“インターネット断ち”から750日、再開の踏ん切りがつかなかった

松原嘉哉氏(以下、松原):じゃあ次の質問者はYさんですかね。「音声配信をされているかと思いますが、SNSを断ったあとに、そちらから再度つながった方はいますか。前と違ったつながり方になりましたか?」というところです。Yさんはいらっしゃいますか?

質問者3:はい、います。

松原:この補足があればお願いします。

質問者3:安藤さんが「himalaya(ヒマラヤ)」で音声配信をされていて、次に「Voicy(ボイシー)」に移られたことを知って。VoiceTech(ボイステック)の業界としては、Voicyって今はPodcastとかhimalayaとかある中でもかなり大きな市場になってきている部分なので、たくさんのつながりができてくるんじゃないかなと思いました。

また、こちらで出会った人たちと、今度は前と違ったつながり方になっているんだろうなと思ったので、「なぜ音声配信を選んだのか」という点と合わせて質問してみたいと思いました。

安藤美冬氏(以下、安藤):ありがとうございます。結論からいうと、Voicyに行ったのは私の意志ではなくて、himalayaが日本から撤退することになり、なくなってしまったからというのが正直なところですね(笑)。ただhimalayaがなくなると聞いた時に、なんとなく直感的にはVoicyに行くのかなと思っていたので、予感は的中した感じです。

そして、himalayaで音声配信を始めた理由はというと、流れに任せたらやることになったんです。SNSとネットをまったくやらなかった750日間の後半、2019年の秋ぐらいから、「YouTube一緒にやろうよ」とか「ブログをもう1回始めたらどうか」とか、まぐまぐさんから「有料メルマガをやりませんか?」とか、いろんなところからお声がけいただくようになったんですね。でも、しばらくは踏ん切りがつかなかったんです。

現在の自分になるきっかけをくれた「縁」

安藤:そんな時に、たまたまあるイベントに行った際で、650人くらいの大きな会場だったにもかかわらず、当時himalaya副社長だった斎藤ソフィーさんと隣の席になったんです。「これは縁があるんじゃない?」って向こうが言い出して、「miffy(安藤氏)、SNSをやめたけど、うちで再開しない? 音声配信やらない?」と誘われました。

その時に「あ、himalayaならいいかもな」と思ったんですよね(笑)。隣り合わせになった偶然の巡り合わせから音声配信を始めたのが翌年の1月でした。

松原:ありがとうございます。ちなみに補足の質問になっちゃうかもしれないんですけど、「自分の心に正直に生きる」という生き方はもともとだったのか、それともこのSNSを離してからのmiffyさんの行動のパターンなのかといったら、どうなんですか?

安藤:もともとですね。

松原:えー! そうなんですね。

安藤:大学時代にオランダに留学したんですけども、それまでは留学先はアメリカ一択だったんですね。

でも、その頃に縁あって「世界青年の船」という、当時の総務省、現内閣府が主催している「大きな船に乗って世界中の青年たちと交流する」という国際交流事業に乗船する機会があったんです。その時に仲良くなったのがオランダ人だったんです。

そのオランダ人との会話の中で、オランダがとても魅力的で先進的な国であることに興奮して、留学先をオランダを選びました。結果的には、現地でワークシェアという新しい働き方と出会ったことが、現在の自分に大きな影響を与えてくれたんです。

「1日30分スマホを触らない時間を作る」くらいのゆるさを心がけて

松原:ありがとうございます。じゃあ、僕の質問の前にSさんのから質問についてお聞きします。

「つながらないためのステップ1の『時間を制限する』の段階で、ついついスマホを手に取ってしまいそうになった時、具体的にどのようにして手に取らないように意識されていましたか?」という。Sさん、いらっしゃいますかね。この質問の背景とか補足があれば、ぜひお話しいただけたらと思います。

質問者4:手持ち無沙汰の時とか、つい携帯を取ってしまって(笑)。開くと「もうこんなに時間が経ってる!」みたいな日がたまにあります。つい無意識のうちに取ってしまう時に、安藤さんはどのようにして具体的に意識して、つながらないようにされていたのかな? ということで質問させていただきたいです。

安藤:いや、もうそういう時はありますよね(笑)。私も、やめると決めても最初の半年間は、パブロフの犬の反応みたいに、朝起きたらまずスマホ。「寝る1時間前にスマホをやめる」と決めても、やっぱりスマホいじっちゃうことが多々ありました。

『つながらない練習』

『つながらない練習』の中でも「オールデトックスしなくていいんだよ」と書いているんですが、大事なのは無理をしないこと。無理なダイエットと同じで、無理にスマホをやめようとすると負荷がかかってストレスが溜まって、あとからぶり返しが必ず来ます。ですから、「1日30分でも触らない時間を作ろう」くらいのゆるさを心がけると、わりとできますし、自信になります。無理のない計画を立てて、毎日少しずつやっていきましょう。

