リアルのオフィスが好きだから作った「バーチャルオフィス」

ジョン・セーヒョン氏:みなさん、こんにちは。oVice代表のジョンです。

(会場拍手)

ありがとうございます。本日お話ししたいのは、今年4月の「oVice summit」で発表したものがどこまで進んでいるか。急拡大するバーチャルオフィス市場の最前線で、リリースから1年で圧倒的なシェアを持ち、市場をリードするサービスを代表する者として得た、働き方に対する新しいインサイトやニューノーマルにおけるビジネスのあり方。それを受けてoViceが今後目指していきたい方向性について、お話しできればなと思います。

簡単に自己紹介しますと、私は韓国生まれで、20歳の時に日本に留学に来てから9年ぐらい、AI・VR・ブロックチェーンなど、さまざまな分野でシリアルアントレプレナーをしています。

そして去年からは、現実のようなコミュニケーションができるバーチャル空間サービスoViceを始めました。みなさんもご存知のとおり、oViceは、バーチャルスペース上の自分のアバターを動かしながら話しかけたい人に近づいて声をかけたり、座っていたら声をかけてもらえたりします。現実世界と同じようなコミュニケーションができるツールです。

ご存じの方もたくさんいらっしゃると思うんですけれども、oViceの開発を始めた背景は、去年の2月に私がチュニジア出張途中にコロナでロックダウンになって、帰国も外出もできなくなったことがきっかけでした。

私はもともと、個人的には物理的なオフィスが好きな人間でした。会社を作るといつもいいオフィスを借りて、寝る時間以外はほぼオフィスに滞在して、テレワークしようとは考えもしなかった人間です。

それがロックダウンによって、不本意にもテレワークを始めることになりました。(テレワークになったこと自体が)ちょっと急だったんですけれども、なんだか違和感があったんですよね。やっぱりリアルなオフィスでは、座っているだけでもいろんな声が聞こえてきて、どういう状況かもそこに誰がいるかもわかっていて、その雰囲気が伝わる。

物理的なオフィスでは当たり前にできていたことが、テレワークではできていなかったんですよね。既存のツールはそれを解決してくれなかったので、オフィスに行きたい気持ちで開発を始めたのがoViceです。

パンデミックという追い風なしでも、過去一番の成長率

1ヶ月ぐらいプロトタイピングをして、実際に使ってみるとすごく良かったので、サービス化のための開発を行いました。ちょうど6月に日本に戻ってこられたので、8月には日本でオープンベータ版をリリースしました。

弊社は「バーチャル不動産」というビジネスモデルで、スペースを賃貸し収益を得ています。その課金基準であるスペースの発行数から見ると、サービスリリースから1年ちょっとで累積発行スペースが1万件を突破しています。

ちなみにこれは9月末の話で、今はさらに3,000件ぐらい増えて13,000件ぐらいになっています。またoViceではスペースをつなげてバーチャルビルにすることはできますが、現在274棟のバーチャルビルが建設されています。

そのうち一番高いビルは51階建てとなっています。前回の「oVice summit」の時には、一番高いビルが36階建てだったんですよ。それがもう51階になっています。oViceタウンは、毎日いろんな摩天楼のようなビルが建つ、高度成長期の日本のような状態になっていると言えるかなと思います。

また平日の朝9時になると、4万人がoViceのバーチャルオフィスに出社しています。いろんな投資家やユーザーさん、メディアから、ポストコロナになっていくとoViceが衰退していくのではないかなとか、成長が止まるんじゃないかなというフィードバックを受けていたんですけれども。今は感染者数が過去一番少なくなっているんですけれども、実はoViceは過去一番の成長率となっています。

確かにoViceはパンデミックに乗じて、ここ1年間成長してきているサービスではあります。ただ現状はもう感染者数と関係なくさらに成長しており、日々増えていく利用者と利用企業からフィードバックをもらっています。またoVice上の利用データ、そして業界の情報を見ていると、ビジネスのあり方と人々の働き方の確かな変化を感じています。

バーチャルオフィス導入が可能にする、新しい働き方

例えば、とある企業では全国の支店を統合したバーチャル本社をoVice上で作って、物理的な制約なくコラボすることによって、移動にかかる無駄な時間や交通費を画期的にカットできています。

