「男性育休から考える “組織と個人の成長”」

小田木朝子氏(以下、小田木):みなさま、ご参加ありがとうございます。本日は「男性育休から考える “組織と個人の成長” 今、人事担当者がおさえたい育休マネジメントの発想」をスタートさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

今日初めて参加される方もいらっしゃると思いますので、まずは簡単にこの場のオリエンテーションをさせていただき、その後にスピーカーの紹介、本題へと入りたいと思います。

こちらは株式会社NOKIOOが提供する、人材育成・組織開発に関わる方に向けたセミナーです。90分で役に立つ情報を提供する場を作りたいということで、毎月開催させていただいている「90分腹落ちオンラインセミナー」となります。今日のテーマは「男性育休から考える組織と個人の成長」。このテーマでスピーカーおよびゲストを迎えて進行して参りたいと思います。

本日のスピーカーおよびゲストの自己紹介に入りたいと思います。まずはおなじみの沢渡さんから。

沢渡あまね氏(以下、沢渡):みなさん、こんにちは。「沢が渡る」と書いて沢渡あまねです。私は日産自動車、NTTデータ、大手製薬会社と16年間勤め人をした後に、現在は作家(をしております)。今日も新刊『バリューサイクル・マネジメント』を携えて参りました。

業務プロセス、働き方改革、ダイバーシティ推進などをテーマに、全国350以上の企業、自治体、官公庁の働く景色を変える支援をして歩いている人間でございます。そして今日はなんと、金沢の「山岸製作所」さんから参加しております。

小田木:背景からして、すごくおしゃれなスペースにいらっしゃいますよね。

沢渡:輸入家具インテリアショールーム「LINTERNO」からお送りしています。太平洋側の浜松から、日本海側の金沢まで4時間半、東海北陸道を走りながら小田木さんのVoicy『今日のワタシに効く両立サプリ』を聞いて来ました。みなさんもぜひ、聞いて欲しいです。

小田木:ドライブのお供に(聞いていただき)、ありがとうございます。

沢渡:小田木さんのVoicyを聞きまくりながら、今日は気持ち万端で参りました。よろしくお願いします。

小田木:今日は沢渡さん、金沢から参加ということで、よろしくお願いいたします。

沢渡:よろしくお願いします。

小田木:では私も自己紹介させてください。あらためて小田木と申します。株式会社NOKIOOで人材育成事業の責任者、そして役員をしております。

今日はテーマが「育休マネジメント」ですが、私は今年の7月に『人生の武器を手に入れよう! 働く私たちの育休戦略』という書籍を出版させていただきまして。初めて書いた本となりますが、まさに今は「育休を機会に変える」ことの発信に情熱を注いでおります。

今回は、個人と組織の成長の観点から「育休」を考える場となります。みなさんと一緒に今日は一段と楽しみながら、熱を入れて進めていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

沢渡:小田木さんの熱、楽しみです。

小田木:ありがとうございます。

沢渡:よろしくお願いします。

小田木:そして、今日はスペシャルなゲスト。野島さん、よろしくお願いいたします。

野島光太郎氏(以下、野島):よろしくお願いします。沢渡さん、小田木さん、みなさまよろしくお願いします。ご参加のみなさま、貴重なお時間をありがとうございます。あらためまして、『データのじかん』編集長をしております野島光太郎と申します。

『データのじかん』はデータやビジネス、そしてそういったものを使って、より良くしていこうとする方々を取材させていただいているメディアです。「データ」と付いているので、難しそうに聞こえるかもしれませんが。

もちろんアルゴリズム、統計学、AI、RPAなども取材させていただいていますが、どちらかというと、そういったものを活用する人や組織を取り上げているメディアです。

今日はデータやテクノロジーと、あまり関係ない育休がテーマですけれども。私自身、次女が生まれた時に4ヶ月という長期の育休を取りまして、その経験を少しでもお話しできればと思います。どんなご質問でもしていただければなと思いますので、本日はよろしくお願いいたします。

沢渡:めちゃめちゃ楽しみです。

小田木:本当に、来ていただきましてありがとうございます。ビジネスパーソンの仕事の問題を、データとかテクノロジーで解決するメディアの編集長がゲストで。でもデータの話をしないという(笑)。

野島:そうですね(笑)。宣伝することがないのでどうしようかなと思いました。全然関係ないですけれども、Netflixで斎藤工さんの『ヒヤマケンタロウの妊娠』という男性が妊娠するドラマが近く出るので……。

アンコンシャス・バイアスとか育休とか出産を、当事者目線で考えるドラマとして、すごく楽しみにしているんです。私は作品にまったく関係ないんですけど、これを宣伝させていただければなと思います(笑)。