「72日間やると、習慣化される」と聞いたことがあります。確かに、2~3ヶ月ぐらい続いた時、「これならやめられるかも」と手応えがありましたね。

松原:なるほど、ありがとうございます。今はもうリバウンドしないというか、いい具合の関係性で維持できているんですね。

安藤:そうですね。スマホを触っているのは1日1~2時間ぐらいだと思います。ただ、脚本の勉強を兼ねてAmazonプライムを携帯で観るとか、そういうのはありますよ。

誰かが去って不安になるのは、「自分の価値への不信感」から

松原:コントロールできているのはすごくいいなと思いましたね。ありがとうございます。次は僕の質問で恐縮なんですが、これは人間関係の話です。コミュニティを運営していたり、こういうイベントでもなんでもいいんですが、やっぱり入ってくる人もいれば、去っていく人も当然いて。

やっぱり去っていく人のことが気になってくる時があります。miffyさんがおっしゃられていたと思うんですけど「また機会があれば仲良くなればいいじゃん」と割り切るという、そういう心持ちでいるのもすごく理解できる反面、「もしコミュニティとか自分自身に直すべきことがあれば聞いておきたいな」ぐらいに気になることもやっぱりあるんですね。

一方で、そうやって去っていく方のことを考えるより、いてくれている方のことを考えたほうがいいなという気持ちもあったり。でもやっぱり去っていく人がいるとざわざわすることがある。人付き合いの時に、どう自分の気持ちを整理されているのかなと気になったんですけど、いかがですか?

安藤:とても良い質問で、さすがだなと思います。これってコミュニティ運営だけじゃなくて、例えばフォロワー数が増えないとか、仕事でうまく結果が出せないとか、自分の自己価値に関わる質問なんですよね。

先日もこんな質問がありました。「オンラインサロンをやっているんだけど、退会者が出るたびにすごく不安なってしまいます」と。確かに以前の私も、「本の売上イコール自己価値」と結びついていた時期もありました。今も、ゼロではありません。

ただ、結局これが「自己価値に置き換えているだけなんだ」とわかると、気になる度合いがすごく減ります。誰かが去っていくと、現在は、自分の力が足りないからだとか、価値を提供していないからだという不安を刺激されているだけ。

周りや世の中の人の動きが、本当はその人それぞれに事情があって、自分とはまったく関係ないところにあるのかもしれないのに、自分ごととして必要以上に考えてしまう。誰かが退会しちゃうと不安になるのは、私たち全員の深いところにある「自分の価値への不信感」だったり、「これでいいのかな?」という自信のなさだったりを刺激されるからなんですね。

気持ちの「ブレ」をなくすために、深い「自己価値」を探る

安藤:でも、人が去っていくことを単なる「新陳代謝」と捉えることができます。その人がただ卒業していっただけで、特にそこに松原さんへの不満があったわけではないし、コミュニティが物足りなかったわけではなく、ただ違う場所へ行ったというだけ。

それに、その人が「卒業」できたのは、松原さんがコミュニティの中で素晴らしい価値を提供していたからだと考えることだってできます。価値を提供し、その人自身が何か変われたからこそ、満足して次にいくのだというように。

松原:なるほど。そうかもしれないですね。

安藤:誰かが退会することは単なるトリガー。刺激されているのは深い自己価値の部分。でも、これはみんなにあるものです。私にも、今もあります。

フォロワー数が増える・増えないとか、オンラインサロンで退会していくとか、いいねがつかないということにいちいちブレるのではなく。このブレをなくすには、自分の自己価値である「なんで自分はこんなに自信が持てないんだろう?」とか、深いところを探っていく必要があるんです。さっきの「ひとり合宿」も助けになりますよ。

松原:なるほど。「ひとり合宿」は確かにやってみてもいいなとすごく感じましたね。ありがとうございます。僕の質問で終わっちゃうのも恐縮なんですけど、非常に参考になりました。ありがとうございました。

安藤:いえいえ(笑)。ありがとうございます。

「肩の力を抜いて信頼と満足で世界を眺めてみよう」

松原:今日は安藤さんをお呼びしましたが、安藤さんが昔のインタビューで「質の高い情報をより多く求めようとするのは、自分への不足感からだ」とおっしゃっていたのを覚えています。「それより、もうちょっと肩の力を抜いて信頼と満足で世界を眺めてみよう」というようなことをおっしゃっていて、それがすごく僕は印象に残っていて、本を読むこともそうかなと思っていました。

この「ペアドク」も、「読み切るがゴールじゃなくていい」というところがそうなんです。「今日の自分にとって大事なポイントが一文でも見つかれば、この本は自分にとって意味がある」というメッセージでやっています。なので今日もみなさんに、目次を見てハッとしたところを読んでもらいました。

今日はSNSとかスマホの付き合い方でしたけど、毎回人によって答えが違うようなテーマを選んでやっています。次回は「会って話すこと」ということで、会話についてやりたいなと思っているので、興味があればFacebookグループに参加いただけたらなと思っています。

miffyさん、最後に今日参加してみてどうだったか、簡単に感想をいただけたらうれしいんですが、いかがでした?

安藤:今松原さんがおっしゃったように、本って完読する必要はないです。自分にとって今必要な一行が刺さって、「あ!」という気づきのきっかけになったりとか、心が元気になったりすることがあれば、まさに著者冥利に尽きます。

どうしても一方通行のイベントだと「良い話を聞いたな」で、ぐーっと寝て終わっちゃうことがありますけど(笑)。こうやってお互いにペアになって、感想をシェアする時間を設けるだけで、定着度合いがぜんぜん違うと思います。

この本で、明日への参考になる一行と出会ってくれたらうれしいです。今日はありがとうございました。