2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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橋口幸生氏(以下、橋口):意外とどんどん時間が過ぎていく。あと最後にこの話だけはしないとと思ったのが「選挙に出馬するべきかな(笑)」という。これは今日のお話の流れからでも、ぜひしていただきたいですね。
寺嶋由芙氏(以下、寺嶋):最近いろんな人によく勧められます(笑)。
橋口:そうですよ。総理とか目指すべきですよ!
寺嶋:自分がなかなかそういう器かどうかわかんないんですけれども。でも、トミヤマ先生に講義で教わった時もそうだったんですけど、今自分が悩んでることは基本的に、自分が特殊な環境にいるからとか、私だけがこんな目にあってるとかではないんですよね。
誰もがそれぞれの環境で根本的に同じことで悩んでいるケースがすごく多い。だからまず社会を変えなきゃいけないなというのは、当時も思いましたし、このコロナで特にすごく思いました。
橋口:この「エイジズム(年齢に対する偏見)」は、世界中のどこにでもあるものだけど、日本は特に激しいですよね。やはり僕たちのような広告クリエイティブの世界でもあります。世界的に言われてるんですけれども、やはりある程度歳を重ねてくると、「そろそろ若手に道を譲りなよ」と言われるんですよ。これは男でもそうです。
でも、例えば建築の世界とかから見ると、60歳70歳で現役の方はいっぱいいる。別にクリエイターで60歳70歳現役って普通ですよね。
寺嶋:蓄積されていくものもありますもんね。
橋口:だからおかしいんじゃないのということを言われていて。でもある意味、これも寺嶋さんが言ってるのがおもしろいなと思うんですが、「アイドル」ってある意味男が妄想する女性の理想像を押し付けられがちな仕事じゃないですか。
寺嶋:はい。
橋口:その立場から発信されているから余計説得力があるというか、みんな耳を傾けるんじゃないかと思って。
寺嶋:おそらく(多くの)男の人は「理想的な女の子像」が今でも好きで、そういう“推し”を選んでる人もいると思うんですけど。うちのヲタクはわりと早い段階から、そうじゃない部分を見てくれる人が多かったんですよね。
「○歳だから」とかよりも、「ゆっふぃーだから」「ゆっふぃーがこういうこと言うから好き」「こういう曲歌ってるから好き」とか。わりとパーソナルな部分を評価してくれる人に恵まれたので、こういうことに気がつけたのかなと思っていて。
もしもいつも応援してくれるヲタクのみんなが、「いつまでも若くいてほしい」とか、「いつまでもいっぱい露出してほしい」とか言う人たちだったら、もしかしたら私はそれに一生懸命応えようとして、自分の心が追いつかなくなって、早々と辞めてたかもしれないです。私はファンに恵まれたからやれている、発信できてるというところがすごく大きいです。
橋口:ファンのみなさんがすばらしいですね。僕自身に気づきとして、寺嶋さんの『結婚願望が止まらない』のような曲を見て、「こんな歌をアイドルとして歌うんだ」ってちょっとびっくりしたんです。
それで「アイドルは、恋愛とか結婚とかから距離を置かなきゃいけない」という偏見が自分の中にあるんだってことに気づいたんですよね。あれは無意識に思ってるものなので、寺嶋さんとの対談の機会がなかったら、たぶん気づくのが遅れていたんじゃないかな。
寺嶋:恋愛はなかなか解禁にならないけど、結婚してもアイドルを続けますという子は、今ちょっと増えてきています。新潟ご当地アイドルから始まったNegiccoさんは、もう3人とも既婚者です。もちろん悲しんでいる人もいると思うけど、「それでもNegiccoはNegiccoだよね」ってついていく人もいます。(本人たちは)Negiccoというかたちを保って、Negiccoのままちゃんとやってくれてるし。
そういう歳の重ね方を、本人たちもファンも無理なくできるようになっているのかなというのが、最近のアイドル業界です。全員じゃないですけどね。
橋口:そういう選択肢も広がるといいですよね。結婚や恋愛の部分は見せずにやっていく人がいてもいいし、Negiccoさんみたいなスタンスの方がいてもいいし。みんな一人ひとりが自分らしく活動していけるようになればいいのかなとお話聞いてて思いました。
寺嶋:その通りだと思います。自分のやりたいアイドル像を、年齢とかいろんなことで勝手に阻まれずにがんばれることが大事かなと。
橋口:それってアイドルだけじゃなくて、全人類に言えることですもんね。
