テキスト上で書き込みが見えなければ「いないのと一緒」

熱田優香氏(以下、熱田):こちらも社内アンケートの結果で、サイボウズ社員でオープンな場所への書き込みに抵抗がある人が半数以上です。たぶん、Cybozu Daysのそこら中の会場で「サイボウズは情報共有がオープン」と、めっちゃ言ってると思うんですよ。

山田理氏(以下、山田):これ、大丈夫!? 商売の邪魔してない!?

熱田:たぶん、ちょっと邪魔してるかもしれない。

山田:パートナーさん怒ってけえへんねんかな?(笑)。

熱田:確かに(笑)。まぁ、このセッションの方だけなので。

山田:そっか、このセッションの方だけやからね。まぁいっか。

熱田:ということで、オープンな場所での書き込み(に抵抗の)ある方がけっこういるんですが、マネジメント側からはどんな感じで捉えているのか、理さんにおうかがいしてもいいですか。

山田:今までだったら雑談で「会社どう?」とか、うつむき加減だったら「えりかちゃん、どう?」とかやれるけど、会わなかったら、テキストでコミュニケーションを書き込んでくれなかったら、その情報ってないじゃないですか。言い方が極端ですが、いないのと一緒なんですよね。

だって、わからないじゃないですか。だから、フォローするにもできないわけですよ。いきなり僕が、ふだんぜんぜん見てない人のところに行って、「恵美さん、最近どう?」ってダイレクトメッセージを送ったら、それもまた怖いよね(笑)。

林田恵美氏(以下、林田):そうですね。逆に怖いですよ。

山田:だから発言はしてほしい。発言してもらったほうがぜんぜんいいんやけど、発言してもらえへんかったら、なかなか難しいところがあるね。

熱田:そうですね。サイボウズでは、グループウェア上でどれだけ発信するか、テキストコミュニケーションが存在感の鍵になってるんですが、そもそもそれができない人だとつらさの行き場をなくすので、これもめちゃめちゃ大きな課題だなと思いました。ありがとうございます。

そしたら最後も「つらみ」を教えていただきたいんですが、恵美さんにおうかがいしてもいいですか。

林田:社内の人間関係を築くのが難しい問題です。

熱田:おぉ~。これはありますよね。

林田:ありますね。「初めまして」がテキストだと、なかなかつらいですね。

熱田:つらいですよね。社内アンケートでも「テレワークのつらさは具体的に何ですか?」と聞いたんですけれども。第4位が「気分が落ち込む・やる気が出ない」、第3位が「仕事とプライベートの切り替えが難しい」、第2位が「テキストコミュニケーションが難しい」、第1位が「社内の人脈構築がしづらい」になっております。

既存社員と新入社員の間に生まれる溝

山田:人間関係の構築って、僕は自分で採用した人たちがすごくたくさんいる中でも「コミュニケーションをしづらいな」って思うところがあるのに、えりかさんなんてどう?

鈴木えりか氏(以下、鈴木):元からサイボウズにいる方たちと、新しくリモートで入った人たちの間に一番差があるなぁと思っていて。出社しても、元から(いる社員)の人たちがすごく盛り上がってしゃべっていて、肩身が狭い思いをすることはありますね。

熱田:そうですよね、フルリモートで入ってるもんね。

山田:「このメンバーでやります」ってセッションに呼ばれて、打ち合わせで初めてえりかさんとお話しして。聞いてるうちにだんだんと、これ(イベントのセッション)がうまくいくかどうかよりも「本当にえりかさん大丈夫?」って、もうそっちばっかりが気になって(笑)。入社1年目で「これからも(人間関係を)築ける気がしません」って、よっぽどつらいんやね。

熱田:よっぽどつらいんでしょうね。

山田:「憧れの先輩ができない」と言われてますよ。

熱田:そう、できないと言われてます。私はえりかさんと同じチームなんですが、「憧れの先輩ができない」と言われているんですけど、たぶんそういうことじゃないんだよね。

鈴木:そうです。得られる情報がリアルとリモートだとすごく差があるので、仕事ぶりや先輩の背中がなかなかリモートだと見えづらいです。

山田:リモートやと背中が見えへんよね。

鈴木:背中が見えないです。

山田:Zoomやったら(見えるのが)顔やもんね。Zoomで背中を見せられても困るよね。

中途入社した社員の人脈構築のポイント

熱田:コロナの前だったら、落ち込んでる後輩がいたらお菓子を差し入れしてくれる先輩がいるから、そうすると「はっ」てなるというか。そういうことができるじゃないですか。

