「段ボール箱」からすべてが始まったUnipos

斉藤知明氏(以下、斉藤):Uniposとして初めて「すごい仕事の舞台裏大賞」と称したアワードを実施して、初年度の今年は4社の皆さまのお話を伺いました。

(参加者の話の内容の)抽象度を上げると、僕は「知る」ことと「変化する」こと、そしてそれによって「成果を出す」ということに甘んじずに、本気で継続的にやり続けていらっしゃるんだと感じました。「泥臭いね」ということを途中で言っちゃったりもしたんですけれども、やり続けていらっしゃる方が本当に多かったなと思うんです。

お話を聞いていて、僕らの段ボール(田中氏が「社員のいい行動」を共有するために、段ボール箱を切り抜いて作った「投票箱」からUniposというサービスは始まった、という話)からこうやって広がっていったというのは、本当に感慨深いなとあらためて思っています。Unipos代表の弦さんは何か感じたことはありました?

田中弦氏(以下、田中):そうですね。僕も経営していて「会社って、パッとは変わらない」と思っています。社員に問いかけるだけだとぜんぜん変わらない。本日お話を伺った、伊勢丹新宿店さん(※以下、伊勢丹さん)の事例も(ハイフライヤーズで導入している「Unipos有給」を指して)有休にしたという事例からも伺えるように、「巻き込む」というか、「しゃぶり尽くす」じゃないけど、徹底的にやらないとなかなか変わらない、とあらためて思いました。

「戦略ありきだからこそ、組織風土を作っていかないといけない」

斉藤:そうですね。僕、今日もう1個すごく印象的だった事例があるんです。時間に限りがあってなかなか触れられなかったんですが、伊勢丹さんの事例について。当たり前なんですけど、めちゃくちゃ事業のことを考えていらっしゃるんですよね。で、組織作りって事業の根幹じゃないですか。

中竹(竜二)さんも「組織風土が戦略に先立つ」とおっしゃっていましたけど。今回の伊勢丹さんグループのお話で「戦略ありきだからこそ、組織風土を作っていかないといけない」とも感じたんです。戦略を実行するためには、組織を作っていかないといけない。その組織を実行する(作り上げる)ために、人の声に耳を傾けていくことを、各社さんがやっていらっしゃる。

ハイフライヤーズさんだと「保育園は保育士の人数によって受け入れられる子どもの人数が変わります」と、明確にトップラインが決まっています。売上の最大値を決める要素なのに離職率が33パーセントで、これは大きな課題だから改善していきたいという方針が立ちました。

伊勢丹さんにおいても、顧客単価を向上させるために何ができるのか。多様なニーズに応えるために、多様なスペシャリティをぶつけないといけない。この事業上の課題を組織で改善していった、という流れでした。

僕らも今、セールスやカスタマーサクセスをしていく中で、人事や組織作りに携わっているみなさんが、事業について「だからこうしていかないといけないんだ」と語っていただくケースが、働き方改革の波の後ぐらいからすごく増えてきたなという感覚があります。

「カルチャー」という抽象的なものこそ、ビジネスに影響を及ぼす

斉藤:弦さん、やっぱり組織作りというのは事業作りなんですかね。

田中:そう思いますよ。さっき中竹さんも「コアはやっぱり文化だ」という話をされていたんですけど。今までだと、やっぱり人事制度を入れたり運用したり「組織をどうやって変えようか?」という話を、別のプロジェクトで人事部の方が独立してされることってけっこう多かったと思うんです。

最近だと、結局それが売上の拡大につながったり、組織が良くなるとお客さんの体系も変わっていくとか。いわゆるカルチャーとか行動といった根源的なものを変えると「波及するところはドでかいよね」って話だと思うんです。

それを統合して考えていくと、組織風土を作っていくことで「あれ、本当に変わったな」っていう“果実”(目に見える成果)が得られることが見えてきたのかなと。前だとカルチャーとかってなんかフワフワして、言ってみれば「そんなもん、食えませんよね」という反応を、3年ぐらい前にUniposを紹介した時とかってけっこう言われたんですよ。

斉藤:うん。言われました。

田中:だけど最近では「それってすごく(組織風土作りに)直結してますよね」という反応が増えてきた感覚があって。「経営戦略やビジネスにダイレクトに響いてくるものなんだな」という感じで受け止めていただくことは、多くなってきたと感じます。

トップダウンではなく、個人が主体的に動く組織は強い

斉藤:僕は、シンプルに日阪(製作所)さんのエピソードが印象深かったです。まだ役職のない30代の女性。「男女」という話ではないとは思うんですけれども、役職がついてない方がミッションに参加して主導するのって、たぶん5〜10年前だと「え?」って感じだったと思うんですよ。でも、この人たちに任せてみた結果、たぶん経営者がやるよりも大きな成果が生まれたなという話だと思うんです。

