「好きを仕事にする」ことが、正しい理由

花海志帆氏(以下、花海):さっそくですが、この書籍に関してお話をお伺いしたいなと思います。MBさんは「好き」を仕事にしたことが結果につながったと書かれていますが、これはどういうことなのでしょうか?

MB氏(以下、MB):すごく簡単に説明すると、「好き」が仕事をする上で一番能率が高いだろうという話なんですね。子どもの頃とか誰でも経験したことがあると思うんですけど、ゲームをしていてお母さんにやめなさいと怒られても、なんとか隠れて長時間やっていましたよね。

つまり、好きなことってその人を動かす原動力になっていると思うんです。それって才能だと思うんですよね。それがどんなに小さいことでも。例えば漫画が好きとかゲームが好きとか娯楽にしかならないようなことでも、追いかけるだけの欲求がある、原動力がある、それはいわば「才能」です。

その才能を活かした方が当然能率が上がります。嫌いなことをするのと好きなことをするのとどっちの方が仕事の能率が上がるかを考えたら、当たり前ですが好きなことを仕事にした方が確実に能率よくできるはずなんです。

あともう1つは、単純に僕らって何のために生きているの?という話なんです。誰にでも共通することですが、もし輪廻転生がないのであれば、人は80〜90年で人生を終えてしまうわけですね。僕らが求めているのは、その中でどれだけ多くの幸せな時間を過ごすかということだと思うんです。

幸せな時間をつくるために学習しているわけです。さまざまなことが、幸せにベクトルが向かっていくことが正しい人生だと僕は思います。そういう意味で、好きなことを仕事にするというのは正しいのではないかと思っています。

花海:確かにそうですね。何のために働くのかとか、何のために生きているのかということを考えるとそうなりますね。

“そこまで好きじゃないの壁”の乗り越え方

花海:こういう話をすると、必ず「じゃあどうやって好きなことを仕事にするのか」という質問が来ると思いますが、それはいかがでしょうか。

MB:好きなことを仕事にできたら幸せですが、「自分はそこまで好きじゃない」というところで壁にぶつかる人ってけっこう多いと思うんですね。僕にも言えることですが、僕より洋服が好きな人って日本中に山ほどいるし、僕より洋服を追及している人、僕よりおしゃれな人、僕よりセンスのある人ってたくさんいるんですよ。

例えば、ファッションブランド「コムデギャルソン」創始者の川久保玲さん。川久保玲さんってすごく洋服が好きで、センスの塊なんですよ。そういう人って普通に生きているだけで、それが仕事になるんです。

みんなよりも好きだから、みんなは「あの人のセンスが見たい」「あの人の着こなしが見たい」「あの人が作った洋服が欲しい」と勝手に仕事が寄ってくるんです。それが「究極的に好き」という状態です。ただ、こんな天才はほとんどいないです。僕もこんな天才になれなかったんです。

じゃあ、そこまで好きじゃない、服は好きだけど、川久保玲先生ほどにはなれない。そういう人たちってどうしたらいいのかというと、好きの度合いが小さいからこそ、どうすれば社会が喜ぶような形に転換できるかということを考えないといけないと思うんです。

例えば僕も、すごく洋服が好きだけど、好きだからってひたすら服を買って、ひたすら着ても、たいしてセンスが良くないから仕事が入ってこないんです。じゃあどんなふうに仕事にしているかと言うと、おしゃれにあまり興味がない人に服を教えて好きになってもらうようなことはできるんじゃないかと思ったんです。

そうやって自分が世の中に求められている方向に、自分の「好き」を組み替えて伝えるということをやったんです。世の中にどういう需要があって、自分は何が好きで、需要と自分の欲求の交差点を見てあげるというのが、「好き」が突出していない人の処世術だと思います。

花海:なるほど。

嫌いなことを終わらせるために必要なこと

花海:本の中で「目標は掲げるものではない」と書かれていたと思うのですが、こちらはいかがでしょうか。

MB:はい、ありがとうございます。目標は掲げるものではありません。この本、前半部分では「目標を掲げろ」と言っているのですが、後半部分では「目標を立てなくていい」と言っているんです。なんでそう書いたかというと、嫌なことをクリアしないと好きなことに辿り着けないということなんです。

冷静になって考えてみると、好きなことに目標っていらないはずなんですよ。お母さんに怒られても、子どもは隠れてでもゲームをしますよね。その子どもって毎日5時間ゲームをするって目標を立ててゲームをしているわけではありませんよね。

