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日本的タレントマネジメントの未来~『適者開発日本型』人事管理への変革~(全3記事)

欧米に多い、採用や昇進を人事部でなく事業部が握るパターン 日本・欧米の“いいとこ取り”を狙った、カゴメのHRBPの仕組み

不確実性の増大や国内の人手不足といった経営環境の変化により、必要な能力を備えた人材を柔軟かつ迅速に確保することが事業成長に欠かせなくなっている、昨今。HRテクロノジーの進化により、勘や経験だけに頼らないデータドリブンな人事ができるようになったこともあり、近年、日本でも「タレントマネジメント」への注目が高まっています。一方で、タレントマネジメントの本質は何か? 日本企業との相性は良いのか? など、日本企業がタレントマネジメントを実践する上での疑問や課題に直面している企業が多いのではないでしょうか? そこで『日本企業のタレントマネジメント』の著者 法政大学大学院政策創造研究科 教授の石山恒貴氏が登壇されたウェビナー「日本的タレントマネジメントの未来~『適者開発日本型』人事管理への変革~」の模様を公開します。

「選別アプローチ」「包摂アプローチ」それぞれが向く場合

斉藤知明氏(以下、斉藤):石山先生、ありがとうございました。ここからディスカッションに入っていきます。

あらためてですが、タレントマネジメントについて誤解されがちだなと思うのが、「ツールを入れりゃなんとかなる」まで思っている人はいないにしろ、「ツールを中心に展開していくものだ」という考えが独り歩きしてしまった。

どちらかというと「どんな人材を育んでいくことによって、事業成果を最大化するのか?」から逆算しているのが、カゴメさんや味の素さんの事例。あとは欧米諸国の会社の成果というところで、みんな逆算している。ここに最後はつながっていて、それを達成するために必要だからツールが入っている、といった立ち位置にしていかないといけないということですよね。

石山恒貴氏(以下、石山):そうですね。その場合も「そもそもの会社としての成果ってなんなんだ?」という話がありまして。今までだと、欧米のタレントマネジメントも過去そうだったんですけれども「四半期ごとの短期的な利益が、会社としての成果なんじゃないか」という考え方もありました。

でも批判があって。今って「戦略人事」じゃなくて「サステナブル人事」という考え方もできてきていて。「会社が持続的に成長していくことが成果だ」と考えると、結局のところ、その会社にいる個人がイキイキと働いて自分の才能を爆発的に開花させていかないと。本当に悪い意味での「管理」で、短期にゴリゴリやって利益を出せるかもしれないけど、1年後にその会社は潰れているかもしれない。そういった考え方があるんじゃないかと思うんですね。

斉藤:そういう意味でも、「マタイ効果」「マルコ効果」「包摂アプローチ」「選別アプローチ」と分類されてらっしゃいましたけど、昨今の論調ですと「包摂アプローチ」がいいんじゃないか、と。

斉藤:例えば「ダイバーシティ&インクルージョンって必要だよね」というのは、一人ひとりが持っている別々のスキルといった「個を活かし合う組織が重要じゃないか」という論調が高まってきているかなと思うんです。

この「選別アプローチ」のほうがいいケース、「包摂アプローチ」のほうがいいケースって、それぞれあるんでしょうか?

石山:これは多かれ少なかれ、程度問題はありまして。日本だと「全社員をタレントとみなして、全員の才能を開花させる」という考え方のほうが、フィットされる方は多いかもしれないんですけれども。

だけど「選別アプローチ」(がいい場合)がないか? というと、全社員をタレントと考えても、結局のところ昇進で差がつくとか。あるいはその企業の中でも競争戦略に直結したポジションがないか? というと、あるわけですよね。

斉藤:ありますね。

石山:そこでどう選抜するんだ? ということについて、多かれ少なかれ「選別アプローチ」の議論は、絶対になくすことはできないと思うので。一方で、どこまで重く見るかという問題だと思うんです。「選別アプローチ」だけをバリバリに重視しちゃう会社もなくもないですが、その場合は「他の人のやる気がなくなる」ということも出てきます。

