サイバー、カルビー、CCC、カインズの責任者が登壇

司会者:それではこれより、ご講演いただきました3名のみなさまと、日本アンガーマネジメント協会の西田顧問による座談会を行います。ここからは、西田顧問にコーディネーターとして座談会を進行していただきます。それでは西田顧問、どうぞよろしくお願いいたします。

西田政之氏(以下、西田):ありがとうございます。みなさん、こんにちは。カインズの西田でございます。さて、ただ今サイバーエージェントの曽山さん、カルビーの武田さん、そしてCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)の松浦さんから、それぞれ示唆に富んだショートプレゼンテーションをしていただきました。

実は裏を明かしますと、CCCもカルビーもサイバーエージェントも、そしてカインズもそうなんですが、社名の頭文字がすべて「C」なんですね。それに武田さんが気づかれて。それ以降、すごく単純なんですが、4社でさらに親しくお付き合いをさせていただいておりまして。

そんな中、一緒に何かできないかという話になったのが、今日のイベントをするきっかけにもなったんですが、まさかこれほどまでにみなさまから参加の申し込みをいただけるとは、夢にも思っておりませんでした。いかにみなさんがコミュニケーションイシューに悩んでいらっしゃるのかを象徴しているのかなと、あらためて感じております。

ただ、多くの皆さまを前に緊張してもしょうがないので、いつもの調子で進めたいと思います。ここからのお時間は、みなさんからいただいた事前質問を加味しながら、お三方にさらに突っこんで話をうかがおうと思っています。

松浦さん、曽山さん、武田さん、ふだんどおりガンガンとカットインしていただいて。お互いに質問し合い、言いたいことをおっしゃっていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

一同:よろしくお願いします。

社内コミュニケーションの理想形とは

西田:最初になんですが、「コミュニケーション不全の定義」の認識合わせをしたいと思っています。人によって、あるいは会社によって、コミュニケーションがとれている状態、とれていない状態の認識が異なると思うんですね。

会社ってやったほうがよいことばかりなんですが、事業をやっている限り優先順位があるわけです。なので、最低限の業務上のコミュニケーションがとれていればOKなのか、あるいは社員間・部門間をまたいで他愛のない会話がある状態までを言うのか。これはおそらく、視聴者のみなさんのコミュニケーションの在るべき姿も、それぞれ異なるんじゃないかなと思っていまして。

まずは各社のコミュニケーションがとれている状態、あるいはとれていない状態、コミュニケーションとしてどんな状態を目指していらっしゃるのかを、お聞きしたいと思っています。まず、武田さんからいかがでしょうか。

武田雅子氏(以下、武田):この質問をもらった時にすごく難しいなと思ったんですが、私は側面としてやっぱり2つあると思っていて。

1つは、会社として事業が前に進んでいるか。部門で言えば目標に対して仕事がきちんと進捗をしていて、かつ新しいことにもチャレンジをしている状態であるかどうか。これが会社から見た側面、いわゆる仕事の側面ですね。

あと、個人のほう。一人ひとりの社員から見た時に、ここって今度はすごく難しくて、どういう状態かは人によってバラバラだと思うんですよ。人から見るとぜんぜんコミュニケーションが少ない状態でも、どんどん仕事を回していく人もいますし、「たくさん(コミュニケーションが)ないと」という方もいらっしゃるので。

なにか統一のものがあるというよりは、個別にその方が仕事をしやすい状態をいかに作ってあげられるか。特に個人のところは、一人ひとり見に行く必要があるなと思います。その方が(コミュニケーションが)足りているかどうかと思われるか。そこが基準になると思いました。

西田:ありがとうございます。会社としては新しいものが生まれている状態、個人としてはそれぞれの状況に寄り添うかたちでということですね。

武田:そうですね。

コミュニケーションの成否は受け手側のジャッジで決まる

西田:松浦さん、いかがですか?

松浦俊雄氏(以下、松浦):そうですね。コミュニケーションを、意思や情報や考えとか、感じていることを伝え合う行為と考えてみると、コミュニケーションがとれているかどうかは、相手にしっかり伝えたいことが届いて認識されているかどうかがすごく大事なのかなと思いました。

つまり、コミュニケーションが上手くいっているかどうかは発信側も大事なんですが、受信側がその成否を決めているんだなと思います。なので、相互の関係性や伝える頻度、手段や場を変えていきながら、相手が認識しているかを常に見ていかなきゃいけないのかなと思います。

つまりは単純化すると、メッセージが届いていればコミュニケーションがとれている、届いていなければとれていない、となるのだと思っています。

西田:ありがとうございます。コミュニケーションは受け手が決めるということなんですが、今、CCCさんではそれが上手くいっていますか? 

