2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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住谷知厚氏(以下、住谷):シネマネコプロジェクトが始動していきましたが、これはどういったきっかけですか?
菊池康弘氏(以下、菊池):これも地元に映画館を作りたいなというプロジェクトです。実際に動き出すのは2018年なんですが、構想自体はプロジェクトを立ち上げた時ぐらいからあって、10年くらい前から映画館を作りたいなと思っていたんですね。
地元に飲食店を立ち上げた時に、お客さまから「青梅に昔、映画館があったよ」というのを聞いたんです。僕自身も地元なんですけど知らなかったんですよね。昔は映画の町としてすごく賑わっていたと聞いて、「また青梅で映画を観たい」という声が多かったことと、その常連のお客さまにもお店を支えてもらったので、恩返しを込めてエンタメを届けたいなと思って。
住谷:素敵な考え。
菊池:青梅って、自然は豊かでアウトドアでバーベキューとかはできるんですが、あまりエンタメがないんですよね。
渋沢一葉氏(以下、渋沢):そうですよね。そういうイメージがあります。
菊池:山とかトレッキングとか、ラフティングとかはあるんですけど、カルチャーがちょっと弱いなと思っていて。もうちょっとカルチャー的要素もあったら、自分も若い頃に経験したものを地元に落とし込めるので、それで地元が盛り上がればいいなと思って。構想としては10年くらい前から温めていた感じですね。
渋沢:やっとここで。
菊池:そうなんです。地元に戻ると、地元にしかいないとか、ずっと地元で過ごしている方たちが多いので、みんな住んでいる場所とか地域が好きなんですよね。
そういう方たちがけっこう温かいというか、ウェルカムな感じがするなとは商売をしていても感じますし、住んでいてもすごく居心地がいいなと思います。だから、自分の会社や行動範囲は地元に全部収めて、ないものは自分で作るという発想になったんですよね。
渋沢:なぜシネマネコ?
住谷:僕もそれが気になるんですよね。
菊池:そうですよね。シネマネコ。都内で唯一の木造建築の映画館なんですがもともと青梅って織物の町だったんですね。養蚕がすごく盛んで工場がけっこうあって、今回のプロジェクトの映画館もその工場跡地に作られているんです。昔、要は蚕とかをネズミが食べちゃうんで、そのネズミ退治に猫が重宝されたと言われていて。
渋沢:へえ!
菊池:昔は本当に町中に猫がいっぱいいて、今も青梅には猫の神社があるんです。猫をモチーフにした映画看板があったり、猫の町としてPRしているので、単純に猫の町と映画を組み合わせて、わかりやすくシネマネコという名前にしました。
渋沢:そういうことだったんですね。もうしっかり青梅を背負った感じですね。
菊池:そうですね。わかりやすいキャッチーなコンセプトがいいなと思っていて、映画の町でもあるし、猫の町でもあるということを単純に組み合わせた名前になっています。
住谷:これをオープンさせるまでに、けっこう苦労したことだったりとか。
菊池:そもそも映画館を作ったことがないので、まず「作りたい」とか「作ろう」と言ったものの、どうやって作るかわからない。
どうしようかなと思って、全国のいろんなミニシアターに直接行って、その館長さんとかに「どうやって映画館を作ったんですか」と話を聞きました。図面を見せてもらったり。建築家の方とデザイナーと一緒に行って、じゃあどうやって作ろうかみたいな。最初はそこからでしたね。
渋沢:本当にそれは居抜きとかではなく、一から。
菊池:もともと建っている木造建築があるんです。それをリノベーションするんですけれども、建物自体が国の登録有形文化財なんですね。なので、外観はいじってはいけなくて、中だけリノベーションして映画館にするんです。
また建築の難易度も高くて、映画館って興行的に建築基準法とか消防法とか一番厳しいんですね。建築家の方も映画館を作ったことがなかったので、法律の壁が一番厳しかったと思いますね。その審査だけでも本当に1年くらい手続きをしていました。
渋沢:うわー! すごい。
菊池:そうなんです。けっこう下準備がかかりましたね。
住谷:上映する映画は、菊池さんが選定されるんですか。
菊池:そうですね。僕が基本的に編成を考えていますね。僕も映画館で働いたこともないですし、配給会社で働いたこともないので、片っ端からいろんなところに電話したり、挨拶しに行ってパイプを作って映画を借りるという。
渋沢:そうですよね。勝手に流していいものじゃないですからね。「これちょっとおもしろいから観せよう」みたいなのはダメですからね。
菊池:映画館で映画を観られるって、今まで普通の感覚だったんですけど、思った以上に、劇場さんがやっていることは大変なんだなということを、裏方をやってみて初めてわかりましたね。作品によって、持っている配給会社さんが一つひとつ違うので、交渉するのもやり方がぜんぜん違うんです。
住谷:木造だったり、(場所の)良さというのはどういうところがあるんでしょうか。
菊池:普通はシネコンさんはけっこう客席も多いですし、スクリーンも大きいんですけども、ちょっと無機質というかみんな見慣れちゃっていると思うんです。
渋沢:そうですよね。
菊池:木造だと、入ると木の香りがするんですよ。
住谷:ああ、いいですね。
菊池:天井が高くて、木の梁が見えたりして。そういう映画館って他にはないなと思います。設備はシネコンさん並のスピーカーやスクリーンを搭載していますし。
古い伝統的な木造建築の中に、最新の設備が入っているという映画館を地元に作って、ある程度はお客さんが喜んでくれるかなと思ったんですけど、想像を超えてましたね。
住谷:そのあと認知されていくのも、いろいろ工夫されたんですか?
