2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
ミッドナイトブレックファスト 喜多紀正氏・岡橋惇氏インタビュー(全1記事)
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ーー本日は11月に公開の「メンタルケア特集」の1つの記事としてインタビューさせていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
喜多紀正氏(以下、喜多):よろしくお願いします。
ーーまず最初に、御社(ミッドナイトブレックファスト)が運営されている「muute(ミュート)」というアプリ。こちらはメンタルヘルスにも深い関わりがあるサービスかと思います。ですので、お二人がメンタルヘルスに注目されたきっかけ・背景について教えていただけますでしょうか?
岡橋惇氏(以下、岡橋):実はこのmuuteというアプリ、もちろんメンタルヘルスのセルフケアアプリとして打ち出しているものの「メンタルヘルスのうつ病を解決したい」とか「PTSDを解決したい」といった文脈では開発していなくて。
メディカルアプリ・ヘルスケアアプリというよりは、あくまでも日常的にセルフケアをできるような「ライフスタイルアプリ」として開発しているという背景があります。
muuteは「AIが思考と感情を分析してフィードバックをくれるジャーナリング・アプリ」として開発していて、当初のターゲットは20代前半のZ世代の方を想定しております。
そこでこのアプリを開発する前に、Z世代の方々にお話を聞いていって、計50〜60名の方にインタビューをさせていただきました。あと、これはコロナ禍前からスタートしたプロジェクトだったので、実際に家にお邪魔して2時間ぐらい一緒に過ごさせていただいて、「どんなニーズがあるか?」「どんな課題を抱えているか?」をリサーチしていきました。
そんな中で、彼ら・彼女らが「自分らしく生きたいけれども、自分についてよくわかっていない」という課題を抱えていることが、おぼろげながら見えてきました。
また、その周辺にある「サブ課題」としてもいろんなものが見えてきました。例えば「SNS疲れ/離れ」みたいなところ。SNSでのコミュニケーションはすごくうまいんだけれども、やっぱり他人の目が気になってしまって、なかなか本音を言えない。
あと、我々が「自己の空洞化」と呼んでいますが。SNS上で例えば、Twitterも複数のアカウント持っている、Facebookは上の世代とコミュニケーションするために使っている、LINEは友だち用で、Instagramも複数アカウント持っている、という感じで。本当にいろんな顔を使い分けているなっていうのが、わかったんです。
しかし、いざ自分に目を向けた時に「私って本当は何がしたいんだっけ?」「どういう人間なんだっけ?」というところに、ぽっかりと“穴”が空いてることがわかってきました。
あと、「多様性と個の時代の自分らしさ」と言っているのですが、「生き方の自由度」とか「多様な価値観で生きればいいよ」ということが認められやすくなっている一方で、「じゃあ、あなたはどうしたいの?」っていう個性が求められる時代だと思います。
でもそこを探っていくのが難しい時代でもあるので、その辺りの課題を解決したいと思い、muuteを開発しています。
岡橋:あとは「誰ともつながらない」、ジャーナリングをアプリで提供することで「自分と向き合うきっかけ」を提供する内省ツールとして価値を提供できるのではないかと考えた、というのが背景でした。
今おっしゃっていただいた「メンタルヘルス」のところでも、マクロ環境トレンドなどは調査をし、「世界的に、7人に1人がメンタルヘルスに関する疾患を保有している」ということも、リサーチの中からわかってきましたし。
これはコロナ前の数字なので、今は数字が変わっている可能性はあるんですけれども、日本でメンタルヘルスの問題を抱えている方は増加傾向にあります。そういった方々の治療には「カウンセリング」や「通院」「投薬」という対処方法があると思いますが、そこにリソースが足りてないこともリサーチでわかってきました。
なので予防的な措置として「メンタル不調になる前に未然に防ぐ」というところが大切です。いろんなやり方がある中「運動」「食事管理」「睡眠や休息」とか。あとは「人間関係」とか「コミュニケーションをよくとる」というところもあるんですけど。
その1つとしての「マインドフルネス」。中でも「ジャーナリング」に着目しました。日本には、まだジャーナリングをデジタルで提供するサービスがなかったので、それを国内初として開発したという背景もございます。
ーーなるほど。ありがとうございます。では今お話いただいた「ジャーナリング」とは、いったいどういうものか? について教えていただけますでしょうか。
岡橋:ジャーナリングは日本ではまだ一般的ではないと思うんですけども、簡単に言うと「その時、自分の頭にある考えやモヤモヤをとにかく書き出していく」という行為です。頭にある感情や思考を言語化して、言葉として書き出していくことになるので、日記に似ているかなと思います。
ただ「その日あったことを、時系列で書き示していく」という日記に対して、ジャーナリングは「その時の自分が何を感じているか・考えてるか」を、あまり深く考えずにとにかく書き出していく。
そうすることにで、自分の感情や思考が外在化され、それを客観視することによってよりよく理解できたりとか、モヤモヤが晴れたりとか。そんな効果があると言われていて、これは「書く瞑想」とも呼ばれたりします。
ーー「治療の部分」というより「予防の部分」でマインドフルネスに注目されて、そしてジャーナリングをデジタル化していったというお話でしたが、数ある手法の中からジャーナリングを見つけたきっかけは何だったのでしょうか?
