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組織文化は戦略に勝る―ウィニングカルチャーをつくる組織の本質―(全1記事)

負け癖のあった日本ラグビーを変えた、外国人監督のこだわり 勝ち癖作りで大切なのは「勝敗の事実」より、そこに対する感情

コロナ禍でのテレワーク浸透により埋もれた「組織の素晴らしい貢献」を見える化するため、2021年4月よりUniposが開始した「すごい仕事の舞台裏大賞―Unipos Award―」。本記事ではその中から、株式会社チームボックス代表取締役の中竹竜二氏による基調講演「組織文化は戦略に勝る―ウィニングカルチャーをつくる組織の本質―」の模様を公開します。

「組織文化は戦略に勝る―ウィニングカルチャーをつくる組織の本質―」

中竹竜二氏:みなさん、おはようございます。今日はよろしくお願いします。(「すごい仕事の舞台裏大賞2021」)受賞企業の方々、関係者の方々、おめでとうございます。そしてご視聴いただいているみなさま、日々たくさんの仕事でお疲れさまです。

このあと具体的な事例紹介がありますが、私からは簡単に、理解しておくとより(大賞の)良さがわかる、組織文化についてお話しできればと思っています。

アワードのタイトルが「すごい仕事」ではなく、その「舞台裏」ですよね。実際、すごい仕事ってたくさん生まれるわけですが、なかなかフォーカスが当たらないのが、この舞台裏。ここで何が起こっているか? というと、結局は「チームで動いている」ってことなんです。みんなで成し遂げる。みんなで成し遂げるから、表面だけじゃない「舞台裏の部分」が浮かび上がってくるんです。この「みんなで成し遂げる」ということを生み出した、独自の組織文化が今回、表彰される企業の方々のエッセンスだったと思います。

なので私からは、具体的な話というより組織文化の話をさせてください。私も過去にUniposさんのセミナーには登壇させていただいてるんですけど、参加者のみなさんが非常にポジティブで、雰囲気がいいですよね。今日は表彰の場ですけれども、この場もぜひ「みんなで成し遂げる」というか「作り上げたい」と思ってます。

ですので、なるべく私と参加者のみなさんとの双方向で進めていきましょう。私がたくさん問いを投げますので、ぜひみなさんの中で考えて、私と対話してる感じになっていただきたいなと思います。

「組織文化」に対する、中竹氏からの質問

今日は「組織文化」という言葉を中心に話をしますが、ここでみなさんに最初の質問です。「『組織文化』という言葉を聞いたことがありますか?」。こう聞かれた時に「聞いたことあるな」という方は多いと思います。これはたぶん「Yes」だと思いますので飛ばしますが、このあとの質問から投票機能を使ってご参加いただきたいと思います。

じゃあさっそくいきますね。まず自分自身がなにかを語る時に「やっぱり、うちの組織文化はこうだよね」みたいな感じで「組織文化」という言葉を使ったことがありますか? 

(参加者の投票を指して)いいですね、どんどん答えていただきありがとうございます。では結果を見ていきます。7割の方が「使ったことがある」という数字が出ました。

次はこれを聞いてみましょうかね。「組織文化は大切だと思うか?」。これはいかがでしょう。……はい、ありがとうございます。95パーセントのみなさんに「大事だ」と言っていただきました。

ではこれはどうでしょうか。この質問は投票はせず、みなさんの中でイメージしてください。「組織文化って何ですか?」と聞かれた時に「明確に定義できるかどうか」。

さらに次の質問です。「組織文化を意識して仕事しているか?」。ふだんから「組織文化を意識しているぞ!」という方は、どれぐらいいるでしょうか。……はい、ありがとうございます。これはけっこう分かれて、57パーセントと43パーセントになりました。