またとある企業は、oViceを導入して出社率を抑えることで、オフィスの半分を解約して、そこで削減できたコストを従業員のための福利厚生などに還元し、組織のモチベーションとパフォーマンスを上げています。

またとある企業は、フレキシブルな働き方を定着させて自社ビルを売却し、その資金を未来の成長のための新規事業に投資しています。このような変化は、企業のみならず個人にも起こっていて、良質な仕事を求めてしぶしぶ東京のような大都市に住んでいた人たちも、良質な仕事を諦めずに自分たちが本来住みたかったところに行けるようになったんですよね。

例えば小さな子どもがいる家庭では、家族のいる実家の近くに引っ越してワークライフバランスを築くこともできます。もしくは自分が行きたかったところを転々としながらワーケーションをする人たちも、実際にoVice上でも増えています。

さらにこのような人たちは企業にとって高度人材であり、社会の変化に適応できない企業はもう今後の採用が苦難となる。最近はサスティナブルな成長もできなくなるというレポートも珍しくないですよね。このような社会の変化の中で、oViceが利用企業に提供しているのは、メタバースとしての価値じゃないかなと感じています。

韓国政府はメタバースに2兆6,000億円を投資

そもそもメタバースって、まだあまり聞き慣れない言葉だと思います。メタバースはメタとユニバースの合成語で、インターネット上の仮想世界のことを指しています。そして、インターネットが将来的にたどり着くであろうというコンセプトなんですけれども、Facebook(現Meta)は、今年7月にソーシャルメディア企業からメタバース企業に転じていくという宣言をしており、実際にその社名もメタバースに関するものに変えるという噂もあるんですよね。

また、韓国では政府が次の技術革新として、2025年までにメタバースに2兆6,000億円を投資すると発表しています。すでに民間でもメタバース産業を活性化させるために、300以上の大手企業とベンチャー企業のアライアンスを作って、いろんなところで取り組みをしていたりもします。

私たちのメタバースは、今後ビジネスシーンにおいて大きなインパクトを与えると思っています。近年トレンドとなっているDX、デジタルトランスフォーメーションが最終的にたどり着く世界だと考えています。そして私たちは、このように未来のビジネスシーンに大きなインパクトを与えるメタバースを「ビジネスメタバース」と位置づけています。

ビジネスメタバースとは、現実のオフィスを相互補完、もしくはリプレイスする手段として発展していくと考えています。今、ビジネスメタバースのサービスとして最も活性化されているのがoViceです。

このビジネスメタバースは、今後普及にあたって次の4点を満たしていく必要があると考えています。まず1つめはメタバース上で、現実のようなインタラクションができなければならないことです。

これは実際oViceがそうしているんですけれども、現実のオフィスではさまざまなインタラクションが行われています。例えば座っているだけで、あちらのチームは順調に進んでいそうだなぁとか、隣の同僚が電話でクライアントに怒られていそうだから、あとで励ましてあげようと思ったり。

喫煙所で他の部署の人と雑談をして、会社全体の動きが見えてくるとか、構成員が常に有機的に細かい情報整理を行いながら人間的な関係を築いて、組織の成長につながっていったのが今までのオフィスだったんですけれども。

なので、現実のオフィスを相互補完する、もしくはリプレイスするビジネスメタバースとしては、このようなインタラクションに対応できなければならないと考えています。

ビジネスにおける「メタバース」に求められる要素

2つめは、ビジネス上に必要なさまざまなファンクションに対応できなければならない点です。oViceにはさまざまな機能が集約されています。例えばホワイトボードやプロジェクター、タイムカード、キャビネット。細かいところから見ると印刷された1枚1枚の書類や、書類を束ねているクリップまで、オフィスにいる人たちはこのような機能をシームレスに使いこなしながら、日々の業務を行っています。

メタバースもそのような機能に対応できなければならないと考えています。これを受けて、oViceは前回のoViceサミットからエコシステムを作ると言って、ユーザーさんにも協力していただきながら、コツコツとさまざまなツールとのつなぎ込みを行っています。

