実績・スキルの羅列だけでは、顧客は振り向いてくれない

大橋一慶氏(以下、大橋):みなさん、今までの話を聞いてどうでしょう。自分の営業を思い出してください。実績やスキルばかり伝えていませんか? 「私はこれができます」「あれができます」って話ばかりしてませんかね。それらはベネフィットじゃなくて、特徴や機能、性能と同じでメリットです。

でも、お客さんが欲しいのはベネフィットなんですよ。お客さんが本当に求めているのは、あなたと取引することで得られる嬉しい未来、結果、幸福なんですね。実績・スキルばかり伝えていると、なかなかお客さんやクライアントさんは振り向いてくれません。必ずベネフィットを伝えるようにしていきましょう。

ここで基本の話を終えましたので、Kさんのキャッチコピーを見ながらもっと理解を深めていければと思います。一番最初に書いてあるところが、一番最初にお客さんが見るところです。「お問い合わせの電話を増やすご近所集客チラシで、売上1.5倍を目指しませんか?」というところが、キャッチコピーになるわけです。

これをクライアントの気持ちになって読んでみてください。このクライアントさんは、不用品出張買取サービスのチラシで集客に成功したい人なんですよ。それで募集をかけました。

すると1通目のメールが来ます。「短納期で目を引くチラシを作ります(修正無制限)」という件名でした。立て続けにもう1通、「プロが短期間、低価格で伝わるチラシを制作します」というメールが来ました。そして3通目が「お問い合わせの電話を増やすご近所集客チラシで、売上1.5倍を目指しませんか?」。

クライアントさんの気持ちになったら、どれから読みますか? という話なんですよね。一番自分にとって価値が高い、自分が求めている結果やベネフィットに近いものから見ていくと思うんですよ。だからこそ、クライアントが無視できないベネフィットを語っているKさんのメッセージは読まれたんじゃないかと思っています。

各社のベネフィットを見つけ出す方法

大橋:ここでベネフィットの重要性がわかったと思いますので、ベネフィットの作り方についてもお話ししておきます。ベネフィットとは、「じゃあ考えてください」って言われても、いきなりぽんぽん出るもんじゃないんですよ。まずやらないといけないのが、ターゲットの欲求や悩みをしっかりと理解することです。

「彼らが心から求めている嬉しい未来って何なんだろう?」というのを具体的にイメージするところから、初めてベネフィットを見つけていくことができます。ベネフィットって本当に深いんですよね。

提供するサービスが同じだったとしても、ターゲットによって求めるベネフィットはぜんぜん違います。例えば「集客に成功しますよ」というベネフィットがあったとするじゃないですか。これは相手が学習塾経営者だったら、「集客に成功」じゃダメなんですね。「新中1生から選ばれる生徒募集を成功させます」と言って、初めて向こうはその価値をわかってくれます。

ちなみに学習塾って、生徒募集をかけるといつも受験シーズンが近い中3ばっかり来るんですよね。彼らはいつも新中1生が欲しくて仕方ないんだけど、なかなか選ばれずに困っているわけです。そういった悩みや欲求を知ることで、初めてベネフィットを導き出せるようになるわけです。

「集客に成功できますよ」というベネフィットがあったとして、相手が整骨院経営者ならどうなりますか? 「自費の予約を3ヶ月先まで埋めますよ」というのが、向こうにとって価値の高いベネフィットになります。

ちなみに整骨院は保険診療だけじゃ経営が厳しいので、自費診療を売ってるところが多いんですが、なかなか成約できないので困っているんですよね。そういったことを「解決できるんですよ」と言うことで、初めて向こうはベネフィットの価値をわかってくれます。

経営コンサルタントもそうですね。「継続契約してくれるクライアントを集めますよ」と言われると、クライアントさんは「なるほど。それはいいね」と言ってくれます。単純に「集客できますよ」って言っても、ぶっちゃけその価値がわかんないんですよ。

「キャッチコピーで失敗する人」の特徴

大橋:このように、ターゲットによって価値を感じるベネフィットは必ず変わってきます。クライアントさんに営業する時、または広告やメディアで情報発信する時は、まずターゲットを具体的に設定して、彼らが何を考えて、何に悩んでいて、どんな欲求を持っているか、感情の理解に努めるようにしてください。

ここができる・できないで、響くベネフィットが作れる・作れないが変わってしまいます。反応を生むベネフィットは、あなたができることじゃないんですよ。相手が心から求めていることがベネフィットです。