じゃあ一番ハードルの高い質問です。「私は人生・キャリアの中で、組織文化を変えた経験があるぞ」という方。おっ、さすが。「Yes」の方もけっこういらっしゃいますね。私もいろんなところでこの質問をするんですが、いつもは1:9ぐらいで「Yes」が少ないんです。でも、さすがですね。今日は3割以上の方が「Yes」と答えてくださいました。

これは質問じゃないんですけども、(みなさんに)考えていただきたいことがあります。「組織の中で目に見える・目に見えない」。それぞれいろんなものがあると思います。「目に見えるもの」は、我々の中では例えば数字、業績であったり戦略。あと人事の配置、リソース。こういうものは全部見えるんですけど、「目に見えないもの」も実はたくさんあるんです。

ふだん仕事をしている中で、みなさんは「どちらを重視していますか?」。これ、ぜひ考えてみてください。資本主義になったことで当然なのですが、どうしても目に見えるものを中心に、組織は動いてきたわけなんです。

組織文化は、意外と「愛」と似ている?

じゃあ一旦、組織文化は置いておいて「愛」について聞いてみましょうか。「愛という言葉を聞いたことがある?」、これ大半の方がそうだと思いますが(笑)。一方でみなさん「愛という言葉を『自分自身が』ちゃんと使ったことがあるか?」。「愛とは」とか「私の愛は」みたいなね。

みなさん、積極的な回答ありがとうございます。これは興味深いですね。国や文化によって、答えはだいぶ変わるでしょうね。今回は、2/3は使ったことがあって、1/3が使ったことがないという結果になりました。

どんどんいきますね。この質問はあえて聞きませんが「愛は大切だと思うか?」「愛を明確に定義できるか?」。

じゃあ次の質問は答えていただきましょう。問9「愛を意識して生活しているか?」。いかがでしょうか。……はい、みなさん協力ありがとうございます。かなり競りましたね、参加者の7割の方に答えていただき、53パーセントと47パーセント。おそらく多くの方が「愛は大切だ」と思いながらも、実際にそれを意識して生活してるか? というと、けっこう意識してなかったりする。

実は今回、私は組織文化の話をしますが、それって意外に「愛」という概念と似てるんじゃないかなと思ってるんです。大切だけと思っているのに、公言することをためらったり。定義は人によってバラバラで、答えがない。なんとなく「大事だよね」と思っているけど、扱いづらい。

組織文化って、最近になってよく語られるようになったんですけど「文化は戦略に勝る」といった話、聞いたことありますかね。これは誰の言葉か? というと、戦略とかマネジメントの神と言われた(ピーター・)ドラッカーの言葉です。「ずっと私は『戦略やマネジメントが大事』と言っていたんだけれども、実はこの根底にある文化のほうが大事なんですよ」と。数あるドラッカーの言葉の中ではあまり知られていない方かもしれませんが、ドラッカーの中でもかなり強い思想であったと言われてます。

リーダーシップ開発においても、結局はリーダーのストーリー・ナラティブを見ていくと、リーダーが「戦略をうまく遂行した」というよりも「ちゃんと文化を掘り起こしていった」ということがリーダーシップを発揮する重要な要素だと言われてます。

一方でこれはマネジメントの世界でも言われてますし、組織文化を語る上でよく言われているのが「組織文化は○○なくして作れない」。ここに当てはまるのが「戦略」です。「戦略」なくして作れないんですよ。矛盾するような言葉かもしれませんが、こういったことが言われてます。なので取り扱いにくいんです。

目の前の学習者が良質な答えを導くには、良質な問いが必要

今日はみなさんに、たくさんの「問い」を投げたいと思います。建付けとしては「基調講演」という場をいただいてますが、なにか答えがあるというよりも、みなさんの中にたくさんの問いが生まれるといいなと思っています。