小田木:今、データにどうつながっていくのかな? という姿勢で聞いていましたけれども。

野島:まったく関係ないです。

小田木:ありがとうございます(笑)。「野島さんが今、注目していること」というテーマで共有いただきました。

今日は野島さんのご経験を、オープンに語っていただきながら、それを組織に当てはめてみたり、他で使えるように再現性を見出したりしたいと思います。そのために、沢渡さんと私で根掘り葉掘り聞いて、言語化していきます。

野島:よろしくお願いします。

沢渡:太平洋側と日本海側からサンドイッチ。

野島:そうですね。

沢渡:根掘り葉掘り。

小田木:こんな3名で今日は進行をさせていただきます。

本日の参加者のお仕事は?

小田木:この「90分腹落ちセミナー」では、一方通行ではなく、みなさんが現場や職場で感じている課題感、問題意識をチャットで発信して欲しいと思います。

お忙しい中でせっかく参加していただいていますので、みなさんが聞きたいことをベースに話を展開して参ります。そのために、チャットを使ってコミュニケーションを取っていきたいと思います。

はじめにオリエンテーションをしたいと思います。お手が動かせる方は、ぜひチャットでご参加ください。

まずはいつもの質問です。どんな方が来てくださっているのか、ということで「みなさんのお仕事は何ですか?」。どんな表現でもけっこうです。みなさんのお仕事について、一言チャットに書き込み願います。

(コメントを指して)「作家です」。どなただろう……? と思ったら沢渡さんじゃないですか(笑)。

沢渡:見本を見せようかなと。

小田木:ありがとうございます。野島さんもよかったら。

野島:今、ちょうど入力しているところでした。

小田木:書き込んでください。どんな表現をされるやら(楽しみです)。

沢渡:みなさん、いかがでしょうか。ぜひみなさんのことを知りたいです。「設計部門のマネージャーです」。非常にわかりやすいです。

小田木:ぜひご自身の分が書けたら、チャットをこうやって流し見するだけでも楽しいので、みなさんぜひご覧ください。「今、打てないよ」という方も、見るだけでも楽しいチャットになっております。あ、なんと育休中の方がいらっしゃいますね。 

沢渡:良いですね。

小田木:「人事マネージャーで育休中です」。

沢渡:ありがとうございます。人事、総務の方が多いですね。「1人総務」ですか。大変だ。

小田木:「エンジニアです」「バックオフィスのDX推進担当です」。

沢渡:期待しかないですね。

小田木:「サステナビリティ推進担当」。

沢渡:サステナブルな働き方・生き方を、育休などのライフステージに向き合いながらどう作っていくか。今日のテーマにドンピシャですよ。

小田木:ドンピシャですね。

沢渡:ありがとうございます。

野島:「食肉卸会社なので、いろいろ考えるところが多い」。ですよね。

沢渡:そうですよね。公務員の方で「今は大学に出向して教えている」方も。

小田木:みなさん書き込んでいただきまして、ありがとうございます。

今回は「男性育休」というホットなテーマを組み入れました。「男性育休から考える個人と組織の成長」が本日のテーマとなります。

参加者の「男性育休」に対する関心・課題感とは?

小田木:もう1つの質問として、今回参加しようと思った関心ポイントですとか、どんな話が聞きたいのか? ぜひ教えてください。このテーマに対しての関心や課題感、ぜひ一言お聞かせいただければと思います。

沢渡:個人としてこれから男性育休を取ろうとされている方、組織として男性育休者のサポートの仕方を考えている総務・人事・経営企画の方、さまざまな立場の方が今日はいらっしゃると思います。みなさんの関心事は何でしょうか。

小田木:「部下のために」みたいな発想の方もいらっしゃれば、その他にもいろんな観点があると思います。

沢渡:「男性育休を取った・取らせたことで、組織に生じた良い影響」。野島さん、さっそく出番ですよ。

野島:そうですね。少しでも参考になることをね。

小田木:「心の準備」(が知りたい)。

野島:本当ですよね。確かに。

沢渡:「男性育休中に何をしよう」、良い問いかけですね。ありがとうございます。

小田木:「推進したい」「当事者です」「支援者、応援者です」など、いろんな立場の方がいらっしゃいますね。

沢渡:「休暇を取りやすい風土作り。組織としてどう育休にポジティブに向き合っていくか」。大事な観点ですね。ここもぜひ今日深堀りしていきたいですね。

小田木:本当に。「戻りやすさ」というキーワードも出てきましたね。

沢渡:うんうん。

小田木:「部下が育休後に“浦島太郎さん”にならないためのヒントなどがあれば」。優しい(笑)。

沢渡:「育休浦島太郎」。この言葉は育休を経験されている方から、最近よく聞くキーワードですね。「男性だけでなく、家庭全体がウェルビーイングになるための考え方」。素晴らしい。

