩崎:そうですね。

千葉:Twitterとかはどんなワードで検索するんですか?

岩崎:「起業」「起業準備中」「登記」「独立」とかですかね。1分もかからないので、そのへんを朝ぱっと調べて「いるかな、いないかな」みたいなかたちですかね。

千葉:何と言うか、失礼な表現かもしれないですけど、泥臭い方法で調べていると(笑)。

岩崎:(笑)。本当にそうですね。

千葉:ありがとうございます。

投資案件の半数が、ネット検索でのダイレクトな発掘

千葉:これも感覚値でけっこうですけど、紹介で来る案件とインターネットで発掘する案件の比率って、岩崎さんの場合はどうですか。

岩崎:「だんだん紹介のほうが増えてきたかな」という印象がありますが、本当に半々ぐらいです。

千葉:個人的には、半分くらいインターネットで調べてダイレクトで発掘するというのは、けっこう「そんなにあるんだ」という印象ですけど。起業家の情報発信って大事なんですね。

岩崎:いや、本当にそうだと思います。

千葉:ありがとうございます。さらに深掘りをしていきますが、当会は一応起業家向けに情報発信する団体なので、起業家目線でソーシングされる側の目線でどう付き合っていくかという観点で、今の話をもうちょっと掘っていきたいと思います。

さっき、「インターネットではTwitterやLinkedInで探してアプローチする」という話でしたが、そもそもの入り口の部分で困ることとか、ネガティブになることってありますか?

岩崎:けっこうありますね。「本当かよ?」って思われるかもしれないですけど、例えばTwitterとかで「起業しました」と書いて、「DMをお待ちしています」「壁打ちしたいです」と言っているにもかかわらず、メッセージを送れない設定になっていたり(笑)。「どうしたらいいんだ?」みたいな感じになったりですね。

勿論DMはしないでほしい、という方々も非常に多いと思いますが、こちらからのアクションを少しでも求めているならば、プロフィールの設定とかもしっかりしたほうがいいですよね。

千葉:ちなみに白木さんは、TwitterのDMは開放しているんですか。

白木:開放していますよ。

千葉:さすがですね。

白木:はい(笑)。わかってないだけかも(笑)。

千葉:さすがですねとか言って(笑)。けっこうデフォルトでDMが閉まっちゃってたりするので、ちゃんと設定しなきゃという。すごく入り口の話でしたが、もうちょっと入っていきます。

紹介ルートが半分ぐらいあるということだったんですけど、紹介されやすくなるために先輩起業家とかにアピールしておく秘訣があれば、お聞きできればと思うんですけれども。

岩崎:そうですね。「こういうことをやろうとしてます」というのを全世界に発信することで受けやすくはなると思います。

もちろんデメリットもあるとは思うのですが、「紹介を受けやすくするためにどうすればいいんだ?」という問いに対しては、とにかくSNSないしは知人・友人に、「こういうことをやろうとしていて、今こういう人と会いたいんですよ」と発信するのが一番いいかなと。すみません、何かシンプルな回答になってしまうんですけど。

千葉:いえいえ、ありがとうございます。

コロナ以降、キャピタリストと起業家の間に生じた2つの変化

千葉:確かに、紹介するに当たってもどんな事業をしたいのかが重要になると思うので、おっしゃるとおりかなと思いました。

岩崎:どういう事業にしたいのかや、あとは「どういう世界観が好きか」ということが、特にシードの起業家さんにとっては重要な発信だと考えています。起業家とお会いさせていただく前は、「こういう世界を作りたい人なんだ」とか「こういうことをやっていきたい人なんだ」というのをきちんと理解するために、noteとかもけっこう見させていただくので。

紹介をする側の人の立場に立ってみると、価値観を理解していたほうが紹介しやすいと思うので、そういうのはやっぱり大事な行いだなと思います。

千葉:ありがとうございます。本当に地道なことが大事だなと思いますが。

ちょっと紹介ルートに関する変化球ですけれども。コロナになってから、東京にばーっと集中していたのが地方に散って、東京にいる者同士でもリアルで会うのが難しくなったと思うんですけど、コロナになってからの紹介事情に何か変化はあったりするのでしょうか?

岩崎:コロナ前は難しかったんだろうなと思うのは、やっぱり地方の方ですよね。直接会ったこともない方から、地方の方をおつなぎいただくこともすごく出てきたというのが1つですね。

もう1つは、VC側も起業家側もフットワークが軽くなったと思います。交通費も交通時間もかからないので、「じゃあ、30分ミーティングをセットしましょうか」と本当に軽く会って話すというかたちで、気軽さは出たと思います。また、紹介のハードルもお互いにすごく下がったなと思います。

千葉:ちなみに、今だとリアルで会わずにオンラインだけで面談して投資を決定するケースもあるんですか。

岩崎:それは絶対にないです。

千葉:やっぱり、最後はちゃんと会いに行くんですね。

岩崎:そうですね。フローとしては、私が投資の意思決定権を持っていないので、そもそも投資をする・しないという話はできないんですけど、少なくともGP(投資意思決定者)が投資をする際には絶対にオフラインで会っています。やっぱりオフラインで会うことはすごく大事にしていますね。

千葉:ありがとうございます。

キャピタリストに残念な印象を与えるDMのパターン

千葉:それとは逆のアプローチで、「起業家から『なんとしてもインキュベイトファンドから出資を受けたい』と、岩崎さんのLinkedInのアカウントを探していきなり連絡をするのはお作法的にありか」という質問が来ていますがいかがですか。

岩崎:もう大歓迎です(笑)。他のVCの方々もやっぱり大歓迎だと思いますよ。

(職位が)上になればなるほど、パートナーに近づけば近づくほど紹介での案件がすごく増えてきますが、我々若手はまだまだ紹介は少ないので。外から入ってきてくださる方々にも、丁寧にご対応させていただきたいという気持ちは強くあります。

千葉:ただ、DMと言ってもいろいろなDMがあると思いますが。やや意地悪な質問ですけど、「この人だったら返信したいな」と思うDMと、「いや、ちょっと面倒くせえな」みたいなものと(笑)、言語化して説明できる要素があれば聞かせてください。

岩崎:基本的にはDMが来ることはうれしいですよ。その上で、失礼なものとか、文面がおかしい方のメッセージはちょっと「あれ?」と思っちゃいますけど。

あとは、事業概要も市場領域が何もなく、「事業をやっていて資金調達をしたいので会いたいです」というのも、会う前の身構えができないので、「ん?」となります。やっぱり僕らが投資をさせていただきたいのはその人と事業なので。

逆に、そのへんをきちんと押さえていただいて、「こういう事業をこういう思いでやろうと思っていて、これぐらい時間が欲しいんですがどうですか?」という感じで言ってきてくださるとすごくうれしいです。

千葉:ありがとうございます。今日は起業家の白木さんも来てくださっているんで、VCに最初に接触した時のご経験やエピソードがあれば、ちょっとお聞きしたいんですけれども。

白木:そうですね。うちはあんまり紹介ルートがなかったので、けっこうDMで問い合わせをしていたんですけど。今言われたとおり、事業内容やホームページのURLを貼り付けて、「面談したいです」と送っていました。

特にTwitterで「DMをお待ちしてます」みたいなコメントを書いているVCの方にはけっこう送っていました。そういう人にはめちゃくちゃ送りやすかったですね(笑)。ほとんどの方が返事もくれましたね。