2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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青木英剛氏(以下、青木):では、(宇宙産業と他の産業の違いについて)三戸さんからお願いします。
三戸政和氏(以下、三戸):SpaceX、まだファイナンスのピッチ回ってきますもんね(笑)。
青木:どんどんきます。
三戸:まだやってる。日本にまで来ますもんね。
青木:「お金ください」みたいなのは、日本にもしょっちゅう来ますね。これは株式市場では売ってないので。水面下で全部直接トレードされてる状況ですが、買いたい人はいっぱいいるんですよね。
三戸:いやぁ、インターステラもそのぐらいになりたいなぁと思ってるんですが(笑)。他の業界と宇宙産業との、投資の決定的な違いは、やっぱり答えが出てないというか、数字が出ていない業界なので。
先ほどお話がありましたとおり、上場した会社にいくらの時価総額・株価がつくんだということが見えないと、上場前にベンチャー投資していく時に、投資家としては「リターンがいくらになりそうだ」という想像すらできないので。ぜんぜん投資が進まないなっていうのが、今の宇宙の業界かなと思ってるんですよね。
我々インターステラは、それはそれで仕方ないなと。合理的な投資には、あまり現時点では即さない部分もあるかなと思いながら。家入さんのような起業家で、すでに自分でビジネスをゼロから作って、実際にお金まで稼ぐことができた方に投資をしていただいてます。いわゆる、シリアルアントレプレナーみたいな方々ですよね。
そういった方々はやっぱり、ギーク感があるっていうか。「なんかよくわかんないけど、やってたらおもしろいよね」と。先ほどおっしゃった、インターネットの黎明期や初期の頃のような感じで。
三戸:結果どんなサービスが生まれてくるかとか、どういったリターンが生まれてくるかはわかんないんだけど、「なんか夢があるじゃない。おもしろいじゃない」という方に投資をしていただいています。
特にロケットなんかはフェーズです。みなさんが「投資したいな」と思う、強いイメージを作るには、最終的には明確なサービスが出てこないとダメなので。衛星なんかで「こういうセンシングで、実際にはこんなに生活環境が変わりましたよね」「こういうものにすごく使えるようになりましたよね」というシーンにないと、なかなか難しいのかなとは思ってます。
それゆえに今、投資チャンスだなと私は思ってるんですよね。VCの業界はいろんなサービスに投資をしていくんですが、サービスはサービス間で競争していくので、勝ち負けがけっこう生まれてくるんですよね。その勝ち負けを見極めながら勝ち馬に投資するって、けっこう難しいんですよ。
だけどVCなんかは、マクロ環境にドカッと投資する方針もけっこうあるんですよね。大きく伸びていく市場に、とにかくバカバカと投資しておけば、どれかは1個当たっていくよねと。それがほとんど失敗した投資をカバーしていくみたいな、マクロ環境に投資する発想があるんです。昔で言うインターネットとか、ちょっと前で言うとiPhoneのアプリケーションを作るような会社みたいな。
今、そういったフェーズに宇宙があるかなと思いますね。なんとなくイメージが湧かないからよくわかんないけど、マーケットとしては大きくは「理想」なので。宇宙業界のベンチャー投資の意味で言うと、「そこに投資をするんだ」って思える人と思えない人で、たぶん10年後、20年後に差が出てくるんじゃないかなって思ってます。
青木:ありがとうございます。最後の「マクロトレンドを見ながら」っていうのは、すごくおもしろいかなと思っています。今ホットな領域……エネルギー、あとは気候変動、あとは食。それで、宇宙。これも入ってきているわけですよね。なので、本当に期待できるところかなと思っています。では坂本さん、お願いします。
坂本惇氏(以下、坂本):じゃあ私は、グループとしては売上がかなり大きいオイル&ガス、もともと祖業でもありますので、こちらからお話ししたいと思います。まずは類似点からお話ししたいと思うんですが、先ほど見學さんがおっしゃられたとおり、宇宙業界というと太く長い、しかもガバメントが強いのが、もともとの特色かなと思っております。