でも「包摂アプローチ」だけを重視して「選別アプローチ」をないがしろにすると、競争戦略に合わせて「このポジションでどんな影響が出る」ということが軽視されるという面もあると思うんです。そこのバランスって「マタイ効果」も「マルコ効果」も一長一短ありますから、会社の中での議論(が必要)だと思いますよね。

「この言葉って実務で言えばこうだよね」という解釈

斉藤:「考え方が社内で揃わないことで困っています」みたいな声も、チャットでいただいていて、(スライドを指して)この図が議論の土台としてとてもいいなと受け取りました。

実際に社内で見た時に「生まれつきの能力としてのタレント」と「熟達としてのタレント」。これがたぶん「採用」と「育成」というふうに、シンプルに分解できる部分もあれば、「熟達してのタレント」は、採用・育成の両方が絡みますし、「生まれつきの能力」はどうしても採用・エントリーマネジメントが絡んでくる項目。

「ポジションや組織にコミットする存在としてのタレント」が、オファーだったり、ミッションをどう持たせるか? または配置換えという意味での戦略をどう作っていくか?

また「選別アプローチ」で登用していくのは、どのポジションの人なのか? 「包摂アプローチ」に関しては「どっちもやらない」ということは、なかなかないと思っているので、こういうところは「包摂アプローチ」でどうやって健全化していくんだろうか? 事業成果に紐付くんだろうか?

また「選別アプローチ」で取らないといけない人って、どんな人なのか? 振り返ると、そんな項目に沿って議論をしてきた気がします。

石山:斉藤さんの解釈力が素晴らしいなと思いました。わりと学問的なキーワードが並んでいて、(スライドを指して)とっつきにくい表だと思うんですけども、それを実務に合わせて深く解釈していただいて。

企業のそれぞれの人事部の中で、斉藤さんみたいに「この言葉って実務で言えばこうだよね」とか「うちの場合で言えばこうだよね」と解釈して、それでみなさんが「これはうちの会社だとどういったポリシーで考えたいですか?」と、この表を見ながら議論したりすると、それだけで1日とか2日とかいくらでも議論できそうな感じがします。

タレントマネジメントツールは、決して“魔法の杖”ではない

斉藤:できそうですよね。けっこう仲のいいタレントマネジメント系のツールの(企業の)みなさんもたくさんいるので、そこを否定するわけでは一切ないんですが、やはり「適材適所の配置が簡単にできます」というとすごく“引き”が強いので、そういったマーケティングをすることってあるんですよね。

でもそういうマーケティングから入って「それだけやりましょう」となってしまうと、この中でも「一部の適合する存在」とか「ポジションの配置」というところに集中してしまって。

そうすると現場の社員からすると「一部のことだな」だったり「あまり自分に関わりのないことだな」となっちゃって、人事制度としてしらけちゃうことにすごく悩んでると、カスタマーサクセスの人から聞いたことがあって。

彼らも導入支援する時だったり「一緒にタレントマネジメント考えましょう」という時に、「どんな組織にしていきたいですか? という上流から入っていかないと、うまくなじまない・浸透しない・成果につながらないんだよね」といったことをおっしゃっていたのは、まさにそのポイントなのかなという気がしました。これって、会社によって異なりそうですよね。

石山:今の斉藤さんの話って、実態をめちゃめちゃ鋭くえぐった話だったんですが、タレントマネジメントツールが「効率的にうまくタレントマネジメント整理できる」というのは、本当だと思うんです。

でもそれはマーケティングの言い方で「これさえ使えばパッと見える化できて、適切な人がパッと浮かんでくるんですよ」という入り口であり過ぎると、やはり一番怖いのは正解志向で。「タレントマネジメントという正解があって、それだけやればいいんだ」となっちゃうのが、一番よくない。“魔法の杖”みたいに思われてしまうのが、一番ヤバいんじゃないかと思っています。

やはり一番大事なのは、もし私が最初に言った定義をある程度は前提にしていただけるなら、「今の我々の会社」という環境の中で「我々の組織に、今『一緒にやろう』と言ってくれるタレントの才能を、爆発的に開花させるやり方ってなんだろう?」と考えるわけですが、そんなもの1つなわけないじゃないですか。正解があるわけないじゃないですか。

それこそ、その会社で考える人事部としての経営としても、最もやりがいのある話だと思うんですが、そのやり方自体を考えた時に「だけど、それがツールとしては非常に便利だよね」ということで、ちょっと順番が逆転しているんじゃない? と。