なぜかというと、我々がふだん生活する中でいいアイデアが思い浮かんだりする時は、実はその根底にあるみなさんの「問い」が大事だったりするんです。これはなにかアワードを取る、賞を取るといった人にも共通している思考パターンです。研究者など、多くの優秀な人たちは「答えを探している」というよりも常に「たくさんの問いを持っている」んですね。ということで今日は、私の答えをみなさんに届けるというよりは、たくさんの問いが生まれればいいなと思ってます。

では今回のテーマは、組織文化について。「どんな問いが生まれますか?」と、みなさん頭の中で思い浮かべてください。このあと、みなさんにまた問いを投げていきますが、「組織文化はどれぐらい大切なのか?」とか「組織文化とはそもそも何なのか?」とか。これも組織文化ですけど「勝ち癖はどうやったらできるのか」とか。「組織文化と企業戦略の関係はどうなのか」。これは全部が問いですよね。

先ほどお話ししたように、問いと答えは非常に密接な関係があります。ここで私のバックグラウンドをお話しすると、スポーツのコーチをずっとやってきましたが、コーチだけじゃなく“コーチのコーチ”もやってきました。で、今はコーチのコーチを増やすために“コーチのコーチのコーチ”という立場で仕事をしてるんです(笑)。

コーチをやる時もそうですし、コーチのコーチを育てる時もそうなんですけど、結局は「良質な問い」を出してくださいというのが根底にあります。選手であったり、目の前の学習者が良質な答えを導くには良質な問いが必要です。だから、あなたが良質な答えを出すのではなく、良質な問いを生み出してください、と。

おもしろいことに、みなさんのふだんの生活もそうだと思いますが、「この人と一緒にいるとなんか楽しいな」っていうのって、だいたい良い問いが立ってるわけですよ。「この人といてもあんまり面白くないな」と思うのは、そこにある問いがけっこう拙ないものだったりするときなんです。そう考えるとやっぱり、良い問いを出す人とは良い関係性が生まれるので、ぜひみなさんにも、問いの大切さを感じていただければと思います。

「人」と「コト」の間には、見えない文化があるのでは?

そもそも今日のテーマは組織文化ですけども、私自身が「なぜ組織文化にフォーカスを当てるようになったか?」という話を、簡単にしておきます。私はラグビーというスポーツをやってきましたが、それとは別にサラリーマンも経て、研究者も経て。リーダーシップとかフォロワーシップ、コーチングとか自己認識。このように「人」を扱う領域にずっと携わってきました。

それと同時に、マネジメントですね。私自身、さまざまなフレームワークを作り……そもそもフレームワークを作っていくことが専門の一つだったんですけども、それをいろんな企業・チームに導入してきました。一時期は「人を育ててコトをうまく活かせれば、なんとなくうまくいくんじゃないか?」と思ってたんです。でもやっぱり、うまくいかないケースも見えてきたんです。

その時に「実は『人』と『コト』の間や周辺にある、見えない文化っていうのがあるんじゃないか? これをちゃんと取り扱っていかなければ、コトがうまく働いても変わらないんじゃないか?」という疑問を感じました。そこから、この組織文化にフォーカスを当てています。私はイギリス留学中に、組織文化人類学であったり社会学なんかに、たまたま触れた経験があったので、それが今は役立っています。

「組織文化とは?」という、この問い。難しいんですが、さまざまな賢者が「解」を出してくれています。例えば、山本七平さんという方の書籍『「空気」の研究』。非常に参考になりました。組織文化とは「空気」だと言い切ってくれたんですね。確かにそうだなと。あと「組織文化とは『組織の好き嫌いだ』」と。これは楠木建先生という経営学の先生が言い切ってくれています。

いろいろとひもといていくと、組織が持っている「暗黙の問い」。これも実は組織文化だと言われてます。私は書籍『ウィニングカルチャー: 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』の中で、みんなにわかりやすく「『組織がなんとなく共有し、なんとなく大事にしている価値観や雰囲気、考え方』が組織文化だ」と定義づけました。