オイル&ガスの業界もまさに同じで、かなりの莫大なお金が長い期間投資されていて。しかもそれを主導するのは、いわゆるIOC(International Oil Company)であったり、NOC(National Oil Company)と言われる国が運営しているオイルカンパニーですね。そういったところが主要なお客さんになる業界でございます。
ですので、そういったところは似てるなと思いますし、あとはプラント自体が重要インフラですので、どうやってリスクを排除していくか。まさに宇宙業界も、どうやってリスクを排除して宇宙にモノを上げるんだ、運営していくんだというのが、非常に似ているなとは昔から感じています。
ただ大きな違いとしては、オイル&ガスの市場はかなり成熟していて、逆に今は脱カーボンの流れの中で、かなりアゲインストな風になっておりますので。こう言ってはアレですが、そういった中で宇宙産業はまだまだ黎明期です。これからお金が集まっていって、市場としては大きくなっていくのかなと思っています。
オイル&ガスに関わる投資に関しては、比較的見えやすいところがなんとなくあるんですけど、宇宙に関してはまだまだ先が見えにくいというか。イグジットも考えると、投資が先が長いのかなという感触もあって、そこが大きな違いかなと思っています。
坂本:あとは個人的にオイル&ガスが長かったので、このアゲインストな風を見ながら、宇宙のほうが夢があるというか。オイルの産出国はどうしても僻地にあって、私も中東にいましたし、北極圏の極地とか、あとはアマゾンの奥地にオイルが出る所がありますので。
そういったことをやってきた会社としては、宇宙は「究極の僻地」というところで、実はエンジニアとしては一番燃えるエリアかなと思っていて。そういったところで我々も、究極の僻地に対してなにか着手できないかなとは、昔から思っております。
青木:喜んで出張に行く人とかも、社員でいそうですね。
坂本:むしろ今、私は日揮株式会社で国内にいますけど、みなさんだいたい入社理由は「海外のヤバいとこに行きたい」という人が多いので(笑)。いろいろ事件もありましたが、そういったフロンティア精神というか、外に出て行ってチャレンジしていくところが、エンジニア業界の人は多いのかなという気がします。
青木:「宇宙出張手当」ですよね。宇宙飛行士も危険手当が出ますが、公務員として行った場合はそんな感じかなと思います(笑)。
青木:では最後の質問なんですが、宇宙産業にはいろいろと課題もありつつ、まだまだな部分もあるんですけれども。にも関わらず、「宇宙産業ってやっぱり魅力的だ」と、みなさん見ていらっしゃって、ここにいらっしゃるのかなと思っていまして。宇宙産業の投資としての魅力を、それぞれみなさんからご意見うかがいたいなと思っています。じゃあ、坂本さんからいきましょうか。
坂本:冒頭で申し上げたとおり、弊社としては、まだ具体的に宇宙にどれくらい投資していくかという戦略までは立ってはいないんですが。今、まさに技術も進歩していって、今までできなかったことができる、見えなかったことが見える時代が、すぐそこにきていると思っています。
我々の究極の目的は、地上に住んでいる人々の生活が良くなること。ファンドの目的でもありますが、持続可能で安心安全なまちづくり・社会システムの構築が我々のゴールでもありますので。そういったところで、リモートセンシングで災害監視とか、今まで見えなかった環境のものが見えるとか。宇宙に投資することによって、我々が新しい事業を生み出せる、新しく人々の生活を良くできるところに可能性を感じています。
まさに夢、ロマンがありながら、課題は多いと思います。そこに投資をしていって、我々も新しい道を開けるのが大きな魅力かなと思っています。
青木:ありがとうございます。三戸さん、いかがでしょう。
三戸:時間上、この質問にいかないと思って、さっきほぼしゃべっちゃったんですが(笑)。急加速できるという感じかなと思ってますね。私はMOMO3号の時に初めて宇宙に行ったロケットなんですが、広告をスポンサードさせてもらって。その時はそんなにスポンサーが集まる感じじゃなかったので、私の会社名が日本で初めてスポンサー広告で宇宙に行った会社なんです(笑)。
その頃は「数百万円のスポンサー広告を集めようぜ」と言ってた頃だったんですが、今はもうインターステラ自体も、「数十億集めようぜ」みたいな世界に変わってるんですよね。この数年間で一気に急加速している産業は、「地道にちょっとずつ増やしていこうよ」っていう業界じゃなくて……。もしかしたらそれは「乗るか反るか」という部分もあるのかもしれないですが、そういう急加速している産業に身を置くことの楽しさを強く感じてますね。