寺嶋:本当そうなんです。全職種に言えることなので。他の職種でそういう運動が盛り上がれば、おそらくアイドルにいい波がくる。他のところがすごく抑圧されちゃうと、アイドルにも同じようなつらさが来る。アイドルはちょっと地に足つかない仕事と思われがちですけど、本当に社会の一員なんだなと、最近とても感じています。
橋口:こういう話を軽やかにできる人って本当に他にいないと思うので、ぜひ出馬を……。
寺嶋:(笑)。
橋口:スピーチライターとかやりますよ。ポスター作るのとかも協力します
寺嶋:心強い! 書いてもらおう(笑)。
橋口:出馬される時には声掛けてください(笑)。
寺嶋:ありがとうございます。検討します(笑)。
橋口:Q&Aに質問をすごくたくさんいただいていたので、今から答えていきますね。
寺嶋:ぜひぜひ。
橋口:「アイドルのキャッチコピーなんですが、70年代から80年代はレコード会社の方が考えていたイメージで、現在のアイドルさんたちは自分で考えたイメージがあります。キャッチコピーという意味でいうと、どちらが顧客のファンの心をつかむと思われますか」。
寺嶋:うーん、でもコピーとして人々に浸透するのは、大人が考えたほうなのかなぁ。ただそれが本人を縛っちゃう時もあるのかなって、自分ではちょっと思います。私は自分が無理せず名乗れるフレーズを考えたけど、例えばもっとハードルが上がるようなフレーズだったら、ちょっとつらくなる時がきただろうし。いかがですか?
橋口:僕の立場からすると、やはり人に書いてもらったほうがいいんじゃないかなと思っていて。やはり自分の魅力や見せ方を自分で客観的に見るって、そんなにできないと思うんですよね。
なので一般論で言えば、人に書いてもらったほうがいいんじゃないかな。アイドルで通じるジャンルで言うと、プロレスラーのキャッチコピーもだいたい人が書いてますよね。「燃える闘魂アントニオ猪木」とか。そういうものを、だいたい自分ではやってないんじゃないかな。
寺嶋:なかなか自分だとうまくピントを合わせるのが難しいですよね。盛りたい気持ちと、でもちょっと恥ずかしいからちっちゃく書きたい気持ちと、どっちもあると思うので。誰かに客観的に書いてもらったほうがいいですよね。
私はキャッチフレーズこそ相談相手がいなくて自分で作っちゃいましたけど、歌詞とかは他の人が「ゆっふぃー」というアイドルを見て、「ゆっふぃーに似合うもの」とか「ゆっふぃーが言わなそうなこと」とか、「共通概念ゆっふぃー」のようなものを、みんなで補強してくれている感じがするんですよ。
キャッチフレーズは自分(で考えたもの)だったけど、歌詞とか今日いただいた言葉とかでちょっとずつ「ゆっふぃー像が」見えてきているみたいな感じはありますね。
橋口:「アイドルのキャッチコピー」のような領域にも、コピーライターがもっと進出していくといいかもしれないですね。それこそ阿部広太郎とかはそういうことをやっているのかもしれないけれども、なかなか「アイドルのキャッチコピーを書いてます」みたいな人はそんなにいないと思うので。
寺嶋:あとグループのコピーとかはあるかもしれないですけど、個人で名乗るものレベルだと、なかなかそこまでプロの方が入ってくださることはないかもしれないですね。
橋口:そうですね。同じ方からの質問で、「キャッチコピーで、個人的に山口瞳さんや開高健さんなどのサントリーのお酒のキャッチコピーが好きなのですが、いつの時代に読んでも古くならない、新しいと思うキャッチコピーができるには、どんなことが大切なんでしょうか」。
僕はこれは、「元ネタをいっぱい知っている」ということに尽きるんじゃないかと思います。映画評論家の町山智浩さんの名言で、「すべての名作には元ネタがある」という言葉があるんですよね。
山口さんや開高さんも、何もないところからぽっと思いついているわけではなくて、たぶんご自身がこれまで読んだ本や友だちの発言など、いろいろなところから自分のコピーを編み出していると思います。常にそのコピーのネタになるようなものを自分の中に入れ続ける。これに尽きるんじゃないかな。
それでも「古くならない」って、今はなかなか難しいですよね。
寺嶋:入れ替わるスピードはどんどん上がっていますもんね。
橋口:この前も「母の日のコピー」を考える機会があったんですけれども、過去の名作とか見ていると、今は絶対世に出せないなというものがけっこうあるんですよ。「古くならない」というのは難しいかもしれないですね。
寺嶋さんは中長期で活動されているというお話もありましたけれども、何か歌詞とかご自身の発信とかで、ずっと新しいと思ってもらうために意識されたことってありますか?