松浦:部門によっても違うと思うんですが、ある役員はそれを確かめるために、自分の二階層下のメンバーに「このことについて聞いているか?」「これってどう思う?」と聞いてみて、自分が発信したメッセージがしっかり浸透しているかどうかをチェックしていると言っていました。良いアクションだなと思いますので、僕も真似していきたいなと思いました。

西田:二階層下にチェックするということですね。なるほど、ありがとうございます。

情報の「量と質」が適切でないと、会社に不信感を抱く原因にも

西田:武田さん、松浦さんのご発言もふまえて、曽山さんはこのあたりいかがお考えでしょう。

曽山哲人氏(以下、曽山):お二方の話、まさにそのとおりだと思います。チームを前に進めるために(コミュニケーションが)重要だというのは、本当にそのとおりで。別の切り口は何かなと、ずっと今考えていたんですが、情報の量と質がコミュニケーションではとても重要になると思っています。

部下の立場で考えると、情報を出してくれないと不信に思うじゃないですか。経営者や上司側の秘密が多いと不安になるので、情報の量と質が適切であることがすごく大事です。

ここで先ほどの武田さんの切り口が出てくるんですが、やっぱり一人ひとり考え方や捉え方が違うんですよね。ですので、「期待値コントロール」という考え方がすごく大事です。1年目のメンバーは情報にどこまで期待していて、マネージャークラスはどれぐらい情報をたくさん欲しがっているのかとか。この期待値がズレると噛み合わないんですよね。

私たちは「GEPPO」で毎月全社員からアンケートを取っていて、コメントも大量に集まります。コメントを「ポジ」「ネガ」で分類して、「マネージャー」「ママ」とか、属性別で区切って傾向の分析なども行っているんですね。

リモートワークについてのアンケート結果を見ると、役職や属性によって社員の声もさまざまなんですよね。そこのズレが大きいので、これを埋めるには人事や経営陣がちゃんと見ていないと、「リモート派」か「リアル派」かという、二項対立になっちゃいますね。

西田:なるほど。期待値コントロールが大事だということですね。だからこそ曽山さんのところは、寄り添って属性別にちゃんとトラッキングしているということですね。

曽山:そうですね。

中高年の男性社員もリモートワーク賛成派が多数

西田:武田さん。今の曽山さんのお話を聞いて、トラッキングという意味では、カルビーさんはどんなことをされていますか?

武田:うちは働き方に関するアンケートを所属のほか、属性でも見ていますし、本当にいろんな切り口で見ていて。それこそ最初の頃には、年代別や役職だったり、何か傾向があるのかな? と、仮説を立てながら見て行きました。

私の中では、絶対に年齢が上の男性はリモートに反対だろうという仮説を立てていたんです。ただ、カルビーの場合は実はそれはなくて、どの世代も反対の人たちは同じぐらいで、賛成が大多数だったんですが。なので、むしろ私はそこで自分のアンコンシャス・バイアスを捨てました(笑)。

あと、一回この層が「大丈夫だよ」と回答していても、例えばコミュニケーションへの満足度って、時間軸で変わってくるんですよね。期待値が上がっていったりするので、いったんOKとなっても、そのあとさらに期待値が上がっていくと、実はそこにまた不満が出て、回答のレベルが変わってくる。なので、一回OKだったからと言って安心しちゃいけないんです。

私が人事の仕事の中ですごく大事にしている言葉なんですが、「潮目を読む」。いつ変化が起きるのかに敏感でないといけないなというのは、すごくこのコロナの期間で思いましたね。

人事視点で感じる、会社の潮目

西田:社員の期待値が上がると、やっぱり社員がレベルが上がっていくんですかね?

武田:そうなんですよ。最初は、やれいろんなツールの使い方がなんとか、働く環境がどう、という話をしたんですが。今は何が起きているかというと、カルビーの本当に直近のアンケートなんですが、「私はよかれと思ってあの人にこう接しているけれども、あの人は私が思っているように受け止めてくれているんだろうか?」という、新たな不安が生まれてるんです。

前は投げっぱなしで「イエーイ。投げた。おしまい」でよかったんですが、今は本当にお届けができているのか、理解をされているのかどうか、または自分がすごく気にしていることに対して無頓着な人がいるのはいかがなものか、とか。本当に最近なんですが、「あれは無神経ではないのか?」みたいな、ちょっとレベルの高い悩みが出てきていて。

「ああ、次はこのこのステージか」というのは、また人事はそこに向かっていかないといけないんですが(笑)。なので、また潮目が変わったなと見ています。

西田:すごいですね。社員が育っているんですね。

武田:育っていますね。その点は本当におもしろいですね。

施策に頼り過ぎてしまうことのデメリット

西田:松浦さんのところは、タレントマネジメントツールでトラッキングしていらっしゃいましたよね?

松浦:そうですね。「タレントパレット」というツールにあるアンケート機能を使って、月に1回サーベイで見ていくのですが、今、みなさんがおっしゃったような傾向を捉えながら、人事が今度は個別の面談を組んでいくとの流れですね。

西田:なるほど、ありがとうございます。例えがいいかどうかわからないですが、DNAがコピーミスを起こすことで突然変異が生じるように、ディスコミュニケーション、すなわちすれ違いやボタンの掛け違いや誤解があってこそ、イノベーションが生まれる側面もありますよね。

なので、完全コミュニケーションと言っても程度があって、人工的な施策に頼り過ぎて自然の偶発性を封印してしまうことは、しないほうがいいんじゃないかなと思っていまして。先ほど武田さんから「新しいチャレンジが起きている状態」というお話がありましたが、やっぱりそういうことが大事なんだなとあらためて思いました。ありがとうございます。