ここでキャッチコピーの最重要ポイントをお伝えしておきますね。今までいろんな話をしたんですが、キャッチコピーの話なのに表現の話をほとんどしてませんよね。

これはなんでかと言うと、キャッチコピーで失敗する人はだいたい文章から考えちゃうんですよ。いきなりペンを持って書き始めるんですが、それだと絶対に売れるコピーは出ません。書けたとしても、見た目はいいけど売れないコピーができちゃうんですよ。

なのでそうならないためには、まずは今日お話ししたように、どんなターゲットにどんなベネフィットを伝えればいいのかをしっかりと考えましょうね。誰に何を言うのかをしっかりと考えてください。

この「誰に何を言うのか?」というのを、専門用語で「訴求」と言います。何かのメッセージを誰かに届ける時にはまず書くんじゃなくて、必ず訴求を考えるようにしてください。

「売上100倍」など、大げさなコピーは逆効果に

大橋:さて、ここまで訴求作りまでの話をしてきたんですが、実際に訴求を考えた後はどうやって表現していけばいいかという話をしていきます。表現って本当にいろんな技術があるんですよ。ぶっちゃけ、今日の時間だけでは絶対に全部伝えられませんので、今日はどんな状況でもだいたい使える3つの表現法についてお話ししておきます。

まず1つ目は、ベネフィットを具体的にすることです。(スライドを指しながら)これ、どっちが魅力を感じるかを見比べてください。Aは「売れるキャッチコピーを習得」、Bは「たった3行で、売上2倍のキャッチコピーを習得」。これね、実際に広告ではBのほうが反応があるんですよ。なんででしょうか? それは具体的だからなんですよね。

ベネフィットとは、やっぱり具体的じゃないとダメなんです。なんでかと言うと、ぱっと見て価値が伝わるからです。お客さんは広告を読むのに頭を使いたくないし、想像もしたくないんですよ。なのでパッと見てその価値がわからければダメなんです。具体性があると、パッと見て価値を伝えることができますので、ベネフィットはなるべく具体的に表現したほうがいいです。

また、具体性とはメッセージの信憑性も意味しますから、情報価値が高まるというメリットもあります。ただし、オーバーなベネフィットは逆効果です。例えば、先ほど「たった3行で売上2倍」ってあったじゃないですか。これが「たった3行で売上100倍」だと、もう誰も信じないですよね。「そんなことあるかいな」って話じゃないですか。

なので、あくまでベネフィットは現実的にしないといけません。お客さんの常識やお客さんの許容範囲を超えたものを出してはいけないんです。あくまでお客さんの許容範囲の中で、現実的、魅力的、具体的なベネフィットを語るようにしてください。

「数字」を有効活用して、顧客の目を引くコツ

大橋:Kさんの例で見ていくと、キャッチコピーはこんな感じでしたよね。さて、どこが具体的なベネフィットに入るかというと、こういうことです。「お問い合わせの電話を増やす」「売上1.5倍」、この赤文字の部分が具体的なベネフィットに該当します。なので、Kさんは見事に表現されたんです。

表現法の2つ目で、「数字を上手に使う」という話をします。数字って、文章やキャッチコピーにおいて非常に強いファクターですね。なんでかと言うと、視認性効果が高いんですよ。わかりやすく言うと、見た目が目立つということです。

A4の紙のどれか1つに数字を入れて、遠くに張り付けるじゃないですか。しばらく目をつぶってぱっと目を開けると、やっぱり数字のあるほうに目が行っちゃうんですよね。人間ってそういう習性があるみたいなので、メリットを使わないと損ですよね。なので、数字は徹底的に使う。

あと、数字は伝えたいことを一瞬でイメージしてもらえる効果もあります。キャッチコピーは、短い文章で伝えたいことをはっきりとわかってもらえないといけないんですが、数字にはその効果があるんですよ。

例えば、「とても大きな国」「予約が取れない」「リピーター続出」という表現があったとします。(これを)数字で表現するだけで、だいぶパッと価値がイメージできます。

「とっても大きな国ですよ」と言われるより、「日本の10倍大きいんですよ」って言われたほうが、どれだけデカいかがわかりますよね。「リピーター続出ですよ」って言われるより、「10人中9人がリピートしてますよ」って言われたほうが、そりゃ人気だねと思いますよね。

こんな感じで数字をうまいこと使えば、自分が伝えたい価値をはっきりとわかりやすく、すぐに伝えることができるので非常に効果的です。ポイントなんですが、なるべく具体的な数字を出してください。

たった2パーセントの差で、顧客の信憑性が変わる

高木:お話しの途中にすみません、大橋さんに質問が入りました。「『ベネフィットが達成されないのでは』と不安になるような時は、自分の実力がないと解釈するしかないのでしょうか?」という、いい質問をいただいているんですけども。