「知る」「変える」「進化させる」の3つのフェイズ

じゃあどんな位置づけか? というと。最近、ティール組織でも有名になったインテグラル理論という、ちょっとアカデミックな話になります。世の中は「目に見える領域」と「目に見えない領域」つまり、内面・外面があると。それは個人の話と集団の話があるんですけども、インテグラル理論に基づくと、(スライドを指して)おそらく左下象限と言われるところ。「私たち(we)」の「見えない」部分ですね。

あとはこういったピラミッドのモデル。これは私がよく使うフレームワークなんですが、組織文化はどこにあたるか? というと、一番下なんです。「成果」というものは誰にとっても見えます。成果を生み出すための「サービス・プロダクト」も見えます。が、日々みなさんが働いてる中で生まれる「言動・習慣」といったものは、ちょっとずつ見えなくなります。当然ながら「仕組みや制度」も見えにくくなりますが、それを支えているのが実は「組織文化」だと思ってます。

私は今、さまざまな企業でCCO「Chief Culture Officer」という立場でサポートをしています。その中で、私は組織文化を3つのフェイズに分けて仕事をしています。

どういうフェイズか? というと、まずは「知るフェイズ」。「自分たちの組織文化がどういう組織文化なのか?」。要するに“現在地点”を明らかにする。そこから「変えるフェイズ」にいきます。よく相談を受ける時に「うちの組織文化を変えたいから、3ヶ月で変えてくれないか?」みたいなこと言われるんです(笑)。いきなり「変えるフェイズ」をやりたがる経営者の方がいるんですけど、ちょっと待ってくださいと。

「まずどんな状態かちゃんと整理してから、出発点を決めましょう」と。で、変わったあとに、きちんと進化させる。メンテナンスとも言われますが「進化させるフェイズ」があると思ってください。

組織文化は自分たちだけでは気づけず、さまざまな力が必要

領域でいうと、人間個人で見ても組織で見てもそうなんですけど「無意識的な領域」と「意識的な領域」があります。この「無意識的な領域」は見えないんですね。だからこそ「知るフェイズ」が大事になります。ぜひ今日ご参加の方は、次の問いに答えてみてください。「今のあなたのチームにはどんな組織文化がありますか?」。

目に見えて「意識的」って言っている範囲と、そうじゃないところがあります。特に我々の“癖”ってそうじゃないですか。しゃべり方の癖もそうだし、仕草の癖も気づかないんですよ。この「無意識的な領域」に実は、さまざまな自分たちの求めてるもの・そうじゃないものがあります。

特に、私が企業でCCOとして仕事をする時には「みなさんにとって不都合な悪習慣を洗い出し、それを良い習慣に変えていこう」「良い習慣があるんだったら、その習慣はさらに進化させましょう」というアプローチを取ります。

ですが厄介なのは、組織文化というのは自分たちだけでは気づかないんです。それにはさまざまな力が必要です。今、それを見えるものにするためにたくさんのツールが出ております。診断ツールと言われるものや、組織のサーベイなどです。私のチームボックスという会社では「TB Scan」という診断ツールを提供しています。チームボックススキャンということで、組織を33の要素に分けて、現状を洗い出します。これがすべてではないんですけども、こういったかたちで、一旦自分たちの組織文化を可視化してみるのも大事です。

組織文化によって、使われる言葉が違う

あと、こういったサーベイを使わなくても見えてくるものがあります。それは「言葉」です。実は組織文化によって、使われる言葉が違うんです。これは実際の例なんですけど、非常におもしろかったですね。

私もさまざまな企業を支援していますが、これはある行政機関での話です。「セミナーをやって、人材開発をやりたい」と言うので「課長やマネジメント層をどうしたいというイメージがあるんですか?」と言ったところ「自立させたり、自走させたいんですよね」と。