いろいろと調査されていった中で、発見されたのか。それとも、元からジャーナリングをご存知で「これをアプリにしたらいいんじゃないか?」と思われたのか。
岡橋:それも両方のアプローチがありました。私自身がmuuteを開発する2年ぐらい前にジャーナリングを知り、自分でやったことがあったという実体験に基づいてるというのが1つあります。
ジャーナリングって本当に簡単で、紙とペンがあればできるものです。ただその時は、一緒にやっていたメンバーと、自分が書いた内容や気づいたことをシェアして互いフィードバックしていた、といった実体験がありました。
この「書き出すこと」と「互いにそれを話してフィードバックを受ける」ことって、すごく相性がいいなと思ったのが、まず1つです。
そして2つ目としては、海外の事例を見ていくと「瞑想アプリ」は非常に多く出てきているんですけれども。そのサブカテゴリとしてのジャーナリングというものが、セルフケアとしてかなり浸透してきているのがわかってきて「この流れは日本にも来るのではないか?」と思っていました。
なので、そういった「トレンドから見たジャーナリング」と「実体験からジャーナリングの効果を知っていた」という、2つの理由があります。
ーー日本ではジャーナリング自体がまだ浸透していないと思います。それを「さらにアプリで」となってくると「AIジャーナリングって、なに?」という感じで、ユーザーに認知されるまでにかなり時間がかかるのかなと思いました。
岡橋:そこは我々の課題でもあって、認知向上のための啓蒙活動であったり、muuteだけではなくてその周り。「メンタルヘルスをセルフケアすること」自体もあまり一般的ではないので。そういうことが一般的になるように、情報発信や啓蒙活動を続けていきたいなと思ってます。
とはいえ「このサービスがどのくらい受け入れられるか?」というのは、正直、ローンチ時点では不安だったんです。でもローンチ直後からSNS、Twitterなどで話題になって、1ヶ月後にはApp Storeのヘルスケア&フィットネスで「カテゴリ1位」を獲得できて。そういった潜在ニーズは大きくあったのかなと、今振り返ると思っています。
ーーありがとうございます。ここまで背景情報を伺いましたが、具体的にmuuteはどういったアプリなのか? について教えていただけますでしょうか?
岡橋:はい。(自分の思考を)書くことで、感情ベースで「その時どう感じてるのか、何を考えてるのか?」を簡単に投稿することができます。
アプリの特徴を「AIジャーナリング」といってるように、書いた内容を我々が独自開発したAIの技術・アルゴリズムで分析して、ユーザーさんにフィードバックを返します。フィードバックにはいろんなかたちがありますが、投稿の感情スコアを計算して、感情の波をグラフ化したり。
あとは「(あなたは)こういう言葉をよく使ってますよね」といった頻出ワードを出してフィードバックすることによって、「私ってこういう言葉を使ってたんだ」とか「けっこう家族のことを考えてるな」「仕事のことをよく考えてるな」という、自分では気づかない傾向を教えてあげるようなフィードバックを返すことができます。
投稿後のリアルタイムで変わっていくものと、あとは毎日更新される「インスピレーション」というフィードバックがあります。
また「インサイト」という機能もありまして。毎週日曜日の午前中に、その週の投稿を統合的に分析をして「この1週間、あなたはこんな感じでしたね」といったまとめの分析を返す「ウィークリーインサイト」というものがあるのと。
あとは、マンスリーでも分析がありまして。その月の1日に前月のまとめとして「1ヶ月こんな感じでしたね」っていうものを「マンスリーインサイト」としてフィードバックする機能が、現時点ではあります。
書くだけではなくて、外部サービスとの連携もありまして。現状ですと音楽サービスの「Spotify」と連携をしていて。最近聞いた曲であったり、アルバム、あるいは昨日聞いた曲で一番エネルギーが高い曲とか、一番悲しい曲を分析して返してあげることによって、音楽視点で自分を振り返るきっかけを提供する機能もございます。
ーー私もmuuteを使ってみて、歩数計と連動してるのがすごくいいなと思っていました。普段はわざわざ歩数計のアプリを開いたりしないんですけど、muuteを見た時に「昨日これぐらい歩いたんだ」などの情報が見られるので、それがすごく便利だなと。
岡橋:「感情」「思考」「行動」の3つの軸で自分を知ることができるうちの、「行動」の部分に歩数が入ってきたり、ログの画面で「どこを移動したか」という経路データも出るようになってるので。それを見て自分のパターンを把握して、傾向を知ることによって、我々の提供価値である「自分をよりよく知る」っていうところに活用していただければなと思ってます。
ーー「AIがフィードバックをくれる」というのが、先ほど岡橋さまが実体験とおっしゃっていた「ノートに書いてそれをみんなで見せ合う」みたいなところを、AIがやってくれるかたちなのでしょうか?