私が解釈するに、ご自身がクライアントさんに何かを提供する時にベネフィットを出すと、訴求になるので集客になりやすいけど、ベネフィットが達成できなかったら不安だからそれを強く言えない……という感じですかね。

大橋:なるほど。自信がないからベネフィットが言えない、ということですね。最初の頃は僕もそうでしたが、言わないと仕事が取れないので言いました。

言ってたくさん失敗して、その結果できるようになりました。それだけです。自信がなくても、言うか言わないかは自分次第で、責任を取るのも自分次第です。ただ、言い続けたら必ず実力が伴いますので、自信がなくても言ったほうがいいんじゃないかなと思います。

高木:ありがとうございます。

大橋:次は「信憑性がアップする」ということですね。数字は具体的なほうが信憑性がアップします。例えば、この2つを見比べるとわかりやすいですね。特に車を買う時なんかに「20パーセントの値引きが限界」って言われたら、「もともと20パーセントぐらい値引けたんでしょ?」と思いますよね。

片方はこう言いました。「お客さん、今日はもう18パーセントが限界なんです」。「ああ、よくがんばったな」って思いませんか? なのでこんなふうに、どんな場合も数字は具体的なほうが信憑性は上がるんです。

「続きを読みたい」と思わせるキャッチコピーのコツ

大橋:これはKさんの例で見ていくとわかりやすいですね。Kさんは「売上1.5倍」という、具体的で現実的な数字表現を使っています。例えばこれが売上5倍や10倍だと、「絶対に無理やん」ってお客さんも思いますよ。「なんかうさんくさいな。こいつ嘘をつくんじゃないか?」みたいな感じで、信用できません。

ですから「1.5倍」は絶妙ですね。「これぐらいならいけるんじゃないか?」という数字じゃないですか。だから非常にお客さんも信用して、興味を持って見てくれたんじゃないかなと思っています。

次に表現法の3つ目は「続きを読ませる」。キャッチコピーには2つの重要な役割があります。1つ目は一瞬で注意をつかむこと。2つ目は続きを読みたくさせること。続きを読みたくさせる効果をいかにして高めるか、表現法をお伝えしたいんですが、答えは「問いかけること」です。文章で言うと、クエスチョンマークで締めくくることですね。

こうすることで、お客さんは「なんで? どうやって? なぜ?」という疑問が湧いて、その先がもっと知りたくなるんですね。なので、これをKさんの例で見てみましょう。

「売上1.5倍を目指しませんか?」って問いかけてますよね。そうすることで、お客さんは心理的に「それどうやってやるの?」と思うわけですよ。もうその時点で、続きを読みたくなってるんですね。なので、問いかけ表現は非常に効果的なので、みなさんもどんどん使ってもらえればと思います。

キャッチコピーの話を一回終えて、次にメッセージ本文の話に入っていきたいと思います。Kさんの例で言うと、キャッチコピー以外の部分です。ここはどう考えればいいでしょうか。ここは広告用語で「ボディコピー」と言うんですよ。いわゆるキャッチコピー以外の部分ですね。

ここに関しては本当にいろんな技術があるし、ぶっちゃけ言うと一朝一夕では身に付きません。経験ですね。書けば書くほど、どんどん上達するものだと思ってください。

キャッチコピーでついやりがちな、企業の「自慢話」はNG

大橋:なので、今日はボディコピーの話をするかどうか非常に迷ったんですが、みなさんにも1つだけヒントをお伝えしたいと思います。

ボディコピーのコツをあえて1つだけ挙げるとすれば、「ベネフィットファースト」ですね。「ベネフィットを優先させましょう」ということなんですよ。ボディコピーは長文になることが多いんですが、ベネフィットが叶う理由、または方法として、提案内容や商品、サービス、メリット、機能性能を語っていく考え方にすれば、自ずと文章は変わってくると思います。

例えば、Kさんの例を見てみましょうね。「シニア世代の方は、不用品出張買取サービスなどの訪問系は『便利だな』と思う反面、『どんな人が来るんだろう』『不必要な営業をされたらどうしよう』など、不安に思っていることも同時に解消してあげることで問い合わせが増やせます。問い合わせが増えれば、薄利多売しなくても良くなるのではと考えます」と、あるんですけれども。

一部を抜粋したので読みにくいかもしれませんが、Kさんは何をしているかと言うと、「問い合わせが増えて、薄利多売しなくて良くなる」というベネフィットが叶う理由を一生懸命伝えているんですよ。ここが大きな違いですね。

もう1つの文章でも、「シニア世代の方には、店主の笑顔の写真はとても効果的です。どんな人が経営してるのかがチラシの向こう側が見えるので、安心した状態で問い合わせしてきます」とあります。