菊池:そうですね。もちろん。クラウドファンディングにも挑戦しました。SNSを活用させてもらって、目標金額の500万円を達成できたんです。420人くらいから支援していただきました。
住谷:すごい。
菊池:ただ、やはり高齢者の方たちはSNSを活用していないので、口コミだったり、オープン前は町中に「映画館ができるよ」というポスターを貼っていただいたりしました。僕が作る映画館というか、地域でみんなで作り上げるという雰囲気を作りたかったんです。
地元の商店街や商工会さん、市役所にも協力してもらって、みんなで作っていこうという雰囲気作りはしましたね。町のシンボル的な場所を作っていく感じがあったので、作っている段階でお爺ちゃんお婆ちゃんがけっこう毎日見学しに来たりしていました。
渋沢:うわー! なんかいい!
菊池:まだできていないのに、多い時だと1日20人くらい来ていましたね。クラウドファンディングも「やり方がわからないから」と言って、直接僕にお金を渡してくれた人もいました。「映画館の足しにしてください!」みたいな感じで。
渋沢:素敵だな。
住谷:すごいですね。
渋沢:そういう気持ちって本当にかけがえのないものですよね。
菊池:そうですね。映画館のビジネスって、収益を出すのはなかなか難しいと思うんですけど、収益じゃない人の気持ちの部分を満たしてあげるというか。喜びを与える、感動を与えるという事業は大事じゃないかなと思います。
渋沢:素敵ですね。
住谷:その映画館に併設されているカフェも作られて、すごいですね。
菊池:やはり映画というコンテンツだけだと、どうしてもお客さんを選んでしまうので、映画以外でもみんなが集まれる場所、楽しんでもらえる場所として、カフェも併設しました。
渋沢:その高齢者の方もそうですし、地元の方々が映画観たあとに、そのカフェで団欒してね。それが一番いいですよね。
菊池:実は今回、カフェのメニューから、目玉商品のフレンチトーストをお持ちしました。
住谷:食べられるんですか?(笑)。
渋沢:やったー! やったー!
菊池:作りますので、ぜひ2人にご賞味していただきたい。
住谷:わー! ぜひ! よろしくお願いします。
菊池:今、できたてなので。
渋沢:いただきます。
住谷:すごい。これ、どういったところにこだわられているんですか。
菊池:このパンは、実は地元の商店街のパン屋さんに発注していまして。もともとそこのパン屋さんでは作っていなかったんですけど、特注で映画館のためだけにこの形の型を作っていただいた感じですね。
住谷:どうですか?
渋沢:おいしい。
菊池:(笑)。ありがとうございます。一口が大きいですね(笑)。
(会場笑)
渋沢:本当においしいです。パンの弾力が想像以上にすごい。
住谷:見た目はまだ固そうだなと思ったんですけど、フワ~ッて。
渋沢:おいしい! うーん! これは絶対に食べるべきですよ。
菊池:はい。本当に一番人気商品で、みなさん頼まれているので、来たら一度食べていただきたい。
渋沢:幸せの味がする。完食しました。
住谷:完食しました。ありがとうございます。
菊池:ありがとうございます。
(一同拍手)
渋沢:ごちそうさまでした。おいしかったー!
住谷:本当においしかったです。
菊池:本当ですか? うれしいです。
渋沢:もっと食べたい。もっと食べたい。
住谷:めっちゃ食べていましたね。
(会場笑)
菊池:一口がぺろりでしたよ。
住谷:本当に口いっぱいに頬張るのがすごい幸せでした。
渋沢:そして、この飾っているシネマネコクリアファイルを手に取って、さっきから気になっていたんですけれども。ほら、(飾っているシネマネコタンブラーを手に取って)これそうですよね。
住谷:それ、なんですか(笑)。
渋沢:かわいいのがあるなと思っていたんですよ。あら! (住谷氏の着ているシネマネコTシャツを指して)そうですよね。
住谷:これもそうです。
(会場笑)
住谷:実はこれも(菊池氏の着ているTシャツを指して)。
菊池:実はこれもそうなんです。
(会場笑)
渋沢:私、支給されていないんですけど、あれ?