沢渡:ここも野島さん、ぜひディスカッションしていきたいです。

野島:本当に興味ありますね。あと「一部の方しか取れないんじゃないか」。どのように浸透していくのか? というところも、大変重要ですよね。

沢渡:そしてすごく鋭い問いかけです。「本当は仕事をしたい」。そういう気持ちを持っているみなさんに、組織としてどう向き合うか。個人としてどう育休なる期間を使っていくのか? ポジティブにと。

小田木:はい。ありがとうございます。できる限りいろんな観点から、多角的な視点で、今日はオープンに考えたり、気づき合ったりする場が作れたら良いなと思っています。みなさん本当に書き込みありがとうございます。

沢渡:ありがとうございます。

トークライブの全体像を示す地図

小田木:あらためて、今日この3人とみなさんで「男性育休から考える “組織と個人の成長”」をテーマに、楽しく考えていきましょう。私、今日のトークライブの全体像として地図を書いてみました。

前半は問題提起として、野島さんのケースから考えていく「組織と個人の成長」につながる育休取得のかたち。これが前半のテーマになります。

そして後半は、事実や具体例を入口に、そこから見えてきたことを組織全体の仕組みや、再現性のあるノウハウに落とし込んでいく。そのためにはどのような着眼点があるのか。こういう“お土産”への加工をしていくのが後半となります。

今日はグッと具体的なケースから入って、そこから言えること、成功要因は何なのか、まず考えていきます。そしてそれを再現性をもって加工し、お土産としてみなさんに持ち帰っていただく。こんなプロセスで90分、進めていきたいと考えております。

沢渡:はい。

小田木:前半は野島さんのケースの解体から入っていきます。

沢渡:ここから野島さん“解体ショー”が始まるわけですね。

小田木:そうそう。

野島:恥ずかしいですね。

小田木:(その前に)恐れ入りますが……という点がございまして、先ほどの全体マップを見て、気づいた方もいらっしゃると思います。今、男性育休がいろんなところでテーマになっていますが、本日は法制度や法改正などの説明は、ざっくり割愛させていただきました。恐れ入りますが、このあたりは厚労省のサイトをご確認ください。

男性育休の取得推進を「法改正だからね」「決まりだからね」と捉えるのではなく、組織としてのチャンスにつなげる発想で、楽しくポジティブに考えていきます。そして、加工や編集をして、みなさんが持ち帰れるヒント、着眼点へと仕上げていきたいと思っております。沢渡さん、野島さん、一緒によろしくお願いいたします。

沢渡:よろしくお願いします。

「ワーカホリックだった私の育休取得」

小田木:さっそく前半に入っていきましょう。「ケースから考える」ということで、余分な問いかけ一切なしで、さっそく野島さんのケースを聞いていきたいと思います。もう聞きたいことを、バンバン書かせていただきました。

まず(スライドを指して)左側のアウトラインから始めます。その前にめちゃくちゃ気になるキーワードが写真の下にありますよね(笑)。

沢渡:はい。「ワーカホリックだった私の育休取得」。みなさん「ワーカホリック」ですよ。

小田木:平たく言うと「仕事ばかりしていた」。こういう理解でよろしいですか?

野島:そうですね。ワーカホリックですね。徹夜で仕事をするのが当たり前のクリエイティブ職で何年も過ごし、その後にIT企業でマーケティングですから。仕事中心が正直当たり前でした。

それは子どもが生まれる前も、結婚する前も含めてなんですが。なので、そちら側の筋力(ハードワーク耐性)は、人と同じ程度か……。

小田木:そちら側の筋力(笑)。

野島:人と同じ程度か、ちょっと強いぐらいかなと思いますね。

小田木:ちょっと強いぐらい。気合・根性・長時間労働。

野島:そうですね。

小田木:その必殺技を駆使して、お仕事をされていたという理解でよろしいでしょうか。

沢渡:大丈夫ですよ、野島さん。この3人、みんなワーカホリックだった人たちですから。

野島:(笑)。

「次に同じような機会があれば、絶対取るぞ」という覚悟

小田木:「そんな野島さんが」という、この前提が大事ですよね。そんな野島さんが育休を取られたと。なぜ取ろうと思われたんでしょうか。

沢渡:はい。

小田木:第2子出産時ですから、第1子の時は取らなかったということですよね。

野島:そうなんですよね。第1子の時はワーカホリックってその名のとおり、まったく見向きもしていなくて。例えばですけれども、妻が妊娠している最中に海外に長期出張に行っていたりとか。出産の時もそばにいて見守る環境ではなく。妻に任せきりの状態でした。