これも「安心した状態で問い合わせする」という、ベネフィットが叶う理由を提案として伝えているわけです。なのでKさんの本文を読むと、彼は商品やサービスを売っているわけではないと。彼はベネフィットが叶う方法として、ご自身のサービスを提案しているんですよ。

これは普通の人と売れっ子の大きな差だと思います。普通の人は、「私は○○ができます」「あれもこれもあれもできます」みたいなことを言います。これはクライアントから見ると、実績やスキル紹介に終始したただの自慢話なんですよ。みなさんもそうだと思うんですが、自慢話ほど面倒くさいものはないし、聞きたくないですよね。それと同じなんですよ。

売れっ子コピーライターが重要視しているポイント

大橋:では売れっ子は何をしているかと言うと、「あなたは○○になります」というかたちで、ベネフィットを叶えるための方法として、自分の商品やサービスの提案、特徴、機能、メリット、実績を伝えています。

ボディコピーもキャッチコピーと同じで、ベネフィットを主役に考えてください。自慢話は興味を持たれません。読み手が求めるベネフィットを語るようにしてください。そしてそれが叶う方法、理由として自分の提案とかサービスや商品、機能性能、特徴、実績とかを語ってください。

さらに、こういった説明が終わった後に証拠です。「実際にこれぐらいのお客さんの声がありますよ」「こんな数字を出したことがありますよ」「こんなものを作ったことがありますよ」ということを加えたら、もうこれは鬼に金棒なんです。

なので、実績や証拠を語るのはすごく重要なんですが、「先にベネフィットを語りましょう」という、ベネフィットファーストが考え方の根底にありまして、とても大切なことだと思っております。

話をまとめますね。オンライン営業、集客のメッセージは、いかなる場合もベネフィットファーストで考えてください。キャッチコピーも、最初に読み手が価値を感じてくれるベネフィットを語らなければ読んでくれません。

ボディコピーも、ちゃんとベネフィットを主役にした文章を書いていかなければ、お客さんはたぶん「自慢話か」と、つまらない話に思っちゃいますので。メッセージを作る時は、いかなる場合もベネフィットを主役に考えて、ベネフィットファーストという考え方でメッセージを作ってもらえればと思います。

過労で死にかけた過去の体験で、働き方を見つめ直した

大橋:さて、ここまでいろんな話をしてきましたが、セールスコピー全体のわずか1パーセントにも満たないような話を今日はしています。

なので、「もっとセールスコピーを学んでみたいな」「おもしろいな」と思ったら、ぜひ私の本を読んでください。2冊出しています。『ポチらせる文章術』は、2019年10月、ちょうど2年前ぐらいに出したんですが、現在11刷でたくさんの方にお読みいただいております。『セールスコピー大全』は今年の1月に出しまして、こちらが現在10刷です。どっちかと言うとこっちのほうが売れてるんですが、非常に多くの方に読まれています。

『ポチらせる文章術』は、これから初めてセールスコピーを学ぶ人に向けた本です。全部ストーリー形式なので1日で読めますが、セールスコピーで大切なことが十分に理解できるような内容になっています。

『セールスコピー大全』は、これからガチでセールスコピーを学んで実践したい人のための専門書です。分厚いんですがこの1冊があれば、セールスコピーの内容をしっかりと理解して、日常で実践できるようになります。

また、「ポチらせる文章術実践ラボ」というオンラインサロンをしています。これに参加していただいた方は、キャッチコピー添削は回数無制限です。私が何度でも添削させていただきます。毎月ライブセミナーをしたり、朝会したり、グループミーティングをしてます。

あとは今、開発中の「セールスコピー3.5」という新しいセールスコピーのノウハウがあるんですが、こういったノウハウも公開しながらいろんなことをやっています。月額たったの1,500円で、しかも20日間の無料体験をしておりますので、もしセールスコピーに興味があるなと思ったら、参加してもらえればと思います。

最後に、私がなんでこんなに仕事をしているかという話をしておきますね。もともと私は拝金主義で、お金が大好きだったんですよ。でも、3年前ぐらいに働きすぎで病気でぶっ倒れて、死にかけたんですね。その時に目覚めたんですよね。「俺は何してるんだろう?」「俺は何のためにがんばってるんだろう?」と。

行き着いたのはこれなんですよ。正しいセールスコピーを日本に広めて、自分らしく生きる人を増やしていきたい。これで日本をもっとおもしろく、楽しく豊かにしたいという気持ちが芽生えたんですね。

こんな思いを持って、今はこういったセミナーにも出ているわけですから、ちょっとでも共感したら、ぜひうちのオンラインサロンに入ってくれたら嬉しいなと思います。ご清聴どうもありがとうございました。