岡橋:そうですね。分析のところとフィードバックですね。インサイトは、文章とインフォグラフィックスでフィードバックが返ってくるんですが、そこの文章生成がすべて自動になっていたり。あと、分析部分もすべてAIが自動で分析して、フィードバックを返しています。
ーー特にこだわられたところとか、「ここの開発めちゃめちゃ苦闘したな」といったポイントはございますか?
岡橋:そもそも「書いた内容に対して、どうフィードバックを返せばユーザーの方が喜んでいただけるか?」というのは、あまり前例がないものだったので苦労しました。例えば、地図アプリとかを作るのであれば、大手テック企業が作ってる「なんとかマップ」みたいなアプリベンチマークとして参考にできます。
しかし、「AIジャーナリング・アプリ」というものが世の中に存在しなかったので、どんなフィードバックを返せばユーザーさんが喜んでもらえるのか・心地いいのか? というところは、AIを作る前にけっこうアナログで検証していって。それをAIに学習させるというところがけっこう大変でした。答えがないところで手探りで始めて、それを自動化させるというところが難しかったかなと思います。
ーーありがとうございます。そういった背景・こだわりから作られたmuuteですが、ユーザーの方は実際にどんな使い方をされてるのかな? どんなタイプの人が使ってるのかな? というのが気になります。
喜多:我々は開発・運用してからもユーザーの方にインタビューしながら、いろいろな声を集めてるんですけれども、いくつかパターンがありまして。
だいたい4つぐらいかな? って思ってるんですけど。1つが、我々がコアバリューとして提供しようとしていた「自分をよりよく知る」という部分に価値を感じる人の中でも「自分の価値観」とか「強み」とかを知りたい人。例えば就活生みたいなイメージの「自分をよく知りたい」といった観点の人が、まず1つ。
もう1つは、そのコアバリューの「自分をよりよく知る」に関して、もうちょっと「自分の感情マネジメント」みたいな観点で。自分の感情と、ほかのコンディションや出来事がどう関係してるのか? に対する予測性を高めたりとか、コントロールできるようになったりとか。そういうことを感じるために使っている人たちもいます。
あとは「日記みたいに使う人」。日記として日々の出来事を記録するとか。さらに、Twitterの裏アカに吐き出すようにmuuteに吐き出すみたいな。「muuteだからこそ、閉じられた世界で誰にも見られずに吐き出してすっきりできるよね」みたいなことに価値を感じてる人。
大きく分けるとそういった4タイプがいるんじゃないかな? って思ってます。
ーーなるほど。人それぞれの使い方や求めるものがあって、そこでセルフケアをすることによって自分を発見できて悩みが解決されたり、深刻になりすぎないようにできたり。そういった効果があるようなイメージでしょうか?