バズワードっぽくなってしまっている「キャリア人材」の考え

斉藤:そうですよね。チャットで「採用が苦戦する中で、今いる人材の一人ひとりのパフォーマンスを最大化させたいと思っている。そこをどうやったら実現することができるかというのに悩んでいるし、取り組んでいきたい」という、個人が主体的に動き学ぶようにしたいといったコメントもいただいています。そこがやはり会社としての「個人のあってほしい姿・願い」なんですよね。

石山:ただ僕が気になるのは、よく「キャリア自律がんばりましょう」という会社は、「個人の主体性が大事だよ」というメッセージを発しながら、実際やっていることが、経営の意図とは違うかもしれないけど日常の職場だと「そんなにいろんなこと勝手に思いつかれても……」という、逆のことが起こっているところが非常に懸念される。ちょっと口幅ったいですけど(笑)。

斉藤:(笑)。

石山:だから「キャリア人材」ってなかなかうまくいかないというか、バズワードっぽくなっちゃうといいますか。

斉藤:ちょっとドキドキしながら例として出してみるんですけれども、実は僕らも社内の制度で、今回初めて等級制度を作ったんですよ。

石山:なるほど!

斉藤:そこでは、会社が個人に対して求めるタレント、職責、マネジメント能力。あとはバリューの体現、会社として尊ばれる行動の体現を、それぞれ求めますよという項目を定義して。「スペシャリティとマネジメントはどっちかでいいよね」という考え方の制度を入れました。これを入れた背景として、僕はキャリア自律をしてほしいから入れたんですよ。

石山:なるほど、なるほど。

斉藤:すごくみんなと向き合っていく中で、等級制度がなかった時に話していたのが「自分は次に何をしていったらいいのか、選択肢が広すぎて困っている」と。それまである意味で「のし上がってきた」といいますか「社内で大事なポジションを勝ち取ってきた」という人に関しては、自分でそれをゼロから特定して動いてきたんですよね。

でもそれを全員に求めるのは非常に酷だなとも思うし、これからは1つのプロダクトとしての「Unipos」という事業単体でやっていきますので、その中で「会社としてのあってほしい姿」を定義しないことには、キャリア自律って測れないんじゃないか? と思って、等級制度を半年くらい掛けて平時に喧々諤々しながら導入したんですけれども。

オープンに示されたものについて、対話・議論できることの大切さ

斉藤:そこについては石山先生、どう思われますか?

石山:Uniposさんのような伸びているベンチャーを考えた時に、(事業のスタート)当初って、何の制度もないわけですよね。

斉藤:おっしゃるとおりです。

石山:でも、創業のビジョンとか理念とかに基づいて(中途採用で)メンバーが入ってきて。最初の方々って熱量もあるし、それを体現したいと思っているから、むしろ制度なんていらないと思うんですよね。その中で一緒にいろんなことが共有されてやっている。

ところが、やはり急激に伸びたりして150人くらいになって、創業時の理念が完全には共有されていない状態で後から入っていらっしゃる方もいた時に、どうするか? という問題だと思うんですけれども。

斉藤:そこでいうと、ちょっとだけ背景が違いまして。ありがたいことに、熱量はみんなけっこう高いんですよ。

石山:なるほど。

斉藤:高いんですけど、一人ひとりがバラバラなことをあまりにもし過ぎちゃうと、お互いの足を引っ張りかねない構造になっている、ということのほうが考え方としては近いですね。

石山:なるほどなるほど。その時も一番大事だと思うのは、これも「どの等級がいい」とか「何が正解」ということはまったくないと思うんですけど、要はそれがオープンに示されていて、そのオープンに示されたものについて対話・議論できるというか。

会社としては「こうなんですよ」とオープンに示して。熱量のある人たち同士が、それに対して対話して、その人たちの意見がどれだけ取り入れられるか? というか、そこの会社としての議論みたいなものに「透明性がある」ことが大事なんじゃないかなという気はします。