組織風土が社員の個の力の最大化、それによるコラボレーションの力の最大化と捉え直した時に、すべて経営者が決めて「あと(社員)はもう手足(のように動く流れ)でお願いします」というチームと、一人ひとりが「こうやっていくんだ」というふうに現場で改善してイノベーションを起こしていくチームだと、そりゃあ後者のほうが強いですよね。そういう当たり前のところに、やっと帰結し始めたってことなんだろうなと考えてます。

田中:そうですね。例えばコロナの前を考えると、飲み会に行った時に、もちろん仕事の愚痴も言うんだけど、一方で「いや、うちの会社はね」とか、会社を主語にして仕事の話もしてたと思うんですよね。

斉藤:してましたね。

田中:だから今までも、そういう思いやいろんなドラマは、きっと何か起こっていたはずです。ただ、それが酒の場なので雲散霧消しちゃうというか、消えていってしまうんです。いわゆる思いやドラマを紡いでくことに真剣に取り組むと変わってくんだなっていうのを、今回のみなさんの取り組みで、けっこう見えたなとあらためて思いました。

斉藤:紡いでいくっていいですよね。人事の方とお話しすると「うちの会社はもっとその手前なんですよね」とおっしゃる方が、ちょこちょこいらっしゃったりするじゃないですか。

いい仕事を成し遂げた時、会社に対する愛情が芽生える

斉藤:……言葉を選びますけれども、いわゆる「『主体性を出して』って言っても出してくれない人が多くって」と思ってしまうケースがあるなと思うんです。導入していただいたお客さんから、これを聞くと一番ニヤっとするんですけども「意外とありました。うちの中での素敵な貢献」って。

田中:そうそう。

斉藤:これって人の力を信じる、性善説・性悪説マネジメントという話もあるかもしれないですけれども。(素敵な貢献は)意外とあるし、そこに目を向けてちゃんと引っ張り上げるっていう活動だし。

サーバントリーダーシップとかも流行ってますけれども。何か芽を出した人を撃つんじゃなくって、全社を挙げてすごい力で支援していけるというのが、ある意味、経営者や人事の役割に変わってきています。そこをうまく捉えられるか・取り組めるか、というのはかなりポイントだなと思いました。

まさに伊勢丹さんの例でいうと、もちろん「組織を変える」というのは経営の意思決定だったと思うんです。外商の人たちと店舗の人たちは、ぜんぜん違う強みを持っていて。(組織風土を)培ってきたからこそ「じゃあ(両者を)つなげればいいじゃん」と支援した、という見方を僕はしたんですよね。そこがこれからの組織作りの肝なのかなと思います。それが、我々が「すごい仕事の舞台裏大賞」を開催した意図でもありますけれども。

田中:さっき中竹さんが「愛情とか愛について語ったことがあるか?」というアンケートをされてましたけど。会社に対する愛情って、実際に持ってるんだと思うんですよ。

あと、例えば入社した時とかいい仕事を成し遂げた時って、やっぱりそういう愛情は絶対に出てる。だからこそ、ちょっと悔しい思いをする時もあるけど、それでも「やっていこう」とか「働いてて楽しいよね」と思える。今日登壇いただいた会社さんだと「それもうまくマネジメントに使っちゃえ」って感じがしました。

すごい仕事・いい仕事が世の中に広がっていく世界を目指して

斉藤:なのであらためて、僕らのUnipos社としての役割は、こういういい行動を「教える」んじゃなくて、たぶん「発掘していくこと」なんですよね。

発掘して、シェアして、シェアされることで「やって良かった」と思う人もいるだろうし。シェアされるのを見たことで「僕も!」と思う人が出てくると、どんどんいい仕事や行動、成果が伝播していく。やっぱり、そういう世の中を作れるといいなと思っています。僕はプロダクトの責任者として、そこに責任を持って進めていきたいなと思いました。

田中:まとめましたね(笑)。

斉藤:まとめました(笑)。

田中:まだ100人ぐらいの参加者が残っていらっしゃるので、どうしようと思ってました(笑)。

斉藤:それではみなさん、あらためてご参加いただきありがとうございました。「すごい仕事の舞台裏大賞」は、今年限りではございません。今年を機会に、来年、再来年と続けていければと思います。

斉藤:こういう行動が社内外にシェアされていくことで、すごい仕事・いい仕事が世の中に広がっていく、そういう世界を作っていきたいなと思いながら、このUniposをこれからも運営してまいります。

諸々至らぬ点もあったかと思いますし、これからもあると思いますけれども、ぜひみなさんの変わらぬご支援を賜われますと幸いです。本日はお時間を頂きまして、ありがとうございました。またぜひお越しください。