山田:確かにね。

熱田:結果的にそれが尊敬につながったりするんですが、リモートだとそもそもえりかさんが落ち込んでるかもわからないし、「差し入れしたいな」って思っても、LINEのギフトやポイントを送る感じになっちゃうじゃないですか。なかなか難しいなとは思っていまして。

コロナの前だったら、営業の案件へ行った帰りに先輩とランチをすることもありますし。あと、サイボウズは部活動があって、映画部やフットサル部や野球部とかいろいろあるので、趣味でつながって他部署の先輩の知り合いが増えたりとか。こういうCybozu Daysみたいな社内イベントで、昨日はえりかさんと一緒に写真を撮ったりして、ようやく仲良くなれたというか。

鈴木:そうですね(笑)。

熱田:リアルって大事だなとすごく思いましたね。そしたら、中途入社の方の人脈構築もおうかがいしていければと思うんですけれども、恵美さんはいかがでしょうか。

林田:私はすごく幸運やったなと今は思うんですが、入ってすぐに「こういう人たちと絡んでおくと業務上良さそうだよ」「話が合いそうだよ」とか、雑談をつないでくれた人がいまして。なんとかセッティングしてくれたので、そこから人脈はうまく作れたかなとは思います。

特にテレワークでは、受け入れるほうが少し気を遣ってあげないと、(会社に)入ってきてすぐには「雑談いいですか?」って自分から言いにくいと思うので。

熱田:言いにくいですね。

林田:「合いそうやな」という人をつないであげるのは、私も意識してやるようにはなってきました。

ベテラン社員の得意技「飲み会」が封じられたつらさ

熱田:ありがとうございます。今日来場されているみなさんの会社では、このへんをどうされてるんですかね。すごく悩みますよね。

山田:世の中の会社からしたら、僕らはわりとテレワークが進んでるから「先にある問題」なんじゃないかなと思います。

熱田:確かに。課題を先に体験しているというか、課題先進国みたいな感じですね。

山田:キュレーターって僕は初めて聞いたけど、いろいろとグループウェア上を見て回ってる人がいるんですよ。見て回って、「ここでこんな発言してる」というのを発言してくれるみたいな。

ネット上でもいるじゃないですか。Twitterとかでいろんなものを見て発信して、その人の発信がおもしろいから、その人だけをフォローしておけばネット上で何が流行っているかわかる、みたいな。ああいう人が(グループウェア上にも)登場してくるんですよね。

熱田:そうですね。

山田:恵美さんが言ってるのはまさにそういう人ですよね。

林田:そうです。そういう人です。

熱田:ちなみに理さんは、(リモートワークでの)人間関係構築で思うところはありますか。

山田:唯一、自分の得意技とする「飲み会」という手段がなくなるって、みなさんどう思います? たぶん同じ世代の方は「だからテレワーク嫌やねん」って思うかもしれないですが、片側で喜んでる若い人はいると思うんですよ。でも、そこでコミュニケーションをとってきた僕からしたら、本当に孤独感しかなくなってくる。

熱田:武器を封印されました、という感じですよね。

山田:もう落ちるしかない。飛べない。

入社時からリモートワークで飲み会未経験の新卒社員

熱田:えりかさんは新卒1年目だから、若い世代じゃないですか。だから、若い世代って「飲み会とかいらん」みたいな方が多いのかなと思うんですが、どうですか。

鈴木:もちろん「飲み会がないほうがいい」っていう方もいると思うんですが、私はもともとお酒が好きなのもあって、社会人の飲み会をそもそも体験したことがないので、飲み会にちょっと憧れがあって。「落ち込んだりしても、飲みに連れてってもらえば吐き出して解決したんじゃないかな?」というふうに、ちょっと幻想を抱くことはありますね。

熱田:みなさん聞きました? 飲み会を体験したことがないと。

山田:社会人の飲み会を体験したことがないって。でも、「体験しなくていいよ」と思ってる人もたくさんいるかと思うんですけれども。

熱田:もしかしたらいるかもしれないんですが、えりかさん的には(そもそも飲み会を)体験してないから、ないほうがいいのか、あったほうがいいのか選べないというか。体験すること自体も封鎖されてる感じですもんね。