産後1ヶ月~3ヶ月、子どもにとっても母親にとっても、一番大変な時期にあまり接することができなかったんです。その時期、妻が現状に対して「すごく大変だ」と、本当に辛そうに話をしてくれて。

妻は産休後、育休に入ることになっていました。私は、育休を取ることで徐々に大変な状況も緩和されると思っていたんです。でも、途中から妻も「働きたい」と言い出すようになりまして。

私としては、制度も環境もしっかり整っているので「育休取れば?」と思っていました。でも妻は、子育てだけでなく、社会とつながっていたい・携わっていたいという思いがあったようです。それを、本当にまざまざと聞かされました。

(そこで)、当時は第2子を出産することはもちろん決まっていなかったのですが、「第2子が生まれる時には、しっかり寄り添える環境を作りたい」と常々思うようになりました。これがワーカホリックからの育休取得(の理由)です。なので第1子の時は、ある意味、うまくいかなかったというのが正直なところです。

小田木:では「次にもし同じような機会があれば、絶対取るぞ」という覚悟が入り口からあったんですね。

野島:はい。

制度の有無より、慣習・風土がない中での取得が一番不安

小田木:なるほど。一方で、(育休取得を前々から)決めていたとはいえ、それだけ仕事をしていた野島さんが、仕事を離れることに不安はなかったですか? 

野島:すごく不安はありましたね。

沢渡:そうですよね。

野島:仕事が好きだと思い込んでいましたし、土日もスマホやパソコンをいじっていました。そこから離れたらどうなるか? 想像もできないままに不安を感じていました。これが、第2子出産が決まって、育休を取ろうと思った時に抱いた気持ちです。

そして「その不安を取り除く」という意志を決めて、どうやって不安を潰していくのかを考え始めました。これがスタートでした。

小田木:なるほど。やはり仕事から離れるなんて考えたこともないし、想像すらつかない。「だから離れない」ではなくて、今度はもう「(意志を)決めているんだ」と。

野島:そうですね。

小田木:そこはもう決定事項にした上で、どうやって「仕事から離れる不安を潰していくか」ということに向き合って考えた。それが育休取得までのプロセスになるんですかね。

野島:そうですね。育休を取得する私も不安なんですが、それ以上にもちろん、チームや上司も、もちろん不安なわけですよね。

沢渡:そうですよね。

野島:当時、男性社員が長期で育休を取るという実績が、弊社でもなかったんです。会社全体で、たぶん1ヶ月取った人もいなかった。そんな中で私は「1年取る」とか「1年半取る」みたいなことを言って交渉し始めまして。

小田木:なるほど。

野島:前向きに捉えていただきましたが、否定するより「こういうケースは今までない」というスタンスでした。私も不安だし、人事など組織としても不安。だから、いかにして不安を潰していくのか(を考え始めました)。

一方、チームや直属の上長は「長く取りなよー。頑張って!」と手放しで言ってくれて、背中を押してくれました。ただ仕事、制度の有無の不安よりも、慣習がない・風土がない中で(長期育休を取る)ことが一番不安だったんです。

最初にやったのは、妊娠中・安定期の前に人事や上長に「伝えること」

小田木:ありがとうございます。「自分自身の不安」。そして、主力社員が長期抜けてしまう「上司やチームの不安」。さらに、そういった人材に対処した経験のない「組織側の不安」。不安という大きくざっくりしたものを分解してくださいました。野島さんは、この後具体的に、どのように不安解消への手を打っていったのでしょうか?

野島:そうですね。一番始めにやったのは、妊娠中・安定期の前に人事や上長に「伝えること」です。10ヶ月(前)は言い過ぎとしても、(出産の)7ヶ月(前)とか(には言う)。

小田木:早く言う。

野島:早く言う。(出産の)1ヶ月前に育休を申し出ても、正直、代わりの人材をアサインするのも難しいと思うので。育休を取ると決めていて、後々言うのであれば、もう先駆けて言っておいたほうが良い。「安定期に入った時点で言う」ぐらいの勢いです。

小田木:早ければ早いほど、双方備えられますので。その発想ですよね。

沢渡:ここに1つの景色の変化がありますね。今まで育休とは「妊娠された女性ご本人が職場にカミングアウトして、計画を立てていくもの」だったと思います。

でもこれからの時代は、配偶者である男性側も、奥様の体調や妊娠のステージに応じて、組織の中でコミュニケーションを取っていく必要がある。そして組織もそれを受け止めなくてはならない。こんな変化が生まれているのを感じました。

小田木:ありがとうございます。