それならキーワードは「自立・自走」でいきましょうよ、と言ったんですが、「いやいや、うちではこの言葉は使えないんですよ。『主体性』って言葉に変えてくれませんか」と。「なんでですか?」って聞くと「『自立』とか『自走』というと、勝手にやりそうなイメージがあって使うのが怖いんですよ。しかも今まで(そういった言葉は)使ってこなかったんです」。

これ、良いとか悪いとかではなく、自分たちの中で「使えない言葉」っていうのがあるわけです。私もそこは否定せず「そうなんですね、わかりました。じゃあ何が一番響くんですか?」って聞いたら「『主体性』って言葉を使っていただくと、こちらとしても非常に助かります」と。これが1つの文化なわけです。「本当に伝えたいことは『自立』や『自走』なんだけども、我々の組織の中で使うと語弊が出るかもしれない」。これは文化ですよね。

他にも民間企業の例で、外資の医療系。同じくマネジメント層に向けた内容だったんですが「『リーダーシップ』という言葉は使いたくない。『自己成長』にしてほしい」と。「えっ、どうしてですか?」って聞くと「『リーダーシップ』というのは、我々の会社にとっては“本当の上位の人”しか使っちゃいけない」とかね。あと「取り組みが我々の取り組みと違うので」とか。ちょっと縦割り感のある文化だな(笑)、というのがわかります。

そういった一つひとつ取ってみても、使われる言葉によって「その組織が縦割りなのか」とか「本当に仲間を大事にしようとしているんだ」「ちょっとした誤解もダメなんだ」みたいなことがわかります。

明確にすべき「あなたが考える『最悪な組織文化』って何か?」

この講演の前に、Uniposの田中(弦)社長と打ち合わせをしました。その際にご本人がおっしゃってたんですけど「私は『社長』って言われるのがイヤなんですよね。あと『田中さん』って言われるのもイヤで。『弦(ゆづる)さん』ってみんなに言ってもらってるんです」って。これも文化ですよね。社長自らそうして、みんなが「さん」づけで言い合う。

「役職で呼ぶ」のか「さんづけで呼ぶ」のか「ファーストネームで呼ぶのか」って、これは組織文化がかなり作用しています。それによってどんなコミュニケーションが生まれるか? っていうのが、まさに根底にあるところなんですね。これはふだん当たり前だと思っていると気づかないわけです。

となると、このような組織文化って自分たちだけではなかなか気づきづらいので、外からの目線が必要です。あまり望ましくない組織文化を変える時に「本当のこと」を言われると、心がざわついちゃうんです。「いやいや、そんなことない」って。だからこそ「知るフェイズ」が大事で、実は「知るフェイズの盲点」は「自分たちの組織文化がどうか?」って話なんです。

見るべきポイントは「今、どんな状態か?」という話と、「我々はどういった組織文化を目指しているか?」だけではなく「どんな組織文化がイヤなのか?」っていう、この両方が大事になってきます。なので「知るフェイズ」では、ぜひ「自分たちの組織文化が今こういう状態で、こんな組織文化を我々は目指し、こんな組織文化は絶対イヤだ」。この2つをちゃんと明らかにしてほしいなと思います。ふだん聞かれないと思いますが「あなたが考える『最悪な組織文化』って何なのか?」。これを明確にすることが大事です。

自分たちの琴線に触れるのは何で、何に麻痺しているのか?

私もいろいろな組織文化の改革について、自分がやったり、傍で見たりしてきました。私のフィールドでいうと、日本のラグビー文化も変わったんですよ。転機は明確です。エディー・ジョーンズというオーストラリアから来た監督が、バーン! と変えてくれたんです。要するに「外から来た人」が一気に変えました。

変えるためのプロセスは、まず知るところから始まりました。「負け癖」のあった日本ラグビーの中にも、明確に彼がポイントを当てたところがあります。勝ち癖を作る時に大事なのは「自分たちの琴線に触れるのは何で、何に麻痺しているのか?」。エディー・ジョーンズという監督は、勝利にこだわってたんです。