淡々と仕事をこなすのみで、社員なのに業務委託のような感覚

熱田:他の社内アンケートでも、「個人的に社内の人脈構築は諦めてます」という悲しい声や、「サイボウズは自分から発信しないと誰とも関係構築できない」という声が上がっていたりとか。あと、これやばいですね。「業務委託みたいに感じてます」っていう。

山田:社員になったのに、業務委託みたいな感じ。

熱田:「社員だけどリモートでただ仕事をやるだけなので、ロイヤリティや帰属感をあんまり感じられていないです」という声もぞくぞくと上がっておりました。

というわけで、3つのつらさを吐き出してみたんですが、みなさんどうですか? えりかちゃん、大丈夫? 本当に吐き出せてる?

山田:でも、吐き出せてるのはまだ10分の1ぐらいちゃう?

鈴木:そうですね。

熱田:(笑)。一人ひとり振り返っていきたいと思います。えりかさん、(テレワークのつらさを)吐き出してみた感想をおうかがいしてもいいですか。

鈴木:4月に入社して、実はずっと「つらいのは自分だけなんじゃないかな」って悩んでたんですが、蓋を開けてみるとサイボウズ社員も悩んでいて。今回、理さんと恵美さんもそれぞれの立場で悩みながら試行錯誤していることを知れて、それだけでも少し安心できました。

熱田:ありがとうございます。そもそもこのセッションのきっかけが、えりかさんが「分報でぜんぜんつぶやけないです。テキストコミュニケーションがしんどいです。テレワークがしんどいです」というのをチームに相談してくれて。「それを企画にしたらいいんじゃない?」という感じで始まっているので、えりかさん自身もちょっとでも救われてたらうれしいんだけど、どうかな。

鈴木:「テレワークつらい」という声をちゃんと拾ってくれるのが、サイボウズらしいなと思います。

熱田:ありがとうございます。

勤務地や年代も違うメンバーが、同じようなつらさを抱えていた

山田:今は(テレワークの)つらいところを前面にフィーチャーしてるけど、いいところはなかった? 

熱田:確かに。いいところある? 

鈴木:テレワークのですか? 

山田:テレワークの。サイボウズのでもいいよ?(笑)。

鈴木:やばい、無茶ぶりが来た(笑)。でも、kintone上にみなさんの知見が溜まっていく。それでみんなの思考が整理されているので、それを見たら仕事がわかるのは、サイボウズだからできてるんだなぁと思いました。

熱田:さすがの対応力(笑)。じゃあ恵美さんも、つらさを吐き出してみての感想をおうかがいしてもいいですか? 

林田:私もテレワークの恩恵をとっても受けていて。ふだんは大阪で働いているのに、東京のみんなや全国のみなさんと一緒に働いていて、すごくありがたいなとは思っていたので、「あんまりつらいと言ったらあかんやろな」って思ってたんですけど。

山田:逆にね。

林田:逆に言いにくかったんですが、ちょうどえりかさんと雑談をして。その時は1対1のZoom会議で、2人で話をした時に「つらいよね」というのをやっと言いあえて、お互いにけっこう吐き出せたなと思ってたんです。

「やっぱり『つらい』って思ってる人もおるんやなぁ」とすごく実感したので、ちゃんと自分が声に出すことで、つらい人たちがまた声に出しやすい環境にもなるかなということに気づけました。

熱田:ありがとうございます。さっき控え室でも、このTシャツで行ったらみんな「そんなにつらかったの!?」という感じで、心配してくれたって……。

林田:はい。心配してくれました。

熱田:言ってたんですが、やっぱり可視化するのが大事ですよね。

山田:大事よね(笑)。

熱田:最後に、理さんにもおうかがいしてもいいですか。

山田:うちの会社って、どっちかと言ったら「テレワークしよう」と言っていたわけじゃなくて、「テレワークしてもいいよ」ってずっとやってきていて。僕はテレワークしない側をずっと選択しながら働いてきて、都合のいい時や、自分が「テレワークしたいな」って思う時だけしてたんです。

今回フルリモートになって、テレワークせざるを得なくなった。今まで好んでいなかった人たちも一斉にテレワークになった瞬間に、僕らでさえこういうふうにテレワークの問題点が出てきたと。でも、選択肢があるという意味では、テレワークはすごくいいことだと思っています。