斉藤:うんうん。

石山:それが透明で示されたことによって、むしろ現時点で上の等級にいる人たちは「それが本当に体現できているのか?」というのが問われていくわけで。

斉藤:問われていきますね。

石山:そこがちゃんと問われて、対話があるということだったらいいんじゃないのかな。それがどういう制度・仕組みでもいいんじゃないかなという気はします。

「自社がどうありたいのか?」から考えていかないといけない

斉藤:まさにそこの事例として私どもの例を出しましたけれども、ある意味、どういう組織でありたいのか? 現状から逆算した時に、今回は「キャリア自律のために管理する制度を入れた」……管理といいますか「規定する制度を入れた」というのは、すごくおもしろいアプローチで、タレントマネジメントの奥深さを感じた1個の例だと思っています。

奔放になればなるほど、イノベーション・自律が起こるわけでもないし。逆に規定されればされるほど、確実に下がるというわけでもないし。

どの塩梅を辿っていくか? というのが、まずタレント一人ひとりの現状を見定めた上で……(スライドを指して)ここですね。「自社で考えるポイント」と定義していただいていましたけれども。VSは塩梅ですね。「何割、何割なのか」「誰に対してはどうなのか」ということに対して。あとはインプット。潜在重視、顕在重視というところもありますよね。

石山:まさに斉藤さんがおっしゃるとおりで。一見すると「奔放に自由にやれたほうがイノベーションってできるんじゃないか」と思っちゃうけども、必ずしもそれと完全にイコールというわけではない。そこがマネジメントでやりくりするところのおもしろさでもあり、難しさでもあると思うんですけれども。

そしたらUniposさんならUniposさん、他の会社なら他の会社の中で、これをどういうバランスで考えていくのかな? という論点があるんだよというのを、みなさんが自覚されてて対話が進むことが大事なんじゃないのかなと思います。 

斉藤:まさに、僕らもUnipos社としてそういうことに取り組んでいます。導入企業のみなさんのお話を聞いていると、やっぱり会社さんによってぜんぜん考え方が違いますね。それは業種によっても違いますし、企業規模によっても違います。同じ業種、同じ企業規模でも会社さんによって考え方が違う中で。

すごくUniposをうまく使いこなせていただいている会社さんは「うちの会社は今こういう事業状況で、社外環境がこういう状況だ」と。「こういう人が生まれてきてほしいし、支援したい。だからこういう制度を入れるんだ」というところを自分で語られる人事の方・経営者の方とご一緒させていただくと、すごくうまくいくケースがあります。

最近だと逆に、そこに至るご支援とかもするようしていて。プロジェクトマネジメントシートみたいなのを作るんですけど、その中で「どんな会社にしていきたいんですか?」みたいなところから書かされるという(笑)。そういうことをやっているんですよ。

石山:なるほど。やっぱり一番よろしくないのは「Uniposさんの仕組みさえ導入すれば、なんかみんな勝手に感謝しあって、爆発的に会社が良くなる」みたいなことでいくと、たぶんうまくいかなくて。やっぱり「なんのためにこの仕組みを入れたいのか? 自社がどうありたいのか?」から考えていかないと。これって、人によってまた考え方が違うじゃないですか。個人個人で正解がないし。

だからそこで対話して。「こういう論点がある」というのをみんなが自覚することがポイントなのかなと思います。

日本と欧米企業の「HRビジネスパートナー」という考え方の違い

斉藤:ご著書の中でも取り上げてらっしゃったカゴメさん、味の素さんの事例を、今回も挙げていただきましたけれども。まさにこの「HRビジネスパートナー」の考え方。「人材育成機能」のことを「HRBP機能」と呼んでらっしゃいます。

この人たちは、さっきおっしゃっていただいたような「このファンクションはどういうアプローチでやっていきましょうか」というのを組み立てて、支援育成していくというような機能なんですかね?