寺嶋:あまり流行り言葉が入った歌詞を私はもらわないかな。そういうバズった言葉が入ってる歌詞が、今のところないので。逆にそういうのをやってみることによって、「令和の時代をアイドルしたな」と残すのもありかなって思ったりもしてるんです。今のところ、それがないのも1個の特徴なのかなと。
橋口:そういう言葉って、流行った時点でけっこうこすられちゃってたりしますからね。
寺嶋:それをうまく作品に落とし込むことができたら使う日がくるかもしれないですけど、今のところはそういう攻め方をしてないかな。
橋口:なるほど。チャットに「『うちのヲタク』って言い方がすごくいい」と来ていますね。僕もそれ、おもしろいなと思って聞いてました。
寺嶋:「ヲタク」という言葉に、今でもちょっとよくないイメージがあるかもしれないんですけど、もう基本的にはないかなと思うので使っちゃっています。
私がモーニング娘。さんを好きだった小学生の頃の立ち位置って、テレビでアイドルを見て、たまにコンサートに連れてってもらっても、全然距離が縮まることはなかったんです。もちろんモーニング娘。のメンバーは私のことなんかぜんぜん知らないし、1人の「ファン」という感じだったんです。憧れてた立場だったんですけど。
自分が実際アイドルになってみたら、ファンの人たちと距離がすごく近くて。顔も名前も覚えちゃうし。毎週末ぐらいの勢いで現場で会えるし。そういうことをやってみたら、私があの距離感でアイドルを見た時に、「ファン」って思っていたものよりもっと近い言葉が必要だって思ったんですよ。それでこの人たちのことはもう「ヲタク」としか形容ができないと感じて(笑)。私は愛と尊敬を込めて「ヲタク」って呼んでます。
橋口:ヲタクを表す“ゆふぃすと”という言葉も作られているんですよね。あの言葉はご自身で考えたんですか?
寺嶋:いや、ヲタクが付けました。
橋口:(笑)。
寺嶋:ヲタクがメンバーごとにチーム名を決めてるらしいんですよ。「○○ちゃん推しの○○チーム」みたいな。みんなで話し合って決めたのかな? わかんないですけど、いつのまにか決まってましたね。
橋口:おもしろいですね。ありがとうございます。
橋口:もう時間が残りわずかになってしまったので、最後に次回予告をします。次回は田中泰延さんをお迎えします。『会って、話すこと。』の著者で、インフルエンサーとしても活躍されている方ですね。やはり早稲田大学ご出身だったと思います。
泰延さん、今参加していただいてますよね。さっきチャット欄で名前をお見かけしました。泰延さん今、いらっしゃいますか?