花海:やっていないですね(笑)。

MB:好きだから自然にできると思うんです。僕も好きだから、放っておいても洋服を見るんです。「仕事だから」とがんばって見ているわけではなくて、今週は何が出ているのかなと自然と見るんです。そういう意味で目標っていらないですよね。

じゃあ目標はいつ立てるべきかというと、好きなことをやるために、嫌いなことをクリアするタームの時にしっかり目標を立てないといけないんです。目標を立てて自分を律することができないと、人は楽な方に流れていきます。

それを社会人としてしっかりするためには、目標を立てないといけません。その嫌いなことを歯を食いしばってさっさと終わらせて、次のステップで好きなことができるようにするのが、正しい目標の立て方だと思います。

花海:なるほど、深い……。

成果を出したい時に、100点満点を目指してはいけない理由

花海:本の中にあった200点満点理論についてもお話ししていただけますか。

MB:僕、センター試験で英語が130点で数学が70点だったんです。それが、なんで英語は130点取れるのに、数学は70点しか取れないんだろうってすごく不思議だったんです。今のセンター試験がどうなっているか分からないのですが、当時英語は200点満点で数学が100点満点だったので当たり前なんですけど(笑)。

僕は社会人になっても、それがどうも咀嚼できていなかったんです。それで販売員だった頃に、売り上げの昨年対比を考えた時に、昨年を100%ではなく、200%として考えたら、130%くらい達成できるのではないかと思ったんです(笑)。

それで、僕が店長だった時に、部下をだまして(笑)、内緒で昨年対比をいじったんですよ。もちろんだますだけでは動いてもらえないので、200パーセントのつもりで取り組まないと130パーセントいかないよという話をしたんです。そうしたら、きれいに130パーセントいったんです。「これだ!」と思いました。人は100点満点で指標を考えると、100点が取れる準備しかしないんです。

試験でもそうですが、どれだけ勉強しても当日眠くなっちゃったりして100点は取れない。だから100点以上の130点、140点、200点の準備をしておくと100点満点を実は超えられるという仕組みに気が付いたんです。それを僕は200点満点理論と言って、自分が本来思っているよりも高いところを見て取り組むようにしたら上手くいったという話です。

実は僕、他のファッションインフルエンサーさんと比較して、数字や結果を残せていると思いますが、それは「インフルエンサーとして活躍する」というのが僕の目標ではないからなんです。僕は「新しいファッションの文化を作る」というのが目標なんです。

それは他のインフルエンサーさんが持っているビジョンよりも一段高いところを見ていると思うんですね。自画自賛になってしまいますが、200点満点理論で言うと、130点くらい取れている。だから他の人よりもおもしろい活動ができたり、結果が残せたりすると思うんです。なので自分が行動する時に、200点満点で考えてそれを真剣に追いかけるということをするとけっこうみんな動けるのではないかなと思います。

花海:なるほど。けっこう私たちは近場しか見ていなかったのかもしれないですね。

理想にたどり着くための目標の立て方

花海:本の中で「物事を達成しやすくする秘訣は未来の記憶だ」と書かれていましたが、未来の記憶に関して解説していただければと思います。

MB:これは僕がつくった言葉ではなく、ちゃんと脳科学の用語としてあるんですね。「現状の積み重ねで未来がある」という考えは、事実は事実ですが、あまり現状を気にしすぎると身動きが取れなくなってしまうと思うんです。

目標設定をする時は、大概みんな自分ができそうな目標を立てるんです。そうするといつまで経っても先に進めなくなってしまうんです。先に進むスピードが極めて遅くなってしまうんですね。そうじゃなくて、自分の今の状況を全部取っ払う。

「そもそも自分の好きなことって何だろう」「自分が目指しているものって何だろう」「理想の人生って何だろう」という自分の理想のイメージ以上のことを考えて、段階的に下ろしていくことが正しいのではないかと思います。これが未来の記憶です。

販売員がファッションの文化をつくるなんてどう考えても無理じゃないですか。それは下から考えているからなんです。そうではなくて、上から下ろしていかないといつまでも理想にたどり着けないのではないかなと思います。

花海:なるほど、ありがとうございます。今日の授業でご紹介した書籍はこちら!気になった方は、ぜひチェックしてください!