(会場笑)
菊池:実はこれも。
住谷:せっかくだから猫のポーズ。
渋沢:猫のポーズ。私、支給されてないんですけど。
(会場笑)
住谷:ご自身がシネマネコに(笑)。
渋沢:めちゃくちゃかわいい。これは誰が?
菊池:これは実はうちの奥さんがイラストレーターをやっているんです。絵が得意なので描いてもらって、うちのマスコットキャラクターとして、シネマネコの金ちゃんと銀ちゃんという名前をつけました。
住谷:これ、金ちゃんと銀ちゃん。これ(自分が着ているTシャツのキャラを指して)銀ちゃんですか?
菊池:そっちは銀ちゃんです。こっち(クリアファイルに描かれたキャラを指して)が金ちゃんです。金ちゃんはマリリン・モンロー。
渋沢:かわいい!
菊池:銀ちゃんがオードリー・ヘップバーンをモチーフにしています。
住谷:魚を食い散らかしていますね(笑)。
菊池:住谷さんにぴったりです(笑)。
(会場笑)
渋沢:本当にかわいい。
菊池:カフェのメニュー以外にも、シネマネコ、グッズ展開しています。金ちゃんと銀ちゃんをモチーフにしたTシャツ、クリアファイル、タンブラーですね。これからもどんどんいろんなグッズを作っていこうと思っています。
住谷:素敵ですね。
菊池:映画だけじゃない部分で、魅力を伝えていきたくて、いろんなキャラクターを出していきたいなと考えています。今、いろいろ描いてもらっていますね。
渋沢:本当に「青梅全体を盛り上げている人」という感じですね。
住谷:本当にそう感じます。
菊池:映画館ができたことで、青梅の魅力を発信できて、みんなに来ていただけるのは、一番うれしいですす。もっとどんどん発信していきたいなと思っています。
住谷:すごくいいですね。アットホームじゃないですか。
菊池:すごいアットホームですね。
住谷:1つの居場所みたいになっていますよね。
菊池:それも1つコンセプトにあって、映画館という場所をコミュニティを形成する場所にしたいなと思っています。コロナでなかなか厳しい状況になっているんですけれども、やはり人と人との触れ合いがすごく大事。そういった場所を映画館で築きあげられたらいいなと思っているので。
地域の公民館みたいなかたちで、交流の場として、みなさんに気軽に利用してもらえればなと思っています。
渋沢:素敵。今後も楽しみですね。
住谷:今後菊池さんがやってみたいことなどを、最後に聞けたらなと思うんですけど。
菊池:弊社的には地元の盛り上げ役になりたいという会社なので、地域にないものを作る。飲食店だったり映画館だったり、いろんなものをどんどん作って、エンタメ的なもので地域が活性化して、元気になればいいなというのがまず1つ。あとは映画を撮りたいなという野望があります。
住谷:すごい。
菊池:自分が(やるのが)プロデュースかディレクションかわからないんですけども。
(会場笑)
住谷:(自分たちをアピールしている渋沢氏に)何をされているんですか(笑)。
菊池:ぜひ2人にも出演していただいて!
(会場笑)
渋沢:いいんですか? いいんですか?
菊池:ぜひ!
(会場笑)
住谷:じゃあちょっとしたカップル役で(笑)。
菊池:いやいや、主演級でちょっとやりたいなと思います。
住谷:80万円(笑)。
渋沢:80万円。オッケー、払います(笑)。
菊池:そうですね。地元を舞台にした映画ってけっこうあるので、青梅のオールロケで、作品を1本撮りたいなと思っています。
渋沢:それ絶対喜びますね。
菊池:今、企画を練っていて、自分の俳優時代の仲間や演出家もいるので、そういうのをまとめて青梅を舞台にした映画を1本作って、自分の劇場で流してみるのが夢ですね。
渋沢:素敵だなぁ。
住谷:今、ワクセルでも映画プロジェクトを立ち上げて、それこそ支援させていただいたり、発信とかもいろいろさせていただいているので、そういったところでもつながれたらうれしいです。
菊池:めちゃめちゃうれしいですね。
渋沢:楽しみですね。
住谷:どんどん広がって行きそうで楽しみにしています(笑)。今日はゲストに菊池康弘さんに来ていただきました。今日はありがとうございました。
一同:ありがとうございました。
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