石山:そうですね。そもそも、日本企業と欧米企業の「HRビジネスパートナー」という考え方って、もともと少し違っていて。日本企業って非常にステレオタイプ的に言いますと、事業部人事が本社人事と一体化して、その運用とかを行うわけです。

一方で欧米企業のHRビジネスパートナーというのは、例えば評価する人とかレポート先は人事部じゃなくて、その事業部の経営のトップだったりするんです。もともと欧米企業って採用権限や昇進選抜権限もわりと分権的で、事業部門が握っているようなことが多いですから。

そうするとその事業部門が人事を握っている中で、HRビジネスパートナーが最大限その事業部門と連携しながらやっていって、本社の人事部門にも意向を伝えるような仕組みで。これは現場密着ではあるんですけれども。

ただ問題は、HRビジネスパートナーが、やっぱり部門利益の代表者になっちゃうことです。本質的にこういうことをやりたいんだけど、「全社でこういうことを統一的にやりたい」というよりは、HRビジネスパートナーがうまく運用されない場合は部門利益として、例えば「部門の優秀な人は外に出さない」みたいなことも起こっちゃうわけです。

でもカゴメのHRビジネスパートナーというのは、そこの“いいとこ取り”を狙った仕組みなんですよ。従来のHRビジネスパートナーをある程度は雛形にしながらも、そこは部門利益の代表者にならないように、むしろ本社の人事部門にカチッと組み込んで。ただし、もともと各本部の中で最も将来を嘱望された、優秀で現場もよくわかっている人をビジネスパートナーにしているので。

その人たちの個人的な能力も活かしながら現場の意見を取り入れるというのと、全社的に統合的にやるという微妙なバランスを狙った仕組みを、カゴメオリジナルで作ったというところだと思うんですよね。

「これから役員や社長になる人は、HRBPを一度は経験してもらいたい」

斉藤:なるほどなぁ。でも、そういう意味においてもHRBPのみなさんも、その人材会議に参加したCHO関連のみなさんも、人事部長のみなさんも含めて、企業の長期的な成長・成果というものは「短期の数字だけじゃなく、最大化しないといけない」というところでは一緒だから成り立つんですかね。

石山:そうですね。カゴメさんの場合は、もともとその人たちって、どちらかと言うと事業遂行に優秀な方たちだったわけじゃないですか。それで人間とのコミュニケーション能力もうまかったんだけれど、それを「タレントという才能を最大化することに特化しなさい」ってなったわけです。

そうすると、もともと「優秀な経営者は、4割ぐらい人事のことをやっている」ってよく言いますけれども。この人たちもそれをやってみると「あぁなるほど。事業遂行なんだけど、やっぱり人を伸ばしたり、現場でいろんなことをやると人が痛みを感じたりするのは、こういうことなんだ」ということを、その人たちが「経営の中で、人事が本当にすごく重要なんだ」というのを体感するわけですよね。

そうしたときに、カゴメって今では「これって経営者を育てるうえで一番大事なことなんじゃないか?」ということで「これから役員や社長になる人は、HRビジネスパートナーを一度は経験してもらいたいよね」ぐらいのことが起こっているんです。

斉藤:でもそうですよね。「人を活かし、人を伸ばして会社の成果を最大化する」ということが役割になっている。まさに経営ですよね。

石山:そうですね。こういう人たちがトップを担うようになってくると、戦略と人材の結合度がより高まってくるんじゃないかと思いますね。

斉藤:改めて「タレントマネジメントってなんなんだろう?」って考えたら、経営だってことなんでしょうね。

石山:やっぱりその個人が尊重されるということだけど、同時に経営でもあるってことですよね。

「決められた仕事が10割、決まっていない仕事が0割」で、工夫の余地が生まれない

斉藤:ありがとうございます。ではここでUniposのご紹介を挟ませていただいた上で、Q&Aに移っていきます。

Uniposのご紹介をさせていただくにあたって、今回の石山先生のお話と、僕はけっこう接合を考えていたんです。(スライドを指して)これは前に打ち合わせをさせていただいた時に、石山先生にお見せしていた図なのですが。

管理型組織と自律型組織。どういう組織を作りたいか? というところからまとめていった時に、さっき「決められた仕事しかしないんですよね」という声もあったと思うんですけど、ITの力によって見える化が促進された結果として「全体を細かく管理しよう」とか「できていない穴を見つけて埋めていこう」というシステムの使われ方を容易に想像しやすくされてきたのが、この残業管理だったりも含めた今までの日本企業だったとしたら。

どうしても「決められた仕事が10割、決まっていない仕事が0割」になってしまって、工夫の余地が生まれない。また一定の決められた仕事をやりきれば、今日の仕事は終わった・満足したという感覚が生まれてしまう。