喜多:そうですね。悩みすぎないとか、自己肯定感を高めたりとか、いろんなことがあると思うんですけど。最終的な我々のゴールとしては「自分らしさを一人ひとり受け入れられる」っていうところで。
「自分らしさ」ってポジティブな文脈で使われることが多いと思うんですけど「ネガティブなことも自分らしさだよね」って受け入れられるところが、最終的なゴールにはなってて。我々はそこに向かってるっていう感じです。
ーーありがとうございます。では、muuteのデータから明らかになった「現代社会の共通の悩み」ですとか、お二人がそのデータからお気づきになったことがあれば、教えていただけますでしょうか。
喜多:ちょっと別の答えになっちゃうんですけど、我々はポリシーとして、データをまったく見ないことにしてるんですよ。「プライバシー性」とか「自分だけの空間」っていうことが、ユーザーさんにとっても価値があるし、そこのセキュリティをすごく大事にしていて。なので、データを見たことがなくてわからないっていうのが答えになっちゃいます。
ーーそうなんですね。では、ユーザーの声みたいなもの。例えばTwitterに投稿される「muute使って、ここが良かった」みたいコメントなどは、ご覧になったりされてますか?
岡橋:そうですね。さっき申し上げたように、やはりつながりっぱなしのSNS時代・デジタル時代の中で「つながらない選択肢」としてのアプリに価値を感じていただけてるのか、「誰ともつながらないからすごく安心」って感じてくれている方はいらっしゃるかなと思います。
あと、1つおもしろいなと思ったのは。当初は「このアプリって、あんまりスクショとかされてシェアされないだろうな」と思っていたんですけれども、意外とスクショ画面をシェアするユーザーさんが多くてですね。
もちろん、自分が書いたジャーナリング内容は人には見せたくないんですが、AIからのフィードバックで、例えば「○○さんはこれに対してこう感じてます」といったものはけっこうシェアされてる方が多いです。
なので「AIのフィルターが通うことでの匿名化された内容は、シェアしたくなるんだな」っていうところに、すごく現代的なコミュニケーションの一面が表れているなと思いました。
ーーすごく不思議ですよね。SNSでつながることに疲れたからこそ「つながらないアプリ」でAIと対話をして自分を発見するけど、それをまたSNSでシェアする。
岡橋:そうですね。なのでたぶん「AIがいることで“場”が保っている」っていうのはあると思います。「閉ざされているけれども、少し開かれている」というような、そこのバランスは大事かなと、運営しながらも思っていますね。
ーーユーザーは当初の狙い通り、Z世代の方がメインだったりするんでしょうか?
岡橋:ボリュームゾーンは20代前半のユーザーさんで、メインは10代後半から30代前半ぐらいまでが50、60パーセント程度だと思います。なので、ターゲットとして想定してた方々に使っていただいてるのかなという実感はあります。
ただ、メインのユーザーさんはそうですが、我々としては幅広い方々に使っていただきたいなと思ってます。このニーズ(「自分をよく知りたい」)というのはあんまり年齢問わず、今の時代だからこそあるものかなと思ってます。
ーーありがとうございます。では続いて、SNSで誰とでも気軽につながれる世の中なったのに、なぜ人は「人間との対話」ではなくて「AIとの対話」に価値を見出すのか? すごく不思議でもあり、でも納得感もあると思っていて。それはなぜだと思われますか?
喜多:そうですね。その「AIと人」みたいな比較についてジャーナリングの観点でいうと、1個違いがあるのは「自分のコメントをします・発言をします」となった時に、誰か他人が介入するのは、けっこうその人にとってはリスクで。
例えば「言ったことがその先どうなっていくか」とか、もしくは「言ったことに対して、相手の感情に対するインパクトを与えてしまうのではないか」とか「ネガティブな感情を与えてしまうのではないか」とか。
そういうことが心の中に存在すると思っていて。なので、そういう負担がそもそもないところに1つ、AIというかmuuteの観点でいうと「吐き出しやすさ」みたいなところの価値はあるのかもしれないですね。
岡橋:そうですね。ユーザーさんでも鍵アカを持たれていて、そのフォロワーには仲の良い友だちや家族しかいないけど、そこでもネガティブなコメントばかり吐き出したり、逆にポジティブなことばっかりつぶやいてると「たぶん相手も見たくないんじゃないか? って思ってくる」っておっしゃっていて。それも確かにあるなと思います。
全く利害関係がなく、「相手がどう思うかを気にせずに書き込める」ところがいいのかなと思っています。それで「書き込んでも何の反応も返ってこない」よりかは、やっぱりAIみたいなものがあって。そこから適宜、格言が送られてきたりとか、なにかひと言あったりとか。書いていたら1週間のまとめを自動で送ってきてくれたりとか。
「誰ともつながらないんだけれども、孤独ではない」みたいなバランス感が、支持されている理由かなとは思います。
ーー「家族であっても相談しづらい」っていう意見について、現代社会って互いに気を遣いすぎているのかな? って思っていて。だからこそ、AIに自分の気持ちを受け止めてもらうところが受けているということですかね?