今はまだ最低限のつなぎ込みしかしていなくて、oViceのUI/UXに合わせて操作性を高めたネイティブなつなぎ込みも、実は裏でいろいろ進行中です。来月ぐらいから、それらを順次公開していく予定です。

3つめは、2つめで話したような機能がそれぞれの組織に合わせてカスタマイズできなければならないという点です。会社で仕事をする上で必要な機能は、どの企業もたいてい一緒です。しかし、やり方は組織それぞれです。例えばオープンスペースで自由度を大事にしている組織がある反面、細かいパーテーションで区切って効率的な動線を大事にする企業もあります。

また、ホワイトボードをあらゆるところに置いて、いつでも使えるようにしている組織がある反面、1ヶ所だけにホワイトボードを置いて、そこに情報を集約しようとする組織もあります。

このようにビジネスにおけるメタバースは、それぞれの組織の快適さやワークフローに対応していかなければならないので、機能的でデザイン的な自由度が担保されていなければなりません。

オフィスだけでなく、忘年会会場にもなるバーチャル空間

現にoViceは今、空間の価値そのものに集中し、ユーザーの自由度を高めています。そのためにオフィスだけではなく、さまざまな国でさまざまな場面においてバーチャル空間として利用されています。

今日もイベントで使われていますね。今oViceが一番推しているのは、oVice忘年会というものです。たぶん今年は複数人で忘年会をするぐらいはできると思うんですけど、やっぱり数十人、数百人単位で集まって忘年会するのは厳しいと思うんですよね。

oViceはその課題の解決に、最も効果的なソリューションになっています。例えばoViceの忘年会に申し込むと、参加者に前日もしくは当日に同じ食事が届きます。するとoViceの空間上に決まった時間にみんなが集まって、同じ食事を食べながらワイワイ盛り上がることができます。

大人数が入れて、かつ予約が空いているお店を探す必要もなく、なんなら全国に支店があれば、全国の社員が一同にバーチャル上の忘年会場に集まって、気軽に忘年会ができるんですよ。

さらにアイスブレイクのための食事を活用した格付けゲームをつけると、みんなで簡単に盛り上がれるので、幹事さんにも優しいものになっています。これは、oViceが機能的・デザイン的に自由度が担保されているゆえに、オフィスに限らずさまざまな場面で活用されている例の1つになります。

出社率を上げている企業も「テレワークは不可逆」と認識

そして最後に一番の肝となるのは、オフラインとオンラインがシームレスにつながったハイブリッドな環境に対応できなきゃならないことです。オンラインにはオンラインならではのメリットがありますが、オフラインにもオフラインならではのメリットがあるんですよね。だから、どちらかを捨てるというのはけっこう酷な話です。

コロナの前にはほぼすべての人がオフラインで勤務していて、コロナ禍ではほとんどの人がオンラインでテレワークをしています。ただ、ウィズコロナからポストコロナに移行しようとする今は、やっぱり人々はオンラインからオフラインに戻っているんですよね。全員が戻るわけじゃないですけどね。

しかし、テレワーク中心の組織体制から出社率を上げている企業の話を聞くと、100パーセントオフラインに戻すよりは、ほとんどがテレワークというものは不可逆であって、バランスをとっていかなきゃならないという危機感や課題感を感じているんですよ。

やっぱり完全にオフラインに戻すわけではなくて、どこかでバランスをとってオンラインとオフラインのハイブリッドなかたちを作らなければならない。そのために我々はいろいろな実験をしています。

実は今日、私は本社にいます。オンラインとオフラインのハイブリッドになると、オンラインとオフラインの間にコミュニケーションの障壁が発生してしまって、去年企業がテレワークを初めて導入した時のように、さまざまな問題が発生すると思っています。

先ほどからわけわからない倉庫がずーっと映っていたと思うんですけど、実はこれは弊社のハイブリッド勤務に関する研究や実験を行っている本社ビルです。

私も本社にいるので扉を開けて行きますと、見えますかね? 