寺嶋:へぇ~、ありがとうございます。
田中泰延氏(以下、田中):田中です。どうも。
橋口:泰延さん、今日はありがとうございます。
田中:ゆっふぃーさん、ありがとうございます。
寺嶋:こちらこそです。ありがとうございます。
田中:僕はゆっふぃーさんの脚部のファンで。
(一同笑)
御御足がきれいな方ということで、森高千里さんの名前も出てきて、あぁ、そうかなと思ってました。
寺嶋:ありがとうございます(笑)。ぜひアーティストブック『まじめ』をご覧ください。
田中:ぜひ。
橋口:泰延さん、来年のライブは一緒に行きましょう。
田中:行きましょう、伺います。
橋口:すみません、急にお声掛けしてしまって。
田中:ありがとうございます。僕は年明けですね。
橋口:泰延さんには「話し言葉」についてお聞きしたいなと思っています。僕は基本「書き言葉」の人間で、今日の寺嶋さんに聞いた話でも「書き言葉」の話が中心だと思うんですけれども。
というのも、僕は話すのがめちゃくちゃ苦手で。今日も寺嶋さんと対談しているから楽しくお話しできているんですけれども、例えばこの後打ち上げでちょっとお茶しましょうとになると、たぶん伏し目がちでずっと下を見ているんです(苦笑)。
田中:難しいですよね。僕も、初対面の人と何を話しますかとか、自己紹介どうしますかって聞かれるんですけど、それはなかなか難しい問題があるなと思います。
橋口:この前、自分の子どもにも「パパは物知りだけど話が弾まないよね」って言われてしまったので(苦笑)。これは次回、泰延さんに助けてもらうしかないと思って、ゲストにお招きしました。
田中:話すのが苦手な人、何を話していいかわからない人、それから握手会とかハイタッチ会とかに行った時にとんちんかんなことを話してしまう人にも効くと思いますので、よろしくお願いします。
橋口:はい。ぜひこの本も買っていただいて。
田中:『会って、話すこと。』という本です。
橋口:僕もすごくとんちんかんな受け答えをしがちで、さっきも寺嶋さんに加藤千恵さんという作家さんがおすすめという話をしていただいたじゃないですか。あの時も「橋口さんのおすすめは何ですかって聞かれたらどうしよう」ってドキドキしていて。
寺嶋:ああ、そうなんですか。ごめんなさい。自分の話に持っていって。
橋口:聞かれていたら、おそらくとんちんかんなことを言って、場がシーンとなっていたんです。でも寺嶋さんの「安部公房が好き」とか、そういうAとBをつなぐ時に、「距離があること」が興味の対象になるんですよね。
寺嶋:そうなんですよ。アイドルとキャッチコピーも、距離があるから今こうやって呼んでいただいているのかもしれないですし。
田中:しかし寺嶋さんが早稲田の後輩で、僕は93年卒なので、20年後の同じ戸山のスロープの後輩ということですけれども......。20年遅く入りたかったです。
(一同笑)
寺嶋:93年は、まだ2歳でした(笑)。
橋口:泰延さん、ありがとうございました。急にお呼びして、失礼しました。寺嶋さんも今日は本当にありがとうございました。
寺嶋:ありがとうございました。私も橋口さんの本(『言葉ダイエット』と『100案思考』)を読ませていただきました。
橋口:そうなんですか、ありがとうございます。
寺嶋:私も文章を長々書きがちなので、本当に大事だなと思いました。あと、こちらを参考にしてiPhoneのメモを活用してます。1人インタビューとかは、実は自分もやってるなと思って。
橋口:やりますよね。
寺嶋:私もお風呂でやってる! と思って、ちょっとうれしかったです。
橋口:よかった。自分だけ変態みたいだって思ったけれども、よかったですよね。
寺嶋:そう。内緒にしてたんですけど、これを読んで安心しました。
橋口:そろそろ時間ですので、今日はこれまでとしますね。寺嶋さん、本当にありがとうございました。
寺嶋:こちらこそありがとうございました。うれしかったです。
橋口:お集まりいただいたみなさん、今日はありがとうございました。
寺嶋:ありがとうございました。ぜひ感想とかTwitterで聞かせてください。
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