岡橋:それもあると思います。あとは、muuteだけではすべて解決できないと思いますので、我々は「すべての課題を解決するソリューションを提供してる」というよりは、「1つのツールを提供してる」と思っています。
もちろんユーザーさんの中にSNSを使う方も多いですし、休憩でmuuteを使ってそこに書き出したりとか。あとはSNSに書く前にmuuteで吐き出して、それを客観視してまた投稿するみたいな、そういう行動であったり。
あとは、コーチングやカウンセリング受けてるような方々も、セッションの合間にmuuteで日々の記録をとって、それを見ながらセッションを受けたりといった使い方もされているので。併用してうまい具合に使って、活用していただればいいなと思ってます。
ーー少し話は変わってしまいますが「自分で自分のことを理解できていない最大の理由」についてうかがいたいです。それは「自分とはこうあるべきだ」みたいな理想像に引っ張られてるからなんでしょうか?
岡橋:やっぱり「外からどう見られるか?」に注意が向きすぎていると、そこに合わせて自分を変えようとか、そこに合わせて自分をプレゼンテーションしようってことになりすぎてしまうので。
そうなると、内面に注意がいかなくなってしまって、内省ができていない状態。自己認識も欠けてくるのかなとは思います。
ーーそれを、AI相手に書き込むとAIがフィードバックしてくれて、で、また書き込んでフィードバックしてくれて……を繰り返すことによって、「自分って本当はこう思ってたんだ」というところにだんだん気づいてくる。
岡橋:そうですね。そこの「自分の感情や思考となにが紐付いているのか?」といった相関関係。どういうことが自分のポジティブな感情に影響してるのかとか、ネガティブな感情に影響してるのか?がわかることで自己認識を促せればと思っています。
ーーありがとうございます。最後の質問なんですけれども。将来、10年後・20年後ぐらいのメンタルヘルステックの業界は、どのようなかたちになっているでしょうか?「こうなってるといいな」という展望でも構わないんですけども、最後にうかがえればなと思います。
岡橋:ジャーナリングや瞑想といった、メンタルヘルス関連のキーワードって、認知がまだぜんぜん進んでないなと思います。でもコロナもあり、メンタル不調を訴える方々も増えてきていて、社会的にも注目されているテーマかなと思います。
今後より注目が高まっていく中で、自分の身体的な健康を考えるのと同じように、メンタルをセルフケアしていくことがより一般的なライフスタイルになればいいなと。そういう社会になればいいなと思って、このプロダクトを作ってます。
もう1つは、欧米を中心に展開されている「headspace」や「Calm」といった瞑想アプリがあるんですけども。それらのサービスは、マインドフルネスからスタートしているんですが、最近では臨床実験などを行ってエビエンスを作りにいっていて、よりヘルスケアに近づいていっています。
「マインドフルネスってエビデンスあるんですか?」と言われたりもするんですけれども、将来ははエビデンスに下支えされたものとして、よりヘルスケアに取り込まれた複合的なサービスとして展開されていくのは、1つ考えられるんじゃないかなと思います。
喜多:2つ目のところに補足する感じになるんですけど。科学的な情報が個人まで落ちてくれるといいと思っていて。そもそも今って「自分のメンタル状態どうか?」って言われても、ほとんど誰もが「よくわかりません」だと思います。
でも「あなたのメンタルは50点です」って、体重みたいに数字でそれが分かったらすごくいいですし。そもそもメンタルケアがそんなに普及してないのって、そこの手法が認知されてないみたいな話もあるんですけど、そもそも「自分のメンタルについてちゃんと認識すること」があまりないので。
そこがもうちょっとサイエンスされて、いろいろな手法や技術ができてくるといいんじゃないかなと思います。
岡橋:そうですね。メンタルヘルスというと、認知とか行動的なものにフォーカスされているんですけども。そもそも感情が立ち上がってくるものって、身体的なものに関係があったりもするので。そこがもう少し統合されて「こういう体の状態の時にこういう感情になりやすい」が解明されていくと、より定量的にメンタル管理や改善ができてくるのかなと思います。
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