一方で、この自律型組織になる組織の特徴について。いろんな企業をご支援させていただいていた中で見えてきたところで言うと「目的が明確に定義されていて、個人の力が発揮できる環境を支援するマネージャーがいる中で、決められた仕事が8割、決まっていない仕事がまだ2割ある状態」である。

この決まってない仕事が2割ある中で、目的が明確だから工夫の余地が生まれる。そういう組織がちょうどいい塩梅なのではないかな? みたいなことを考えておりました。そしてその場合におけるシステムの役割って、大きく3つあると考えているんです。

RPAとか今はありますが、決められた仕事であって、どうしても会社にとって必要な仕事なんだとしたら、もう自動化して奪っちゃう。「機械の力で効率化できるんだから、そうしちゃいましょう」というのが、ITの役割の1つ。また、その目的を達成するためにさまざまな情報を得られる環境。自由に誰でも必要な情報にアクセスできる環境。

そこに対しての「これちょっとおもしろい」という発想。「個人のわがままからイノベーションが生まれるんじゃないか」みたいなコメントがさきほどありましたが、まさに偶発的に起こった優れた仕事。この環境の上で偶発的に起こった優れた仕事を見つけ出して支援、共有する。この3つをシステムとして支援することができれば、自律型組織を促進していくことができるのではないか? と再解釈を行っていました。

まさにこの3つめ。優れた仕事を見つけ出し、その背中を後押しするサービスがUniposだと考えています。

「組織を変える行動を増やすため」にピアボーナスを

斉藤:Uniposについてご紹介させていただきますと「ピアボーナスで働き方を変える」というコンセプトでサービスをさせていただいています。プロダクトのメッセージとしては「組織を変える行動を増やすため」にピアボーナスを使っているWebサービスです。

具体的には、称賛を送る人が「○○さんこういうことをしていてよかった。すばらしい挑戦だった」ということがあったら、メッセージと一緒にポイントをオープンな場所で送ることができます。

そしてそのポイントは貰った人のお給料やAmazonギフト券などに変わる、といった仕組みです。しかもオープンな場でやり取りされるので、他の従業員のみなさんも見ることができて「パチパチパチ」って「拍手(いいね)」することによって、投稿した人・貰った人双方にポイントが入って、それもまたお給料だったり金銭相当のギフト券に変わる。そういった仕組みを提供しております。

そうすることで、貰う人にとっては「こういうことしてよかったな、○○さんの役に立って、○○さんから見てよかったと思われたんだな」。また「他のみんなからも応援されているな、いいねって言われているな」というのが(その行動を起こして)よかった」という感覚につながる。また送った側の人にも、そういう「他人の仕事を見つけて称賛して後押しするというのは、会社にとって尊い行動である」ということを伝えるメッセージとして、ポイントが入るような仕組みになっているというのが、Uniposのピアボーナスの仕組みです。

作りたいのは「褒めて甘やかす組織」ではない

斉藤:あらためて、我々はどんな組織を作っていきたいか? という言語化に入らせていただきますが、まず「褒めて甘やかす組織」を作りたいわけではないです。(スライドを指して)「『組織を変える行動を増やす』増幅装置」みたいなことを書かせていただいているんですけれども、なにかに挑戦する時ってみんな不安じゃないですか。

こういうのをやってみようという時、決まってない仕事をやる時って、みんな不安なんです。でもその不安な時に「やってよかったな」と思うと「次もやってみよう」「次もやってみよう」と、雪だるま式にどんどん「やってみようの幅」が広がっていくことで、みんなが自分の可能性を最大化できる状態を作っていくことができるのではないか? というのが、Uniposのサービスにこめている思いですし、ご導入いただいている企業さんから評価いただいているポイントかなと思っています。

さまざまな企業さんでも、Uniposをご導入されるようになってまいりました。また、組織開発の専門家のNEWONEさんをお招きして、もっと実践的なウェビナーも行っています。Uniposをご導入いただく時には「組織課題の体系化だったり、どうやって取り組んでいくのか? から始めます」と言っておりますけど、そこの一部を体験できるウェビナーを「理念浸透バージョン」「エンゲージメントバージョン」「マネジメントバージョン」の3つで開催していますので、ご興味をお持ちの方は、ぜひお申し込みいただければと思います。

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