(会場拍手)

360度カメラが作り出す、オンラインとオフラインの接点

今、私たちはこの(部屋の)真ん中にリコーさんが開発しているRICOH THETAを置いています。このカメラを中心に、私を映してるんですよね。やっぱりオンラインとオフラインにいる人たちは、いちいちoViceにアクセスして使うのは面倒くさいんですよ。

私はこれを「ハイブリッド化されているテーブル」と呼んでいます。オフラインにいる私は、このテーブルに近寄っていって、ここに座って、今オンラインにいらっしゃるみなさんに話すことができます。

ユーザーが一人ひとり、自分が見たいものを見ることができるんですけれども、実はリハーサルの1時間前に100人以上でやったら(サーバーが)死ぬということがわかりまして、画面シェアでご覧いただいています。本来は私は自分の視点で見ることができるし、もしくは見る必要がなければ、裏で働いている弊社の従業員たちを見ることも可能になっています。

その後ろにも、本社で働いている人たちがいます。ということで、こういう360度カメラを活用するとオフラインとオンラインの接点ができて、シームレスにコミュニケーションができます。

ダンボールで作れる、ドーム型のオンライン会議室

かつ、もう1つの課題としては、やっぱり今は3人座っていて、みんなoViceに入ってしゃべるとハウる(ハウリングする)んですよ。この問題を抑えるための技術開発や、さらに来年になっていくと、人々がどんどんオフラインに戻っていって、最終的にけっこう会議室が圧迫されていくと思うんですよね。

なぜかと言うと、オフラインでは実際に訪問して会議をしていたのに、全部オンラインになってしまう。だから、みんな(出社すると)会議室が圧迫されてどこでしゃべるの? となる。

ということで、今私たちが作っているのがこのドームです。かまくらみたいなものですよね。通常は会議室の制約もかかる中、これはダンボールでエコに作れます。すごく防音性に優れているわけではないのですが、中にいると周りの声は拾われないので、オンライン会議に最適です。

私たちは、こうしたハイブリッドな空間を作っています。360度カメラやデバイスを使ったシームレスなコミュニケーション、みんながoViceを使った時にハウらないようなソフトウェア的な解決。そしてドームを置いて、オフラインでもオンラインの会議ができるような実験をしています。

実はこれを実際のオフィスに置いてみましょうという実証実験は、すでに始まっています。今応募を受け付けていますので、スタッフさんが貼るリンクから申し込みをいただくと、このドームやリコーさんの「RICOH THETA」、360度カメラを実際に御社のオフィスに置いて見て実験してみることができます。

うちはそういう実験実証を通じて、来年の頭の春ぐらいには一般商用化も始めようと思っています。これが私たちの働き方を変えていく肝になると信じています。

物理的な制約をなくす「ビジネスメタバース」の世界観

本題に戻りますと、このような4つの条件が満たされることによって、ビジネスにおいてメタバースが浸透していき、人々は物理的な制約がなくなることで、さらに個人の個性を生かして仕事ができる。会社もフレキシブルな体制で、急変するビジネス環境に対応しながら、今までは取れていなかったようなさまざまなデータがメタバースに集約される。

例えば私は今オフラインでもしゃべっているけれども、oViceとつながっていれば発話のログや、私がどこに移動したかのデータも取れます。それを議事録に起こすこともできますし、ハイパフォーマーはこうしなければならないというロジックを組むこともできる。そうしたいろいろなデータが集約され活用され、サステナブルに成長できる時代が来ると、私は確信しています。

今はそれがどのような世界か、正直まだはっきりわからないんですよ。わからないので、こういうものを作って置いてみたりして実験しているところなんですけれども。

もう時代遅れとは思ってはいるものの、未だにFAXを使う企業ってありますよね。あと数年後ぐらいに、メタバースを取り入れていない企業はもう時代遅れだと考えるような時代が来ると考えています。そういう感じで急激に時代が変化していくと思っています。

ということで最後にちょっと宣伝なんですけれども、oViceは今、切実に人材を募集しています。oViceは成長しているんですけれども、本当に人が大事なフェーズになってきています。常に全職種において絶賛採用中です。

oViceで一緒にビジネスメタバースをリードしていきたい方々は、ぜひ募集要項を確認していただきたいです。もしoViceで働かないとしても、oVice自体を導入したい、もしくは実証実験を一緒にやっていきたいという方々は、ぜひoViceのニュースレターとホームページをご覧いただければうれしいです。以上です。