だって会社に行かなくてもいいわけですから、移住して好きなところに住めるわけです。アメリカにいても、時差があっても、いちいち出張しなくても、テキストコミュニケーションだったら、リアルで時間を合わせなくでもそれなりにできるわけじゃないですか。

サイボウズの良さは「つらい」をオープンにできる環境

山田:ひょっとしたら僕らは(テレワーク)できていると思ってたんじゃないかなって。できていると思ってたから、みなさんに(テレワークを)しましょうって一生懸命言ったけど、「できてなかったやん」っていうところがあって。

熱田:うん、できてないんですよ。

山田:ただこれは、これから起こる未来なのかなと思うところもあって。だから、いかに改善していくのか。ここでつらかったことを来年のセッションで、「テレワークがつらくなくなった」「つらくなくなったん」って書いて、僕らがここにいたら、またみなさんのためになるかもしれないじゃないですか。

熱田:そうですね。

林田:確かにね。

熱田:会場のみなさんも、Cybozu Daysのアンケートに「続編希望です」と書いていただけたら、来年はその後どうなったのかのセッションができるかもしれないので、ぜひよろしくお願いします。

最後に私なんですが、今回はいろいろな生々しいデータがあったかなと思います。サイボウズといえば、「働き方先進企業」と思っていただくことが多いんじゃないかなと思うんですが、今回赤裸々にシェアしたように、サイボウズもいろいろ課題がありまして。等身大に泥臭くがんばっている最中かな、という感じがしております。

でも先ほどもあったように、「つらい」をオープンにできるのがサイボウズの良さだなと思っているので、これからもみなさんと一緒に、どんなふうに解決していけるのかを一緒に考えていきたいなと思っております。

「テレワークつらたんアンケート」を人事部や産業医にも共有

熱田:ちなみになんですが、今「オープンにするとなんかいいことがある」という話をしていたじゃないですか。実は、人事部に「これ、なんとかしてください」というふうにシェアしてたわけじゃないんですが、「テレワークつらたんアンケート」を見て、人事部の健康管理を担っている部署が、「何かできる施策がありそうだね」という感じで話していたり。

あと、実際に産業医の先生にさっきのアンケートのデータを共有してくれたり。今、こうやって「つらい」という声を可視化したことで、人事部が実際に動いていたりとか。

サイボウズ本部長会という経営会議があるんですが、そちらで「テレワークつらたんアンケートの声」という感じでみんなに共有されて、(テレワーク)つらい勢の声が全社に届いている状態になっています。なにかしら、少しずつみんなで改善されていくんじゃないかなぁと思っております。改善されるといいですねぇ。

山田:どう? 改善されてる兆しってある? 

林田:いや、施策で改善できる話でもない気もするんですよね。

熱田:ほぉー。(話が振り出しに)戻った(笑)。

林田:戻っちゃいました。

(一同笑)

熱田:めっちゃいい話で終わらせようとしてたのに。

山田:終わりかけに放り込んでくるね。

林田:すみません(笑)。

熱田:放り込んできますね。

林田:一人ひとりに合わせないと、なかなか難しいなとは思います。

テレワーク苦手勢には、まず心理的安全性の確保から

山田:たぶん、テレワークする・しないじゃないと思うんですよね。テレワークがめっちゃ得意な人とめっちゃ苦手な人って、そこそこグラデーションがあると思うので。得意な人もいるけど、得意じゃない人もいる。

得意じゃない人はなんでなのか。だいたいは、心理的安全性があるじゃないですか。誰だってそうですよね、知らないところで「みんなの前でしゃべって」と言われたら、大抵の人は恥ずかしかったりとか、緊張してしゃべれないわけです。

でもそういう人たちに、徐々に心理的安全性を確保しながらやっていく方法が、これまたITやテレワークでもできると思うんですよね。アクセス権をつけてZoomを使ったりしてね。

林田:そうですね。

熱田:ありがとうございます。ということでこのセッション終わっちゃいますが……。

山田:あ、これで終わりなんや(笑)。

熱田:はい、あっという間の40分でしたね。ということで本日は「サイボウズ社員だけど、テレワークがつらいんです」ということで、セッションを最後まで拝聴いただきまして、ありがとうございました!