青木:ありがとうございます。では、見學さんはいかがでしょう。
見學信一郎氏(以下、見學):投資自体の魅力ももちろんあるんですが、私どもはやはりそこから得られるいろんな広がりが魅力だと思っています。例えば、月に行くってすごく酷な環境なんですよね。温度もそうだし放射線もそうだし、重力の話もあったりして。日本の優れた産業界がお持ちの技術が、そこで試される・実証される。そこで日本の技術が一段と磨かれる。そんな場にもなっていくと思います。
それから今まで、ともすると宇宙産業は閉ざされた世界があって、宇宙による宇宙のための宇宙の技術開発なり製品開発だったんですが。気がついてみると、例えば車載製品、寒い・熱い、あるいは揺れる。「なんだ、これロケットに使えるじゃん」「衛星に使えるじゃん」というところで、そういう協業の機会が増えてきていると思います。
それからあとは衛星もですね。かつてドローンが「おもしろいけど、これは何に使うの?」というところから、だいぶ市民権を得られたと思うんですが、これから衛星データもいろんなことに使っていけると思います。その際にはやはり、今の既存の企業さん、いろんな業界の方とのコラボレーションが重要かなと。そんな広がりがこの宇宙産業を発展させていけるんじゃないかと、この期待が非常に魅力だと思っています。
青木:ありがとうございます。では家入さん、お願いします。
家入一真氏(以下、家入):宇宙産業としての投資魅力や市場のポテンシャルは、ここにいるみなさんや登壇されている方のほうがお詳しいので。違う視点からお話しすると、僕はこれまで100社以上のスタートアップにエンジェル投資をしてきたんですね。若い子で言うと、高校生で起業してる子も何社もありますし、大学生や若い方を中心にやってきたんですが。
その時に大事にしているのが、よく言われることですけど「事業じゃなくて人に投資する」という観点でやるんですね。僕自身もそうだったんですが、起業家に大事な資質って、劣等感であったり、生きてきた中で感じた社会に対する理不尽なことだったり、あとは「これを変革したい」という強い思い。
もちろんみんな、初打席で、1回目の起業で、1個目の事業でホームランを打ちたいわけですが、そんなのだいたいうまくいかないわけで。何度も何度も三振しながら打席に立ち続けられるかどうか、その胆力や思いがあるかないかが左右するなと思っていて。
最終的に、打席に立ち続けた人がヒットを打ったりホームランを打ったり、もしかしたら三振のまま退場ということもぜんぜんあるんですが、そういったものが起業家には求められるのかなと思っていて。
先ほどお話がありましたが、やっぱり宇宙産業ってまだまだ未知数な部分だったり、お金もまだまだ必要だったり、しかもおかわりが必要だったり。投資として見た場合にも、かなりリスクがでかい。起業家として見た場合にも、未知な部分がまだまだ大きい領域ですよね。
だからこそ、そこに対して関わろうとしている起業家と話すと、めちゃめちゃ熱い方が多いんですよ。これは圧倒的な魅力だなと思います。別にインターネットの産業でこれから起業しようとしてる人たちに魅力ないわけではないんですが。困難ですごく大きな敵に立ち向かってるような、そういった魅力を持った起業家がめちゃめちゃ多いと思っていて。それは本当に、宇宙産業の魅力に1つ入れてもいいんじゃないかなって思いました。
青木:ありがとうございます。熱量が半端ないなっていうのは、おっしゃるとおりかなと思いました。あっという間に、そろそろこのセッションが終わりなんですね。時間がなくなってしまったんですが、「最後に一言、言いたい」だったり、「なにかPRしたい」という方はいらっしゃいますか? CAMPFIREお願いします(笑)。
家入:そうですね。今、北海道スペースポートさんのクラウドファンディングをやっているので、この場で支援してもらって、ツイートしてください(笑)。
(会場笑)
青木:お願いします。これは投資セッションなんですが、今後みなさんが個人として株式投資をできる機会もありますし、会社として投資するチャンスもあります。もちろん、ふるさと納税やクラウドファンディングでの投資という、いろんなチャンスがありますので。個人もしくは会社で、ぜひいろんな宇宙の事業に関わっていただければなと思います。それではこの投資セッション、こちらで終了したいと思います。みなさんどうもありがとうございました。
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