日本のラグビーでは「負けること」に対して麻痺している感覚がありました。最初の試合で、フランス選抜との試合に負けたのに笑っている主将を見て、記者会見の場でテーブルをひっくり返すかのごとく怒鳴り上げたんですね。ここから始まったんです。我々は「フランスに負けるなんて当たり前だよね」と思ってて、悪気もなくちょっと油断した照れ笑いをした瞬間、彼の矢が刺さったわけですね。

実はここに、我々がふだん気づくことのできない組織文化の「知るフェイズ」があります。実際に勝ち癖を作っていこう、文化を変えようとした時には、勝っているとか負けているといった事実ではなく、それに対する「感情」が大事なんですね。

“勝ち癖”がある組織で、常に立っている問い

最後に「勝ち癖とか良い組織文化を作るにはどうしたらいいか?」というHow to、What toのところ(「答え」)が気になるかもしませんが、今日はあえてみなさんに「問い」を投げかけたいと思います。私自身は実際に、世界中のウイニングカルチャーを持っている組織を見てきましたが、それらの組織文化には「どうやったら勝てるのか?」とか「何すれば勝てるのか?」っていう問いが、実はそんなにないんですよ。

では、どんな問いが常に立ってるか? というと「自分たちにとっての『勝ち』とは何なのか?」「そもそもなぜ自分たちは勝たないといけないのか?」。この問いが常に優先されるわけです。これね、厳しいんですよ。サイモン・シネックという研究者も言っていますが、そもそも自分たちのWhyを考えることってキツいんです。ですが、ぜひみなさんにとっての勝ち……単なる「売上を上げる」とか「成果を上げる」ではなく、どこに「自分たちの勝ち」があるのかを考えてみてください。

リオネル・メッシとかそういった人材を輩出したチーム・FCバルセロナの「勝ち」は「ヨーロッパ選手権で勝つ」とかではないんですよ。「More than a Club」「自分たちがクラブ以上の存在になる」ということを、本当の勝利に掲げてます。しかもそれを、何度も何度も話し合うんですね。

組織文化は「手触り感のある行動・習慣」からしか変わらない

ぜひみなさんの「勝ち・勝利とは何か?」。そして「なぜ勝ち続けねばならないか?」を語り合ってほしいなと思います。今日は答えではなく、みなさんに問いを投げかけて終わりたいと思います。

このあと実際に、受賞された方々の具体例を聞くと思います。具体的は「変えるフェイズ」なので、ぜひそれぞれの企業さまの中にあった「悪習慣をいかに良い習慣に変えていったか?」。ここにフォーカスを当てて、お話を聞いていただきたいなと思います。

そして先ほどの最後の「変えるフェイズ」はどこが大事か? というと。(スライドを指して)このカルチャーピラミッドで言うと、結局、組織文化を変える時は真ん中なんです。要するに「手触り感のある行動・習慣」からしか変わらないんですね。

もちろんそれに伴って制度や仕組み、サービスやプロダクトも良くなりますが、まず着手するのは、今日の(田中)弦さんの(田中氏が「社員のいい行動」を共有するために、段ボール箱を切り抜いて作った「投票箱」からUniposというサービスは始まった、という)話だと、段ボールから見出して「『ありがとう』を言おう。そこから制度・仕組みを作っていこう」。そしてサービスが変わっていく。組織文化を変えるため・成果を出すためにも、この真ん中にある言動・習慣を大切にしていただきたいなと思います。

ということで、私の話はこれにて終わりたいと思います。もしこのカルチャーに興味のある方は「ウイニングカルチャーラボ」というものがFacebookにあります。また、問いかけに関して興味のある方がいらっしゃれば、私は毎日、みなさんに問いを投げてます(中竹氏のVoicy『成長に繋がる問いかけコーチング』)。朝5時に5分ほど、問いかけをしておりますので、興味があればそちらをお聞きください。

ということで、ご清聴ありがとうございました。

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